最終話 プラネット・レギオン
ホシモリの拠点に荷物や譲って貰ったプラネットのパーツやワープポッドの部品など様々な物を運び込んでから数日後。
その拠点の地下に作ってもらった分厚いコンクリートに囲まれた部屋でホシモリとイクシオーネは朝早くからワープポッドのディスプレイやコアモジュール等を設置し配線などを繋いでいた。
「相棒。すみませんが私の体ではその隙間に入れません。義眼にデータを送りますので中に入って配線の接続をお願いします」
あいよとといつもの様に返事をしイクシオーネが言った隙間に入ると様々なケーブルが剥き出しになっており誰が見ても訳が分からない事になっていた。
すぐにイクシオーネからデータが奥手来られると義眼にどのケーブルが何処に繋がっている等が映し出された。そしてケーブルを繋ぐ順番なども記載されていたのでホシモリは超振動ナイフで切ったりヒートナイフで溶かしてくっつけたりしてケーブルを繋いでいく。
この星にも絶縁テープによく似た物も売っていたので最後にそれを巻きイクシオーネに確認してもらう。
「どうだ相棒。繋いだが大丈夫そうか?」
確認してみますと言ってイクシオーネはケーブルの端を握りエネルギーを流すと繋がっているようでディスプレイとコアモジュールが点灯する。
「流石は相棒です。問題無くコアモジュール、ディスプレイ供に点灯しました」
ホシモリは機材の隙間から這い出しせっかく点灯したにもかかわらずげんなりした顔で大きくため息をついた。
「はぁ……これからシモンさんに貰ったプラネットのエンジンユニットに繋ぐのが大変なんだよな……まぁ相棒がいるから繋ぐだけで悩まなくて良いのは楽なんだが……」
「はい。ですが百を超えるケーブルを加工し繋ぐのは苦行と言って差し支えないので大変と言って問題ありません」
「文句言いながらでも手さえ動かせばその内終わるか……さてと頑張りますかね」
「はい。ですが今日はここまでです。そろそろトルキャット商会に行きベルナ・トルキャットを学校へ送る時間です。それに午後からはライグ・トルキャットが工作機械の搬入と取り付け予定が入っています」
そうだったとホシモリは背伸びをしてからイクシオーネと供に地下にある昇降機にのり地上へと上がり軽くシャワーを浴びてからトルキャット商会へと向かう。
ホシモリの新しい拠点は王立都市の工業地区にあり少しだけ入り組んでいたが拠点の前を通るとベルナが通う学校へ少し速く送って行ける様な場所だった。トルキャット商会は近く何より安くて広かったのでその土地に決まった。
建物は二階建てで一階がレムザスを整備したり様々な物を製作するスペースになっており大きさも中型のレムザスが2~3機ほど格納しても余裕がある作りになっている。そして二階が住居になっているがホシモリは基本的に地下室のソファーで寝るので二階の住居は基本的に物置になっていた。
地下室からガレージにに上がりシャッターを上げて外に出ると今日も良い天気で近所の子供隊の声が聞こえていた。ホシモリはレムザスの試験に合格していたのでレムザスを街中で使役できる様になったので、イクシオーネをレムザスとして扱いトルキャット商会へ向かいながら話をする。
「レムザスの整備とか修理で生計立てるなら立地的に向いてないが……相棒の整備と帰還用の研究開発がメインだからこれぐらいで丁度いいな」
「はい。この場所なら私を見られても少し離れていますので、トルキャット商会が開発したレムザスに思われます。家を囲うフェンスには防音の魔術もかかっているとの事などで地下で多少なら兵器の開発も出来ます」
「その辺りの事を考えると魔導工業都市でも良かったな。工業地区とは言え重火器の試験とか目立ってできないし」
「相棒が世間体を気にしないのであれば問題ありませんが警備兵に目をつけられると厄介です」
「地下でやるにしても強度試験とかぐらいだな。庭は……歩行試験ぐらいか?」
「はい。近隣住民に不安を与えない方が良いと思われます。それと話は変わりますが精霊達から庭が空いているなら休憩所を作って欲しいと要望があります。この都市には精霊が休める場所がないそうなので」
「そういやこの都市に来てから全くと言っていいぐらいみないな。作るメリットはあるか……魔法についても聞けるしな」
「はい。スピリットイーターの様な高額な魔獣が出現した場合は精霊達から伝わると思われますので金銭に関してもメリットはあります」
「休憩所を作るにしても設計図とかあるのか?」
「昨夜に聞きましたが複雑な物ではなく池を造りその池の周りに石柱を立てて欲しいとの事です。それだけしてもらえれば草花は自分達で植えるとの事です」
「穴掘って水の魔石入れて池作るか。ベルナちゃん送ったら帰りに都市の外出て石切って石柱つくるか」
そんな話をしていると目的のトルキャット商会へと着いたので庭で掃除をしていた使用人に挨拶をしてから魔導車が置いてある倉庫へと向かった。
倉庫に行くと番犬のベスがいつもの様に尻尾を振って待っておりベルナが来るまでボール投げて遊んだりドッグフードをオヤツがてらに摘まんだりして時間を潰した。
「前に食ってたやつの方が美味くないか?」
「バウバウ!」
「だよな。ベスもそう思うよな」
会話になっているのかなっていないのかは分からなかったが、ホシモリの耳に小さなため息が聞こえた後にシルバとベルナがやって来た。
「ホシモリさん……お腹が減っているのであればご用意しますのでドッグフードを食べなくても……」
そう言われたがホシモリは全く気にした様子もなく二人に挨拶をするとシルバは色々と諦めた様に挨拶を返し、ベルナは元気よく挨拶をした。
そしてホシモリとベルナが魔導車に乗り込み出発しようとした所でシルバが思いだした様にホシモリを呼び止める。
「ホシモリさん。シモン様がお話があるようなのでベルナお嬢様を学校へ送ったら書斎の方に来て欲しいとの事です」
「まじか庭作ろうと思ってたんだが。まぁ急がないし分かった。ベルナちゃん送ったら寄るは」
「ありがとうございます。それにしても庭ですか?」
「ああ……詳しい事は相棒に聞いてくれ。じゃあちょっと行って来る」
「ではシルバ。行ってきます」
「はい。行ってらっしゃいませ」
トルキャット商会の庭を広い出て運転なしないが何かあった時の為にすぐにハンドルを切れるようにホシモリが運転席に座り後ろのせきに座るベルナに世間話をする。
「そういやごきげんさんと遊びに行ってから仲良くなったとかなってないとか聞いたけど……無理とかはしてないか?」
「はっはい大丈夫ですよ。セレットさんも私が人見知りと言うのも知っていますから前より少し話をする時間が増えたという感じなので」
「なるほどな。俺が呼んだんだし無理してないなら良かった」
「正直……同年代の友達が欲しいとは思っていたのでこれを機に頑張って見ようと思います。ホシモリさん……ありがとうございました」
「どういたしまして。女学生って友達とどんな話するんだ?まったく想像つかないんだが」
そういうとベルナは少し恥ずかしそうに下を向き、私にしろセレットさんにしろ普通の女生徒とは違う様でレムザスの話などをしていると声を小さくして言った。
ホシモリが考えていた女生徒の想像図よりはかけ離れていたがベルナとセレットがレムザスの話をする光景が簡単に想像できたのでそれがおかしく声を出して笑った。
「ホッホシモリさん!どうして笑うんですか!」
「ははは。その光景が簡単に想像できたからな」
ホシモリが笑った事でもう知りません!とベルナは少し腹を立てたので機嫌を取るのに少し苦労したが学校へ着く頃には直っており互いに手を振って別れた。
天気もよく気分も良かったので鼻歌を歌いながらトルキャット商会へと戻っていった。
商会に戻り魔導車を車庫に戻すとイクシオーネの所にシモンとシルバが集まってテーブルを用意し軽食を取っていた。
ホシモリがシモンに話しかけようとするとシルバがお座りくださいと言ったので席に着き飲み物を貰った。
「それで?シモンさん用事ってなんだ?」
「はい。前にホシモリさんが持って帰ってきたアースドラゴンの牙で作っていたナイフが完成し届いたのでお渡ししようと思いましたので。シルバ」
シルバは用意していた綺麗な宝箱を手に取りホシモリに向かって差し出した。ホシモリはその宝箱を受け取り開けると中には長く白い刃にナックルガードがついたナイフにしては少し長い刃物が入っていた。
ホシモリがそれを手に取り握ると思った以上に軽くしっかりした作りになっていた。
「ナイフにしては刃が長い気もするが……軽いしなかなかいいな」と言いながら構え動くと初めてその武器を使った様には見えずシルバを驚かせた。
「ホシモリさんの持っている二本のナイフより少し長めにしガードをつけて防御面を上げてあります。ホシモリさん。身体強化の要領で少しだけでもそのナイフに魔力を流してもらえますか?」
頷き言われた通りに魔力を流すと指の部分を守っていたパーツが広がり手全体を守る様に展開された。
「おお!すごいな!」
「切れ味の方も凄い物がありますがホシモリさんの持っているナイフに比べると遙かに劣るので防御面で強化してあります。本来ならもう少しその盾も大きくなるんですが……」
ホシゴリは魔力が無いからな とシモンの話を遮るようにロチェットが現れ、貸してと言ってホシモリからナイフを奪い取り魔力を流すと刃の部分は消えたが盾は大きく展開しロチェットの上半身を覆うような形になった。
「どうだ。ホシゴリ凄いだろ」
「お前はウザいがそのナイフは凄いな……連合にも形状が変化する金属はあったが……この星の技術力はかなり高いな」
ロチェットからナイフを奪い返し、同じ様に魔力を流すがやはり手を守る様に展開されるだけだった。
殴るのにも使えるからこれでいいか……と言いながらロチェットの顔面を防御部分で殴ろうとしたが読まれていたようで簡単に躱されゴリラと煽られる。
そのままいつもの様に喧嘩? 殺し合い ?に発展しそうだったがそれよりも重要な事があったのでホシモリはシルバに質問する。
「さて……このバカザルは放って置いて、シルバさん的に俺が魔力が低いのってどう思う?俺が調べた感じだと魔力って皆が持ってる物なんだよな。多少の多い少ないはあるが……」
「そうですね……基本的には魔力量は自分の身体と同じ量なので人体が欠損してたりすると減りますし小柄な人より大柄の人の方が多かったりしますが……」
そう言ってホシモリを上から下まで眺めるがどこからどう見ても五体満足だったので頭を悩ませた。
それなら私分かると言ってロチェットが手を上げたのでホシモリはアホの子を見るような目で優しく煽る。
「あー……ろちぇっとにはわからないとおもいます。ことばをりかいできますか?」
「ちょっと装備整えてくるから一回本気で殺し合わない?お墓ぐらいは作ってあげる」
「じぶんのおはかをつくるとかないすじょーくだね!」
ホシモリとロチェットの視線が交差し火花所では無いミサイルやロケランの類いが飛び始めそろそろ本格的に危なくなったのでシモンとシルバが慌てて二人を止める。
どっちが子供で大人なのかは分からなかったが……大きくため息をついた後にロチェットは話し始める。
「ホシゴリの体って強化臓器って入ってる?」
「ん?教えた所で問題無いからいいか……左目と心臓、肝臓、肺だな。腸とか胃は強化まではいかないが吹っ飛んだから遺伝子組み換えクローンで培養して交換した」
「……良くそれで生きてるな。それが原因。魔力って体に留まると言うか正確には体内に溜まってあふれる感じ……ホシゴリの場合は内臓とか後付けだから体が別物だと判断して留まらない感じ。だから魔力を練ったりできないから魔法を使えない。使えても周りの魔力を取り込んですぐに放出するだけの物」
ホシモリが返答に悩んでいると待機していたイクシオーネが先にロチェットに質問する。
「とても貴重な意見をありがとうございます。ですがその答えだとロチェット・ロエットにも当てはまるのではないでしょうか?」
「私の体の中身って全部強化臓器だけど……胎児の頃に入れられて遺伝子操作されて組み込まれたから……問題ないのかな?って思ってる。生まれてから二十年交換したこと無いし。こっちの星で移植手術試したけどその人は魔力減った」
「なるほど……ありがとうございます。相棒は長い臓器で八年と三ヶ月なので時間も関係しているのかもしれませんね」
「それはあると思う。そこのゴリラは知らないけど強化臓器が体に馴染むのって時間がかかるって聞く」
イクシオーネが強化臓器に取り替えた患者のデータを調べるとロチェットが言った様な事例が多数存在していたので、ロチェットの考えを答えの候補として記録し礼を言った。
「プラネットとそのパイロットの正確は似るけど……そこのゴリラよりイクシオーネは人だね。ゴリ君……もう少し頑張って人になった方がいいよ?言葉分かりますか?」
そう言われてホシモリも黙っている訳も無く……
「確かに相棒は俺より人だな。俺もそう思う。だが……お前もアンタレスにも言える事だぞ?アンタレスは知的美人って感じだが……お前はどう見ても真逆だろ」
「はっはっはー。ホシゴリ君は面白い事を言う。じゃあ私はブスで馬鹿か?救いようなくない?」
「ようやくりかいできまちたか?」
そしてゴングを鳴らす様に……穏やかな時間を吹き飛ばす様に風が吹き抜ける。
机の上に置いてあったアースドラゴンのナイフをロチェットが奪い構え、ホシモリも何も言わずにヒートナイフと超振動ナイフを構え……死闘が始まる。
流石のイクシオーネもレギオン同士の殺し合いに巻き込まれては大破する危険があるのでシモンとシルバを連れてホシモリの新居に向かう。
「相棒とロチェット・ロエットの戦闘は夕方には終わると思われますので、申し訳ありませんがシモン・トルキャットとシルバトルキャットはお昼からの工作機械の搬入のお手伝いをお願いします」
二人とも手伝いに行こうとは考えていたので……本気で殺し合いをしている二人をみて苦笑しながらも快く引き受けた。
木が倒れる音やガレージのシャッターに大きな物がぶつかる音を聞きながら歩き始めシモンはイクシオーネに質問する。
「イクシオーネさん。工房の名前は決まりましたか?」
その質問にイクシオーネはいつもと同じ音程だったが聞けば嬉しそうに答えたと誰もが言う声で答える。
「はい。プラネットレギオンです」
おしまい
だいぶ前に書いた物ですがここまでお読みただきありがとうございます。ここで一旦完結になります。
びっくりするぐらい読まれたらまた書くかも知れません。何せ昔の作品なんで設定忘れてたりもするので……次の章で飛龍とか殴って従わせて降下作戦とか考えてた様な気もする。