なんか探されてました
「……ルナさん――いえ、ルーナ。貴女はいったい何なの?」
――皆さんお気づきだろうか?
今さっきラビは私のことをルーナと呼びなおした。もちろん私は本名など教えていない。
そして相手の名前が分かるスキルは一つしか存在しない。
このことから考えられるのは―――
「『鑑定』を取ったんですか、せっかくのスキルポイントを無駄にするとは………」
私はすぐに鑑定を取ったけど、ほとんどの人は鑑定というスキルを取ることはない。
取るとしたら商売人か情報屋くらいだ。
スキルポイントは有限で戦闘に関係無いスキルよりも、戦闘力が上がるスキルを取ったほうが安全だ。
敵の情報だって情報屋がほとんど安値で売っているからそれを買ったほうが良いというのが世間一般の考えになってる。
じゃあなんで私は取っているのかって?
そりゃあ、知らない人と話すのが嫌だったからって理由だよ。
……あぁ、話がそれちゃった。
それで『鑑定Lv1』で表示される対象のステータスは、種族または職業、本名、HP量、MP量。
はい、これで分かりましたね。
なんとラビには本名だけではなく種族もバレちゃいました〜、アッハッハァ。
―――笑えねぇ!!
「貴女はいったい何なの? と言いましたね、聞かずともラビさんなら分かるのでは?」
「………えぇ、そうね」
ラビは武器を構える。
魔物が接近したわけではない。完全に私を見て、武器を構えた。
いやぁ〜、そう来るか。なら話は早い。人は魔物に対しては容赦無く矛を向ける。魔物だってそうだ、人がいれば殺す。
それがこの世界の普通なんだから。
両手に闇の魔力を纏わせてニ人に最大の殺気をぶつけると、ラビは突然のプレッシャーに膝をつき、未だに状況を理解してないガビルは一歩後ろに下がる。
この殺気でも膝をつかないなんて流石はガビルだね。ラビも気絶しないで頑張って耐えてる様子だし。
やっぱりこいつら強いじゃん。
「……で」
「はい? なんですか?」
「――なんで!? 私達を騙してたの!?」
「おい、ルナ! これはどういうことだ!」
「はい、騙してましたよ。そしてガビルさん、こういうことです」
「………なに――ッ!」
死霊術で先程殺したジェネラルオークをガビルの背後にこっそり召喚して身動きを封じる。
ついでに黒ゴブリン四体も召喚してラビを囲む。
「残念です。貴女が鑑定なんてものを取らなければ、このまま共に迷宮を探索できたというのに」
「………え?」
「まぁ、このまま殺すのも勿体無いのでいくつかの質問に答えてもらいましょうか。………もちろん拒否権はありませんよ」
「……わかったわ」
と言っても何を聞こうか。
「まず、ここに来た理由は?」
「ここの迷宮の調査よ。ここは突如できた迷宮で、依頼を受けて来たってわけ」
そもそも私は復活したばっかりだから新しい迷宮とか新しくないとか分からないんだけどね。
……けど、なんかそれだけじゃない気がするんだよなぁ。女の勘ってやつ?
「本当にそれだけですか?」
「……それだけよ」
「ふーん」
やっぱり隠してる感じするなぁ。
ここは少しだけ脅すか?
「……オーク。殺さない程度にやって」
「――ガッ!」
「――ガビル!?」
オークが命令通りにガビルをフルボッコにするけど………どう見てもやり過ぎだろ。
全身鎧はバキバキに凹んでいるし、完全に白目むいて気絶しちゃってる。
「……うーん、まだ口を割りませんか? だったら――」
「―――分かった! 正直に話すからガビルを殺すのはやめて!」
よし、勘は当たってたな。
……とりあえずガビルごめん。ホントにごめん。
ほら、計画を進めるには多少の犠牲は必要じゃん?
「私達の任務は、五十年前に姿を消した『最強の魔女』の捜索よ」
「……………はぇ?」
…………なして?
◆◇◆
なんで私の捜索……って、五十年前!?
そんなに時が経ってたのか。
「なんでわた……魔女の捜索を? というか誰が?」
「目的は分からないわ。探している人物も秘密なの。一度だけ依頼について話すために会ったことがあるけど、認識阻害の魔法が掛けられていたわね」
それだけトップシークレットってわけか。
だとしたら探しているのは私の友人か?
会いに行くとしてもあいつらの住処分からないんだけどな。
それに、あいつらは人外だから普通の人より寿命が長いし、私と同じく一定の場所に留まることが出来ない忙しい奴らだからなぁ。
「なんでここを探しに? なんかの確証があったとか?」
「いや、依頼主が言うには『あのアホのことだから、住んでた国が滅んだから適当に迷宮なんかで暇つぶししてるんじゃない?』とからしくて………」
なんか地味に私がアホって言われてるんだけど………私を探してる友人は後で殴り飛ばすか。
アホな私は暇つぶしに友人を殴ることに決めましたよ。………えぇ、最高の暇つぶしじゃないですか。
「……にしても暇つぶしで迷宮に潜るなんて、流石は『最強』と言われているだけあるわね」
「その魔女の特徴とか聞いてないのですか?」
「なんでそれを貴女が聞くの?」
「………あー、私も暇だからついでに探そうかなぁと思っただけです」
「――ほんと!?」
もう依頼は完了してるんだけどね、だって私が魔女なんだし。
というか名前とか聞いてないのかよ。
「特徴は金髪でロング、アホみたいに自由人で、常にふざけている馬鹿……と」
――よし、そいつぶっ殺す。
別に間違いじゃないけど、普通に言われるとムカつく。
「名前はルーナだそうよ……ちょうど貴女と一緒ね」
「ルーナという名前は多いのですか?」
「そりゃね、ルーナ様のように強くたくましく育ってほしいと願って同じ名前にする人は多いわよ」
みんなー、私のようになっちゃダメだぞー。
自分で自覚しているけど、絶対に私以外が私みたいな生き方をしたら嫌われる確信あるぞ。
「その依頼主が拠点にしている場所は何処ですか?」
「ギルスタン王国の王城に住んでるわ」
ギルスタン王国? 何処じゃそれは。五十年の間でできた国とかかな。
それだけじゃ友人の特定は難しいな。
「……よし、情報ありがとうございます。それじゃあ気をつけて帰ってください………あ、入り口までそのジェネラルオーク貸すので安全に帰れると思いますけど、保険にゴブリン軍団も貸しますか?」
「………え? 見逃してくれるの?」
「今の私は機嫌が良いので見逃してあげます」
新しい目標が出来たから、さっさとこの迷宮をクリアしなきゃな。
そうと決まれば、無駄な時間を取ってる場合じゃない。さっさとを奥に進もう。
「――ま、待って!」
ん? まだ何かあるのか?
「私達を貴女と一緒に連れてってください!」
……やだこの人、めんどくさいことしか言わない。
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