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新たな目的

 ボスとの戦闘はどうなったのか。それが気になったから部屋の中央を見渡す。


 ……なんで瓦礫の山があるの?


 もしかして……


 『ボスの死体』


 ワッツ? なぜ?


 そしてなんで横にはガビルは気絶してるの? 鎧もボコボコだし……え?


「……どうしてこうなった」


「あぁ……うん。説明しますね」


 異変が起きたのはボスが助けを呼んだ後のことらしい。

 私が召喚したウルフマンが暴れ始め、自慢の爪攻撃でボスに怒涛の乱撃をした。


 だが、ボスが硬すぎて爪による攻撃はあまり効果が無く、ラビの目からしてもウルフマンは苛ついていたように見えたらしい。


 そこでウルフマンはちょうど良い重さの武器(ガビル)を見つけてしまった。

 素早くガビルの元へ移動したウルフマンは、ガビルの足を掴んで再びボスに突撃していった。


 それからニつの悲劇が同時に起こった。

 ウルフマンの素早い打撃攻撃に、なすすべも無くフルボッコにされて体の所々が崩れていくボス。

 状況を理解できぬまま武器として扱われ、抵抗ができずに只々武器として打ち付けられるガビル。


「……それでこうなったと」


 ラビが頷く。


 眷属が命令を忘れた? ……いや、それはありえないでしょ。だったら何だ? 単純にニ人の戦闘が遅いからキレた?


 もう一度、ボスだったものとガビルを見る。

 ボスをはもう分からないけど、ガビルの目にはキラリと光るものがあった。静かに合掌をする。


 私も新たな眷属を召喚して命令を出してからボスの援軍に夢中で、中央がこんなことになっているとは思っていなかった。


 …………命令? ――あっ。


 もしかしたらゴブリン軍団とアグルボア、蜘蛛、ジェネラルオークに出した命令がウルフマンにも聞こえていて、ウルフマンは自分にも新たな命令が来たと勘違いしたんじゃね?


 確か私は「好きなだけ暴れてよろしい」と命令を出した。そして、このようなことになっている。


 私のせいかぁあああ!?



      ◆◇◆



 その後、ガビルが起きるまでボスの部屋で休憩することになった。


「ラビさんはさっきの戦いでどのくらいレベル上がりました?」


「うーんと、3上がったわね。ルーナさんと最初あった時と比べたら10上がったわ」


「結構上がってますね」


「……あ、鑑定のレベル上がったわ」


「おめでとうございます」


 そういえば私自身のレベルはどうなっているのだろうか?

 天の声が何かを言っているのは聞こえていたのけど、ほとんど無視して行動していたな。



『リッチLv11 名前:ルーナ


 ステータス

  HP:3730/3730

  MP:8680/8680


  筋力:2328

  魔力:10900

   ・炎魔力:6146

   ・水魔力:9564

   ・風魔力:10470

   ・聖魔力:6146

   ・闇魔力:11434

  物理耐性:1732

   ・斬撃耐性:1564

   ・打撃耐性:1104

   ・刺突耐性:1104

  魔法耐性:2626

   ・炎耐性:1056

   ・水耐性:1624

   ・風耐性:2224

   ・聖耐性:1620

   ・闇耐性:1666

  敏捷:3862


 スキル

『痛覚無効』『疲労無効』『状態異常無効』『鑑定Lv5』『身体能力上昇Lv9』『日光耐性Lv5』『敏捷Lv9』『恐怖耐性Lv4』『物理耐性Lv4』『斬撃耐性Lv4』『魔法耐性Lv6』『禁忌魔法Lv3』『先読』『腕力Lv5』『探知Lv4』『麻痺毒Lv4』『射撃補正Lv5』『毒霧Lv7』『MP自動回復Lv7』『毒強化Lv5』『状態常付与Lv5』『打撃耐性Lv4』『刺突耐性Lv4』『腐滅Lv4』『魔法適正』『消費MP激減』『MP高速回復』『魔力操作』『魔力強化Lv5』『MP上昇Lv4』『全属性耐性Lv4』『死霊術Lv3』『全属性強化Lv3』


称号

『不死』『黄泉還リ』『徘徊する者』『毒使い』『捕食者』『死霊術士』『魔の頂』『非道』 』



 わーお、マジェスティック。

 鑑定のレベルも最大になって称号も見れるようになったので、気になる称号でも暇つぶしに調べてみる。


『捕食者:捕食した者のステータスをニ割奪える』


 ニ割は少ないかな? いや、食べるだけでステータスが上がると考えれば十分。

 ……だからといって四層の瓦礫になったボスを食べる気はしないが。


『非道:生き物を殺すのに躊躇いが無くなる』


 おぉう、本当に危ない称号を取ってしまった。

 このままだとダークヒロインまっしぐらだな。別に気にしないけど。……あれ、これがダメなんじゃね?


「……ねぇルーナさん」


「はい? なんですか?」


「迷宮をクリアした後の予定ってあるのですか?」


 そういえば何も考えていなかったな。

 ……いや、私を探してる友人に会うためにギルスタン王国に行くのが今の予定だろう。


 だが、その予定を抜いたら迷宮を攻略した後に私は何をしたかったのか。


 マルギンに復讐? ……いや、そんなつまらないのは別にどうでもいい。……だったらやっぱり……


「旅、ですかね」


「旅?」


「魔女やっていた頃の私は王城の地下で『不死の薬』についての研究を何年もしていました。……まさか死んで生き返ったら研究していた不死になっていたのは笑えましたよ」


「……そう。旅が目的なら冒険者登録したほうがいいかもしれないわ――って、魔女様だからそんなこと知ってるか」


 ……いや、全然知らなかったけど。


 なにせ何十年も引きこもっていたから外の事情なんて知るわけない。……というよりも自分のこと以外に一切興味が無かったし。


 そもそも冒険者ってなんぞ?

 生きてる時に友人から情報を集めとけば良かったなぁ。


「ここらへんで一番近い村ってどこですか?」


「え? ………うーん、ここからだとカガリ村なんだけど……今は行かないほうがいいですよ」


「? それはどうして?」


「今、あの村の近くの洞窟に龍が住み着いてしまって討伐隊が組まれているんです。だから行っても休憩なんてできないでしょう」


「龍、ですか。それは大変ですね」

 

 この世界で龍とは最強の存在として『最強の魔女』と同じくらい恐れられている。


「それも、その龍は『邪龍』らしく―――」


「――ブフォッ!?」


「だ、大丈夫ですか!?」


「……ケホッ……あ、いえ。何でもないです続けてください」


 ラビが慌てたように立ち上がるのを、なだめて座らせる。


「……えぇ……その邪龍のせいで洞窟の周辺には魔物すらも恐れる瘴気が漂っているらしいくて、その瘴気は村も包んでるみたいです」


「それで討伐隊を結成したのですか。その討伐は何時に開始されるのですか?」


「………ちょうど半月後かしら」


 半月後か……今から全力で攻略したなら、まだ間にあうかな?


「………分かりました、そのカガリ村の場所を教えてください」


「……え、でも――」


「いいから早く教えろや」


「――はい!」


 全てを放棄してでもやらなければいけない用事ができた。


 さっさとこの迷宮を攻略してカガリ村に行こう。


「さっさと起きてください。休みは終わりですよ」


「ゲブッ!」


「あ、待って!」


 寝ているガビルを蹴り起こして奥に進む。




 待っててね……愛しい()()()――フル。

「フルって誰じゃい」と思うかたはプロローグで名前だけ出てます。

 次回はショートストーリーです。

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