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《ブラウンウルフの毛皮》

品質未鑑定

草原や森に生息するブラウンウルフの毛皮。

一般的に出回っている毛皮と強度はさほど変わらず、手触りも少しゴワゴワしている。

基本的に価値は低い。


《ブラウンウルフの牙》

品質未鑑定

草原や森に生息するブラウンウルフの牙。

大型の肉食獣に比べれば小さいが、それでも強度はそれなりにある為、武器の強化や装飾品等にも使われている。


障気に感染しているせいか、4匹は逃げずに向かってきたが何とか倒すことができた。

障気が馴染み禍獣化し始めると素材も変質すると資料には書かれていたから、普通の素材を落としたこの4匹はまだ感染して間もないはずだ。


「コイツらが来た方角に向かえば、一気にボスに近付けるかも!」


「確かにそうかもしれんが、大丈夫なのか?」


テンションを上げるイツキとは対称的に、アニキは少し不安そうだ。

確かに、このウルフ達の来た方に向かえばブラッディベアには近付けるだろう。だが、同時に凶暴化した動物達に襲われる頻度も上がるはずだ。


「そんなの全部経験値に変えてやれば良いんだよ!」


ハイテンションにイツキが即答する。

言い方はバカっぽいが、確かにイツキの言う通り目的が凶暴化の原因そのものである以上、どうあがいても戦うしかない。

だが、今のままでは増加する敵の攻撃に耐えられるかは正直怪しい。さっき4匹を相手にした時も、アニキが私を庇って噛まれそうになっていた。


「チバ、どうする?あまり敵が増えると守りきれなくなるぞ?」


アニキが心配そうにこちらを見る。敵が増えて一番危ないのは、自衛する能力が低い私だ。


「…行ってみようアニキ。少し試してみたい事もあるしな。」


正直悩む質問だった。だが、少し怖かったが私は進むことに決めた。いい加減私だってやればできる所を見せないと!



『称号《魔力の使い手》を獲得しました。』


『技能《属性変換・闇》を獲得しました。』



どうしても力が足りないのなら、そこから何とか成長するしかない。

最初から《闇の心得》があるのなら、闇属性は自力で何とかなるはずと考えたのだが、本当に修得できて良かった。


森の奥は予想以上に敵が多く、大型の敵も出るようになってきたから全く油断できない。


「熊まで来たか、俺達は先に狼を片付けるぞ!」


「ちーちゃん、足止めよろしく!」


目の前に現れたのは数匹のブラウンウルフを従えたブラウンベア。障気に感染した獣達がダラダラ涎を垂らしながら唸り声を上げる姿は脅威そのものだ。

魔見眼で魔力を見てみると、障気が混じるどころか完全に変質し、全ての魔力がドス黒い色に変化している。どうやら禍獣化し始めている個体のようだ。


体長が2メートル近くあるブラウンベアは元から強敵なのだが、今回の相手はさらに手強そうだ。

乱戦状態でこの熊を相手にするのは確かに不味い、私は気を引き締めて魔力を練り上げる。


「暗く深い闇に閉ざせ……夜雀!」


突き出した右手に集めた魔力が私の声に呼応するように闇の塊へと変化し、そこからさらに小鳥を形作り敵へと飛び立つ。

飛び立った鳥達はブラウンベアが振り回す腕をすり抜け、その顔面に到達すると再び闇に戻り視界を黒く塗り潰す。


「流石ちーちゃん、カッコイイ!」


「うるさいちーちゃん言うな!良いから集中しろ!」


視界を封じられ暴れる熊に注意しつつ、こちらを茶化すイツキに怒鳴り返す。

私だって別に好きであんな格好つけたセリフを言った訳ではない、ああやってイメージを言葉にした方が魔法の成功率や効果が高いのだ。


これは属性魔法を使うために色々試していて解ったことなのだが、どうやらこの世界で言葉が魔法に与える影響はかなり大きいようだ。

無言では必死にイメージしても中々闇に変換できなかったのだが、言葉にしたらすぐに変化の兆候が見られた。

そこからさらに試行錯誤した結果、どうやら魔力を練り上げながら発した言葉は、それだけで呪文のような物になる事が解った。

無論ただ言葉を発すれば良いと言うわけでは無い。より適切で相応しい言葉を選んだ方が効果が高くなり、不適切な言葉を選ぶと一気に魔力が霧散する程の悪影響がある。

それらの結果を元に私が作ったのが、この闇魔法《夜雀》だ。

最初はダークとかブラインドとか適当な感じでやっていたのだが、面白半分で暗闇の妖怪の名前を使ってみたら、劇的に効果が上がったのだ。


「ガァァァッ!!」


ブラウンベアが闇を振りほどこうと暴れるが、闇はまるで張り付いたかのように頭から離れない。

これも色々試していて解ったことなのだが、魔力弾のように完全に自分から切り離してしまうと短時間しか効果がない。

だが、魔法に魔力の糸を繋げておくと、手元から離した後でもある程度制御出来るのだ。

この糸を通してブラウンベアに張り付いた闇にイメージと魔力を補強し続けることで、私は単独で敵を半無力化することに成功した。


もちろん、少しでも集中が切れると接続が切れてしまうから注意が必要だ。


「チバの魔法が続いているうちにさっさと片付けるぞ!」


「そうだね!それじゃあガンガンいこうよ、お兄ちゃん!」


我ながら劇的に進歩したと思うのだが、それを平然と超えてくるのがこの兄妹だ。


「パワースマッシュ!!」


「ビリビリサンダースピア!」


アニキがオーラのような物を纏った一撃でウルフの頭を潰し、イツキが電撃を纏った槍で同じくウルフを感電させる。

イツキが使ったのは私と同じく属性変換だが、彼女の場合は攻撃力が高そうな雷だ。例のごとく私のやり方を見聞きしただけで覚えたのだが、彼女の場合はさらに武器に纏わせる事に成功している。

そして、アニキが使ったのは魔法とは全く別の技能だ。

そのままパワースマッシュと言う技能らしいのだが、どうやら一撃の攻撃力を上げる効果があるようで、ウルフより屈強なブラウンベアを倒すために気合いを入れて殴ったら出来たそうだ。

私が見る限り確かに魔力を使っておらず、本人が言うには体力の減りが早くなったらしい。どうにも肉体系の技能っぽい。


「これでラストッ!」


「あとは熊さんだけだね!ちーちゃん、やっちゃっていいよ!」


元々二人とも強かったのだが、技能を身に付けてからはさらに磨きがかかっている。

あっという間にウルフを片付けると、さっそくこちらに次の手を催促してきた。


「消費がでかいからあんまり使いたく無いんだけどな…」


目潰しされた熊は闇雲に暴れて危ないから仕方無いのだが、個人的にこの魔法は好きじゃない。


「…魔角砲!」


私は扱えるギリギリの大量の魔力を練り上げる。


本来、個人が素手で扱える魔力量は多くない。

普通は掌に納まる魔力弾を作る程度の魔力が限度であり、それ以上の魔力を扱うには杖などの専用の魔力を留める媒体が必要になるのだが、魔呪族は違う。

魔呪族である私の場合、杖がなくても頭の二本角が魔力媒体になるのだ。


「準備はいいよちーちゃん!」


「いつでも行けるぞ!」


イツキの槍が雷を纏い、アニキがオーラのような物を発動したのを確認した私は、練り上げた魔力を自らの角に収束し、黒い魔力弾に変えて一気に放った。

魔角砲なんて名前はつけてみたが、実際のところは単なる大きい魔力弾なのだ。


「ガウッ!?」


とはいえ、通常の魔力弾数十発分の魔力を込めている。

致命傷には程遠いが、目が見えないブラウンベアの体勢を崩すくらいの威力はある。


「サンダースピアー!」


「パワースマッシュッ!!」


体勢を崩したブラウンベアの隙を突いた兄妹の一撃がそれぞれ急所である胸部と頭を捉え、禍獣化ブラウンベアは成す術もなく倒れるのだった。



《禍々しい熊毛皮》

品質未鑑定

完全に障気に犯されたブラウンベアの毛皮。

通常のブラウンベアの物よりも高い強度を持つが、まだ障気の影響が残っている。


《禍々しい狼牙》

品質未鑑定

完全に障気に犯されたブラウンウルフの牙。

通常のブラウンウルフの牙よりも大きく鋭くなっているが、まだ障気の影響が残っている。


一応浄化されてるはずなのに、何だか危なげなアイテムが取れてしまった。まだ本番の相手じゃないのにこの有り様とは、なんだか先が思いやられる展開だ。


「チバ、まだいけるか?」


「正直キツいかな、そろそろ休憩しないと魔力も心もとない…」


アニキの問いかけに私は正直に答えた。体力も大分消耗したらしく、体も重く感じる。

派手に使った割には余裕はある気はするが、魔力もかなり使ってしまったはずだ。

さっき二時間経過の通知があったから、帰りの事を考えると少し時間が厳しいが、一旦休憩して体勢を整えなければボスに挑むなんて到底無理だ。


「でもさ、どこで休憩するの?この場で休む訳じゃないよね?」


イツキのいう通り、木々や茂みに囲まれたこの場所で休むのは難しいものがある。こうも視界が悪いと、いつ敵に不意打ちされるか解らない。

せめてもう少し視界の開けた場所でなければ、まともに休むことは出来ないだろう。


「なら、さっきから水の匂いがしているから行ってみないか?…近くに泉か何かがあるかもしれない。」


狼の能力で察知したらしく、アニキがそんな提案をしてきた。


「水場か……」


確かに、もし泉があるのならば、此処よりも視界は開けているはずだ。水を飲みに来る獣に遭遇する可能性はあるだろうが、そんなのは今更だ。


だが、水場と言えば魔物が現れるという道具屋の話を思い出す。

もし魔物が出るのなら、ボスと戦う前にそんなのは相手にしたくないが、此処はゲーム内時間で二時間は歩かなければ辿り着けない場所だ。

近場の水場という話だったし、恐らくは違う場所の事だろう。


「そうだな。じゃあ、行ってみて休めそうなら、そこで休憩しよう。」


ほんの少し迷ったが、こうして私達は水場を目指して歩き出した。




地方の田舎育ちとはいえ、所詮私達は現代社会に甘やかされた日本人だ。

徒歩が中心の世界において、歩いて二時間は十分に近場の範疇だとは、この時の私達は全く考えもしなかった。


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