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フルボッコタイム

 あの後なんとか話をつけて変な空気は無くなったけど、ホントマジで大変だったわ。

 久しぶりに凄い頑張ったと思うよ。褒めて? 頑張った私を褒めて!


 二人は、なんでそこまで思考停止出来るの? って言いたいほどずっと硬直していた。


 だって、私は元魔女とはいえ、今は人間の敵であるリッチになっているのだ。

 敵の前で思考が止まるなんて事、私には絶対に出来ない。………いや、別に殺さないけど。


 けどね、今の私が一番困っている事は別にあるんだよ。


「そろそろ疲れてきましたか? ボスが近いので休憩したほうが良いと思いますけど……」


「あ、いえ。大丈夫です! 私は歩いているだけなので疲れていません!」


「俺だって楽してもらっているから休憩はいらないですぜ」


「………あの……いつも通りの口調で話しませんか?」


「「無理です!」」


 ………これだよ。完全に私の下っ端みたいになっちゃっている。

 どうするか、マジで話しづらい。 


 ……まあ、いいか。


「……分かりました。それではこのままボスに挑みましょう」


 そのまま歩き続けてボスを探すと……居た。

 ボスの部屋は四層の中心部にあり、広い部屋で四方向の通路からどこからでも入れるようになっている。


 ボスは迷宮の天井にぶら下がって寝ていて、見たところ有翼型の魔物っぽい。肌の表面がゴツゴツしているからガーゴイル?


「そ~い!」


 ゴブリン一体を呼び出して、そいつの頭を掴んでボスに向かって投げつける。

 ボスに当たる直前にゴブリンを爆発させた。直撃を受けたボスは「グエァ!?」という悲鳴をあげて地面に落ちる。


「………うわぁ……」


 後ろで引いている声がしたが無視する。だって敵が近くにきているのに昼寝ぶっこいてるアホが悪いんだよ。


「よし、それじゃあ後はラビさんとガビルさんお願いします」


「「え!?」」


 突然の振りに驚くニ人。

 いつまでも私だけで先に進めると思ってんじゃねぇ! そこまでやってやる義理は無いからね!



 建前:強い敵との実戦を経験したほうが強くなれる。だから、わざわざ活躍の場面を作ってあげよう。

 本音:動くのメンドイ。



「そんなに心配しないでください。ウルフマンくらいなら貸してあげますから」


 ウルフマンは私が迷宮を散歩している時に、ジェネラルオークがいつの間にか殺していた魔物。


 全身が毛で覆われている人型の魔物で、ウルフマン最大の武器が鋭い牙と爪。

 動きも素早くて普通の兵士四人が束になってようやく討伐できる程度の強さで、群れるタイプだから普通に面倒くさい。


「……ほら、ボスもダメージを受けているので死ぬ気で頑張れば倒せますって」


 ボスはすでに爆発の影響で羽は無残なくらいにボロボロになっている。

 これで上から一方的に攻撃されて終わりということは無いでしょ。


 最悪の場合になったらウルフマンを爆発させてボスに止めをさせば勝てるし、危なくなったら後方から魔法を撃てばいい。


 そのかわりにラビとガビルは爆発で吹っ飛ぶけど、ボスを自力で倒せなかったのが悪いんだから軽い罰ゲームと思ってほしい。


「……それとも私に殺されて、死後も私の死兵として動きますか? さっきのゴブリンみたいに何度も爆発させますよ?」


「―――ヒィ!?」


「スパルタぁあああ!」


 少し威圧を込めて脅すと一目散にボスに直行していった。


「幸運を祈る!」


 ウルフマンを召喚しながら、とりあえず敬礼をしておいた。




 予想してた通り召喚したウルフマンは真っ黒になっていて、正直触りたくないわ。


「お前の力量なら問題ないだろうけど、あのへっぴり腰のニ人のサポートに回れ。ニ人が死なないのが最低条件だ」


「―――アォオオォオオオン!!」


 命令したら遠吠えをあげてボスに突撃していくウルフマン。……マンって名前がついているのに喋れないのね。それとも『死霊術』のレベルが上がれば知能も変わるのかな?


 やっぱり言葉がわからないと本当に命令を理解してくれたのか心配になっちゃうしね。


 死霊術で召喚した魔物は、どれも凶暴になる性質があるからこその心配だよ。


 ……さて、お二人さんはどうなってるかな?


「ガビル引きつけて! 私は後ろから!」


「おう!」


 長い間、ニ人で旅をしてたのは伊達では無いようで、短い作戦会議の後は各々が役職なりの良い立ち回りをしている。


 ガビルが大剣でボスの攻撃をひたすらガードして、ラビが音も無く後ろから首筋をダガーで抉る。

 ボスの注意がラビに向いた瞬間にガビルが大剣で叩き割りをして大ダメージを与える。


 ニ人だけで十分な立ち回りをしているのでウルフマンの出番は無さそう。

 ……と思っていたけど。


「――キシャアアアァアアア!」


 ――うるさっ! いきなりなんだよアホ!


 ボスがかん高い叫び声をあげると四層全体が激震する。

 咄嗟に耳を塞いだニ人はボスに吹き飛ばされて壁に激突するけど、ラビはなんとか受け身をとって衝撃を和らげている。


 ――ドドドドドドッ!


 なーんか嫌な予感してきちゃったよ私。


 本能に従って静かにゴブリン軍団とジェネラルオーク、アグルボア、蜘蛛をそれぞれ四つの通路に配置する。


 MPが一気に持ってかれる感覚がしてダルいけど、。そういえば地味にこんなに同時召喚したのは初めてかもしれない。


【熟練度が一定値に到達しました。『死霊術Lv2』が『死霊術Lv3』になりました】


 あ~、センキュセンキュ。だけど今はそれどころじゃないんだわ。

 ルーナちゃんはトラウマと遭遇しそうなんだわ。


「何だ!?」


「おふたりは気にせずボスに集中しててください。油断して死んだら殺しますよ」


「――なにその理不尽!?」


 これでラビ達は大丈夫でしょ。


 ……さて、と。


 ここで何か来るとしたら、遠くにいたり倒すのが面倒で見逃した魔物達の可能性が高い。

 まさかここでボスが助けを呼ぶとは思わなかったから、結構な量を残しちゃったんだけど、足音の量から考えて全部来そうだよねぇ。


 それを知っていたなら全ての敵を殲滅してまわったというのに。

 もしかしたら、助けを呼んだのに誰も来なかった時のボスの顔を拝めたかも。


 そうこう考えているうちに魔物達の足音が大きくなってきた。

 アグルボア、蜘蛛、ジェネラルオークが担当している通路は問題ないだろうけど、ゴブリン軍団の通路が心配なので、私はそこに立つ。


「好きなだけ暴れてよろしい」


「「「「―――ガァ!」」」」


 命令すると眷属達は威勢よく雄叫びをあげて各通路に飛び出す。


 ……さぁて、私も暴れようかね。



      ◆◇◆



 結論。何もできなかったわ。



 別に敵の魔物達がとても強くて手も足も出ない……って訳じゃないのよ?

 ゴブリン軍団達が思った以上に強くなっていて、手を出す必要が無かっただけだし。


 死霊術はスキルレベルが上がれば眷属も強くなると書かれていたけど、見た感じ『死霊術Lv3』は『死霊術Lv2』のニ倍くらいには強くなってるのかな。


 ボスの叫び声で呼ばれた魔物は、強化された私の眷属達にフルボッコされて虚しく消えていった。


 ゴブリン軍団には数の暴力で押しつぶされ、アグルボアには強化された風纏いの爪攻撃で細切れにされ、蜘蛛には強毒で溶かされるか食べられて、ジェネラルオークには何もできずに肉塊にされた。


 経験値ガッポガッポだし、楽でいいんだけど……なんか可愛そうだったから、次に呼ぶ時は優しく扱ってあげよう。


 ……じゃあお腹減ったし食べますか。


 本当はラビとガビルの前では隠していたんだけど、今は二人とも戦っているだろうし大丈夫だよね。

 隠していた理由は「私そこまで人間捨ててませんから」という小さいアピールのため。ま、時間の問題だろうけどね。


 ――静かな空間にバリボリという捕食する音が響く。




 …………静かな空間に?


 おかしい。

 ラビとガビルはすぐ近くで戦っているはずだから、静かな空間というのはありえない。


「………ルーナさんは、何してるの?」


 ラビの疑問が耳に届く。それはただの言葉のはずなのに、大きな衝撃となって私を打つ。


「…………マジか」


 バレるの早すぎませんかね?

 ルーナさんピンチ!


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