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努力しすぎて最強になった青年の物語  作者: 早瀬六七
青年とお姫様
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【第8話】青年は魔法の先生を見つける

 僕の名前はエフト。相変わらず只のエフトです。

 冒険者ギルドに魔法を教えて下さる家庭教師を募集してから早5日が経ちました。

 依頼を受けてもらえるとギルドからその通知が来るのですが、僕は逸る気持ちもあり、毎日夕方には依頼を受けてもらえたか確認をしにギルドに行っているのですが、一向に受けていただける気配がありません。

 依頼に対する謝礼金はかなり多めにして、加えて報奨金も付けたのですが、なかなかどうして。


 ただ時間を無駄に使うことは僕自身が良しとしませんでしたので、僕は今自分が出来ることを考えて、その結果、文字の読み書きの練習を始めました。

 魔法を覚えるやり方のひとつに、魔法書を読むというを聞いたことがあり、また、これまで読み書きが出来ずに困ったこともあったので、その練習も兼ねて始めようと思いました。

 練習のため、子供用の学習本とペンとインク、そして、麻で出来た巻紙を購入しました。

 まず、少しでも読める文字を丁寧に書き写します。そして、まだ知らない文字を学習本を参考に勉強していきます。

 しかし、これまで勉強なんてものは、やったことがなかったので、知らない文字を覚える時は10分もしないうちに頭からプスプスと煙が立つような、頭の天辺が焦げている感じがしました。

 痛む額に我慢しながら勉強を続けて、なんとか5日経って基本的な50字の基本的な文字を覚えることが出来ました。

 

 もしかしたら基本的な文字の読み書きが出来る事を募集に書き足せば引き受けて下さる人がいるかもしれないと思い、6日目、今日の夕方に募集内容の訂正にギルドに行きました。

 ギルドに入るといつも僕を担当して下さっている受付の人の所まで行きます。

 

「なんだ今日も来たのかい?」

「ええボズさん。今日は募集内容に少し書き加えようと思いまして」


 ボズさんは御年60歳の還暦を迎えた男性で、このギルドで最もご高齢ですが、現役バリバリで働いているすごい人です。

 他の人達とは違って、ボズさんは細身なのですが、こうドシッとした佇まいで落ち着いていて、僕はギルドに用事がある時は、いつも安心してボズさんにお願いしています。


「ん? やめるのではなくて、書き足すのかい?」

「ええ。ここ数日でようやくですが、基本的な文字を読み書きできるようになったので、それが分かれば、もしかしたら受けて下さる人がいるかもしれないと思いまして」

「ふむ……。言い難いがそれでもこの依頼は受諾されないと思うがの」

「何故でしょうか?」


 僕がそう答えるとボズさんは深くため息をつかれました。

 お歳もお歳なので夕方は一日の疲れが出る頃なのでしょう。


「それが分からん内は、余程の世間知らずか大バカで無ければこの依頼は受けてもらえんよ」

「は、はぁ……?」

「まあ変更の申請は受け付けたぞ。また出直しておいで」

「分かりました。よろしくお願いします」


 僕は冒険者ギルドを後にして、寄宿舎へ帰りました。

 猶予期間をイーファ様と国王陛下から頂いている僕は、まだ寄宿舎での寝泊まりが許されています。寄宿舎の自室に帰る度、本当にイーファ様と国王陛下への感謝の念で胸がいっぱいになります。

 僕は読み書きの復習をして、明日は魔法書でも探しに行こうと思いながら、床につきました。


 次の日、露店の書物商で魔法の入門に丁度いいと薦められた本を一冊買った後に、いつもより早い時刻にギルドへと行きました。

 何やらギルドの入り口から歓声のような沢山の明るい声が聞こえます。


「こんにちは~」


 僕が挨拶しながらギルドに入るとボズさんがすぐに僕に気づいてこちらにやって来ました。

 ボズさんは何やら嬉しそうなお顔をされています。


「おおエフト! 喜ぶといい。お前の依頼を受けてくれるやつがいたぞ!」

「え!? 本当ですか!?」

「ああ。おーいお前たち。早速お前らの依頼主が来たぞー」


 ボズさんがそう呼ぶ方を見ると、その声に反応された方が二人。

 一人は長身で、毛が所々はねて、埃ですす汚れたワイルドな茶髪の男性。また、服は所々破けて何回も修繕した箇所のあるローブを着てらっしゃって物を大切に使われている印象を受けました。

 もう一人は背は男性より低いですが、服は似たような状態でこの方も物を大切されているようです。ローブのフードを被っていてお顔はうかがえませんが、体のシルエットから女性の方のようです。

 お二人は、周りで歓声を上げている他の冒険者の方々に戸惑っているご様子でしたが、ボズさんに呼ばれてこちらに来られました。


「ダンナ。依頼主ってのは……?」


 男性がそうおっしゃりました。


「ああ、こいつはエフト。今回の依頼主だ。こいつも元冒険者で、今は王国騎士をやっている」

「王国騎士? つまりは城仕えってわけか。それが魔法習得の依頼を出すなんて珍しいな」


 男性はボズさんから僕のことを聞くと、怪訝そうにこちらを見てそうおっしゃいました。

 無理もありません。王国騎士と云えば、国を代表する護国の騎士。そんな王国騎士に魔法が使えない僕のような半端者がいるとは思うはずもありません。

 僕は恥ずかしい気持ちになりましたが、そんな半端者のために、猶予を下さった国王陛下とイーファ様のお心遣いを思えば、この気持ちは贅沢が過ぎるというものです。

 まずは依頼を受けて下さったこの方々に、挨拶と感謝を述べなくては。


「初めまして! ラーキレイス王国所属王国騎士のエフトと申します。この度は僕の依頼を受けてくださって本当にありがとうございます!」

「お、おう。随分と威勢の良い兄ちゃんだな。俺はカシム。冒険者だ」


 そう言って、カシムさんは右手を僕に差し出しました。

 僕も『優しく』その手を取って握手をします。


「それと、コイツはラーナ。俺の相棒にして、妹だ」

「……よろしく」


 カシムさんは、隣にいらっしゃるフードの女性を僕に紹介して下さると、フードの女性、ラーナさんは少し頭を傾けて、挨拶を下さいました。


「はい!よろしくお願いします!」

「っと、それで、魔法習得ってのが依頼内容なんだが……、ここは何だか変な空気だから別のところにでも行くか」


 カシムさんは話の途中で、周りで大はしゃぎされているギルドの方々を見た後、頬を指で掻いて、そうおっしゃいました。


「分かりました。もしよろしければ、お昼ご飯を一緒にどうですか? もちろん僕が支払いますので」

「お、流石王国騎士様。気前がいいね。そういう依頼主は大歓迎だ。こっちもやる気が出るってもんだ。こっちもさっき王都に着いたばかりでね。まともな飯はまだ食ってなかったから助かるぜ」

「……兄貴、お腹すいた。――早く」

「わーたわーた。普段無口なのにどうしてお前はこういう時だけ口を開くんだよ」

「ははは。遠慮せずいくらでも食べて下さいね」

「わかった。遠慮しない」


 そう言って、ラーナさんはぐいぐいカシムさんを引っ張ってギルドから出ようとします。

 僕はその光景を見て、仲の良い兄妹なんだなーと思いました。



 僕はギルドから少し歩きますが、実家の近くの食堂にお二人を連れて行きました。あまり外食はしたことないのですが、その中でも慣れ親しんだとても美味しい料理を作るお店です。


「こんにちはー!」

「おんや~。エフ坊かい。久しぶりだねぇ」

「こんにちは。セツさん!」


 僕が食堂に入って挨拶すると、厨房の方からセツさんが出てきてくれました。

 セツさんはお歳の方ですが、現役バリバリで食堂を切り盛りしているお婆さんです。

 他のお店に僕が入ると、大体『青ざめた顔』を皆さんされるのですが、セツさんだけはいつでものんびりとした同じご様子で僕に接してくれます。


「珍しいねぇ。今日はお連れさんもいるのかい」

「ええ。こちらがカシムさんで、こちらがラーナさんです」

「おう。厄介になるぜ婆さん」

「……ご飯」

「ふぉふぉふぉ。はいはい。今作るからゆっくりしておいでなぁ」

「セツさん。お二人に飛びきり美味しいものを沢山作ってもらっていいですか?」

「はいはい。まかせなさいなぁ」


 そう言って、セツさんは厨房に入って行きました。


「店はボロっちぃが、人の良さそうないい婆さんじゃねえか」

「ええ。とっても良い方ですよ。それにお料理だって、凄く美味しいんですよ!」

「ほーう。そりゃあ楽しみだ!」

「ごはん……ごはん、まだ」

「ラーナ。お前はもっとこう、淑女の嗜みってやつを覚えた方がいいぜ」

「……冒険者には必要ない」

「はっ。そりゃあそうだな。こりゃあ失礼しましたよ-」

「お二人はとても仲が良いのですね」


 そんな感じで、僕はお二人の仲良し漫才(?)を見ながら料理を待ちました。

 そして、料理が来ると、ラーナさんはフードの奥の瞳がキラキラ輝き始めたように見えたと思った瞬間にはもう料理を食べ始めていました。

 豪快に料理を食べていらっしゃるラーナさんを見ているとこちらもお腹が空いてきました。


「ったく。ラーナ。最低限のマナーってのは覚えておけよ。見てるこっちが恥ずかしいぜ」

「いえいえ、ラーナさんぐらい気持ちよく食べて下さると、セツさんのお店を紹介した僕も安心しますよ」

「……ポッ」

「……って、おいおい、そこ照れるところじゃないだろうラーナ」


 カシムさんはやれやれといったご様子で、料理を食べ始めました。


「んぐ、んぐ、……ほう、こりゃあ美味いな」

「良かったです。喜んでもらえたようで」

「んぐ、んぐ、さて、食べながらだが、今回の依頼について、詳細を聞かせてもらえるか?」

「はい。実は――」


 僕はこれまでの経緯について、カシムさんにお話しました。


「おいおい。マジかよ……姫殿下付きの王国騎士だったのかよお前」

「え、ええ、お恥ずかしい限りですが」

「まあ、それでも依頼は依頼だ。最初は魔法習得ぐらいで、破格の報酬だから、怪しんだもんだが、ラーナが決めた依頼だ。間違いはないだろう」

「ラーナさんが?」


 そう言って僕は、次々に料理を平らげていくラーナさんを見ました。

 ラーナさんはそんな僕の視線に気づいたのか。「なに?」といった目で返してきました。


「ああ、こいつはこういった依頼を嗅ぎ分けることには一流でな。まあ、野生の勘ってやつなんか、これまで眉唾ものの胡散臭え依頼で苦労したことが無い訳よ」

「へぇー。それはすごいですね!」

「んっま、取り敢えず、飯食ったら早速始めるか!」

「はい! よろしくおねがいします!」


 こうして僕は、魔法の先生を見つけることが出来ました。

凄く短い文章で申し訳ございません。

約1年ぶりの更新です。

昨年は仕事が忙しすぎて更新できず、今年は新しい趣味を見つけたため、更新できず、ずるずる更新を先延ばしにしていたら、気づいたら1年が経ってました。


読者の方には大変申し訳ございませんでした。


今後は今回のように気が向いた時に更新をしていくスタイルになりますので、ご理解のほどよろしくお願い致します。


すごくたまにですが、無性に小説を書きたくなる時があるので、そういった時に書きためていきます。

ではでは。

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