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努力しすぎて最強になった青年の物語  作者: 早瀬六七
青年とお姫様
12/19

【第9話】青年は自分の魔法系統を知り、歓喜した。

 僕の名前はエフト。

 これから、僕の魔法習得の依頼を受けて下さったカシムさんとラーナさんに魔法を教えてもらいます!

 待ちに待ったというのはこういう事を言うんだと僕は思います。

 これまで少し曇っていた僕の心が、今は期待と楽しみで澄み渡った青空のような気分です。

 おっと、でもこれも国王陛下とイーファ様に頂いたご厚意の賜物。身を引き締めて、事に望まなければ、お二人に失礼にあたるでしょう。

 頑張ります!


 セツさんの食堂を後にした僕らは、カシムさんの要望で、まず魔法道具を扱うお店に行きました。

 そして、カシムさんはそこで、2つ、手のひらに乗るぐらいの四角いものと、同じ大きさの丸いものを買いました。

 その後、僕らは王都にある一番広い公園に行きました。

 カシムさんが、広い場所が良いとおっしゃるので、最初は王都の外の草原に行こうかと思いましたが、王都に来たばかりのカシムさんたちを魔物が出るかもしれない場所にご案内するのは、配慮に欠けると思い、この公園にご案内しました

 公園に着いて僕らを見た小さい子どもを連れたお母様方は、目を見張ると、『青ざめた顔』になりました。

 確かに大の大人3人が日中の公園に来ては不審に思われるでしょう。

 僕はお母様方を安心させるために、声を張って言いました。


「みなさん! これから『僕の』魔法の練習をさせて頂きます! ご迷惑にならないように気をつけますのでご安心下さい!」


 僕がそう言うと、一瞬公園の時間が止まったように感じました。

 そして、次の瞬間……。


「キャアアアアアアアアアアアアア!!」

「坊や! 早くこっちに来なさい!! 早く!」

「こらあ! 面白がって近づかないの! ダメよ! ――おいごらぁ! ダメって言ってるでしょお!」


 何やら先程より賑やかになりました。

 特にお母様方が。

 うん……ちゃんと僕がご迷惑にならないようにと言ったから、安心されているのでしょう。

 そんなことを思っていると、公園の片隅から別のお母様方がやって来られました。

 その方々は賑やかにされているお母様方に近づいて何やら話を始められました。


「少しは落ち着きなさい」

「あ、あなたは!? この公園のママさんを統べる『公園の聖母(マリアオブガーデン)』!!」

「子どもの見本になる母が、取り乱してどうするのです。大丈夫よ。『森喰い』さんは、こちらが何もしなければ、何もしてこないわ」

「で、でも、子どもは心配じゃないんですか!?」

「……ふふ。懐かしいわね。私も子どもが小さかった時は、あなた達のように取り乱したものだわ」

「マリア……」

「いい? こういう時は落ち着いて、子どもにご飯でも食べようと言って、迅速に避難するの。そして、すぐに王都守護隊の詰所に行って、『エフト危険行動監視課目撃情報連絡係』の方に連絡しなさい。そうすれば、情報料で銀貨1枚もらえるのよ」

「そ、そんなことが――!?」

「さあ、行きましょう。今日は子どもと一緒に、時間は早いけど、みんなで少しリッチなディナーとしましょう」

「は、はい!」


 しばらく、何かを話されると、お母様方は「みんなでご飯食べに行くわよ-」と行って、子どもたちを集めて、公園から去ってしまいました。

 ごはんの時間にはまだ早いような気がしますが、これは良いタイミングでした。

 これで心置きなく魔法の練習が出来ます!


「おいおい。おめえさん。何か不味い過去でもあのかよ・・・・・・」

「? どういうことですか? 特に何か『悪いことをした覚え』はないのですが」

「……あの人達、尋常じゃない動きだった」

「そうですかラーナさん? 僕は特に不思議には思わなかったのですが」

「……まあ、依頼を受けちまったもんは仕方ねえ。丁度人もいなくなったし、早速やるか」

「はい! よろしくお願いします!」


 ついに! 魔法の練習が始まります!



「さて、まずはこいつを使う」


 カシムさんがそう言って取り出したのは、先程魔法道具店で購入した『四角いもの』でした。


「これは?」

「こいつは『計魔量器』ってやつで、市販の一番安いもんだから正確な数値は出ないが、そいつ個人が持つ魔量が、一般的な魔量なら赤く、普通より魔量があれば青く、戦闘に申し分ない魔量なら緑に、すげえ魔量だったら紫色になる」

「へぇー。そんな便利なものがあったんですね」

「むしろ王国騎士みたいな戦闘を想定できる職に就いていて、これを知らないほうが俺は驚きだがね」

「い、いやぁ、お恥ずかしい……」

「まあ、取り敢えず手に持って、魔力を込めて見ろよ」


 僕はカシムさんに言われた通り、計魔量器を手に持って、ぐっと長年修行を共にしたあの棒の要領で、魔力を込めてみました。

 すると、計魔量器は、一瞬白く輝いたと思ったら、次の瞬間には、『ボロボロ』に砕けてしまいました。

 その様子を見ていたカシムさんとラーナさんは、呆然とした後、頬を掻きました。


「何だ今の? ラーナお前、計魔量器が白く輝くなんて『視た』ことあるか?」

「ない……。それに一瞬だったからよく分からなかった」

「そうだよなあ。砕けちまったし、安もんだったから、壊れてたのか?」

「あの……えーと、それで僕の魔量はどれぐらいだったんでしょうか?」


 カシムさんは僕にそう言われると苦笑いでお答えになりました。


「悪いな。俺らにもわかんねぇわ。まあでも、計魔量器が反応したっつう事は、魔力がないわけじゃねえからな。魔法は大丈夫だろう」

「は、はあ……」


 取り敢えず、魔法が使えるなら良いのですが、少し期待していた分、何やら釈然としないものがあります。


「とにかく次はこいつだ。ほれ」


 そう言って、カシムさんが手渡して来たのは、同じく魔法道具店で購入した『丸いもの』でした。


「これはなんですか?」

「こいつは魔法系統を調べる『選魔別器』ってやつで、そいつに相性のいい魔法系統を絵にして出してくれるやつだ。まぁ、こっちも安んもんだから、子どもが玩具代わりにしたりするがな」

「なるほど」

「例えば俺なら……」


 そう言ってカシムさんが選魔別器に振れると、ぼんやりと絵が浮き上がってきて、雷のような黄色い絵が出てきました。


「これを見ると分かるだろうが、俺は『雷』の属性魔法と相性が良いんだよ」

「へぇ! なんだかカッコイイですね!」

「だろ!? よく決め台詞に『俺に痺れるなよ!』って言ってるんだが」

「ダサい……」


 ラーナさんが間髪入れずにカシムさんが言い終わる前に、そうおっしゃいました。


「この有り様よお。おれぁイケてると思うんだけどなあ」

「僕もそう思います! 決め台詞があるって良いですね!」

「おっ! 分かってくれるかエフト!」

「はい!」

「…………いいから、次に進めて」


 僕ら二人が決め台詞で盛り上がっていると、ラーナさんが呆れたご様子で促されます。


「そう言えば、ラーナさんはどんな魔法が得意なんですか?」


 僕がふと思ったことを言うと、カシムさんとラーナさんは気まずそうにされました。

 どうされたのでしょう?


「あー……、なんだ。こいつのはちょっと特殊でな。あまり人に知られると誤解されるから教えないんだよ」

「そうだったんですか! それは配慮が足りずすみません!」

「ああ、いいっていいって! そう気を使うなよ。それよりお前の魔法系統を調べてみようぜ」

「はい! よろしくお願いします!」

「いや、まあ、こいつに振れるだけなんだけどな」


 僕はカシムさんに促されて、選魔別器に触れました。

 どんな絵が出てくるのか僕はワクワクしました。

 イーファ姫様をお守りするのに相応しいそんな魔法系統だったらいいなーと思いました。

 すると、浮かんできたのは、『白く輝いた鎧』の絵でした。


「……ほう、こいつもまた珍しい」

「……うん。珍しい」

「え、えっとどういうことでしょうか?」


 僕は二人が興味津々といったご様子で選魔別器を眺めているのが、なんだか気恥ずかしくなりました。


「まずだな。『鎧』の絵が出るってことは、お前は『防御魔法』と相性が良いことになる」

「防御魔法……ですか?」

「ああ、防御魔法ってのは、敵の攻撃の脅威を減らしたり、防衛戦とかで活躍する……まあ要するに戦闘における守備力を特化させた魔法のことだよ」

「なるほど! 防御魔法と相性が良いということは、姫様や王様、それに王都の方々が危ない時にその『鎧』や『盾』となるということですね!」

「まあそんなとこだな。防御魔法と相性が良いこと自体は別に珍しいことじゃないんだが、普通防御魔法は『無属性』なんだよ」

「無属性……ですか?」


 僕が何のことだろうと思うとカシムさんは続けておっしゃりました。


「無属性ってのは、『属性魔法』ではない魔法のことだよ。例えば俺は『雷』だろ? 他に『火』『水』『風』『土』『氷』『木』とか色々あんだよ」

「えっと、……属性魔法が沢山種類があるということは分かりました!」

「まあ、今はそれでいいだろ。お前の魔法系統の『鎧』は属性ではない無属性魔法に本来入るんだよ」

「では、僕は無属性魔法と相性が?」

「だったら、こんな説明しないぜ。いいか? 本来『鎧』だけの絵だったら、半透明の絵になるんだよ。それがお前のはどうだった?」

「えっと、『白く輝いて』いました」

「そうだ。白く輝くという『色』が出るってことは、お前は『光』の属性魔法を持つ防御魔法と相性がいいってことになる」


 だ、段々覚えることが沢山出てきて、頭が混乱してきました。

 …………頑張ります!


「それが、えっと、珍しいってことですか?」

「そうだよ。こういうのを『複合持ち(ダブル)』っていうんだが、珍しいっちゃ珍しい。だが、総人数の多いような属性、『火』とか『水』の複合持ちは、まあ100人に1人ぐらいの割合でいる。だが、そもそも『光』属性と相性の良い奴自体が他の属性に比べるとあんまいないんだよ」

「えっと、つまり……?」

「おいおい。察しが悪いな。お前は光属性で且つ複合持ちなんだよ。まあざっと2000人から4000人に一人の適正だろうな」

「よく分かりませんが、それは素直に喜んでいいのでしょうか?」

「ああ、誇っていいと思うぜ!」

「それでは………………ごほん」


 僕は一息着くと、


「やったああああああああああああああああああ!!!」


 王都中に広がるぐらいの気持ちで、大喜びしました!

 今まで凡庸に生きてきた僕にとって、何か特別なものが自分にあると知れたのはとても嬉しいことで、これならば、ちゃんと魔法を使えるようになれば、姫様もきっとお喜びになってくださることでしょう!

 僕はこの澄み渡る青空のように晴れやかな気持ちでいっぱいになりました。


「痛えええ! なんつぅう声出すんだよ!! 大声出すときはちゃんと事前に言えよ!!」

「……耳痛い」

「あ、あわわわ! ご、ごめんなさい! でも、嬉しくって、ついつい。エヘ、エヘヘヘ」

「おいおい、だらしねえ顔だなぁおい」


 嬉しさのあまり笑みがこぼれてきます。

 

「まあ、喜んでるところ悪いんだが」

「なんでしょう!」

「元気いいなおい!」


 カシムさんはやれやれと言ったご様子で僕に言いました。


「ここからが、結構大事だそ」

「はい!」

「魔法ってのは、基本的にどんなやつでも全部の属性や系統の魔法を使うことができるんだよ」

「え! そうなんですか!?」

「やっぱり知らなかったか。ただ、相性がいいか悪いでその効果範囲や威力が段違いになるから、こうやって適正を調べるんだよ」

「というと?」

「つまりは例えば、俺が『火』属性の初級攻撃魔法を使うとこうなる」


 カシムさんは手を水平に上げられて、言いました。


「プチファイヤー!」


 すると、小さい火の粒のようなものが、手から飛び出してすぐに地面に落ちて消えました。


「次に『雷』属性の初級攻撃魔法を使うとこうなる」


 カシムさんは同じように手を上げられて、言います。


「プチサンダー!」


 すると、手から飛び出した雷撃が数メートル先の公園の草に当たって、そして、そこから地面を少し這って、他の草も焦がしました。


「な、なんか威力が違いますね!」

「わかっただろ? これが相性が良いか悪いかの違いだ」

「ん? そうすると僕の相性が良い魔法はどうなるんでしょう?」

「それが言いたかったんだよ。そもそも『光』属性っていうのは、攻撃とは反対の魔法を得意とする属性でな。回復魔法や強化魔法とかそんなのばっかだよ」

「え……、そうすると僕は」

「ああ、攻撃系魔法はほとんど使えたもんじゃないだろうな」

「そ、そんなぁ~」


 僕は少しガックリしました。

 格好いい魔法を使って、イーファ姫様を守りながら魔法で敵を払う……そんなイメージをしていたのですから。


「まあそう落ち込むことはねえよ。回復も使えて、防御魔法も使えるんだ。お前が冒険者なら、真っ先にパーティ組んでおきたい適正を持ってるんだ。自信もてよ!」

「は、はあ……」


 そんな風に僕に気を使ってくれるカシムさんを見て、僕はこの人が僕の依頼を受けてくれて良かったなあと常々思いました。


「さ! 色々わかったことだし。いざ練習といこうじゃねえか!」

「――っ! は、はい! よろしくお願いします!」


 さあ、いよいよ魔法の練習です!


ちょっと仕事を行く前に書いたので、手短にします。


沢山の感想ありがとうございました。

また、短い話となりましたが、この世界の魔法というものを簡単に説明させていただいた話となりました。


カシムたちは知らない。

エフトの魔法系統がどれほど恐ろしいものかを……

ではでは。

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