【後書き】十龍図の成り立ちと願い
全十話にわたる『十龍図』、最後までお付き合いいただき心より感謝申し上げます。
完結にあたり、この物語の根底にある禅の教えと、私がこの物語に込めた想いを少しだけ綴らせていただきました。
1. 十牛図とは
十牛図は、悟りに至るまでの道筋を十枚の絵と詩で描いた、禅の入門書とも言える教えです。
そこでは「牛」は人間の真実の自己(仏性)を、そして「牛を追う男」は修行者(自分自身)を象徴しています。
尋牛: 自分の本当の姿を探し始める
見跡: 足跡を見つける
見牛: 牛の姿を捉える
得牛: 牛を捕まえる(まだ暴れる)
牧牛: 牛を飼い慣らす
騎牛帰家: 牛と一体になり家に帰る
忘牛存人: 牛を忘れ、ただ自分が座る
人牛倶忘: 自分も牛も、すべてが空になる
返本還源: あるがままの自然の姿に戻る
入鄽垂手: 街へ戻り、人々を助け導く
2. なぜ「龍」へと再構築したのか
本連載『十龍図』では、禅の抽象的な教えを現代の私たちが直感的に理解できるよう、また『蒼龍くん物語』の世界観を補完するために、以下のような意図を込めました。
力の象徴としての「龍」
十牛図の「牛」は本来、穏やかな本性の象徴です。しかし私たちの心には、もっと荒々しく、制御しがたい「力への欲求」や「野心」が潜んでいる。それを「黄金の龍」として描き、修行を通じてその角を研ぎ、鱗を磨き、最後には白き慈悲へと変容するプロセスを強調しました。
「自己完結」から「他者への誠実さ」へ
禅の悟りは個人の内面で完結しがちですが、本作では親友・黒龍との別離という「対人関係の悲劇」を軸に据えました。どれほど自分が悟りに近づいても、間に合わない現実がある。その絶望をどう乗り越え、次世代(蒼龍くん)への教育に繋げるか。そんな思いを込めました。
3. 最後に
玄龍が歩んだ「日々進むべき道」は、決して特別なものではありません。
ただ、目の前の命に誠実であること。その積み重ねが、いつか自分自身の「安住の地」を形づくるのだと信じています。
『十龍図』全編、いかがでしたでしょうか。
もしよろしければ、皆さまが一番心に残った場面などを感想で教えていただけると、書き手としてこれ以上の喜びはありません。
物語はここで完結となりますが、蒼龍くんと玄龍さまの「日々是好日」な日常は続いていきます。
蒼龍くんの成長と、かつての親友・黒龍との因縁が交錯する本編も、あわせてお楽しみいただければ幸いです。
【癒やし】蒼龍くん物語 〜小さな龍と学ぶ、心を調えるための「禅の智慧」〜
https://ncode.syosetu.com/n7536lr/
合掌 蒼龍堅明




