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努力しすぎて最強になった青年の物語  作者: 早瀬六七
青年と大沼の森のエルフたち
17/19

【第13話】青年の新しい日々と新たなる任務

 僕の名前はエフト。ラーキレイス王国王国騎士……ではもうなく、王城騎士パラディンのエフトです。

 今、僕は一言で言うと順風満帆な生活を送っています。


 まず、朝日が昇り始める頃に起きて、朝の鍛錬をします。

 この時の鍛錬は、王国騎士団長様に見出され、国王陛下がお認めになってくださった『気当て』の練習です。

 武器を使わずに、相手を倒すこの技を僕が自由自在に使えるようになれば、誰も傷つけずに戦うことができると思ったからです。

 魔法の練習ばかりしていたので、朝の鍛錬の時は、『気当て』の練習に専念することにしました。


「ん~――っは! はあぁ! やあ! とう!」


 色々と掛け声を、十字組んだ丸太に鎧をかぶせた『気当て練習用案山子キーくん』に打ち込むイメージでやってはいるのですが、これといって手応えはありません。

 前に、全身の意識を喉から口にかけて集中させて、発声と共に筋肉を振動させた際は、キーくんが練習場の外壁を越えて、遥か彼方へと飛んでいってしまいました。

 また、魔力を込めて、相手を揺さぶるイメージで発声した際は、キーくんがバラバラに崩れ落ちてしまいました。

 それではと思い、意識を喉から口に集中させて、魔力を込めて、相手を揺さぶるイメージをしながら、発声と共に筋肉を振動させた際は、キーくんの中心に拳ぐらいの大きさの穴がぽっかりと空いてしまい、さらにその後ろにある練習場の外壁にも同じ穴を空け、その後ろにある分厚い城壁にも同じ穴が空いてしまいました。

 怒られないようにこっそり粘土とレンガで補修しました。朝早い鍛錬なので、誰にも見られなかったのは幸運でしたが、城のものを壊して誤魔化していることに耐えられなくなり、王国騎士団長様に謝りに行きました。


「ま、まあ、鍛錬ちゅ、中だからな。そういうこともあ、あ、あるだろう。い、以後気をつけるように」


 王国騎士団長様は、快く許してくださいました。

 夜が更けてから伺ったので、寒さで震えたお言葉に、城のものを壊しておきながら誤魔化そうとした僕のような浅ましい者にも、その寛大なお心で罪を許して下さる王国騎士団長様のお優しさで、僕はその時泣きそうになりました。


 そんなこんなで、筋力にしろ、魔力にしろ、力を込めるということは、あまり関係ないと分かり、僕はまた他のやり方を考えているのでした。

 ちなみに、今のキーくんは『7代目気当て練習用案山子キーくん』が正式な名前です。




 朝の鍛錬が終わったら、イーファ様のところへ行き、朝の挨拶をします。

 イーファ様のお部屋の前に立ち、僕は扉を慎重にノックします。


「おはようございますイーファ様。エフトです」


 僕がそう言うと、扉の向こう側からトットットッと可愛らしい足音が聞こえてきます。

 そして、扉が開き、そこには花の咲いたような笑顔のイーファ様がいらっしゃいました。


「エフト待っておったのじゃ!」

「はい。おはようございますイーファ様」


 イーファ様は、僕の手を引かれると部屋の中に招き入れてくださいます。

 お部屋に入ると、そこにはマリー様もいつも通りいらっしゃいました。


「おはようございますエフトさん」

「おはようございますマリー様」


 マリー様は優しげな陽の光のような笑みを浮かべられています。

 いつも通り素敵な方です。


「エフト! 今日は何して遊ぼうかのう!」

「イーファ様がされたいことであれば、僕は何でも嬉しいですよ」

「む~。いつもそれじゃつまらんじゃろ! 妾はエフトがやりたいことを一緒にやりたいのじゃ!」

「あらあらイーファったら、ふふっ」


 イーファ様はそうおっしゃられましたが、僕はすぐに何かアイディアは浮かびません。


「イーファ。エフトさんが困っているわ。まずは、みんなで朝食をいただきながら、エフトさんには考えてもらいましょう」

「うむ。それが良い。エフト! 朝食を食べている間に考えるのじゃぞ!」

「は、はい。うーん。どうしましょうか」


 マリー様が助け舟を出してくださいましたが、僕は何かイーファ様が喜んでくださることはあるか思いつく自信があまりありませんでした。




 僕が何をすればいいか考えていて、その様子をニコニコとイーファ様とマリー様が見ているという、そんな三人で朝食を摂っていると、部屋の扉からコンコンと音がしました。

 どなたかがノックされたようです。


「むむ。なんじゃ妾は朝食中じゃぞ!」


 イーファ様がそうおっしゃられると扉越しに、お返事がありました。


「申し訳ございません。国王陛下の使いで参りました」


 それを聞いて、マリー様が席を立ち、扉を開けられました。

 そこに立っていらっしゃったのは、王国騎士様でした。

 

「何用じゃ?」

「はっ! 国王陛下より至急謁見の間にお越しいただくように口承をいただきました」

「むっ父様が……。わかったすぐに行くと伝えてくれ」

「はっ! 失礼致します!」


 そうおっしゃられると、王国騎士様は踵を返されてご退出されました。


「すまぬエフト。父様に呼ばれてしもうた。しばらく待ってくれるか?」

「はい。もちろんですイーファ様。国王陛下をお待たせしては申し訳ないので、どうぞお早く」

「むむむ。お主のことだから深い意味はないのだろうけど、なんか納得いかないのじゃ」

「?」


 イーファ様は何かブツブツとおっしゃりながら、お部屋を出て行かれました。

 きっと僕には想像もつかない高尚なお考えをされていたのでしょう。


「しかし、国王陛下がイーファを呼び出すなんて、何かあったのかしら」

「そうですね。なんでしょう?」


 僕とマリー様は首を傾げながら、イーファ様が戻ってくるのを待っていました。





 しばらくして、イーファ様のお部屋でマリー様の入れたお茶を二人で飲みながら待っていると、ギィと重々しく扉が開く音がしました。

 その扉の隙間から、何やら暗い表情をされたイーファ様がのっそりと入っていらっしゃいました。


「……はぁ――……」

「イーファ様? どうか、されたのですか?」


 何やらお声のかけづらい雰囲気をイーファ様は漂わせていらっしゃいましたが、僕はそれでも聞いてみました。


「……父様に『大沼の森』のエルフの国に、伐採権の交渉に赴くように命じられたのじゃ」

「エルフ……とは?」

「エフトは知らんのか? 王都の南部に広がる『大沼の森』を治めている森の民のことじゃ」

「なるほど。ということは、あの森はラーキレイス王国のものではないのですか?」


 僕がそうお聞きすると、イーファ様は首を縦に振られて、おっしゃられました。

 

「あの森はそこに住むエルフが太古より管理しているのじゃ」

「太古というと…」

「このラーキレイス王国が建国される前よりじゃな。妾も聞かされただけじゃが、なんでも古の厄災を払った勇者一行の中にその森のエルフがいたそうじゃ。そのエルフがラーキレイス王国1代目国王……妾の高祖父にあたる御方のときは生きていたらしいのじゃ。それで建国にあたり木材が必要だったため、そのエルフと交渉して王国近辺の伐採権に関する条約を結んだそうじゃ。そのエルフもその勇者に返せなかった恩を同じ人間種の高祖父に返そうとしたとして、快く条約を結んでくれたそうじゃ」

「おお! そのエルフ様と1代目国王陛下のおかげで今のラーキレイス王国があるのですね!」

「ま、そんな感じみたいじゃ」


 お話を聞き、異種族間でそのような平和的交渉をなされるとは、さすがはラーキレイス王国1代目国王陛下!と僕は思いました。

 僕がそう思っていると、マリー様が疑問気にイーファ様に聞かれました。


「ん? でもならなぜその伐採権について、今更交渉に行くのかしら?」


 マリー様がそうおっしゃられると、イーファ様はバツが悪そうなご尊顔をされました。

 

「あー、なんというかじゃな……」


 そう言いながらイーファ様は僕を見られました。

 その様子を見て、マリー様も何やら得心のいったようなお顔をされます。

 

「あ、なんとなくわかりました」

「まー、そういうことじゃ。数年関係改善に交渉を重ねておったそうじゃが、あまり上手くいかないようでな。父様も姉様たちもあちらの族長と顔を合わせるのも嫌みたいでの。試しに妾が行くことになったのじゃ」

「なるほど。それは気の毒にイーファ」


 何やらお二人は意思疎通ができたようです。

 きっとお二人にしか分からない絆のようなものでしょうか。

 早く僕もイーファ様が一から十までご説明なされなくても、そのお考えをわかるようになるように努めようと思います。

 

「イーファ。それで出発はいつなの?」

「三日後じゃ」

「あら。けっこう早いわね。そうしたら色々準備するものもあるだろうし、警護して下さる騎士様たちにも挨拶しておかないと……」

「いや、マリー。それが……」

「ん? どうしたの?」

「それがじゃな……父様から警護にエフトを連れて行けと厳命された…のじゃ」


 イーファ様がマリー様にそうおっしゃられると、マリー様は目を開かれて、口をパクパクとされて、そして…

 

「え、えええええええぇぇぇぇぇ!!!」


 と、お城に響き渡るかの如く驚かれました?

 な、なぜでしょう?

 

「な、な、なんで! どうして!? いったいなにがどうなったらそういう風になるの!?」

「わ、妾だって! 父様に何故か聞いたのじゃ! じゃけど、話はつけてあるから連れてけの一点張りだったのじゃ!」

「えー。だって……。えー」


 そうおっしゃりながらマリー様は僕をチラチラと見られるのでした。

 なにか問題なのでしょうか?

 王城騎士として、僕がイーファ様の警護にあたるのは、当然……と偉そうには言えませんが、あまり不思議ではないはずですし。

 むしろ、このような名誉ある交渉の場に、イーファ様の警護として厳命下さった国王陛下にはしてもしきれない感謝しかないのですが。

 

 はっ!? もしかしたらお二人はまだまだ未熟な僕に不安を感じられているのかもしれない。

 王城騎士としてはまだひと月、経ったばかりですから、無理もありません。

 ここは僕がしっかりとお伝えせねば!

 

「イーファ様。どうぞご安心ください! 畏れ多くはありますが、このエフト。例え自らの命を引き換えにしても必ずやイーファ様をお守りいたします!」


 僕がそういうと、イーファ様は何やら呆れられたようなご尊顔をされました。

 

「エフト。別に妾はエフトの力を疑ったりしてないから。あと、命を引き換えにされて守られても妾嬉しくないから」


 あ、あれー? 何やらイーファ様怒ってらっしゃる!? あと何故か口調がいつもと違うようなそうでもないような。

 いや、待て待て、イーファ様のようなお優しい方がお怒りになられるということは、これはつまり……なるほど!

 

「はっ! つまり、誰も傷つけずに傷つかずに警護しろということですね! お任せくださいイーファ様!」


 僕がそう言うと、イーファ様とマリー様が僕を見ながら、駄目だこいつ何もわかってねぇとでも言いたいようなお顔をされました。

 あ、あれー?

 

「ま、なんとかなるじゃろ。マリー支度を頼むのじゃ」

「そうですね。はいはい。イーファもちゃんと荷造り手伝うんですよ」

「えーなのじゃ」

「えーもおーもありません」

「はーいなのじゃ。……あ、そうじゃエフト」

「え? はっ! はい!」


 何やら蚊帳の外になったとような気分を感じてしたら、イーファ様に声をかけられて僕は少し変な返事をしてしまいました。

 

「今回の交渉への道中、交渉中も含めて、自分の名を名乗るのは禁止じゃ」

「え? それはどういう――」

「返事は、『はい』か『はい』じゃ」


 ………………。


「……はい」(´・ω・`)



 こうして僕は、なんだかいつもより素っ気ないイーファ様とマリー様と共にエルフの国に伐採権の交渉に行くことになりました。




はい。

いつもお読みいただきありがとうございます。

短いですが、新章突入です。

ちゃんと章、反映されてるかな。


誤字脱字お許し下さい。

キャラ崩壊お許し下さい。

設定とかブレてたらすみません。


一応ファンタジー王道のエルフとのやりとりが今後入ってきます。

勘の良い方はわかると思いますが、勿論エフトに至難が待ち受けています(ΦωΦ)フフフ…


最後の最後に顔文字を使ったことですが、以前の話にも使いましたし、顔文字って横文字投稿小説の特権だと思うので、今後も使うと思います。何卒ご了承ください。

(縦読みされてる方すみません><)


今後とも牛歩の如く投稿していきますので、それでもよければまた呼んでいただければ幸いです。

よろしくおねがいします。

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