ゴミ? いえ、神です
私って蘇ってから鬼ごっこが得意になった気がする。
うん、そのくらい敵から逃げてるよね。
第一層のゴブリン軍団との鬼ごっこの時に思った人もいるかもしれない。
――なんで雑魚モンスターのゴブリンから逃げてんだ? と。
確かにゴブリンは雑魚ですよ。雑魚中の雑魚と言っても間違いではないでしょうね。
そしてこれは前に言ったな。
『ゴブリン』『ゴブリン』『ゴブリン』『ゴブリン』『ホブゴブリン』『ゴブリン』『ゴブリン』『ゴブリンシャーマン』『ゴブリンメイジ』『ゴブリン』『ゴブリン』『ホブゴブリン』『ゴブリン』『ゴブリン』『ホブゴブリン』『ホブゴブリン』『ホブゴブリン』『ゴブリンメイジ』『ゴブリンシャーマン』『ゴブリンクイーン』『ゴブリンキング』
【熟練度が一定値に到達しました。『探知Lv3』が『探知Lv4』になりました】
――数が多すぎるんだよ! なんでこいつらこんなに群れてるんだよ!
フルボッコか圧死で死にますってマジで。
……あ、ちなみに敏捷と身体能力上昇のスキルがニずつ上がったよ。
やったね! ………じゃねぇよ!
逆に考えればそれだけ鬼ごっこしてるってことになる。
ゴブリン達も息を切らして重い武器とかを投げ捨ててるもん。
………ん? 武器を投げ捨ててる?
これは、もしかしたらイケるかも。
試しに炎魔法で一番簡単な『火球』を振り向きながら撃ってみる。もちろん魔力操作で通路を包むくらいの大きさにしながら。
そうしたらゴブリン軍団は私のいきなりの反撃に対応出来ずに前列部隊が焼け死ぬ。
………お?
例の死霊術も使ってみる。
……と言っても使い方が分からないので「とりあえずなんかなれ!」というめちゃくちゃな言葉になったが。
そこで一瞬の躊躇いを見せるゴブリンは勇気を振り絞って焼け死んでいるゴブリンを飛び越え、こちら側に来ようとしたら爆ぜた。
生きてるゴブリンが、ではない。
私の『火球』で死んだゴブリン達全員が、盛大な爆発音と共に凄まじい爆発をした。
さらに爆発で死んだゴブリンも同じく爆発をして二次災害を生んでいる。
【熟練度が一定値に到達しました。『死霊術Lv1』が『死霊術Lv2』になりました】
「え? 魂に干渉するってこういう事なの? うっわぁ……」
流石の私でも引くわ。
だって、死体を利用して攻撃するとか昔話で出てくる魔女とか悪役のやる事じゃん。
あ、私、魔女だし悪役でした。
………じゃあ、やっちゃっていいかな?
イイトモー。
よっしゃあ。やったるでぇ!
次は私が殺した敵を召喚してみる。
対象はついさっき殺したゴブリン達でいいでしょ。
「死の世界より蘇り、私を守りたまえ――召喚・ゴブリン」
目の前に黒い穴が出来る。
―――ゥァアァアアア。
……なにこの不気味なうめき声、怖いんですけど。
おお、穴からゴブリン出てき――って黒! なんでこんなに黒くなってるんだお前らは!?
やがて八体のゴブリンが出てきたが、全員が黒く変色して立っていた。
なんでこいつら動かないの? まさか命令しなきゃ動けない感じなの?
いちいち命令するの面倒くせぇなちくしょう。
「……とりあえず、やっちゃってくださーい」
―――ガァアアァアアア!!
黒ゴブリンが生きてるゴブリンに獣のような雄叫びで突っ込んで殺していく。
……普通にホラーだった。
【新たな称号『非道』を取得しました】
ヤバそうな称号取得できました。
ワーイ嬉しくない。
◆◇◆
黒ゴブリンは役目を終えると灰になって消滅していき、目の前には無残に引き裂かれた元ゴブリン軍団が残った。
中にはゴブリンキングがいた気がするんだけど、黒ゴブリンは強化されていたのか簡単に全滅させてしまった。
あっけ無い結末に拍子抜けした私は蜘蛛野郎の所に戻っていた。
それはまだやり残していた事があるから。
――そう! 蜘蛛野郎に守られていた財宝が入ってる宝箱を開封していない!
という事で、早速開けていきましょうかね。
何が出るかなぁ、やっぱり金になる物がいいよねぇ。一番それが『宝』って感じするし。
箱を開ける。すると眩しい光が漏れだしたので目を瞑って慣れるまで待つ。
少しだけドキドキワクワクしながら中身を見ると、一つの指輪があった。
―――はぁあああああ!?
指輪!? 財宝じゃないんかい!
ひとまず鑑定で指輪を調べる。
『魔装の指輪:装備者が思う服を自在に作ることができる。魔装には装備者の魔力と魔法耐性を上げる副効果もある』
――サーセンっしたぁ!
私は反射的にその場で土下座する。
ゴミかと思ったらまさかの神指輪でした。
指に嵌めて早速念じる。
やっぱり魔女っぽい服がいい。そして動きやすさ重視な軽い装備がベスト。
突如、体が何かに触れる感触がする。
恐る恐る目を開け体を見ると、望んだ通りの服がサイズピッタリで出来ていた。
魔女っぽい黒くて軽いローブに、無駄な部分を除いた上半身に動きやすいスカートと女性に優しい動き回れるスパッツ。軽さも申し分無い。
さらに………
【装備品の効果により『魔力強化Lv1』が『魔力強化Lv2』になりました】
【『MP上昇Lv1』が『MP上昇Lv2』になりました】
【『全属性耐性Lv1』が『全属性耐性Lv2』になりました】
【『全属性強化Lv1』が『全属性強化Lv2』になりました】
【『魔法耐性Lv3』が『魔法耐性Lv4』になりました】
「最高かっ!」
◆◇◆
――ルンッルンッ♪
あ、どうもルーナです。
予想外の神指輪を手に入れた私は一気に第三層を攻略しています。
ここの敵は素早いモンスターが多いですね。まぁ、私の速さについてこれる奴は居ないから楽勝なんですけどね。
それに戦闘中にLv2になったんです。
順調に進められていて嬉しい限りですね!
………ですが、そんな私に凄く難関な問題が降りかかろうとしています。
正直言ってヤヴァイです。
もうルーナちゃんは泣きたくなります。えーんえーん。………はい、ふざけるのやめます。
――それで一体何がヤヴァイのかって?
それはですね………
「おいラビ、そろそろ第三層のボスに近そうだ。気を引き締めて行けよ」
「そんな事わかってるわよ、前方に敵はまだ居ないわ。もう少し進んでみましょう」
「三層の敵は素早いのが多いからな、突然影から襲ってこないように警戒しよう」
「ちゃんと後ろにも警戒しててね」
「了解」
はい。もうお分かりですよね?
――人間居るやん! どうしよう!?
私がリッチってバレたらヤバい! しかも第三層までニ人で来てるってことは相当な手練なんじゃない?
―――ジャリ。
あ、ヤベ。
「―――っ! 誰!?」
「なんだ、敵か?」
「………ここに敵以外居ないでしょ。構えて」
いやぁー! 私のお馬鹿ちゃん!
「早く出てきなさい!」
お姉さんが武器を構えて音がした方、私の方を注意深く向いている。
男性の方は今にもこちらに突っ込んできそうだ。
ここから逃げるとしても走り出したら音が鳴ってバレる。
………誰か助けてください。
ルーナは人間2人になにをやらかすのか、楽しみですねぇ。




