自己紹介
「早く出てきなさい!」
ヤバい、本当にどうしよう。
「………なぁ、魔物に言葉が分かるのか?」
「分からなくても音には反応するわよ」
……待てよ?
今の私は普通の女に見えるはずだから、ワンチャンバレない可能性もあるかも。
相手が鑑定を持ってたら詰むけどね。
――よし、覚悟を決めよう。
「待ってください。害は無いです」
両手を挙げて静かにニ人の前に出る。
「……女性? それに若いわね」
お? 私が若いとかお姉さん良い目してるねぇ。
「うーん、どう見ても人だな」
「貴女はどうしてこんな場所に?」
「実は……私は友人達と冒険をしていたのですが、第一層のボス戦ではぐれてしまったのです」
全くもって嘘なんだけどね。
「じゃあなんで第三層に?」
「友人は今の私よりも強いので、第二層に行ってるのでは? と思ったのですが、第二層のボスが居なかったので第三層に来てしまったのでは? と考えてここにきてました」
くどいけど嘘だよ。
「………確かに第二層のボスが居なかったもんな。だけど、その話が本当だったらお前さんの友人は一人でボスを倒せる実力を持ってることになる」
「私の友人は強いですよ。なので第四層まで行っててもおかしくないです」
ニ人は後ろを向いてコソコソと話し始める。
おっと、突然の疎外感。
「………おい、どう思う?」
「まだ信じられないけど、本当に害は無さそうね」
「本当に敵なら会った瞬間に襲うだろうしな」
おーい、思いっきり聞こえてますよぉ。
「………あの?」
「あぁ、ごめんなさい。………ねぇ、もし良ければなんだけど、貴女の友人が見つかるまで一緒に行動しない?」
「――え?」
「そうだな、一人だと危険も増すだろうし一緒にいたほうが安全に友人を探せるだろう」
「――は?」
……何言ってんだこいつら。
知らない人の探し人を共に探してくれるとか、お人好しにも程があるだろ。
「……でもお邪魔だと思うので――」
「大丈夫よ。………本音を言うとね、こいつとニ人だけだとこの先キツかったのよ」
確かに、女性のほうは見るからに盗賊系の職をやっている装備だった。……いやぁ装備が薄いからエロいね!
男性のほうは大剣を担いでいるので、アタッカー兼タンクをやっていそうだった。めっちゃゴツい装備だし。
パーティーのバランスで言ったら余り良いとは言えない組み合わせだった。普通はこのニ人とヒーラーか聖職者、それと魔法使いが入る組み合わせなんだけど、途中で死んだのだろうか?
………ご愁傷さまです。
まだそうと決まったわけじゃないけどね。
「そういう事なら分かりました。短い間ですがよろしくお願いします」
お辞儀をしてほほえむ。
だけど、内心は愚痴りたい気持ちでいっぱいだよ。
面倒くさい事になっちゃったな。
◆◇◆
これから共に行動するのだから自己紹介をしようという事になっていた。
私は鑑定があるからそんなの要らないんだけどね。
「じゃあ私からね。
私はラビよ。パーティーでの役割はシーフね」
シーフは盗賊スキルを使う。敵の探索とか短剣を使った軽やかな戦闘を得意としている。
「だから、火力としては役に立たないけど他のとこでカバーするわ。ここに居る奴とは長い付き合いでコンビネーションは期待してね。よろしく!」
「はい、よろしくお願いします」
こっそりと鑑定を使って調べる。
『シーフLv32 名前:ラビ
ステータス
HP:357/357
MP:56/56
筋力:123
魔力:88
物理耐性:120
・斬撃耐性:114
・打撃耐性:103
・刺突耐性:112
魔法耐性:98
・炎耐性:63
・水耐性:63
・風耐性:108
・聖耐性:84
・闇耐性:60
敏捷:400
スキル
『身体能力上昇Lv5』『敏捷Lv6』『探知Lv1』『短剣技Lv4』『束縛Lv2』『危険察知Lv2』 』
うん、シーフってこんな感じだよね。
人は進化しないかわりにレベル上限が100になっている。
案の定、速さ特化の良いステータス値で、この人はまだまだ伸びるから頑張ってほしいものだ。
「じゃあ次は俺だな。
俺はガビルってんだ。役職はタンク六割のアタッカー四割ってところだな。見た目の通り頑丈だからどんどん盾に使ってくれよ!」
「こいつに指示を出さないと、ちゃんと動けないくらいの脳筋だから積極的に命令するのをオススメするわよ」
「指示されたほうが動きやすいんだよ」
なるほど見た目通りの脳筋なのか。人の特徴って装備を見たらわかりやすいよね。
それではステータスをコソッと拝見。
『タンクLv40 名前:ガビル
ステータス
HP:737/737
MP:12/12
筋力:699
魔力:10
物理耐性:565
・斬撃耐性:500
・打撃耐性:500
・刺突耐性:500
魔法耐性:321
・炎耐性:222
・水耐性:314
・風耐性:333
・聖耐性:300
・闇耐性:297
敏捷:136
スキル
『物理耐性Lv5』『筋力Lv7』『腕力Lv6』『斬撃耐性Lv4』『打撃耐性Lv4』『刺突耐性Lv4』『HP上昇Lv3』『全属性耐性Lv1』 』
ステータス値でも脳筋だったな。
あとタンクだから仕方が無いけど私より色々な耐性が高いのムカつく。
……というか普通の人のステータスとして見たら、Lv40でこれは強いほうだよね。
さぁ、私の番だ。
「じゃあ私の番ですね。
私はルナといいます。気軽に呼び捨てで読んでください」
ルーナではないのは身元バレしない為なんだけど、ルーナとルナじゃバレるかな?
「ルナか、どこかで聞いた気がするけど……気のせいよね」
――セーフ!
「職は装備を見れば分かると思いますが、一応魔法使いです」
「……一応?」
「私は遠くからチマチマ攻撃するのが嫌いなんです。私の戦闘スタイルは近接戦闘型の魔法使いと覚えてください。火力については自信あります」
「………随分と珍しい戦い方ね」
「普通の魔法使いはやらないでしょうね」
だからってそれだけは譲れない。魔法使いだからって後衛に下げられたら後ろからブッパしてやる。
それに私は魔法使いではなく魔女だから何でもありなのだ。
「何か質問などあれば、どうぞ」
「さっき、友人は今の私より強いって言ってたけど、ルナは力の制限でもしているの?」
――チッ、記憶力が良い奴は嫌いだ。
「……実は、昔に信頼する者に裏切られたのです。その時の傷がいつまでも癒えずに充分な力を発揮出来なくなってしまって………」
マルギンに裏切られて死んで、最弱クラスのアンデッドになって魔女の時の力を充分に発揮出来ない。
………うん、嘘ではない。
「………そうだったの、悪いわね嫌な事聞いちゃって」
「いえ、今はなんとか戦えるくらいまで戻って来たので大丈夫です」
「ちなみに聞くが、全力の時と比べて今はどのくらい出せるんだ?」
えー、今の魔力は……2535? また少し上がってるのね。
全盛期は1万5千だったから、六分の一?
「約六分の一ですね」
「………そう」
めっちゃ微妙な顔をされた。
そりゃね、あんたからしたら自慢の敏捷400が約66になるんだからね、使えねぇと思われてもおかしくないだろうよ。
なんかいらない子認定された気がしてムカつく。
「………うーん、それでは実際に戦う所を見せたほうが、どのくらい戦えるか分かりやすいですかね」
「………え、えぇ……そうね。それじゃあ見せてもらおうかしら」
ええ、ド派手にやってやるよ。
こいつらの驚く顔が楽しみだ。
ルーナが敬語って違和感。




