進化がバグった
「進化って……どういうこと?」
「そのまんまの意味です。レベルが上限になったので進化します」
「……いや、進化自体は知ってるんだけど……」
ラビだって魔物が進化するのは知っているでしょうに、なんでそんなに驚いてるの?
「いやいや、リッチで終わりじゃないの!?」
あーね、そういうことね。
「だって声がそう言ってんですもん」
私だって知らないよ。
いきなり気絶していたら脳内にいつもの天の声が響いてきて【進化できます】と言われたんだから。
「なので進化している間、私は無防備になるのでここで待っていてください」
魔物が進化する時は巣を作ってそこで進化を開始するとも聞いたことがあるが、無防備になるのは初耳だったので驚くラビ。
「……と言っても、ここは安全なので大丈夫だと思います。今のうちに疲れを取っていてください。……進化が完了したら次は休み無しになりますから」
進化には何日か掛かる。
それだけ動けないってことは相当なタイムロスだ。
後で進化するっていう選択肢もあるけど、階層ボスの強さからして迷宮主は相当な強さだと思う。
このままのステータスじゃ勝てない可能性があるから、進化したほうが逆に早く攻略できるかもしれない。
【『進化』が可能です。
デミリッチ / ソウルイーター】
『デミリッチ:リッチが更なる進化を遂げた存在。全ての魔法を巧みに操り、世界に恐怖を知らしめる』
『ソウルイーター:大虐殺である咎人が不死となって蘇った姿。生命が消え失せるまで止まることはなく、殺した者の魂を喰らうことが何よりの至福』
どう考えても『ソウルイーター』は危険な臭いしかしない。けれど、更なる強さを求めるにはこれを選択するのが得策だよね。
ちょっと不安だけど、娘の命がかかってるんだ。親の私が頑張らないでどうする。
【『ソウルイーター』に進化しますか?】
…………はい。
【『進化』を開始します】
【進化に伴い、各スキルのレベルが上昇します】
【『身体能力上昇Lv9』が『身体能力上昇』になりました】
【『敏捷Lv9』が『敏捷』になりました】
【『禁忌魔法Lv3』が『禁忌魔法Lv4』になりました】
【『毒霧Lv8』が『毒霧Lv9』になりました】
【『毒霧Lv9』が『毒霧』になりました】
【『毒霧』が最大レベルになりました。『毒霧』が『猛毒』になりました】
【『腐滅Lv4』が『腐滅』になりました】
【『腐滅』が最大レベルになりました。『腐滅』が『死滅』になりました】
【『全属性耐性Lv6』が『全属性耐性Lv7』になりました】
【新たな称号『軽業師』を取得しました】
【『虐殺王』を取得しました。『非道』が結合されました】
【『ソウルイーター』を取得しました】
【新たなスキル『神速』を取得しました。『身体能力上昇』『敏捷』が結合されました】
【『恐怖付与Lv5』を取得しました】
【ステータス値が上昇しました】
【スキルポイント500を取得しました。現在のスキルポイントは1850です】
【進化に成功しました。『リッチLv15』が『ソウルイーターLv1』になりました】
◆◇◆
ルーナさんが進化を開始してから一日が経ち、私とガビルは少しずつ周囲の魔物を倒しながら暇つぶしをしていた。
今日も魔物を狩っていたところで、疲れたのでそろそろ休もうか。とガビルが提案して、私達はルーナさんが寝ている休憩スペースに戻った。
そこにはルーナさんを中心に深淵が広がっていて…………
――ドクン。
「なに!?」
何かが跳ねる音がした途端に迷宮の空気が変わった。
正しく言うならばルーナさんの気配が一変して、その影響で迷宮全体が恐怖に染まる。
――ドクンッ。
次には圧倒的な圧力が全身にもたれ掛かってきた。近くにいた私達は抵抗もできずに地面に縫い付けられる。
「なんだこれは!」
「う、動けない……!」
これはルーナさんから発せられた殺気よりも圧倒的な力があって、それが何もしていない眠っただけのルーナから発せられている。
迷宮はまだ振動を続けていて、砂埃が舞っている。
――ドクンッ!
三度目の何かが跳ねる音がして理解する。これはルーナさんの心臓部分から出ている音だと。
ルーナさんの中心に漂っていた深淵が渦を巻き始める。それはルーナさんの心臓部分に集まって、身体に消えていった。
私はただ呆然とその光景を見つめるしか出来なかった。
すでに発せられていた圧力は完全に消えているのけど、恐怖に染まった体が言う事を聞いてくれない。
……あれは本当にルーナさんなの?
そう思ってしまうほど目の前の何かは異質過ぎる。
ガビルと話し合った事は間違いだったの?
――そして、覚醒めてはいけない怪物が誕生した。
ルーナさんはゆっくり起き上がる。
寝起きと同じように、ぼーっと呆けて腕回しをしたり、手をグーやパーにして体のチェックをしている。
だが、それでも不気味な雰囲気はルーナさんから出たまま。私達は固まったままルーナさんの行動を見ることしか許されなかった。
ふと、首を回していたルーナさんと私の目が合う。
そしてゆっくりとルーナさんの口元が開かれて……
「お――ッブシッ! なんか気分的に寒いんですけど!?」
とても大きいくしゃみをして寒そうに肩を抱いて微かに震えている。本気で寒いみたいね。
「ガビルさん! 早く燃やす物出してください!」
「え? ……お、おう」
ガビルが恐る恐る木材を取り出すと、目に見えぬ速さで木材を奪い取って燃やす。その格好は不気味な雰囲気を放っているにも関わらず、完全にダメな人にしか見えない。
なぜか無駄に身構えて緊張していた私が馬鹿みたい。
ずっと気を張っていたからなのか、体を自由に動かせない。
「お? ラビさん大丈夫ですか? 貴女も火に暖まると良いですよ。……あ~、寒っ」
ルーナさんは呆然としている私達に気づかずに、焚き火で暖まりながら虚空を見つめている。
……多分、ステータスを確認しているのかしら?
「――なんっっじゃこりゃあぁああぁあぁぁ!!」
ルーナさんのステータス置いておきますね。
『ソウルイーターLv1 名前:ルーナ
ステータス
HP:10866/10866
MP:25268/25268(+28652)
筋力:14168
魔力:24704
・炎魔力:14246
・水魔力:21330
・風魔力:22470
・聖魔力:14470
・闇魔力:23567
物理耐性:9460
・斬撃耐性:9812
・打撃耐性:8584
・刺突耐性:8584
魔法耐性:13060
・炎耐性:9408
・水耐性:11008
・風耐性:12972
・聖耐性:10172
・闇耐性:11772
敏捷:13265
スキル
『痛覚無効』『疲労無効』『状態異常無効』『鑑定Lv5』『日光耐性Lv5』『恐怖耐性Lv6』『物理耐性Lv8』『斬撃耐性Lv8』『魔法耐性Lv6』『禁忌魔法Lv4』『先読』『腕力Lv8』『探知Lv5』『麻痺毒Lv6』『射撃補正Lv7』『猛毒』『毒強化Lv7』『状態常付与Lv7』『打撃耐性Lv8』『刺突耐性Lv8』『死滅』『魔法適正』『消費MP激減』『MP高速回復』『魔力操作』『魔力強化Lv5』『MP上昇Lv4』『全属性耐性Lv7』『死霊術Lv4』『全属性強化Lv5』『炎無効』『神速』『恐怖付与Lv5』
称号
『不死』『黄泉還リ』『徘徊する者』『毒使い』『捕食者』『死霊術士』『魔の頂』『暴食』『軽業師』『虐殺王』『ソウルイーター』 』




