夢
充分…もう充分。
充分夢を見させてもらった。
凄く長くて、凄く幸福で、手放したくないと思える程の夢。
もういいんだ。
私には彼氏がいた
何度も何度も告白され
告白される度に私の心も彼へ寄っていくのを感じた。
そんな日々の中
[トラウマも忘れさせて、生きたいって思えるぐらいに幸せにする、だから付き合って欲しい]
なんて言葉を信じて付き合った。
それでもやっぱりトラウマが怖くて、何度も不安にもなったし、何度も傷付けた。
それでも傍に居てくれた。
けれど、彼は私以外とも交わりたいと
私が許すなら…だったけれど、私はどうせ早死しようとなんて考えていたから、彼のしたいことをして欲しかった。
それでも、やっぱりどこか寂しくて、嫌だという気持ちもあった。
そんな内容で、何度か喧嘩をしてしまった。
その度に
私の座る人生の椅子などないのだと。
彼の傍に居ていいわけが無いのだと。
[愛してる]彼からのその言葉も安堵の言葉じゃなくなって行く。
分かっていた。
私なんかが幸せになっていい訳がないと。
夢を見ていただけなのだと。
だから私は
「何してもいいから、私の傍に居て欲しい」
なんて、傲慢な事を彼へ望んだ。
私なんかの傍に誰かが居ていいわけないのに。
[当たり前、ずっと一緒に居る]
彼はそう言ってくれた、優しいから。
けれどいつか、私の隣以外の椅子へ座るのだろう、分かっている、分かっているし…それでも良いからと望んだ。
あぁ、神様…叶うなら
叶うなら…どんな短い一生でもいいから、どんな姿でも良いから…どんな場所でもいいから
今度は、彼の隣の椅子に座って、一緒に幸せな夢を見れるような、良いモノに転生させてください。
それ以外は望みません。
私の隣は彼がいい。
彼の隣は私がいい。
傲慢なのは分かっています。
それでも…叶えてください。
私は、貴方の事を心の底から愛していました。
ずっと、傍に居てもいいと思える人間に生まれたかったな…
まー…充分愛されたし、充分幸せになったかな…どうせなら、愛されてる内に…
またね。愛してる
数日後、ある家の中で独りの男が首を括って死んでいるのが見つかった。
足元には遺書らしきものがあり…自殺とみて捜査しています。
[なんで置いていくんだよ…なんで]
[…ごめん…ごめん………ごめん…]
[俺が…もっと…もっと…しっかり見てたら…]
「だいすきだよ」
[…ッ!?]
声がした気がした。
他人が聞けば、幻聴だと言うだろう。
後ろを振り向いても居なかったのだから。
きっと幻聴…そうだ
その日の夜不思議な夢を見た
彼氏と俺が手を繋ぎ、一緒に歩いている夢
「愛してる」
[俺も愛してるよ。]
[誰よりも、人生の中で一番…]
「…嬉しいな」
[だから、もう一度…]
「ダメだよ、私は地獄なんだから」
[…そんなのおかしいよ]
「何もおかしくないよ、ありがとう」
[…俺も地獄に行くから、一緒に居るから]
「絶対だめ」
[なんで!]
「君は優しいから、天国に行って欲しい」
[………一緒じゃなきゃ地獄に決まってる]
「私の代わりはいっぱい居るし、君は幸せになれるから」
[………]
「だから、生まれ変わったらさ、今度もまた…その時は…一緒に居てくれる?」
[絶対………約束]
「良かった」
その瞬間目が覚めた。
目が覚めた俺の目からは、大粒の涙が流れていた。
[………約束]
全て覚えている。
夢の内容を…全部。
幸せな夢だった。
続いて欲しかった。
目が覚めなくてもいいと思える程だった。
不思議な夢。死んだはずのあの人が出てきて、約束する不思議な夢。
忘れない。
ずっとずっとずっと忘れない。
良い夢を見させてもらったんだ。
いつか生まれ変わったら、今度は俺の隣に座ってもらおう。
俺の隣は…1人だけなのだから。




