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人間としての光は砕け散る。

ブライスが、人間の残酷さと向き合う話です。

本来、街の孤児院には国から資金が支給されるはずだった。

だが――


① 貴族がその資金を横領していた。


名目は“街の維持費”。

実態は“宴会”“宝飾品”“税逃れ”。


孤児院には一銭も届いていない。



その不足を補うため、

院の修道女たちは自分の食事を削って子どもたちに回していた。


② 修道女は衰弱し、孤児たちはいつも空腹だった。


それでも笑っていた。

ブライスを見ると駆け寄ってきて、

今日あったことを嬉しそうに話してくれた。


だから気づけなかった。

いや、気づけるはずもなかった。



そして極めつけは、

街を支配する“歪んだ女神信仰”。


③ 神官たちは孤児を「魔に汚れた存在」として蔑んでいた。


彼らにとって孤児とは、

女神の加護を受けられない“無価値な魂”。


死んでも土葬の価値はない。

山奥に捨てるだけでいい――

そんな扱いだった。




その日の午後。

街の広場の近くで、密偵がまたブライスを観察していた。


魔族の密偵

「……今日も人間としてうまくやっているね。

 君がどっち側に転ぶのか、興味がある」


ブライスは答えない。


その時だった。

密偵の存在を“魔物の気配”と誤認した過激派神官が叫ぶ。


神官

「魔物だ!! お前ら、下がれッ!!」


神官の放った浄化魔術が、密偵へ向かって飛ぶ。


密偵は涼しい顔で避ける。

だが魔術はそのまま、ブライスの方へ。


孤児

「お兄ちゃん危ない……!」


近くにいた孤児が叫んで走り出す。


その瞬間――

孤児の体が崩れ落ちる。


過激派神官の放った魔術が孤児の体を2つに裂け切った。


ブライス

「え……? ねぇ……なんで……?」


子どもは微笑んだまま目を閉じていた。




神官は吐き捨てるように言う。


神官

「殺す気は無かったのに。

 この孤児も、魔に汚れたから死んだのだ。」


ブライスの手が震えた。


「やめろ……それは違う……違うだろ……!」


神官

「死んで当然だ。

 孤児はどうせ土葬にも値せぬ。

 荷車に乗せて山に捨てよ」


ブライスの心が音を立てて軋む。


背後から、密偵が静かに近づいた。


魔族の密偵

「ね?

 人間って、残酷だろ?」


ブライスの呼吸が止まった。


密偵は続ける。


魔族

「君が人間を守る側なのか。

 それとも……

 ボクと同じ《こっち側》へ来るのか。」


誘いではない。

脅しでもない。


ただの“見極め”。


それが密偵の役割だった。




ブライス

「なんで……なんでだよ……っ!!」


孤児の亡骸を抱きしめた瞬間――

何かが、胸の奥で“パキッ”と割れた。


背中に熱が走り、

赤い鱗が浮かび上がる。


肉が裂けたような痛みとともに、

赤い翼が破れるように飛び出す。


額が焼けるように熱くなり、

黒い角が捻れながら生える。


瞳が見開かれる。


黒い瞳が真っ二つに割れ――

金色の縦長の瞳孔 が現れた。


次の瞬間。


「ふざけんなアアアアアアアアアアアアッ!!」


魔素が爆発した。


真っ黒な霧が渦を巻き、

金と紫の稲妻がその中を暴れ狂う。

近くにいた神官は為す術もなく、

ブライスの魔素に吸収されていく。


10秒以上も吹き荒れる魔素。

石畳が砕け、空気が震え、

建物のガラスが割れた。


冒険者たちが駆けつけ、叫ぶ。


「ブライス……!?おい嘘だろ……!」

「なんで翼なんて……!」

「それ、魔族じゃねぇか……!」

「お前……どうしちまったんだよ……!」


宿屋の女将も、

市場のおばちゃんも、

受付嬢も震えて立ち尽くす。



涙が落ちる。


(……密偵の言葉が……正しかった……

 人間は……残酷で……醜い……

 僕は……もう……ここにはいられない……)


赤い翼が広がる。


亡骸を抱き抱えたまま

ブライスは地を蹴り、

土埃を巻き上げながら――

森の方向へ飛び去った。


誰の声も届かなかった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。


もう少しだけ光を信じていた心は、人間の残酷さで砕け散ってしまった。

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