表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力しすぎて最強になった青年の物語  作者: 早瀬六七
青年とお姫様
15/19

【第12話】そして青年は・・・・・・。

 城内に鳴り響く警鐘が、日も暮れて真っ暗になった静かな夜空と交じり合い、嫌に僕に不安を掻き立てています。

 隣にお座りになっているマリーさんも目を開かれ、空を見つめ驚かれていました。


「何かあったのでしょうか?」


 僕がそう言うと、マリーさんはこちらを向かれておっしゃいます。


「ええ。おそらく・・・・・・、しかし、このような警鐘、初めて聞きました」


 マリーさんのお言葉が、引っかかりのある言葉に僕は聞こえました。

 そんな風に僕とマリーさんは突然の警鐘に驚いていると、大きな声が寄宿舎の僕の部屋に聞こえてきました。


「城内に侵入者あり!繰り返す!城内に侵入者あり!総員直ちに捜索に当たれ!」


 その声を聞いた瞬間、僕は自分の手をギュッと握りしめました。

 マリーさんはその警戒の声かけに驚かれると、すぐに、はっとされたご様子でした。


「大変! 早くイーファのところにいかないと!!」


 マリーさんのその言葉に僕もはっとなり、すぐにマリーさんと一緒に寄宿舎の部屋を飛び出しました。

 



 寄宿舎を出て、マリーさんと一緒にイーファ様のお部屋の前まで、僕たちは急いで戻ってきました。

 マリーさんは、焦りに満ちたお顔で扉を開けようとされましたが、鍵がかかっていました。


「イーファ! イーファ! いるんでしょ! お願い! 開けて!」


 ドンドンと何度も扉を叩きながら、マリーさんはイーファ様を呼ばれます。


「イーファ様! エフトです! 失礼ながら、いらっしゃいましたら、どうかお声だけでも!」


 僕も扉の前で、声をかけます。

 しかし、部屋の中から、イーファ様のお声は聞こえませんでした。


「イーファ様! 失礼します!」


 僕は怒られてもイーファ様がご無事なら良いと思い、扉を中にいるだろうイーファ様に危険がない程度に、力を入れて押しました。 

 ミシミシミシという音と共に、扉はボロボロと崩れ落ちました。

 マリーさんはいち早く開いた扉を通り抜けて、イーファ様のお部屋の中に入られました。

 僕もその後に続きました。


 そして、目の前に広がる光景に愕然としました。


 部屋の窓は無惨にも割られて、部屋の中は、荒らされているわけではなく、まるで、道ができているように、窓からイーファ様の寝具の場所までだけが、乱れていました。


「あ、・・・・・・、あぁぁーー」


 マリー様はその光景を見て、その場で泣き崩れてしまわれました。

 そして、僕は、胸にぽっかりと穴が空いたような、感覚だけが、体中をめぐり、何も考えられませんでした。




「おい! おい! 聞こえているのか! 何があった!?」


 しばらくして、僕は誰かに声をかけられていることに気づきました。

 声をかけて下さっていたのは、騎士の鎧を身につけられた初対面の王国騎士様でした。


「しっかりしろ! 何があったんだ!」

「あ、えっと、その、声をかけたんですが、お返事が、なかったので、扉を壊したら、誰もいなくって・・・・・・」

「な!? イーファ様が! 侵入者は見たのか!?」

「い、いえ」

「くっ! イーファ様は間に合わなかったか!」

「イーファ様・・・・・・は?」

「ああ、国王陛下を始め、侵入者は王族全員を狙ったようでな。国王陛下と他のご子息ご息女の方々は、当直の騎士の奮戦もあって、なんとか防げたのだがな。まさかここまで大規模な襲撃とは、小汚い盗人ではなく、なんらかの組織かもしくは国家が絡んでいるかもしれん」


 僕は王国騎士様がそうおっしゃったの聞いて愕然としました。

 もし僕が、イーファ様をご満足させる程の魔法を習得していれば、イーファ様が攫われることはなかった。

 マリー様とイーファ様がケンカなさることもなかったのでは。

 僕は、自分が至らないばかりに、イーファ様が攫われ、マリー様が泣き崩れてしまった今の状況を招いてしまったことに、目の前が暗くなりました。


「くっ! こうしてはおれん! 私はこの事を騎士団長に報告に行く! お前は万が一の再襲撃に備えて、この周辺を警備するんだ! ――おい! 聞いているのか!」

「……はい」

「頼んだぞ! 急がねば!」


 そう残して王国騎士様は行ってしまわれました。

 僕は王国騎士様が何かおっしゃっていたはずなのに、ただ呆然と返事をすることしかできませんでした。

 

 闇夜の静けさの中、マリー様の泣き声だけがイーファ様のいないイーファ様の部屋に静かに響き渡りました。

 その音が聞こえるたびに、僕の中にぽっかりと空いた穴が、大きくなっていく感じがしました。


 そう、まるで強引に広げられるかのように、


 どんどんと


 どんどんと……


 どんどんと…………


 どんどんと………………


 ドンドンと、「エフトさん!」

 

「え……」


 まるで叩くかのように、僕の服の裾を引っ張りながら、涙でくしゃくしゃになったマリー様の声に、僕は気付きました。


「お願いですエフトさん! どうか! どうか! イーファを助けてあげて! きっとあの子泣いているわ! 本当はさみしがり屋で臆病なのに、いつも無理しているの。きっとすごく怖がってるわ! お願い! どうかイーファを助けてあげて! あぁイーファ…イーファ――っうぅ」


 マリー様の悲痛な懇願が僕の胸に刺さります。

 僕は、僕にそんなことができるのでしょうか。そんな資格があるのでしょうか。


「マリー様。僕は、僕にはそんなことはでき――」


「でぎます!」


 できないと言おうとしたとき、マリー様の泣きはらして枯れた声に僕が発しようとした情けない言葉は上書きされたように消えてしまいました。


「エフトさんならできます! あなたが、あなたが自分で見誤っているその力で、どうかイーファを助けてあげて。 あなたしか今、イーファの側に行ってあげられる人はいないの! お願い! あの子を助けてあげて!」


 ……僕はマリー様のお言葉を聞いて、自分の中にあった穴が、湧き上がる熱い何かで埋められていく感覚が、燃やし尽くすほどの熱を感じました。

 僕は王国騎士様に憧れていた。王国騎士になった今でもその憧れは消えていない。


 僕が憧れた。


 僕が目指した王国騎士はどんな人だった。


 勇敢で、

 誠実で、

 優しく、

 どんな困難にも立ち向かい、

 向かい来るどんな敵をも倒し、

 命を懸けて王国民を守り、

 そして、誰よりも、どんなものよりも、


『強い』


 そんな人だった。


 僕はそういう人になりたかった。

 

 僕はそういう人になりたいんだ!



「マリー様。……ありがとうございます」

「エフト…さん?」

「大事なことを、思い出せました。安心してください。どうかもう泣かないでください。僕がイーファ様を必ず助けます。この身、この命に懸けて、必ず助け出します」

「エフトさん!」

「王国騎士エフト……イーファ様をお助けしに、行ってきます!」


 僕が必ずイーファ様を助けます!





 僕はイーファ様のお部屋を後にし、すぐに王城でもっとも高いところに登りました。

 僕の隣には愛するラーキレイス王国の御旗があります。

 ここからなら、王国を東西南北全て見渡せると思ったからです。


「暗い……」


 でも闇夜に視界が遮られてあまり遠くまで見ることができませんでした。


「うーん。あっ! そうだ!」


 僕はとある魔法を思いつきました。

 ラーナさんに怒られて、危うくカシムさんのお目を潰しそうになったあの呪文を。


「いくぞぉぉぉ!」


 僕は渾身の魔力を込めて叫びました。


「『ライト』!」


 僕の指先から放たれた光の玉は上へ上へと上昇いくに連れて、大きく、大きく、大きくなりました。

 光は一瞬で王都を明るく照らし、その光は王都の外までも伸びて行きました。


「これなら見える! イーファ様は!」


 僕はよく目を凝らして、王都を見回しました。

 光に驚かれたのか、王国民の皆様が、お家から次々に出てこられるお姿が目に映ります。

 どんな些細なことでもいいので、何か不審な動きをしている人や物がないか、僕は集中して、目を配りました。


「ん? あれは?」


 その時、西の大門から小さな黒い影が、西の大草原に向かって動いているのを見つけました。


「あれは……馬車かな……っは! もしかして、あれにイーファ様が!」


 僕はそう思った瞬間、西に向かって、力いっぱい飛びました。

 あの馬車が怪しい。

 きっと、あれにイーファ様がいる。

 もし間違っていても、

 この足が引きちぎれたとしても、

 必ずイーファ様の元まで駆けつけてみせる。

 

 僕は、地面に着地すると、全力で走りました。

 もっと、もっと早くと思いながら、一秒でも早くイーファ様の元に辿り着くために、走りました。





 西の大門を抜けて、僕が全力で走っていると、明るく照らされた大草原、前方に動くものを見つけました。

 先ほどの馬車でした。


「その馬車ぁ! ちょっと待ってくださああああい!」


 僕はそう叫びながら走ると、大声を出したせいで力が入ったのか。

 勢い余って、馬車を抜かしてしまいました。


「おわっと!っと!っと!」


 僕が急停止すると、「ヒヒィィィン!」と馬の鳴く声が聞こえました。

 鳴き声の方をみると、馬も馬車も倒れていました。


 …………大きな石にでも引っかかったのでしょうか?


 でも、これは好都合でした。


「はあ、はあ……あ、あの! すみませんが! その馬車の中を見せて下さい!」


 僕が息を切らせながらそう言うと、御者の人に続き、馬車の中から5人の男性が出てこられました。


「ご多忙のところ、突然すみませんが、馬車の中……を……」


 僕が全てを言い終わる前に、最後に馬車から出てきた男性がもう一人、馬車の中からどなたかを乱暴に引っ張り出しました。

 僕はその服、その外見、その髪の色、その顔に見覚えがありました。


「てめぇ! なにもん――っうわ!」


 ズ、ドン!


 御者の方が何かを言い終わる前に、僕は男性たちの間を走りぬけ、最後に出てきた男性を突き飛ばして、その男性が馬車から引っ張りだした御方を傷つけぬように抱きかかえました。


「イーファ様!」


 その御方は間違えるはずもなく、イーファ様でした。

 イーファ様の口には白い粗末な布で塞がれており、両手は背中の後ろに縄で縛られていました。

 僕は急いで縄を引きちぎり、口の布を外しました。


「エフドぉ!」


 イーファ様は涙声で僕の名前を呼ばれました。

 そのお顔は安堵された表情でした。

 僕もそれを見て、安堵しました。


 …………が、しかし、

 イーファ様のお顔、お姿をよく見ると、縄でキツく締められたのか手首には赤く擦り切れた傷があり、お召し物もところどころに土汚れのようなものがついており、そして何よりも目に入ったのは、イーファ様のご尊顔に、その頬に赤く腫れ上がった痕が、まるで誰かに叩かれたような痕がありました。

 僕の中から、急激に込み上げてくるものがありました。

 自分でもそれが何かよくわかりました。


 それは『怒り』です。


「だ、ダリーのやつが吹っ飛んでいきやがった…………。な、なんだてめぇは! ぶっ殺してやる!」


 イーファ様をこのような目に合わせた輩の声が聞こえました。

 僕はイーファ様を地面に優しく、ゆっくりと降ろしました。


「イーファ様。すぐに終わらせます。危険ですので、ここから動かないで下さいね」

「エ、エフ……ト?」


 イーファ様は少し怯えたような表情をされました。

 きっと僕の顔を見たからでしょう。

 自分ではうかがい知ることもできませんが、きっと僕はすごく怒った表情なのでしょう。


「おめえら! こいつを殺るぞ!」

「おう! 死ねこらぁ!」


 そう吐かして、一人が短剣で僕に斬りかかってきました。


「遅い」

「――うごぉいぃえ!」


 僕は軽くその輩の腹を殴りました。

 男は悶絶し、倒れました。


「くっ! なんなんだてめぇは!」


 輩の一人がそう聞いてきました。

 僕はその問を、輩どもの冥土の土産にしてやろうと答えました。


「僕はエフト。ラーキレイス王国王国騎士団所属、王国騎士エフトだ!」

「お、王国騎士だぁ!? なんでこんなすぐに! それに、エフト……まさかあの!」


 輩は驚いたようでした。

 だが、そんなことは気にもなりません。


「僕の愛するラーキレイス王国に脅かし、僕の愛する国王陛下を危険に晒し、僕の敬愛するイーファ様に暴行を働いたこと、……僕は決してお前らを許さない!」


 僕がそう宣言すると、輩で一番声を出していて偉そうだった者が、その場に腰を抜かし、後ずさりました。


「こ、ここ、こいつはヤバイ! お前ら逃げるぞ! こいつはあの『森喰い』・『山斬り』・『人間災害』のエフトだ!」

「あ、ああああ、こんなやつが出てくるなんて聞いてねえぞ!」

「うわああああ! 逃げろぉおおおお!」


 輩どもは一目散に逃げ去ろうとしました。

 でも、


 に・が・し・ま・せ・ん


 僕は腰に携えた練習用の剣を抜き、全力で素振りをしました。

 それはもうめいいっぱいの本気で。


 素振りをした剣は、

 草を斬り、

 大地を斬り、

 風を斬り、

 そして、輩どもは叫び声もあげずに一瞬で消え去りました。



 その光景が、僕の中で一つの取り返しの付かない答えを出しました。



 僕が素振りをやめると、あたりは静けさだけが残りました。

 僕は初めて、自分の意志で人を斬りました。

 そして、怒りは少し鎮まり、あとに残るものは、虚しいという気持ちと自分への恐怖でした。




 僕は剣を収めて、イーファ様のお側に近づきます。

 イーファ様は少し体を震わせられました。

 僕にはそれが今ならよくわかりました。

 イーファ様は、僕が怖いのだと。

 素振りをしただけで、人を一瞬で殺してしまう僕が怖いのだと。


 僕はできるかぎり、イーファ様を怖がらせないようにゆっくりと膝をつきました。

 膝をついた瞬間、「ひぅ」とイーファ様の声が聞こえました。


「イーファ様。この度は僕が至らないばかりに、その御身を危険に晒し申し訳ございません」

「……――っ」


 イーファ様は何かを口に出そうをしていらっしゃるようでしたが、うまく言葉にできないご様子でした。



「……怖がらせて、……申し訳ございませ、ん。僕は……愚かな人間です。自分が、自分の力が、どんなものかも、理解せず。……理解しようとせず。自分がどれほど危険なものなのか、本当はずっと前からしっていたはずだったのに、僕が王国騎士になりたい。イーファ様の専属騎士になりたいという気持ちで、見てみぬふりをしていました」


 僕は、込み上がってくるものを我慢しながら、ただ黙ることができずに、懺悔のようにイーファ様に話しました。


「僕が憧れていた王国騎士は、こんな『強さ』ではなかった。ただ力だけで強くなって、自分を知ろうとしないで、それを身勝手に使い、何の信念も持たないただの『暴力』。その『暴力』多くの人に迷惑をかけて、怖がらせて、僕はただの……そう、ただの『化物』でした」


 イーファ様はすでに怯えられた様子はなく、僕の話を聞いてくださってくれています。

 なんてお優しい方だろう。

 このような方を傷つけてはいけない。

 早く立ち去ろう。

 

「イーファ様。すぐに迎えを呼びに行きます。この明るさであれば、獣も警戒して出てこないと思いますので、申し訳ございませんが、もう少々お待ち下さい。迎えを……呼びましたら、すぐに王国騎士を辞め、今回の処罰を受けますので、どうかご安心を」

「な、なにを――!」


 イーファ様が何かをおっしゃられようとされましたが、僕は立ち上がり、王都へと戻ろ「待て! 待つのじゃ!」


「イーファ……様?」


 イーファ様が僕の服の裾を掴まれ、力一杯引っ張られているようでした。


「ふざけるな! 悪漢どもを蹴散らして助けにきてくれたと思っておったら、急に自虐的な話を一方的に始めおって! 話し終わったら妾の話も聞かずに勝手に去ろうとしおって! 勝手に妾の心情を読み取ったようにしおって!」


 イーファ様は、そう叫ばれました。


「今回の事は、お主は何も悪く無いじゃろう! エフトは何も悪くないじゃろう! むしろ悪いのは妾の方じゃ! エフトがマリーとすぐに打ち解けたのが気に食わなかった! だからエフトに嫌がらせと思って、雑用をさせた! エフトが魔法を使えないことを馬鹿にした! エフトが一生懸命覚えてきた魔法を鼻で笑った! だからマリーとケンカした! 誰もいなくなって悪漢どもが押し寄せてきてそれで攫われた! 悪いのは妾じゃ!」

「し、しかし、僕がもっとしっかりしていれば!」

「しかしも何にもない! エフトはさっき自分を『化物』と言った! それは間違いじゃ! 身勝手な自暴自棄じゃ! エフトが『暴力』と言っていた力は、その力は手に入れるまでに、どれほど頑張ったんじゃ! どれほど努力したんじゃ! あの王都の上に見える光はなんじゃ! エフトの魔法なのじゃろ! その魔力を身につけるためにどれほどの時間と苦労がかかったんじゃ! それを妾に見せた『ライト』にするための魔力操作にどれだけ苦労したんじゃ!」


 イーファ様がおっしゃられる一言一言が、僕の胸に刻まれる。


「エフトは大勢に迷惑をかけたと言った! 怖がらせたと言った! それは確かにあったかもしれぬ! だけど! だけど、そんな中にもエフトに出会って助けられたものもいたはずじゃ! 救われたものもいたはずじゃ! 妾もその一人じゃ!」


 イーファ様はその小さな手を握りしめて、目には涙を溜めて。


「攫われて怖かった! 心細かった! 寂しかった! 悪漢どもに抵抗して噛み付いて頬を殴られたとき、痛かった! もうダメだと思った! 誰もこんな我がままな妾を助けにきてくれないと絶望した! 何もかもを諦めそうになった! でもエフトは来てくれた! あんなに妾がひどい仕打ちをしたのに、エフトは息を切らせてまで、妾を助けに来てくれた! エフトが見たことがない怒った顔をしていたから怖かったのは確かじゃ! でもエフトが言ったことで怖かったなんて思ってないのじゃ! 勝手に妾の気持ちをわかったかのように言うでない! エフトが来てくれて、すごく安心した! すごく嬉しかった! 妾はエフトに救われたのじゃ! 『化物』は人を助けん! エフトは妾の『勇者』じゃ! 御伽話のように姫を助けにきてくれた『勇者』なのじゃ! 自分を『化物』となんか言うでない! そんなこと言うでない! そんなこと言うから素直にありがとうって言えないんじゃあぁ! うわわぁあああ~ん! エフトのバカぁあああ~!」


 イーファ様は、そう泣き崩れて僕を抱きしめてくださった。

 僕は、僕も、僕だって、


「うわああああ~ん! ごめんなざい~! イーファ様ぁあああ!」

「バカエフトぉぉ~! ありがどぉ! だずげにぎでぐれでありがどぉ!」

 

 そうして、僕もイーファ様のお言葉に救われた。

 僕らは、お互いが泣き止むまで、抱き合っていた。





 あの後、僕は泣き疲れて寝てしまわれたイーファ様をおぶって王城に帰った。

 マリー様のところまで僕がイーファ様を連れて行くと、僕の背に乗ったイーファ様を見た瞬間にマリー様は堪えていただろう涙を盛大に流して、イーファ様を抱きしめられた。


「ぐえっ! マリー! 苦しいのじゃ!」

「無事でよかった! 本当に無事でよかったよぉぉ! もう! 心配かけてぇぇ!」


 周りに大勢の方々がいましたが、お二人は特に気にされず、素のご自分で再会を祝されたご様子でした。












 イーファ様が攫われるという大事件から3日後、僕は謁見の間に呼ばれました。

 この3日間は事件の調査などをおり、僕も参考人として、色々と調査に協力をしていました。

 僕は、国王陛下に呼ばれたとの知らせを聞いて、どんな事情があれ、一国の姫君を賊にまんまと連れ攫われたこの度の失態。

 おそらくこの度の事件の処罰が下されるのだろうと思い、どのようなことを言われても真摯に受け止めようと思いました。


 僕が謁見の間に入り、跪いていると、


「国王陛下のおないり~」


 そう宣言があり、僕は緊張で身を引き締めました。

 それからしばらくして、


「面をあげよエフト」

「……はっ!」


 僕が国王陛下のお声で頭をあげると、そこには国王陛下がいらっしゃり、空席がありましたが、王子様方や姫様方が勢揃いされていました。

 その中にはイーファ様のお姿もあり、何やらご機嫌なご様子でした。

 何か良いことがあったのでしょうか?


「エフトよ。今日この場に呼ばれたこと。何のことかは理解できておるな?」

「はっ! 先の事件のことと愚考しております」

「うむ。今日はその事でお主に伝えねばならぬことがあり呼んだのだ」


 僕は、覚悟を決めて、国王陛下のお言葉を待ちました。


「この度の件、イーファから事情は聞き及んだ。しかし、如何なる理由があろうとも専属騎士であるエフト。お主が側に居ればこのような事態にはならなかった。相違ないか?」

「はっ。国王陛下の仰るとおりでございます」

「では、この度の件の処分として、王国騎士エフト。只今を持って、お主の王国騎士としての任を解く!」

「…………はっ!」


 僕は、覚悟をしていたとはいえ、王国騎士でなくなることへの動揺を感じました。

 しかし、事件の重大性を考えれば、投獄や処刑にされなかっただけでも、国王陛下には感謝しなくてはいけないと考えを改めました。


「では、これをもって――」

「と・お・さ・ま?」

「わ、わかっておるよ。冗談じゃ冗談」


 国王陛下が何かをおっしゃろうとした瞬間、イーファ様が国王陛下をお呼びになりました。

 何が冗談なのでしょうか?


「うぉっほん! しかし、この度の件、早急に解決し、イーファを無事に救いだしたのもまた事実」

「えっ?」


 僕は国王陛下の前で、素っ頓狂な声を出してしまいました。

 お恥ずかしい……。


「よって、これについてエフト。お主には褒美を授ける!」

「ほ、褒美ですか! そ、そんな!? 恐れ多いです!」

「なに? わしからの褒美が受け取れぬと申すのか?」

「め、めめ滅相もございません!」


 あわわわ。

 国王陛下に無礼を働いてしまうところでした。


「よい。……それでは褒美を授ける」


 僕は固唾を呑んで、国王陛下のお言葉を待ちました。


「只今をもって、エフト。お主には『王城騎士パラディン』の称号と地位を与える!」

「ぱ、『王城騎士パラディン』ですか?」

「うむ。『王城騎士パラディン』とは、王国騎士団には所属せぬが、ラーキレイス王国の中心である我が王城に帰属し、その命を持って我が王城並びに王国を守護するのがその任である」

「……失礼ながら、王国騎士とは何がちがうのでしょうか?」


 僕がそう質問すると、国王陛下はあっけらかんといったご様子で、お答えくださいました。


「ぶっちゃけわしにもわからん! 作ったばかりじゃからのう!」


 ズコー!


 っと僕は国王陛下の御前にも関わらず、盛大に前のめりになって、こけてしまいました。


「話を進めるぞ。パラディン・エフトよ! まず、その最初の任として、イーファの警護を命令する! 以降の判断はイーファに一任するものとする!」

「えっ!? ということは……」


 僕が視線をイーファ様に移すと、イーファ様はさっきよりもずっと嬉しそうなご様子で満足そうに何度も頷いていました。


「では、パラディン・エフトよ。今後の活躍に期待する。異論はないな?」

「――はっ! 確かに拝命いたしました!」

「よい。では、これをもって謁見の儀を閉会とする!」



 こうして僕は、王国騎士ではなくなりましたが、『王城騎士パラディン』となり、

 そして、


「これからもよろしく頼むのじゃ! エフト!」

「はい! イーファ様!」


 イーファ様の騎士となりました。


|ω・`)ノ ヤァ

もう更新しないと思ったかい?


一年近く更新してないからね。

仕方ないね。

でも投稿しちゃいました。


ズサ━━━━⊂(゜Д゜⊂⌒`つ≡≡≡━━━━!!


誠におまたせしましたー!


ネトゲにハマってやりこんでたら、いつのまに1月でしたー!

半年ぐらい小説家になろうの存在すら忘れてました-!


ということで、感想やメッセージ、コメントなどなど、皆さんこのような更新頻度の非常に、誠に、本当に、とても遅い作品に送ってくださり、ありがとうございます。


ちょっと、この話は書いていて、エフトがある意味「自覚」するところなんかは強引に入れてしまったと思いましたが、でもそれは書いていて僕がそれを書いて満足したので、OKということで。

なんか、姫様のエフトに物申すシーンが若干ヤンデレのテンプレ文並の改行をつかわなかったなぁなんて思いましたが、それもOKということで。

色々と誤字があるかもしれないけど、それもOKということで。

全部含めてALL OKとういうことで。


さて、この作品もフィナーレをついに迎えることができましたね。



嘘です。


まだ続きます。


だって、タイトルに「最強」がついてるでしょ?


まだエフトは最強じゃないですよ?

まだ状態異常耐性も、一章で出てきた魔法特性も、まだまだ強くできますよ?


だから続きます。


更新には期待しないで、お待ちいただければ幸いです。


一応非常におまたせしたことへのささやかな謝罪として、後日談を同時に投稿します。

本当に短いので期待しないで、クリックしてあげてください。


ではまたいずれ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ