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努力しすぎて最強になった青年の物語  作者: 早瀬六七
青年とお姫様
13/19

【第10話】青年は努力し、そして魔法を覚える。

 僕の名前はエフト。

 『複合持ち(ダブル)』のエフトです!

 カシムさんたちに調べてもらい、僕は魔法系統が2000人ぐらいに1人の珍しい『複合持ち』らしいです。

 そしてようやく魔法の練習がいよいよ始まります。

 ここまで来るのに1年ぐらい掛かったような気がしますが、きっと気のせいでしょう!


「エフト。そしたら、実際に魔法を使う練習にうつるぞ」

「はい! よろしくお願いします!」


 僕がそう返事すると、まず、カシムさんは右手の人指し指を空に向けて立てておっしゃりました。


「いいか。魔法っていうのはイメージが重要なんだ。実際に使いたい魔法をイメージしながら魔力を放出することで、魔力が属性化されて、放出した魔力量とイメージの合致が魔法という現象を引き起こすんだ」

「えっと……???」


 僕にはカシムさんの説明がよく分かりませんでした。


「あー。まあ、要はどんな魔法を使いたいか考えながら魔法を使うぞ!って感じでやればいいんだよ」


 カシムさんは苦笑いをしながら、先ほどの説明を噛み砕いて説明しなおして下さいました。

 カシムさんに気を使わせてしまったようです。

 一回で説明を理解できない己の未熟さを悔やむばかりです。

 しかし、悔やんでばかりもいられません!

 いざ! 魔法を使いましょう!


「分かりました! カシムさんやってみます!」

「おう、頑張れや」


 カシムさんに応援されて、僕は最初に使う魔法を考えます。

 まずは、……イーファ姫様がお使いになられていた、あの明かりを作る『ライト』にしましょう。きっと僕に適正のある光属性の魔法でしょうし。

 イーファ姫様も少し練習すれば誰にでも使うことができる超初級魔法とおっしゃっていましたし、この魔法に決定です。

 僕は、使う魔法を決めると、先ほどのカシムさんの言葉を元に、集中して、唱えました。


「ライト!」


 …………


 僕は思い切って呪文を唱えたのですが、突き出した右手の人指し指からは何も出ていませんでした。


「あれ? でない?」

「んー? おかしいな。最初の最初だから不完全な形になることはあるが、全く魔法の兆候がないってのは奇妙だな」

「え!? そうなのですか?」

「ああ、もう一度やってみろよ。ちゃんと頭の中で『ライト』のイメージを作ってから、魔力を体から出すようにやってみろよ」

「わかりました」


 僕はカシムさんにそう助言されて、イーファ姫様が出していたあのライトの形や光を思い起こし、僕の体の中にある魔力を絞り出すように集中しました。


「えい! ライト!」


 …………


「で、でてない!?」

「あ~ん? こりゃまた変な感じだな」

「な、なぜでしょうか!? 僕に魔力はあるんですよね!? ちゃんと系統だって調べたし! どうしてでしょうか!?」

「お、おいおい。落ち着けって! え~と、そうだな。ああ、そう言えば『ライト』っていうのは、無属性魔法だから相性の問題かもな」

「? 『ライト』は光るので、光属性の魔法ではないのですか?」

「ああ、確かに光るが、あれは……なんだったか、色々小難しい理由で無属性だったはずだ」

「なるほど。では、防御魔法か光属性の魔法を使えばいいのですか?」

「まあ、そうだな。……うん。試しに、自分の目の前に盾を思い描きながら『シールド』って言ってみろよ。防御魔法の初級魔法だからよ」

「わかりました」


 僕はカシムさんに言われた通り、自分の目の前に盾があるようによく思いながら、魔力を出すように集中し、呪文を唱えました。


「シールド!」


 ………………

 …………

 ……デナイ


「なんで出ないんですかああああああああ!」

「落ち着けって! っかしいな。間違いなく魔力はあるはずだし。系統はちゃんと把握できたはずだ。なんかおかしいぜこりゃあ」

「なぜ……なぜなんですか……」


 僕は頭を落とし、愕然としました。


「おいラーナ。お前分かるか?」

「分かんない。エフトは間違った手順を踏んだようには見えない」


 カシムさんがそばで見ておられたラーナさんに聞きましたが、ラーナさんにも分からないそうです。

 ますます僕は落ち込みました。


「私の『目』使おうか?」

「……いや、それはやめとけ。それはやたらと使うもんじゃねえ」

「ん。分かった」


 僕が落ち込んでいると、お二人は何やらボソボソと会話されていました。


「まあ、とにかく繰り返し練習してみるしかねえな」


 カシムさんが落ち込んでいる僕を見てそうおっしゃいました。

 ……そうです。

 落ち込んでいる暇なんて僕にはないんです。

 僕が魔法を使えるのを待ってくださっている国王陛下とイーファ姫様のためにも、こんなところで諦めるわけには行きません。


「分かりました! 何度だってやってみます!」

「おう! その意気だ!」

「はい!」


 こうして僕は再び魔法の練習を再開しました。





「シールド! シールド! ……シールド! はあはあ、……シールド!」


 あの後、僕は何回繰り返した分からないほど、何回も呪文を唱えました。

 しかし、一向に魔法が出る気配はなく、魔法は出ていないのに、何故か凄く疲れていて、その頃にはすでに日は傾いて辺りは暗くなってしまいました。


「おいエフト。俺たちは宿に戻るが、お前も今日のところはそろそろやめたらどうだ?」

「い、……いえ。僕は、まだ、続けます」

「おいおい。焦る気持ちは分かるが、まだその姫様との約束の期日までは時間があるんだろう? 体を休めることも大事だぜ」

「いえ。このぐらいなら、……まだ」

「そうには見えないがな。まあ、続けるってなら無理には止めねえよ。取り敢えず教えることは教えた。後はお前さんの努力次第だな」

「わ、分かりました。…………あ、……そうでした」


 僕は依頼のことを思い出し、依頼達成の内容と僕のサインが書かれた紙を懐から出しました。

 文字の練習も兼ねて書いたので、既に用意をしていました。


「これを」

「ん? おいおい。いいのかよ? お前はまだ魔法を使えてないんだぜ?」

「ははっ。構いませんよ。お二人がちゃんとご指導下さったのはよく分かっていますから。魔法が使えないのは僕が原因でしょうから、気にせず受け取って下さい」

「……そうか。ん、わかった。ありがたく頂くぜ。ラーナも礼言っときな」

「ありがとうエフト」

「いえ、こちらこそありがとうございます」


 薄暗くて、疲労もあり、よく見えませんでしたが、カシムさんとラーナさんが微笑まれたような気がしたので、僕も頑張って笑顔で答えました。


「それじゃあな。俺たちはしばらく王都(ここ)を拠点に活動してるからな。何か進展があったら、『白猫亭』って宿にいるから訪ねてこいよ。そこで寝泊まりしてるからよ」

「分かりました。ありがとうございます」

「じゃあな」

「ばいばい」


 そう言って、カシムさんとラーナさんは帰られて行かれました。

 そろそろ日が完全に沈んできたので、僕はご近所の方々に迷惑にならないように、場所を西の大草原に移そうと考え、何故か疲れた体をなんとか立たせて、移動しました。



 大草原でも僕は同じようにシールドの魔法を何度も練習しました。

 しかし、疲れが溜まる一方で、魔法は出来ませんでした。

 そして、目の前が真っ暗になったと思った後、次に目を覚ました時は、大草原で体を横にしていて、陽の光が体中を包み込んでいました。それが朝になっていると気づくのには少しだけ時間がかかりました。







 魔法の練習を始めて、すでに2週間が経っていました。

 一向に上達しない魔法と、期日が迫る中、僕は焦りを感じています。

 最初の数日は、初日と同じように、何度も魔法の練習を繰り返し、積もる疲労感から、そのまま大草原で寝てしまい、気づけば朝になっていました。

 しかし、ここ数日は、そんな疲労感にも慣れてしまい、食事を摂りに王都に戻るのみで、後は大草原で寝ずに魔法練習を行なっています。

 少しは、ほんのかけらでもいいので魔法よ出てくれと願うばかりですが、魔法は答えてはくれませんでした。

 練習の最中、気が弱くなってしまい、折角魔法を教えて下さったカシムさんとラーナさんの教えを疑おうとしてしまいましたが、お二人がしっかりと説明が理解できない僕のために丁寧に教えて下さったことを思い出して、そんな思いは払拭しました。

 体が疲れるという感覚をあまり経験したことがないからこそ、僕は体が疲れると心が弱くなり、練習を続けたくない、諦めてしまいたいという思いに駆られました。

 しかし、僕の魔法習得を待って下さっているイーファ姫様や国王陛下の思いを無碍にしてはいけないと自分を奮い立たせ、あの日母が言ってくれた努力をする尊さを思い出し、応援してくれている父、兄、妹の姿を思い浮かべ、マリー様のあの優しげな笑顔をまたみたいなと思うと、練習のやる気となりました。

 だから僕は、諦めずに何回、何十回、何百回、何千回、何万回、何十万回、その後は数えられませんでしたが、とにかく練習をやり続けました。


 しかし、僕の魔法は答えてくれません。


 そして、また、日が暮れてきました。

 僕はただひたすら、魔法練習をします。


「シールド! シールド! シールド!」

「おいおい。聞き覚えのある声だと思ったら、エフトじゃねえか」

「え? ……あ! カシムさん! それにラーナさんも!」

「おひさー」


 僕が練習に没頭してると、この大草原で近づいているお二人にも気づきませんでした。


「お久しぶりですお二人とも」

「ああ。もうあれから二週間か。…………って、その様子だと、まだ出来てないみたいだな」

「……ええ。お恥ずかしい話ですが、まだ一回も成功しておりません」

「ふむ。……練習中悪いが、これまでのお前がやってきたことを教えてくれねえか? 何か助けになるかもしれねえしな」

「い、いえ。依頼もしていないのに、ご迷惑をお掛けするわけには」

「気にすんな。これもアフターケアってやつだ」

「は、はあ。では……」


 僕はこれまでのことをカシムさんに説明しました。

 僕の話を聞いたお二人は驚きと呆れたお顔をされました。

 そして、


「ばああっっかか! お前は!」


 怒られました。


「あのな! ぶっ倒れるまで魔力を使うってことは、危険なことなんだぞ! ヘタしたら体と精神が解離して、廃人にだってなりかねねえんだぞ!」

「え!? そうだったんですか!?」

「知らずにお前は……はぁ。まあ、体を鍛えているからなのか? 廃人にはなってねえみたいだがな。無茶すんなよ」

「す、すみません」


 なんだか居た堪れない気持ちになりました。


「大体なんでそんな無茶までするんだよ」

「それは……」


 カシムさんに僕の正直な姫様や国王陛下の思いを、家族への気持ちを話しました。

 それを聞いたカシムさんは、難しい顔をされてましたが、何故か急に頭を掻き始めました。


「全く、聞いていてこっちまで恥ずかしくなるほど真っ直ぐなやつだな。お前は」

「は、はあ」

「おい。ラーナ。お前の『目』こいつにならいいんじゃねえか?」

「……うん。私もそう思う」

「えっと、なんのお話でしょうか?」


 何やらラーナさんの目が何とかという話らしいですが、急なことなので、分かりませんでした。

 僕がそう聞くと、カシムさんは真剣なお顔をされておっしゃられました。


「エフト。これからラーナの魔法を使って、お前が魔法を使えない原因を見つけてやる」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」

「いや、その前に言っておくことがある。ラーナの魔法は特殊でな。珍しさで言えばお前の魔法系当より遥かに珍しい」

「おお! すごいですね!」

「……お前がそういう反応をするやつで助かるよ。だが、珍しいからこそ。それを狙うやつらも多いってのは分かるか?」

「…………なるほど。悪い人たちがラーナさんを狙うかも知れないってことですね」

「その通りだ。だからこそ。今から使う魔法のことは生涯口外しないで欲しい」

「分かりました。王国騎士の名に賭けて、決して口外致しません。むしろ、そのような危険があるにも関わらず、教えてくださって、ありがとうございます」

「ふっ。見込み通りで安心したぜ。おいラーナ。お前からこいつに教えてやれよ」

「ん。わかった」


 そうカシムさんに促されて、ラーナさんがフードを頭から外されました。

 綺麗な長い黒髪に、白い肌、端正なお顔立ち。

 そして、見る者を吸い寄せるかのように、淡い緑色をした瞳をされていました。


「エフト?」

「あ、はい。すみません」


 僕が思わずその目を凝視していると、ラーナさんが声をかけてこられました。


「失礼しました」

「大丈夫。大体初めて見た人はそんな感じになるから」

「は、はあ」

「それより、私の魔法については話すよ」

「はい。よろしくお願いします!」

「ん。私の魔法系統は『闇属性の目』というやつ。闇属性は光属性より珍しい。そして、『目』に属性が付く事自体滅多にない」

「なるほど。つまりすごく珍しいってことですね!」

「……ん。そういうこと。だから人には滅多に見せない」

「さっきの話ですね。大丈夫です。決してこの事は誰にも話しません!」

「ん。信じるよ。話の続きだけど、この魔法は『魔眼』とも呼ばれている。理由はわかる?」


 ラーナさんは何やら試されるように僕に聞いてきたので、僕は答えました。


「分かりません!」


 僕がそう言うと、カシムさんは何故か口を抑えて吹き出して、ラーナさんは呆れたように僕を見ます。

 何故でしょうか。正直に答えただけなのに……。


「…………うん大丈夫。逆に安心できるから。後、兄貴は後でコロス」

「おい。なんでだよ!」

「話をすすめる。『魔眼』っていうのは、基本的に見た対象の内面を全て見れるような能力がある」

「えっと体の中をってことですか?」

「それだけじゃない。心や精神っといったところまで見える。つまり考えていることが丸見え」

「なるほど」

「…………それだけ?」

「え? えっと、他に何かあるんですか?」

「……うん。エフトがどんな人か『魔眼』を使わなくても分かってきた」

「そ、そうですか」

「そんなわけで、これからエフトを魔眼で見て、何故エフトが魔法を使えないか調べる」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「ん。それじゃあ早速やるよ」

「よろしくおねがいします!」


 僕は元気よくお辞儀してラーナさんにお礼をしました。


「それじゃあ……『ステータス』っ」


 ラーナさんが真剣なお顔をして、その『淡い優しそうな緑色の綺麗な目』で僕を見ます。


「///っ、余計なことは考えない」

「え? あ、はい。すみません」

「……調子狂う。……………………っ!!!」


 急にラーナさんは信じられないものを見たかのように驚かれ、目を瞑られました。


「ど、どうしたんですか?」

「……大丈夫。驚いただけ。信じられないものが見えたから」

「え?え?」

「おいラーナ。何が見えたんだ?」

「言っても信じられないぐらい信じられないもの」

「なんだそりゃあ?」

「一言で言うなら、…………『神』? 『魔王』?」

「……なんだそりゃぁ」

「人にはありえないステータスが見えた。エフトの魔法量。この世のものじゃない」

「おいおい、それって」

「うん。過去の文献に載っている英雄や勇者の比じゃない魔法量がある」

「マジかよ。おいエフト。お前って先祖に勇者とかそういったやつがいる血筋の出自なのか?」

「いえ、まさか。大昔までは分かりませんが、ただの鍛冶屋の息子ですよ」

「マジでかよ。信じられねえ」


 カシムさんとラーナさんは真剣な面持ちで、こちらを見ていらっしゃいます。


「エフトがか。信じられねえけど。ラーナの『目』がそう言ってるんだから間違いないんだろう」

「間違いないと思う。自分でも自信が無くなるぐらいだけど。どうして、これで人の社会にまだいられるのか謎。そして、軽く嫉妬」

「まあ、ある意味じゃあお前と同じ境遇だからな。分からんこともないけどな。それは考えても仕方ないだろう」

「ん…………。大丈夫。気にしない」


 カシムさんは慰めるようにラーナさんの頭を撫でると、安心しきったようにラーナさんは目を細めて、心地よさそうにされています。

 本当にお互いを信頼されているのでしょう。


「エフト。それじゃあ魔法を使ってみて、私の目で視るから」

「わかりました」


 僕はラーナさんに言われて、意識を集中させます。盾を思い浮かべ、そして魔力を練ります。


「いきます! 『シールド』!」


 しかし、やはり魔法は出ませんでした。


「…………。原因は分かった。これは確かに予想できない」

「本当ですか! 教えてくださいラーナさん!」

「あなたは魔力を出すとき、持っている魔力全てを放出している。そして信じられないけど、数秒後には全回復してる」

「マジかよ!! なんだそりゃあ!?」

「え? つまりどういうことでしょうか?」


 ラーナさんの説明にカシムさんが殊更驚かれた顔をされましたが、僕には分かりません。


「魔力を全て放出する事自体、やろうと思えばやれるけど、普通自然に体が制御して出させないようにするから、それをエフトはしていなかった。無意識に言葉通り『全力』が出せている。そして、魔力は普通回復するには、睡眠をとったり、魔力回復ポーションを飲んだりする。もちろん起きている間、自然回復もするけど、それは普通微々たるもの。それがエフトは数秒で全回復していた。明らかにすでに人外」

「え? えっと、それはすごいってことでしょうか?」

「すごいなんてものじゃない。どうやったら、そんな体になるのか不思議。だからもうすでに人じゃないとしか言い様がない」

「そ、そんな――僕は人じゃなかったんですか!? つまり父と母は僕の本当の両親じゃなかったんですか!?」

「……はぁ。そういう意味じゃない。体は間違いなく人間だけど。あなたはその種族の枠から逸脱した能力を持っているってこと」

「な、なんだ。そうでしたか。良かった僕が人間で」

「安心するところが違う…………もういい。話が進まないから進める」

「す、すみません」


 ラーナさんが何やらイライラされているご様子だったので、反射的に僕は謝りました。


「エフトが魔法を使えないのは、放出する魔力量が、発動しようとしてる魔法の魔力量と違いすぎるから」

「えっと、つまり僕が出そうとしてる魔力を抑えればいいのですか?」

「理論的にはそう」

「分かりました。やってみます」


 僕は盾を思い浮かべながら、魔力を極力減らして出そうと体に言い聞かせます。


「シールド!」


 ……出ません。


「まだ、多すぎる」


 ラーナさんは一言そうおっしゃいました。


「しかし、これ以上はまだ……」

「それなら、適正のない魔法を使えばいい」


 ラーナさんはこちらが考えていたことを先読みしたかのようにおっしゃいました。

 そうでした。ラーナさんは人の考えが読めるのでした。


「分かりました。それでは……」


 僕はラーナさんに言われた通り、無属性魔法の『ライト』を使おうと思い、姫様が見せてくれたあの光の玉を思い描きました。


「エフト。それじゃあダメ。もう少し大きくして」

「は、はい。わかりました」


 姫様が見せてくれたあの光の玉の大きさではまだダメなようなので、僕は別のイメージをしました。

 そう言えば、昔、空にある僕らを照らしてくれるあの光の玉は、本当は目で見るより大きなものだと聞いたことがあります。

 どのくらいでしょうか? 王都ぐらいあればいいのでしょうか?

 試しにやってみましょう。

 僕は光の玉を王都を包み込むぐらいな大きなあの空高くあるお日様を思い描き、魔力を極力絞りました。


「――あ、これ! 兄貴! 目を瞑って!」

「は? え?」

「行きます! 『ライト』!」




















 しばらく何が起こったのか分かりませんでした。

 僕が呪文を唱えた瞬間。

 景色は真っ白くなりました。

 しかし、しばらくして辺りを見回すと、いつもの朝の大草原でした。

 また、気を失って朝まで寝てしまったのでしょうか?

 と思いましたが、近くを見ると地面に伏せたラーナさんと……


「目があああああああああああああ! 目がああああああああああああ! ぐああああああああああああ!」


 と叫んで大草原をゴロゴロと転がるカシムさんがいました。


 ………………どういうことでしょうか?


「エフト。自重して」

「え? えぇ?」


 僕はラーナさんに何でそんなことを言われたのかさっぱりわかりませんでした。

 そんな僕を顔を少しだけ地面から上げて見てラーナさんはおっしゃいました。


「魔法は成功。おめでとう。でも自重して」

「え? 魔法は成功したんですか?」

「あれ」


 そう言って、ラーナさんが指を指したのは王都の上空にあるいつもより大きく見えるお日様でした。


「違う。あれはエフトが作った『ライト』の光の玉」

「え? …………あれがですか?」

「そう。本当に規格外」

「え、じゃあ、魔法成功ですか?」

「そう。おめでとう。だから自重して。兄貴の目が潰れたかも」

「え、ええ? あっ。か、カシムさんすみません!」


 まだゴロゴロと転がっているカシムさんに僕は声を掛けましたが、そんな余裕はないのか、苦悶の声を上げながらゴロゴロと転がられています。

 は、早く消さなくては。


「ラーナさん。どうすればあれは消えるんですか?」

「『ライト』は一定時間したら消える魔法。まだしばらくはあのまま」

「え、ええっと」

「自重して」

「……はい。すみません」


 僕は猛省しました。

 ラーナさんに言われた魔力量を自分が持っていたとはにわかに思えませんでしたが、もしかしたら、本当にそうかもしれません。

 でも……。


「魔法、成功ですよね」

「? そう」

「ふふ、ふふ、ふふふふ。…………やっっっっったあああああああああああああああああああ!!」


 僕はあまりの嬉しさに大喜びしました。

 だって、あれだけ練習しても出来なかった魔法ができたんです。

 ついにできたんです!

 こんなに嬉しいことはありません!

 僕は嬉しくてしかたありませんでした!

 これでようやくイーファ姫様と国王陛下に顔向けができます!

 ああ、早くお会いしたい!


「ダメ。絶対ダメ」

「え?」


 ラーナさんが僕の考えを見られたのか。そうおっしゃいました。


「今のままだと、兄貴みたいな被害者が増えるだけ。もっと制御できないとダメ。絶対ダメ」

「あ! た、確かにそうですよね。すみません」

「いい。それより、期日まで後何日?」

「えっと、あと大体一週間ぐらいです」

「分かった。関わった手前。あと一週間で、エフトに魔力の制御を覚えさせる」

「え、い、いいんですか?」

「いい。むしろやらないと世界が滅びる。私が原因だって思いたくないから。絶対やる」

「あ、ありがとうございます」


 なんとお優しい方でしょう。

 僕の魔法を使えるようにして下さったにも関わらず、さらにその制御まで教えて下さるとは、ラーナさんのお心遣いにただ僕は感謝するばかりです。


「感謝はいい。でもこの前の依頼だけだと割りに合わないから、この前より報酬を増額してまた依頼をギルドに出して、それでいい」

「わ、わかりました。……ありがとうございますっ!!」


 こうして僕は魔法を覚え、残りの期日で魔法を制御することになりました。

 早く一人前になって、イーファ姫様に魔法をお見せしたいです。


「目がああああああああ! うおおおおおおお! ぎゃあああああああ!」


 まだ大草原の上をゴロゴロとカシムさんが転がっているのを僕は見て、次の依頼は目の治療費をいっぱい上乗せして依頼しようと思いました。


「そうして」


 ラーナさんも同意のようです。

お待たせいたしました。

第10話投稿です。

沢山の感想ありがとうございました。

時間の都合上全ての感想にお返事は書けませんでしたすみません。

誤字脱字の訂正も時間を見つけてやろうと思います。


今後は感想は読みますがお返事は書けないと思います。

折角感想を書いて下さっている方には申し訳ございませんが、ご了承下さい。

でも感想はちゃんと読ませていただきます。


さて、この話の補足になりますが、

珍しくエフトが疲れているのは、魔力の使いすぎのせいです。

一回魔法を使おうとするごとに、全魔力を使います。

一話の設定を引き継げば、それでまた総魔力が増えます。

数秒後に全回復します。

また使います。

総魔力が増えます。

数秒後に全回復します

(以下無限ループ)


こうしてさらに総魔力量を増やしたため、素振り時代とは違い、大分疲れたようです。

体と精神が解離しなかったのは、エフト補正が掛かっていたからです(適当)

ご了承下さい。


投稿に関してですが、構想はすでにエンディングまであるのですが、書き始めるとあれが足りない、これが欲しいという感じで書きたいことが増えていくため、中々書けずに怠惰になってしまっています。

なので、本当に気長に待って頂けると助かります。

何卒よろしくお願い致します。


追記:誤字訂正しました。

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