第12話
あのあと、斉藤恵実は裁判を起こし、見事に勝利を収めた。
慰謝料500万をもらい、斉藤隆二は、懲役5年。
そのあと、わたしは指導係の期間が終わり、斉藤とは、もう関わってない。
あの記事を書いたあと、斉藤は『芸能ポスト』でやっていくことが確定し、
その2ヵ月後、私は編集長になった。
ちょっと前まで、嫌って言うぐらい斉藤の話を聞いていた。今は、ここ3ヵ月、話していない。最後の会話は、裁判所の前。裁判で勝ったという報告とお礼だった。
「戸辺さん。私、勝ちました。父親に裁判で。大勢の人の目の前で。父は懲役5年、私に慰謝料500万の刑でした。…今までありがとうございました。今日で指導係、終わりですよ。知ってます。戸辺さんが、指導係、嫌いなの。トイレの個室で、『疲れたー。』とか、言ってるのがよく聞こえてました。これは、私が、勝手に言ってるんじゃないんです。大泉編集長からの命令です。」
「たしかに、疲れたけど、いい体験をさせてもらった。決して、悪いものではなかった。」
「そうですか。では、私は会社に戻ります。」
「うん。戻りな。」
あれから、3ヵ月。
斉藤は、180度変わった。完璧になって帰ってきた。
斉藤は、私と話した後日から、1ヶ月休んだ。
1ヶ月たって帰ってきた斉藤は、パソコンは、私の上をいくぐらいのレベルで、専門用語、礼儀、すべて敵無し。前はあんなにドジで、質問攻め、廊下は走る。小学生レベルだった斉藤が、エリート中のエリートって感じになっていた。もう、私なんか話しかけられない!と思ってしまった。唯一、話しかけていい人をあげるとしたら、社長とか?になるんじゃないの?って感じになって帰って来た。
でも、私が斉藤の指導係だった、というのはあまり有名ではない。
たぶん、あのころの斉藤は、はっきり言って目立ってなかった。だからだろう。
なんで、あそこまで変わったのだろう?もう聞けないのだろうか?