第2話
「今回の企画…?」
思いつかへん…。
斉藤恵実と昼ごはんを食べて1時間が経った。さっき企画仕上げたと思ったら、また考えなければならない。
斉藤恵実は私のアシスタントになったらしい。『なんで斉藤さんが私のアシスタントに付くんですか?』って大泉編集長に聞いたら『席が隣だから。戸辺アシスタントが付くということは指導係にもなったことにもなるから。斉藤の指導係、戸辺に任命!』と言われてしまった。最悪だ。
よって今、私の隣には斉藤恵実が座っている。
指導係になるということは2人分の仕事をするようなものだ。
ここの芸能ポストの編集部は変わっていて新人にもバイトでなければ仕事をさせる。
要するに企画を書かせて面白かった場合、それに相応しい要するにトップページに載せてくれたりと上手くいけばいきなり連載企画を書かせてくれたりする。
急速に昇格したいという人にとってはもって来い!の編集部なのだ。
しかし指導係に任命されてすでに連載企画も持っていて、そこそこ忙しい人にとっては指導係というのは絶対に回ってきて欲しくない係なのである。
だって、指導係になったら自分の会議、打ち合わせにも取材にも新人が自分の後を付いて回って新人に「これ、どういう意味なんですか?」と聞かれた場合、たぶん専門用語も分からないであろうから1日に30回の質問はされる。そして、もちろんその質問すべてに答えなければいけない。
おまけに、新人に締め切りまでに企画書も書かせなければならないのでその書き方を教えたり締め切りまでに出すように監視、指導をしなければならない。
要するに指導係は2人分の仕事をするようなものなのだ。
プラス面はコピーなどの雑用は新人がしてくれるのでそれらの雑用がなくなるというぐらいの事だ。
私は早速その雑用を斉藤に頼むことにした。
「斉藤。あなた、これから斉藤ね。」一応あだ名を決めとこう。って言っても苗字だが。
「はい…。」
「で編集部の端から端まであの手紙カゴ持ちながら散歩して来な。」私は小さい段ボール箱、通称手紙カゴを指差して言った。
「どうゆう意味ですか?」
「伝言を集めて来いってこと。新人の仕事だから。今、一番新しいの斉藤だから。『早く来ーい!』って、そこら辺のむさ苦しいおっさんに言われる前に行って来たら?それと、私以外の伝言を預かったら、その受取人に渡す。私が受取人の伝言を預かったらその箱に入れて1周回ったら手紙カゴを持ってきて。」
「はい。」
斉藤は返事をするとすぐに手紙カゴを持って編集部の散歩を始めた。
むさ苦しいおっさんに注意を受けるのはよっぽど嫌なのだろう。
この頃の斉藤はまだ純粋だった。
でも斉藤が『親を刑務所送りにした。』と言われるきっかけになったあの事件の幕はもうすぐ上がろうとしていた。