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すみません、遅くなりました。

復活した私は女気付けば神像の広場に居た。予想通り此処がリスポーンポイントだったようだ。


《デスペナルティが発生しました。これより168時間の間一時的に全ての能力が初期化されます。※初回は免除。》



長い!デスペナルティはそれなりに重いだろうとは思っていたが、まさか1週間も能力を制限されるとは思わなかった。

しかも初期化というのがエグい。今はまだ影響は少ないだろうが、先に進むほどプレイに影響が出てしまうペナルティだ。

今回は初回という事で免除されるようだが、出来る事なら初回の免除はもっと重要な局面で使いたかった。



《リミットオーバーによる後遺症が発生しました。これより72時間の間全てのステータスが半減し、自然回復力が低下します。》


そういえばこっちもあった!むしろ今の私にはこっちのペナルティの方がキツいのだが、残念ながらこちらは初回免除のようなサービスはしてくれないらしい。

リスクを覚悟の上で自分で選択したのだから当たり前ではあるのだけど、ただでさえ低い身体能力がさらに下がってしまった。


現状を把握するために少し走ってみると、恐ろしいことに10メートルも進まないうちに息切れしてしまった。これではリアル世界での私の方がまだマシかもしれない。

一応、ダメージと一緒に魔力も回復しているようだが、やはりこちらも本来よりも総量が低下している。

薄々解ってはいたが、リミットオーバーの後遺症が治るまで戦闘は無理そうだ。


《イツキさんからの通信をキャッチしました。接続しますか?》


私があれこれ考えているうちに向こうの戦闘が終わったらしい。元々頃合いを見て連絡はするつもりだったが、向こうから連絡してくれたのなら話は早い。

私はすぐに《はい》を選択しイツキとの通信を繋いだ。


『ちーちゃん、そっちは大丈夫?』


第一声で聞こえて来たのはこちらを心配する声だった。気持ちは嬉しいのだが、私がまず聞きたいのは別の事だ。


「そんなことよりブラッディベアはどうなった?」


『そうだ!ちーちゃん、あの時何をしたの?あの後熊さんが急に動き悪くなっちゃって簡単に倒せちゃったんだけど?』


私の質問にイツキは少し不満そうに答える。

私的には自分で倒してやるくらいの気持ちであの魔法を放ったのだが、どうやら攻撃魔法としては機能してくれなかったらしい。

イツキの話を聞く限りあの魔法はデバフ…ブラッディベアを弱体化させる効果を発揮したようだ。

闇魔法は扱いが難しいという話は聞いていたが、もしかしたら妨害専門で攻撃能力がほとんどないのかもしれない。


とは言え、弱体化させる魔法はそれはそれで有用だ。

あの時無我夢中で魔法を放ってしまったから再現は難しいとは思うが、何とか自分の物にしないとな…。



「イツキ、リミットオーバーの後遺症は大丈夫なのか?」


次に確認したのは二人の状態だ。

ブラッディベアは何とか討伐し素材も入手出来たらしい。

だが、もし私と同じ状態になっているのなら、自力で戻ってくるのは難しいのでは無いだろうか?


『あ、やっぱちーちゃんも使ったんだ?私もお兄ちゃんもヘロヘロになっちゃって大変なんだけど、クーシーちゃんが町まで送ってくれるって!』


やはり二人が発動していたのもリミットオーバーだったようだ。

私と同じように後遺症の影響でブラウンウルフに勝てるかどうかも怪しい状態らしいが、幸運な事に今回はクーシーのお陰で何とか大丈夫そうだ。


『でも体力的に厳しいから私達は今日はこっちでログアウトするよ。私がいなくてさみしいかもだけど、我慢してね?』


「了解だ、クーシーに迷惑かけるなよ?」


『もう!少しはさみしがってよ!』


私にそんな萌えキャラみたいな反応を期待されても困る。

プリプリと怒るイツキを適当に宥めつつ、私は通信を切った。

心配していたリミットオーバーの後遺症で二人が帰ってこれなくなるという事態は一応回避できた。

クーシーに色々と面倒をかけるのは心苦しいが、まずは先に自分の心配をしなければいけない。


そもそもフェイトクエストをクリアするためにブラッディベアに挑んだわけだが、果たして途中で離脱してクリア扱いにしてもらえるのだろうか?


あくまでも予想ではあるが、恐らくは私だけ失敗扱いになるだろう。

ブラッディベア討伐の報酬の方は二人が倒したから普通に貰えるだろうが、フェイトクエストの条件はモンスターの討伐ではなく職員に認められることだ。

普通に考えるのなら、相手が何であれ途中離脱した人間は認められないはずだ。


私だけ出遅れるのはなんとか避けたいのだが、厄介なことに今はリミットオーバーの後遺症がある。

この状態でクリア出来るクエストがあるのか心配ではあるが、確認の為にもまずはギルドに行ってみる必要がある。



(偶然偉い人が私の頑張りを見てて合格!とか、そんな都合の良い展開にでもなれば良いのに…)



そんな感じのバカな願望を交えつつ、何とか重い体を奮い起たせてギルドの受け付けに行ったのだが、結果はやはり予想通りのものだった。



「確かにブラッディベア討伐を受注している方達はいらっしゃいますが、貴女の名前はそこに登録されていませんね。」


流石に受注したこと自体が無かったことにされている事には驚いたが、受付のお姉さんの話ではクエスト関連の書類は女神達の力を借りた特別な処理が施されているらしく、クエストの途中で逃亡や離脱をした者は自動的に受注登録が抹消される仕様になっているらしい。

家に帰るまでが遠足だとはよく言うが、このゲームでは生還して報告するまでがクエストと言うことのようだ。


そういえばあれだけの大物を相手したというのにほとんど称号が増えていない。もしかすると、生還して初めて手柄になるという仕様は称号関連でも同じなのかも知れない。

その辺りについても、後でイツキやアニキに確認した方が良さそうだ。




続いて私はクエストボードへと向かった。

失敗してしまった以上、何か新しいクエストを探さなければいけない。

二人に遅れをとらないようになるべく短時間で終る依頼が良いのだが、そういう依頼は主に戦闘関連の物ばかりのようだ。

戦闘以外のクエストも色々と種類はあるのだが、どれも時間がかかりそうな物がほとんどなのだ。

まず生産系のクエストはこのゲームの傾向を考えると絶対に時間がかかるだろう。生産技能自体には興味あるのだが、今はまだ時間がない。

次にギルドの手伝いなどの雑用系の依頼だが、これ等はハッキリと一定期間労働する必要があると記載されていた。

労働時間は長くないし、安全で日払いの賃金が出るのは魅力的だが、短くても1週間は此処に残らねばならなくなる。

他にもクエスト自体は沢山あるのだが、今の私が短時間でこなせそうなものはほとんどない。

こうなってくると、自然と選択肢は狭まってくる。


「やっぱり納品系のクエストしかないか…」


戦えない、時間がないとなれば、もう即物的な手段に出るしかない。

ブラウンベアやブラウンウルフの素材の納品クエストがあれば話は早かったのだが、残念ながら納品クエストに必要な品物は珍しい物ばかりらしく、1つも入手している物はなかった。

こうなると普通は対象の物品を狩ったり採ったりしに行かなければいけないのだが、後遺症の影響がある私にはそれができない。

だが、何らかの方法で他者から品物を譲って貰うことが出来れば、それを納品してクリアすることが可能なはずだ。

少しインチキっぽい気がしなくもないが、本登録の権利は金で入手することも出来るらしいから問題は無いはずだ。

色々調べている中で知ったのだが、ギルドが定めた正当な手段の1つとして献金による登録許可は存在している。

その金額はなんと金貨10枚!資金力も実力のうちという事らしい。


私達一般のプレイヤーからすれば、どう考えても大人しく他のクエストをやった方が賢い選択ではある。

だが、この選択肢の存在は、品物さえ用意できれば手段は問わないと言う風にも捉えられないだろうか?


勿論、泥棒や詐欺師みたいな真似はしない。

あくまでも真っ当な方法で誰かから調達し、交渉力という形で実力を認めてもらうのだ。


出来れば使いたくはないが、ブラッディベアの素材という交換材料もあるにはある。


一歩先に進んでしまった二人に追い付くため、私は早速行動を開始した。

まだまだ続きそうな雰囲気出してますが、あと数話で終る予定です。


ノープランで始めた小説ですが書いてるうちに色々浮かんで来たので、後日改めて設定を練った改良版を作りたいと思います。

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