嫌な予感しかないです
「今月も、みんなおつかれさまでした。各自、お茶を1本ずつ貰ってから、解散して下さいね」
区長さんのご挨拶で、今日も、お掃除が終わります。
「トキちゃん。毎回ありがとね。若い人がいると、公園の草取りは早く終わってよいわね~」
はい。
本日は月一の区内にある公園清掃の日です。
ご近所付き合いは大事ですから。
「トキちゃんのお店はあまり人が来ないみたいだけど、大丈夫なのかい? 消費税が上がってから、この数年で市内の個人経営店は12店も閉店になったからね」
うちの三軒隣の柴原さんです。
たまに、畑で採れたお野菜をいただきます。とっても優しいおばあちゃんです。
「はい。大丈夫です。」
うちは、個人店に化けてる国家機関ですから、経営より安全第一が目標です。
昨日のような騒ぎは年内は二度と御免こうむりたいです。
「そうそう、トキちゃん、あなた知ってる? 3丁目の千枝さんの娘さんね、恵子ちゃんっていうんだけどね、恵子ちゃんのお嬢ちゃんがね、暫く静養しにいらっしゃるらしいの。18歳らしいから、トキちゃんと同じくらいね」
千枝さんとも掃除仲間です。でも、今日は当番ではないみたいですね。
「そうなんですね。田中千枝さんのお孫さんですか。この地域には同年代の方が少ないので、楽しみです」
ごめんなさい。
同年代なんて、申し訳ないです。
精神年齢は、ゆうに数千年?ぐらいでしょうか。
「お嬢ちゃんはね身体が弱くて、すぐに高熱を出してしまうんですって。だから、あまり、学校にも行けなかったらしいの。トキちゃんが、遊びに行ってあげたら、喜ぶんじゃないかしら」
「柴原さん、詳しいですね」
「恵子ちゃんは私の娘の幼馴染なのよ。ご近所さんだから、産まれた時からよーく知ってるわ。器量が良い子でね、二十歳でお嫁にいったんだけど、彼女も熱ばかり出してたの。体力的に子どもが授かれるかどうかわからないっていってらしたけど、妊娠してからピッタリと熱が出なくなったらしいの。母は強しっていうけどすごいわよね」
「・・・そうですか」
高熱に、いつの間にかピタリと治まる・・・ですか。
何か引っかかりますね。
それに、その方のお嬢さんがさらにひどい症状となると、尚、ですか。
「柴原さん。私、その方に是非お会いしたいです」
「あらあら、良かったわ~。千枝ちゃんが喜ぶわよ~」
うう~ん。なんか、とてつもなく嫌な予感がします。まぁ、全く嫌ではないんですが、きっとこれは「隠れ能力者」がいる予感です。うん。たぶん。
でも、それ以外の嫌な気が・・・何だろう?
隠れさんは、エターナルの管轄外なんですよ、ほんとは。
先日の件だって、うちにはよい迷惑なんですから。
もっと、「レッド」が積極的に活動してくれないと、本当に困っちゃいます。
うん? 「レッド」って、何? ですか。
「レッド」は国家機関ですよ。もちろん、一般市民は知りませんけどね。
先日の「突然突撃3人組」が今入っている厚生機関はレッドの管轄になります。
因みに厚生機関は「ヒヨコ」って呼ばれてます。
まぁ、名前はかわいいですが、厚生プログラムはえげつないとの評判です。二度と入りたくないってみなさんおっしゃいますね。
基礎は私がつくったんですが、途中からレッドに任せてるんで、一度内容を調査しないといけないかなとは思っているんですが、レッドの長官とはあまり会いたくないんですよね。
まぁ、いつか、行きましょう。いつかね。
今更なんですが、そもそも私、この世界の真理について、お話しをしていませんでしたね。
え~と、本当に、説明が面倒なんですが、この世界は別にSFやファンタジーの世界ではありませんよ。
みなさんが暮らしている日本であり、現実世界です。
でも、「能力者」が、とおっしゃるかもしれませんが、能力者はこの地球に誕生してから常に存在しています。あたりまえに。私たちの側に。
でも、知らない? そんなのファンタジー小説じゃあるまいし。
って、はい、その通りですよ。
知られないように、国家機関で規制していますから。
それに、能力がないと仮定するなら、そもそも能力がある人々を題材にした物語や童話がなぜ存在できるでしょうか?
昔の人が想像力豊かだった?
いえいえ。
人には、存在しないものを想像する力は、ありませんから。
人が誕生したその瞬間から能力者が生まれることはわかっていました。
そして、最初の能力者が生まれたその瞬間から、彼らはこの地球で保護されるべき最初の人類となったわけです。
え?彼らに権力者となって国を作ったりしてもらえばよかったんじゃないかって?
そんなことをしたら、争い事が火種になって、一瞬で地球が消えちゃいますよ。
それぐらい、彼らの力は桁違いなんですから。
ふ~、、、。
ええ。ほんのちょっとスパイスの量を間違えただけなんですけどね。
1gにも満たない量だったはず。
くっっ、あのとき、寝不足で手が震えさえしなければ・・・。
あ、いえ。こちらの話です。
で、話が戻りますが、太古から能力者はその力の制御を第一に教育して守られてきました。
権力者に操られないように、未開の時代には「私たち」が裏で支え、国が安定してきたら、国家機関の最重要項目にねじ込み、それでも、時代時代で国家に無理やり利用されそうになったときは、古代から続く裏の組織で未然に防いできたんです。
なので、現代のこの日本では、内閣府直属の庁「レッド」として存在する保護機関があり、エターナルはその保護機関おかかえの店というわけです。
ご理解いただけたでしょうか。
ん?他国にはないのかって?
ありましたよ。昔は。
今は、他国に関しては99.9%いません。
いなくなってから、60年ぐらいなんで、まだあと少し継続して調査はしていくみたいですけど。
あとは、日本も能力者の数が年々少なくはなっています。まぁ、血の濃さはいずれ薄れていくものですからね。
そういえば、昔、よからぬ団体が、血が薄くなるなら濃くすればよいじゃないって単純に能力者同士の結婚とか考えてくれてましたが、殲滅しておきました。
まったく、余計なことを考えてくれますよね。
どんだけ、私の苦労を水の泡にするんだか。
ええと、話が反れましたね。
だから、能力者は日本にしかないので、能力者の方の渡航は原則禁止となります。
禁止・・・、だったんですけどね、藤嶋様みたいな俳優などのお仕事をされていたら、そんなことも言えなくなってしまいますよね。
その場合は、レッドから監視要員を付けます。
隠密組がいますからね、あそこは。ちなみに、隠密組は裏組織とは別物です。
はぁ~~。隠密組の鍛錬が、また、面倒なんですよ、、、。
隠密組も「能力者」って決まっているんですが、毎回、新人教育はすごく効率悪いんですよ。
まずもって、下手に能力を持っているから、逃げようとするし、さぼるし。
年に1回の新人教育のたびに、地獄のような思いをさせて、プライドをメッタギリ?にしないとまともな訓練さえ出来ない始末。
こんなのレッドの中でやればいいのに、自分が行かないといけないという理不尽さ。
皆様も契約書は重箱の隅をつつくぐらいに読んだほうがいいですよ(涙目)。
さて、では田中さん家の周辺事情をリサーチしますかね。
えっと、まずは恵子さんの出生時あたりからかなぁ。
ああ、お腹すいた。今日のライオネルが買ってきたおやつは何だろう~。