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努力しすぎて最強になった青年の物語  作者: 早瀬六七
青年の回想と始まり
6/19

【第3話より】青年と対峙した王国騎士、末永く幸せに爆発した。

※この話は主人公とは別の視点の物語です。本編ではありませんので、本編を続けてお読みになる方はこのまま[次の話]を押して頂ければ幸いです。


 俺の名前はアランキー!

 ラーキレイス王国騎士団所属の従騎士(スクワイア)だぜ!

 俺は生まれてこの方、運がついてなかった時なんてなかった。


 俺は生まれこそ、王都東部に位置する農村地帯の小させえ村の農家出身だが、食うもんに困った事なんてなかった。

 他所の村が不作や魔物に食い荒らされるとかなんかで食うもんがない年でも、家の畑は毎年豊作ウッハウハだったぜ。

 しかも俺は昔っから顔が美形の上に、腕っ節も強かったもんだから、村の女の子たちがいつも俺を離さなかったぜ。

 そんな女の子たちを毎晩取っ替え引っ替え――っと、これ以上は言えねえな!


 俺が17になった時に、俺は村を出て、王都に一山当てることにした。

 取り巻きの女の子たちは、「行かないで!」とか「王都で成功したら必ず呼びに来てよね!」とか、そりゃあワンワン泣くわけよ。

 誰がこんな芋臭せえド田舎に戻ってくるかよってんだwww


「アーちゃん。体に気をつけてね。私ずっと待ってるからね」


 そう言ったのは、え~と、名前なんだっけ?

 あ~そうだそうだ。こいつ親がいねえから、俺が少し面倒見てやっただけで、懐きやがったんだった。

 まあ、とりあえず家が隣同士だから『幼馴染』って言うのか?

 隣って言っても馬がなきゃ行くのもダリィところだがなwww

 ってか、「ずっと待ってるからね」とか重いわ。マジないわ(笑)

 ブスは大人しく引っ込んどけって~の。



 そんなこんなで王都に来た俺は2年ぐらいは、その辺でナンパした女んところでヒモやってたんだがよ。

 さすがに毎日こうすることねえと暇で暇で死にそうだったから、楽して金が貰えて、そんで名声もついてくる王国騎士団の入団試験を冷やかし程度に受けたんだよ。


 ぶっちゃけ超楽勝だったわwww


 試験内容が王国憲章を全て書き出せっつうやつだったんが、もちろん俺がわかるはずがねえよな。

 でも超幸運なことに、試験の担当の王国騎士ってのが、俺がヒモやってたときの女だったwww

 後は書かなくてもわかるよな?



 男の王国騎士ってのはぶっちゃけめちゃくちゃモテる。

 高給取りだし、国民からの信頼度がめちゃくちゃ高けえもんだから、俺が王国騎士ってことを言えば、身持ちが堅いやつじゃなきゃ、釣れないことはなかった。


 しかも俺の配属されたところは情報室ってところで、定期的に上が食いつきそうなネタを仕入れれば、訓練サボろうが、日中から遊び歩こうが、解雇どころか文句も言われねえっていう、まさに俺の理想の部署だった。

 ネタなんて女と一夜過ごせば大体手に入るしなwww



 まさに天職と来たわコレとか思ってたら、一年なんてあっという間だったわ。

 それで今年も入団試験の時期が来たわけよ。

 どうやら今年は、国中で『細切れ』とか『人間災害』とかって言われて噂になってる、え、え、エフ……まあ野郎の名前なんてどうでもいいか。

 まあそいつが入団試験受けるってことで、俺たち王国騎士の中でも話題になっていたわけ。

 そんで噂通り、そいつが試験当日受けに来た。

 実物見てみたけど、まだチ◯コに毛も生えてなさそうなガキンチョで、ビビってるやつらを見てたら、マジ笑えたwww


 だけどよ~。そいつ見た目と反してマジでヤバイ奴だった。

 ハンサムで長身の俺よりでけえ筋肉むきむきのヒゲおやじが、あいつに押されただけで、お星様☆になったのを俺は見ちまったわけ。

 マジビビったわ。こんな化物が世の中にいるんだなって、超珍しく俺が関心したぐらいだもん。




 そんで試験が始まったわけよ。

 そしたら騎士団長のおっさんがなんて言ったわかる?

 王国騎士と受験者の一対一の対戦形式で試験を組むとか言い始めやがった。

 マジで意味わかんねよな!


 ま、超幸運の星の下で生まれた俺様には関係ない話なんだけどな。

 アハハハハハハハ!



「アランキー!アランキー従騎士!」


 あん?誰だ俺のことを呼んでるクソは。


「いないのかアランキー従騎士!」

「はっ! 失礼致しました! 私がアランキー従騎士であります!」


 あ、敬語使ってんのは時と場所と自分の立場をわきまえてるからだぜ。

 変に目を付けられても嫌だからな。

 これも処世術ってやつよ!


「呼んだらさっさと来んか馬鹿者!」

「はっ! 申し訳ございませんでした!」


 チッ死ねよおっさんが。

 はいはい。それで何のようですか?


「貴様が対戦する受験者の名前をこれより告げるぞ」


 は? 何言ってるのこいつ?


「質問をよろしいでしょうか?」

「なんだ? 言ってみろ」

「はっ! おそれながら私は情報室所属なのですが、よろしいのでしょうか?」

「問題ない。配属1~2年の若手が今回無作為に指名されることになっている。部署は関係ない。なお、異論は認めん」

「はっ! 了解致しました! 出過ぎた質問失礼いたしました!」


 ったく、たりいな。まっ、これも新入騎士の努めってやつですかね。


「では、貴様の対戦する相手を発表する」


 はいはい。ちゃっちゃっと済ませてくださいよ。

 どうせ勝っても負けても俺には関係がな――


「受験者番号48番! エフトがお前の対戦相手だ。良かったな! 大当たりだぞ!」


 は? え? 今こいつなんて言った?

 俺が混乱していると、回りにいた同僚が、一斉に歓喜の声を上げ始めた。


「よっしゃああああああ! 生き残ったああああ!」

「ああ、神様仏様王様魔王様。もう誰でもいいけど、ありがとおおおお!」

「死亡ルート回避キタ━(゜∀゜)━!」


 おい!

 おい!

 おい!

 おいおいおいおいおいおいおいおいおい!


「どういうことなんだよおおおおおおお!」


 その日、俺は生まれて初めて、『大外れ』を引いちまった。






 怖い!

 恐い!

 コワい!

 俺は控室の椅子に座りながら、ガタガタと全身を震えさせた。

 止めたくても止まらない。

 膝の震えを止めよう手を当てたらその手が震えている。

 背中の悪寒を止めようと背筋を伸ばすと歯がカチカチと音を鳴らす。

 試験は受付順に進められ、俺の相手である『細切れ』は48番目。

 つまりは、一番最後。

 俺はまるで死刑執行を待つ囚人のように、自分の番が来ないでくれて、来ないわけがないことは頭ではわかっていたが、願っていた。


 死刑宣告を受けて、俺はすぐにでも逃げ出そうとした。

 だが、逃げ出そうとした時には、同僚の男たちに逃げ道を防がれていた。

 俺がいくら腕っ節が強くても、王国騎士が10人もいたら勝てるはずもねえ。

 入り口や俺の両脇で待機している奴らは、俺が逃げ出そうものなら、斬り殺してでも試合の場に引きずってやるといった感じで、殺気立ってやがる。

 俺にもう逃げ場はない。

 俺は刻一刻とすぎる時間を体を震わせて待っていた。

 もし、俺の幸運がまた戻ってきてくれるならと思い、俺は全身甲冑(フルプレートアーマー)を着込んだ。

 でも、そんなもんは、意味がねえことぐらいは知っている。

 だてに情報室で1年働いてねえんだ。

 『細切れ』がどんだけヤバイ奴かぐらい嫌ってほど聞いた。

 そして、今日、その噂の『根拠』を目の当たりにした。


 さっきから涙が止まらねえ。

 さっきから鼻水が止まらねえ。

 さっきから口の端から溢れる涎が止まらねえ。

 さっきから小便に行きたいけど、行かせてもらえねえ。


 俺はそうやって、人生で最も長く感じる時間を過ごした。




「対しては! 第122期王国騎士団従騎士(スクワイア)アランキー!!」


 俺はすでに限界に来ていた。

 同僚の男たちに背中を押されて、その反動でただ前に進むぐらいの力しか残っていなかった。

 目の前が霞む。

 手足の感覚がねえ。

 呼吸が出来なくて苦しい。

 俺は、そんなどうでもいいことを考えながら訓練場の真ん中に立った。


 目の前にいる『細切れ』は、その二つ名には似合わねえ程、若く華奢で、引き締まった筋肉はしているが、そこから山を斬り刻む斬撃が打てるとは思えない。

 顔もどちらかと言えば童顔で、威圧感や強者の風格ってやつなんかが感じられねえ。

 そうだよ。こんなやつ。きっと、噂だけだ。そうに違いない。

 俺には生まれ持っての強運があるんだ。

 まだやりたいことがたくさんあるんだ。こんなところで……


「それでは、試合を開始する! 両者構え!」


 構え?王国騎士になってから剣を構えたことなんて指で数えるぐらいしかねえよ。

 おい。なんだよ。なんでお前はそんなに目が『輝いて』いるんだよ!

 なんで、なんでお前が――!!


「よろしくお願い致します! 僕がこれまで培ってきた『修業の成果』を、僕の持てる『全ての力』を、『余すところなく』この試合で『発揮』させて頂きます!」


 ――ヒュウ!


 『細切れ』のその言葉を聞いた瞬間、俺の呼吸は止まった。

 そして、股間から生暖かいものを感じながら、俺の視界は暗転した。





 俺が目を覚ますと、そこは訓練場に備え付けられている救護室だった。

 俺は意識がはっきりすると、自分の体を触った。

 

 ある!

 ある!

 ある!ある!ある!


 胴体が半分になったわけでもねえ!

 手足もちゃんと二本ずつ付いてる!

 頭もちゃんと首とつながってる!

 心臓も動いてる!

 生きてる!

 生きてるぞ!俺!


 俺は、生きているってことがこんなに嬉しいことを初めて知った。


「おっ! みんな! 『お漏らし』君のお目覚めだぜ!」


 誰かが俺が起きたのを見つけたのか救護室の入り口から大声でそう言った。

 なんだ? 『お漏らし』君ってなんだよ。


「本当か! お、本当だ本当だ! ようよう今どんな気分よ? 最高にスッキリしただろ? あんだけ『漏らせば』」

「いや~見事なもんだったよな! 試合開始直後の卒倒シーン」

「今まで色んな『伝説』があったが、これはもうその伝説を塗り替えたね!」

「おいおい王国騎士ともあろうもんが、剣を向けられただけで、小便漏らしちゃ駄目でしょ。実際」


 俺はベッドから跳ね起きてそいつらに殴りかかった。




 それからは、信じられないぐらい物事がスムーズに進んだ。

 俺は、同僚に危害を加えた罪で、王国騎士の職を失った。

 もちろん退職金なんかてものはない。

 日頃から金使いが荒かった俺はまともな貯蓄もなく、城から放り出された。

 どちらにせよ。あの場所に俺の『居場所』は無くなっていた。


 俺は王都にいることが怖くなり、田舎に戻る決意をした。

 昔の俺しか知らない田舎なら、また、『あの頃の俺』に戻れるとおもったからだ。



 しかし、俺の『居場所』は田舎にもなかった。



 まず、実家に戻った俺を待っていたのは、親父とお袋と弟と知らない女だった。

 俺が実家に置いてくれと頼んだら、


 お袋は「もう、家に男一人住まわせる場所はないよ」と言った。

 弟は知らない女を妻だと俺に紹介すると「兄貴には悪いけど、この家は俺が継いだし、もうすぐ子どもも生まれるから余所をあたってくれないか」と言った。

 親父は「家を継がずに出て行ったお前はもう息子じゃねえ!さっさと出てけ!」と親子の縁を一方的に切って、俺を追い出した。


 俺は、昔の取り巻きの女の子のうちの一人の家を尋ねた。

 玄関から出てきたのは、お腹を大きくしたその子だった。

 俺はその子に結婚したのかと聞いた。

 その子は「そうよ」とぶっきらぼうに答えた。

 俺はその子が3年前に「王都で成功したら必ず呼びに来てよね!」と言ったじゃないかと問い詰めた。

 その子は「えー、そんなこと言ったかしら」と冷めた口調で答え、「そうだとしても、……とても、成功したように見えないけど?」と鼻で笑われた。

 俺は何も言えず、そこから逃げ出した。


 他の女の子たちも同じような態度で、何件か回って俺はようやく気づいた。

 この村にも俺の『居場所』はないんだと。


 俺はもう頼るあてもなく、暗くなった夜道を彷徨った。

 どうせこのまま野垂れ死ぬのなら、魔物にでも食われて、そいつがそれで村の奴らを襲えばいいなんて思った。

 最低だ。

 そうだ。俺は最低だった。

 いや、今も最低だ。

 少し運が良かったからって、調子に乗っていた。

 少しやることなす事が上手くいってたからって、人を見下して、自分以外は価値の無い人間だって本気で思っていた。

 だからこそ、人をたくさん傷つけた。

 そんな奴だから、人からたくさん恨みを買った。

 今になって、後悔した。

 今更後悔したって遅いのに、なんで俺は今になって後悔してるんだよ。

 俺はもう、この後悔を胸に死んでいこうと思った。





 その時だった。

 視界の遠くに、明かりが見えた。

 弱々しく僅かな明かりだったが、『居場所』を無くした俺は、松明に群がる蛾のようにその明かりに引き寄せられていった。

 明かりの正体はある家の明かりだった。

 そして、その家には見覚えがあった。


 遠くもう薄れかけている記憶の中で、名前も思い出すことが出来ないのに、『あいつ』の顔だけが思い出せた。

 あの日、王都に向おうとする俺に、唯一『心配』した表情をしていた『あいつ』の顔を思い出した。

 そうだ。こんな俺を『心配』してくれた人がいた。

 俺は気づかなかった。

 それがどんなに嬉しい事かを、愚かな俺は気づこうともしなかった。


 ぎぃ


 そんなことを思っていると、その家の扉が開かれた。

 中から出てきた女は、お世辞にも美人とは言えないが、それでも3年前と『変わらず』、はっきりと『あいつ』だと分かった。

 『あいつ』は俺を見ると驚いたように目を見開いた。

 それはそうだろう。今の俺に『あの頃の俺』の面影なんてない。

 ただ自分の愚かさに後悔するだけの『塊』となった俺なのだから。

 見られたくなかった。お前にだけは見られたくなかった。

 俺は目から涙が溢れそうになる。


 『あいつ』は俺に駆け寄ってきて、目の前で止まる。

 怖い。

 お前に村の奴らと同じことを言われたら、俺は……、俺は――!!

 俺は口を力一杯閉ざして、流れそうになる涙を堪える。

 お願いだから見ないでくれ。こんなにかっこ悪くなった俺を見ないでくれ。


 目の前のお前が口を開く。

 そして、




「『おかえり』アーちゃん。疲れたでしょ? さあ、『帰ろう』? ちょうど今日のご飯が出来たところなんだよ。『一緒に』食べよ」



 なんでだよ。


「……なんでだよ。俺、お前にたくさん非道いことしたぞ。お前の気持ちになんかこれっぽっちも気づいてやれなかったんだぞ。……なのに、なのに、なんでそんなこと言えるんだよ」


「ううん。いいの。アーちゃんは私が寂しかった時に、辛かった時に側にいてくれた。だから、いいの。私がアーちゃんを『好きになる理由』はそれだけで『十分』だったの」


 俺はその瞬間に泣いた。

 そして、その瞬間に『ライネ』と言う名前を思い出した。


「ごめん――ごめん、ごめんライネ。ごめん!」


 泣きながら謝り続ける俺を、ライネは優しく抱きしめてくれた。

 俺は初めて人を愛するという気持ちを教えてもらった。




 俺は、全てを失った。

 しかし、


 どんな宝石や金銀財宝よりも、価値のある『かけがえのない宝物(ほんとうのあい)』を手に入れることが出来た。


リア充爆発した(膀胱)


すみません。いきなり下ネタに走りました。


まず、この王国騎士の物語をお読み頂いた際に、読者によっては不快に思う表現であったり、差別的な表現をして、気分を害された方に、深くお詫び申し上げます。

しかし、この王国騎士の物語を書くに当たって必要不可欠でしたので、表現させて頂きました。


ぶっちゃけ、ここまで長くなるなんて思ってもいませんでした。

書き終えていてなんですが、あまりにも序盤のアランキー君が、ムカつきすぎて、途中でボツにしようと何度も思いましたが、何度も我慢して(笑)。何とかハッピーエンドに持っていく事が出来ました。


 基本的にこの作品で、登場人物たちが不幸になることは想定していません。しかし、一般的に見て、幸せかどうかは分かりませんが^^;


 また、今回のお話は、自分が絶望のど真ん中にいる場合でも、必ず、救いの手が差し伸べられるということを知っていただければなあと思い、書きました。

 あ、別に作者は変な宗教の勧誘をしているわけではありませんw

 純粋に作者の体験談を書いているだけですw

 辛く苦しい状況の時こそ、以外に解決の糸口はすぐ近くにあるものです^^


 あ、ちなみに、この文章中の王国騎士さんたちが結構非道いやつらだったので、そういう王国騎士が多いように受け止められてしまうかも知れませんが、そういう奴らはごく一部です。

 

 では皆さんご一緒に!

 リア充末永く幸せに爆発しろ!!

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