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草原に降り立った“もう一人の勇者”

本来あるべきスキルが、勇者ではなく別の魂に宿ってしまった。

遠藤健太、もといブライスの人生やいかに。

風の音がした。

柔らかく、ゆったりと……まるで世界そのものが寝息を立てているような心地よい風。


濃い緑の草原が、波打つ海みたいにさらさら揺れていた。

天は高く、雲は白く、そのどれもがやけに鮮やかに見える。


遠藤健太――いや、これからブライスと名乗る青年は、

その草の上に仰向けに倒れたまま、ぼんやりと空を見つめていた。


「……え?」


最初に出た言葉は、間抜けそのものだった。


身体は軽い。

痛みもない。

息も自然にできる。


だけど――世界が、あまりにも違っていた。


(これ……夢?

いやいや、夢でこんなに風の感覚リアルなわけないし……

ていうか、俺バイト帰りに事故って……)


思い返した瞬間、胸がひゅっと強張る。


あの時、確かに死んだ。

身体が宙に浮いたような感覚と、暗闇に沈む感触。

すべてリアルすぎる記憶。


(まさか……本当に……?)


恐る恐る起き上がり、周囲を見回す。

草原がどこまでも広がり、遠くには大地を裂くような山の稜線。

鳥の声も、虫のざわめきも、風に揺れる草の音も全部違う。

この世界は、地球ではない――直感で分かった。


「……異世界?」


言葉にしてしまった瞬間、胸の奥が熱くなる。

あの時、死の間際に願った馬鹿げた妄想が蘇った。


(いやいや、そんな都合よく……)


そう否定しかけた時だった。


視界の端に、小さな透明な板――

まるでゲームのステータス画面のような“ウィンドウ”がふっと浮かび上がった。


「うわっ……!? なにこれ!?」


驚いて手を振ってしまう。

だがウィンドウは消えない。

むしろ健太の視線に合わせてゆっくり動き、文字を形作っていく。



《ステータス》


名前:ブライス(遠藤健太)

種族:人間

称号:勇者/神選の子/加護保持者×7/異界の来訪者

スキル:即時再生/無詠唱魔術/鑑定/創造魔術∞/剣術適性SSS/魔術適性SSS

加護:女神の祝福・完全譲渡/聖域の恩寵/精霊加護・上位/……他多数



ブライス

「……は?」


思考が止まった。


(なに……これ……俺?

いやいや、勇者? 加護保持者?

スキル……多すぎる……え、創造魔術? 無限? SSS?

おいおいおいちょっと待て、ラノベの主人公でもここまで持たねぇだろ……!)


震える指先で“鑑定”の項目に触れる。



■《鑑定》


対象の本質を読み取る。

スキル・魔法・存在の格・弱点を把握可能。

使用制限:なし。



(使い方簡単すぎない!?)


次に“創造魔術∞”の詳細をそっと開く。



■《創造魔術:∞》


使用者の想像力を元に魔素を変換し、

あらゆるスキル・魔法・物質を生成する能力。

制限は“創造主(使用者)の精神力”のみ。



ブライス

「……え、錬金術どころじゃないじゃん……」


胸がドクンと鳴る。


(これ……まさか……

俺、勇者のスキル全部……?

いやいや、そんなバグみたいなこと……)


信じられず、震えながら膝をつく。

しかし心のどこかで、

破滅系ダークファンタジー好きの“黒い願望”がひっそりと顔を出した。


(もし……俺が本当に最強の力を持ってるなら……

この世界で……暴れても……いいのか?)


そんな危険な願望をかすかに抱いた瞬間――

草原の空に、影が落ちた。


「……ん?」


見上げると、巨大な翼が空を切り裂いていた。


鋭い爪、赤い目、分厚い鱗。

尾が鞭のようにしなり、喉奥から低い唸り声。


――ワイバーンだ。


ブライス

「うそだろ…………?」


牙がこちらに向けて開かれる。


彼の脳内では冷静さとパニックが同時に回転していた。


(どうすればいい!? 武器ない! 逃げる!? 無理だ!!

とりあえず……とりあえず……!!)


思わず叫ぶ。


「わわわわわっ、とりあえず火っ!!」


次の瞬間だった。


右手を突き出したその掌から、

赤黒い魔方陣が無詠唱で展開され、

大気が震えるほどの熱量が一気に凝縮される。


「――――ッ!?」


ブライス自身が一番驚いていた。


魔方陣から放たれたのは、

“火の玉”なんて可愛いレベルではない。


天へ昇る太柱のような巨大炎塊。

草原一帯を白く灼き尽くす、災厄級の炎。


轟音と共にワイバーンは一瞬で蒸発し、

その後に残ったのは巨大なクレーターと焦げた大地だけ。


風が吹き抜ける。

草原には、沈黙だけが残っていた。


ブライス

「…………え?」


自分の手を見つめる。


(え……今の……ファイアーボールじゃ……ないよな……?

てか……俺、何やった……?)


震える声が風に溶けた。


世界はまだ知らない。

ここに“もう一人の勇者”が誕生したことを。

そしてこの青年が、のちに“災厄”と呼ばれることになる未来を。


彼自身すら、知らなかった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

設定疲れました....。

書いてる自分がウキウキすると同時に、

この展開を好む人は少ないだろうな、と思い込んでしまいました。

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