力試し
敵を狩るっていっても、ほとんどの敵が私を怖がって近づいてこないんだけど。
それに気づいていない二人は必死に魔物を探してくれている。
「………ダメね。探知ですら反応が無いわ」
探知の反応はあるよ。
探知Lv3じゃなきゃ分からない、めっちゃ遠いところにね!
なんなんだよまったく!
確かに三層の敵は獣系が多いけど、ここで野生の勘発動しなくていいよ!
「これ以上はボスに近づいちまう。……引き返したほうがいいかもな」
「……そうですね」
………はぁ、ボスか………やるか。
「そのボス殺りますか」
「「……え?」」
という事でボスが居る場所に行ったんだけどね………なんかおかしいんだよねぇ。
私の目の前にいるのは豚のような顔をした豚人族と呼ばれる魔物なんですよ。
オークって言ったら、ガビルみたいに脳味噌に筋肉しか入ってねぇんじゃないかと思われる脳筋野郎で、動きはのろまな当たらなければ怖くない敵なんだけど。
なんで素早い敵が沢山いる階層にオークなんですかね?
普通はボスも素早い敵だと思うのに、予想の斜め上を行きやがって。
……いや、もしかしたらスピードが高くなった変異種のオークなのかもしれないな。
『ジェネラルオークLv20
ステータス
HP:1952/2000
MP:6/6
筋力:2450
魔力:60
物理耐性:573
・斬撃耐性:338
・打撃耐性:566
・刺突耐性:325
魔法耐性:232
・炎耐性:56
・水耐性:233
・風耐性:198
・聖耐性:216
・闇耐性:255
敏捷:420
スキル
『身体能力上昇Lv8』『物理耐性Lv7』『斬撃耐性Lv3』『剛力』 』
うん、ちょっと強めな普通のオークでしたね。
絶対に迷宮主さん配置ミスったでしょ。
オークも私達に気づいて武器の大鉈を持ってこちらを振り向く。
なんか殺意ビンビンに感じるんですけど。
「な、なんて威圧感なの!?」
「ダメだ。こいつは強すぎる!」
………え? なんでこの人達は今にも逃げる体勢を取っているんだい?
確かに奴は強いけど、動きが遅いから安全に倒せると思うんだけどな。
「……よし。じゃあ行ってきますね。ニ人は安全な場所で見ててください」
「――まてまてまて待て! 一人で戦うつもりか!?」
前に出る私の腕をガビルが掴む。流石は脳筋といったところか、腕力に動けなくなる。
……というか強く掴みすぎて腕がひしゃげそうになってるんですけど。まず先にこいつを消すか?
………いや、やめておこう。めんどくさい。
「だって私の力を試す絶好のチャンスじゃないですか」
「だからってボスと戦うことないじゃない!」
次はラビがもう片方の腕を掴んでくる。
……邪魔だなぁ。
オークを見ると、こちらが向かってこないのをいいことにクイックイッと指を折り曲げて私に挑発してやがる。
――ブチッ!
私の中の何かがキレた。
「やってやろうじゃねぇかクソ豚野郎!」
おしとやかなキャラを忘れて叫ぶ。
「「ルナさーーん!!」」
◆◇◆
さっさと終わらすために一瞬で懐に潜り込む。
オークは私を引き剥がそうとするが、その前に腹を殴る。
「――セイッ!」
「グォ!?」
普通ならそんな事でオークにとってなんとも無いのだが、一瞬の時間差で腹が爆発して吹き飛ぶ。
ゼロ距離で爆発したので私も普通に熱かった。
【熟練度が一定値に到達しました。『全属性耐性Lv2』が『全属性耐性Lv3』になりました】
「……何だ、今のは」
今のは触れたものを爆発させる魔法で、普通ならば床を触って時間差で爆発させる罠なんだけど、魔力操作のおかげですぐに爆発させられた。
今のでオークも本気になったらしく、先程よりも濃い殺気を放つ。
大鉈を振りかぶってくるオークに光を放って目潰しを行う。
アンデッド系モンスターの私に光は痛いけど、我慢してオークの後ろに回り込み、後頭部に闇弾を放つ。
前のめりに倒れてる間に黒煙を周囲に撒き散らして真っ暗にする。
私は暗い場所でも見えるのでオークの動きは丸見えだ。
大鉈で煙を払うが遅い。
即座に死霊術で黒ゴブリン軍団を召喚して突撃させる。
オークは突然現れたゴブリンに困惑しながらも自慢の剛力と大鉈で真っ二つにしていく。
「このゴブリンは何処から!?」
「こいつら……ただのゴブリンじゃねぇぞ!」
うーん、外野がうるさい。
そうしている間にゴブリンの数が少なくなってくる。
「くらえ、必殺――爆☆殺ゾンビ!」
フハハハハハ! 芸術は爆発じゃあ!
オークに真っ二つにされ、周囲に散らばっていたゴブリンが膨張してオークとまだ生き残っているゴブリン、そして何故か私をまきこんで盛大な爆発をする。
耳をつんざくような爆音が鳴り響く。
爆発が効いてるのか全身がボロボロになっているオーク。……ついでに私も全身が焦げている。
自分の技で死にそうになるとかアホかっての。
オークは最後の力を振り絞って大鉈を私に向かって投げる。
だが、そんな分かりやすい攻撃に当たる私ではない。半身で避けて止めを刺そうとするが………
「キャァ!」
後ろから声がした。
………ん? 後ろから?
――ヤバい!
素早く回り込んでラビの前に立って大鉈を直撃で受け止めるが、脳筋の放った攻撃に耐えられるはずも無く、私は死んだ。
【死亡を確認しました。器の再構築を開始します】
【『物理耐性Lv3』が『物理耐性Lv4』になりました】
【『斬撃耐性Lv3』が『斬撃耐性Lv4』になりました】
【『打撃耐性Lv2』が『打撃耐性Lv3』になりました】
【器の再構築に成功しました】
別に助けなくても私に何も問題なんて無いけど、目の前で死なれると目覚めが悪くなる。
ただそれだけなんだから勘違いしないでよね!
「グォオオアァ!!」
「――うるせぇ!」
まだやる気らしいオークを風の刃で千切りにする。
【経験値が一定値に到達しました。『リッチLv2』が『リッチLv3』になりました】
【『リッチLv3』が『リッチLv4』になりました】
【『リッチLv4』が『リッチLv5』になりました】
【熟練度が一定値に到達しました。『鑑定Lv4』が『鑑定Lv5』になりました。『鑑定』のレベルが最大になりました】
【『敏捷Lv7』が『敏捷Lv8』になりました】
【『恐怖耐性Lv3』が『恐怖耐性Lv4』になりました】
よし、やっと鑑定が最大になった。
……にしても、ここのボスはあまり強い感じがしなかったな。
いや、筋力面で言うと凄いんだけど。私も一撃で死んじゃったし。
………さて、本当に面倒なのはこのあとだぞ。
「……ルナさん――いえ、ルーナ。貴女はいったい何なの?」
……ほらね?
全然進まずにこんな時間になってしまった。
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