半魔の少年、闘技場で“禁忌”を犯す
魔族領入を果たしたブライスとリエルを書きました。
エルフの少女・リエルを家族として迎え入れたブライスは、
ついに魔族の大国──ヴァル=ガルデ帝国の中心街へ足を踏み入れた。
街に入って間もなく、圧倒的な魔力を放つ魔族の男が声をかけてきた。
「お前、只者じゃねぇな。とんでもないオーラだ。
この先で闘技場の模擬戦が行われてるんだ。出てみないか?
参加費無料! 武器も魔法も申告だけでOKだぜ!」
闘技場の存在を初めて知ったブライスは、
「模擬戦なら……力試しにもなる」
と参加を決める。
不安げに見上げるリエルに、ブライスは手を振って安心させた。
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参加者の列に並んでいると、
角の生えた女性の魔族がこちらを見て声をかけてきた。
「あなた、そんな身なりでこんな所に来ちゃダメよ、死んじゃうわよ。
うーん、あなたからはドラゴンの気配を感じるわね。
あ、そうそう。私は サリエラ・ヴェルデ。よろしくね。」
ブライス
「どうも、ブライスです。ドラゴンですが。確かに僕は半分人間半分魔族です。」
サリエラ
「半魔!? 珍しいわね。
私、百年以上生きてるけど見たことないわ。
ここに来て正解だったと思うわよ。半魔の力──見せてちょうだい。」
ブライスは苦笑しつつも、胸に少しだけ期待が膨らんだ。
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アナウンス
「続きましての挑戦者──
使用武器は魔法のみ!
見た目は人間、しかし中身は魔物の半魔!
ブライスーーッ!!」
観客
『魔術師か?』
『杖持ってなくね?』
『半魔!? 初めて見たぞ!』
続けて、対戦相手が告げられた。
アナウンス
「対戦者は、ヴァル=ガルデ帝国で知らぬ者はいない!
魔法戦闘の名手──
帝国筆頭魔術師、サリエラ・ヴェルデーーッ!!」
ブライス
「……さっきぶりですね。」
サリエラ
「ふふ、まさか私が筆頭魔術師だとは思わなかったでしょう?」
ブライス
「驚きました。そんな方と戦う日が来るなんて……」
サリエラ
「大したことはないわ。それより、半魔のあなたの魔法を見たいの。」
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アナウンス
「それでは──開始!」
サリエラは詠唱を始め、杖を空へ掲げた。
ドラゴンを模した緑色の稲妻が空を駆け巡り、観客席がどよめく。
サリエラ
「次はあなたの番よ。」
ブライスは準備ができていなかった。
とっさに彼女の真似をする。
赤いドラゴンの稲妻が空を走り、観客がさらに騒ぎ立てる。
サリエラ
「私の魔法を真似るとはね。」
ブライス
「すみません……何をすればいいのか……」
サリエラ
「ははっ、怒ってないわよ。
でもね──十年かけて作った魔法を一瞬で真似されるなんて思わなかったわ。」
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サリエラ
「じゃあ次は──模擬戦と行こうか。」
彼女が足を踏み込んだ瞬間、砂埃が舞い、
次にはブライスの目の前にいた。
魔法をまともに受け、吹き飛ばされるブライス。
立て直しながら結界を展開し、後退しつつ攻撃を避ける。
サリエラ
「逃げてばかりじゃ模擬戦にならないよ!
まさか……半魔じゃなくて、ただの人間じゃないでしょうね?」
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その瞬間だった。
胸の奥で、何かがぷつりと切れた。
ブライス
「……だ……らいだ……
人間は──大嫌いだ!!」
――そこからの記憶はない。
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気がつけば、ブライスは地面に倒れていた。
リエルの膝枕の上だ。
遠くには、ボロボロになった サリエラ が動かずに倒れていた。
リエルの話によれば──
・“人間ではないか”と言われた瞬間に暴走
・左手から《シャドウランス》を放ち攻撃
・右手でもランスを生み出し、逃げられないよう足を貫く
・そのまま何度も槍を叩き込んでいた
……とのことだった。
闘技場の運営者から、
「一年間の出場禁止」 を宣告されたのも当然だった。
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リエルと食事に出ると、周囲の客がヒソヒソと囁き始める。
『あれが筆頭魔術師を叩きのめした半魔か……』
『模擬戦でやることじゃねぇよ……』
気まずさにブライスはリエルへ謝ろうとしたが、
彼女はなぜか 嬉しそうに微笑んでいた。
そんなリエルに救われながら、
その日は宿を見つけ、二人で一泊することにした。
闘技場を出禁になってしまったブライス。
リエルと2人で魔族領に入ったものの、まだまだトラブルは続きそうです。




