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「そうそうベルナちゃん」
「はい。どうしましたか?」
ホシモリがやたらと食べるのもあるがベルナは基本的に小食なのですぐに食べ終わりホシモリやシモンの話を聞いている事が多く今日も皆が食べ終わるのを待っていた。
「明日、ごきげんさんが遊びに来るって言ってた」
「はい?…………うえぇぇぇ!?」
ふだん物静かなベルナがかなり慌てだしたの父親のシモンは少し驚いたが嬉しそうにホシモリの会話に混ざってきた。
「ほう。それは良いことですな。ベルナは本当に人見知りが激しいので学校に通い出したにもかかわらず誰かと遊びに行ったとかはないんですよ」
「そうなんだな。ごきげんさんはちょくちょく誘ってるけど断られてるって言ってたぞ。というかベルナちゃんは苦手なのか?」
「いっ言え……苦手と言う訳でも無いですし普段からでも積極的に話しかけ来てくれる良い人なんですが……どうも家族やトルキャット商会の使用人以外とは話すのが苦手で……」
「俺とは普通に話してるけどな」
「ベルナからすれば命お救ってくれた親戚のお兄さんって感じでしょうね。それで?ごきげんさんと言う方はどちら様で?ベルナのクラスメイトと言う事は分かりましたが……」
ベルナは小さくため息をついた後にシモンにごきげんさんの事を説明する。
ホシモリが自分を迎えに来る時に仲良くなり口癖の様にごきげんようと言うのでそのあだ名がついたが本来の名前はセレット・スクパーレと言う名までスクパーレ伯爵の一人娘だとシモンにベルナは伝えた。
その内容にシモンは少しだけ驚いた後にせっかく誘って頂いのだから遊んで来なさいとベルナと言った。。
「スクパーレ伯爵の娘さんでしたか。何度か話をしましたがしっかりしたお嬢さんですね」
「たしかにしっかりしてるな。冗談も通じるし」
「あっ明日は……ホシモリさんの工房に道具を運び込むお手伝いをするので無理ではセレットさんと遊ぶのは無理ではないでしょうか……」
「ベルナが本気で嫌なら俺から謝っとくが……どうやっても明日のお手伝いは無理だぞ。普通に危険物とかあるから俺と相棒とシモンさんとシルバさんとロロ子の五人で運び込む」
ホシモリがそう言うと嫌では無いですが……と言って色々と諦めた後にテーブルに顔を沈めた。
「ベルナが将来何になりたいかは分かりませんが……うわべだけの付き合いでも人脈は作って置く方が良いですよ。それが友人や気の許せる方となるとなおさら良いですからね」
顔を上げること無くベルナは小さく返事をしいつの間にかほぼ全ての料理をホシモリは食べ終えており近くにいた使用人にコーヒーを入れてもらってからシモンに質問する。
「そうそう。試験会場でニケルって名のドワウス族と知り合ったがシモンさんは知ってるか?ごきげんさんの事をお嬢様とか言ってから身内とは思うだよな。一から百まで聞く訳にもいかない聞かなかったが」
「身内と言えば身内ですが雇用主の娘と従業員ですね。スクパーレ伯爵もレムザス関係の商会を持っています。その商会の製造や組み立て等を行う工場を任されているのがニケルさんですね。なかなか気難しい方ですがよく知り合えましたね」
「向こうから話しかけて来たからそんな気難しい感じはしなかったな。工場吹っ飛ばした話の云々はごきげんさんから聞いたしな」
その話の詳細を知っていたのか、その人的被害を見たのかは知らないがシモンの顔は青くなり顔をひくつかせて笑い思い出すのも嫌な様で只の災害ですねととだけ言った。
「よくそれで捕まったりせずにレムザスの試験が取れたよな」
「はい。本来は終身刑でしたがスクパーレ伯爵が助けました。元は侯爵でしたが伯爵に降格し資格取り消しと言う形に落ち着きました。死人は出ていませんがあれだけの事をやらかしてその程度で済んでいるのは他の貴族に好かれているのとニケルさんの技術力のたまものですね」
「シモンさんにそう言われるって事はよっぽどか……カタログとか頼んだけどトルキャット商会との付き合いは悪かったりしないよな?」
「大丈夫ですよ。良好と良いぐらいには付き合いがありますね。うちのレムザスを戦闘仕様にチューンしたりする商会ですから」
「仲悪かったらどうしようかと思ったが……まぁ良かった。あとこの国の貴族ってどういう立ち位置なんだ?俺の知ってる貴族だと領地経営が基本って感じだが、こっちだとそんな感じしないし」
「大昔はホシモリさんが言う様な感じでしたか……今は政治に関わってる人を貴族と呼んでいますね。昔から貴族は政治に深く関わって来ましたからその名残で貴族と呼ばれています。領地も今は人も増え魔獣が出ても対処出来ますから国で管理していますね。爵位もありますが高ければ政治等に口出しできて権力を持ってるぐらいの認識でいいですよ。細かく言えばキリが無いですからね」
「なるほどなー勉強になった。シモンさんありがとう」
「いえいえどういたしまして。という訳でベルナ。今の話にもありましたが人付き合いやコネがあれば助かる命もあるのでいつまでも悩んでないでたまには出かけて来なさい」
「……は~い」
◆ ◆ ◆
次の日を迎え見られてはマズイ物がかなりある為にホシモリ、イクシオーネ、シモン、シルバ、ロチェットの五人はホシモリの拠点に運び込む為の荷物を整理していた。
「おっ?グレイハウンドだ。ホシゴリこれ欲しい。アンタレスが直ったらつけて」
「絶対にやらん。と言うかアンタレスのデータ見せてもらったが強襲用で熱感知とかにひっかかり難くする為に出力さげて作られてるから新品でもその兵器はつかねーぞ……そもそもなんで帝国が連合の兵器の名前まで知ってるんだよ」
「はっはっは。連合も一枚岩ではないのだよ。分かるかね?ホシゴリ君」
その小憎たらしい言い方に近くにあった工具の一つでも投げてやろうかと思ったが、ロチェット相手に当たる訳も無く路頭に終わる事が見えていたので工具を置きバラバラになっているアンタレスを丁寧にコンテナに並べていく。
「私のパイロットがご迷惑をおかけします」
「もう少し弱かったらボコって縛って魔獣の餌なんだが……そういや、俺が乗ってこっちに飛ばされたワープポッドにナノソナースモークグレネードが入ってたんだが、連合から帝国への横流しの情報とか無いよな?」
少しお待ちくださいといった後に自信のデータを調べはじめるがロチェットにしてもアンタレスにしてもただエースなだけであって軍の機密に関する事までは分からない様だった。
「まぁしゃあない。俺にしてもロチェットにしても只の兵士だしな」
「私はエース」
「お前は黙れ」
「私のパイロットが度々すみません……ただ帝国にいる時に研究開発から仕入れたと言う様な噂話は残っていましたので連合に戻ったらその辺りを調べて見るのも良いかもしれません」
「あそこか……そういや最近、羽振りが良かったな。戻ったら洗ってみるか」
アンタレスの部品を全てコンテナに積み込んだタイミングでロチェットがシモンに呼ばれその場を離れたのでホシモリはアンタレスに少し質問をする。
「ロチェットは元の星というか帝国に戻る気はないのか?」
アンタレスは考える間もなくすぐにありませんと答えホシモリを少し驚かせ答えを続ける。
「帝国の洗脳が解けたのが一番の要因は間違いありませんが……SRCであるロチェットは培養液の中で作られた存在です。戻った所で故郷と言った星はありませんし生まれた巡洋艦は等の昔に墜とされています」
「……それでも兵士だろ?」
「今はハンターです。と言うよりも戦い方が変わった変わっただけでここが私のパイロット。ロチェット・ロエットの新しい戦場と言うだけの話です」
「なるほどな……強襲部隊から補給部隊に行っても戦いが終わってる訳じゃないもんな」
「はい。それにこの星でハンターとして戦場に行くのは帝国と連合の戦場よりも遙かに死が遠いですからね。幾ら魔法があるとはいえ理不尽に殺される心配は少ないので」
「まぁ……巡洋艦とか戦艦の主砲くらって宇宙に投げ出されたらアウトだもんな」
「それ以前に戦艦の主砲をくらえば蒸発します」
それもそうだなとホシモリが笑い話が終わる頃にはアンタレスのパーツの積み込みが終わった。シモンやシルバ達も片付け終わった様でイクシオーネに頼みキャリーホースが引くに荷台にコンテナを並べていく。
「相棒。そちら終わりましたか?」
「おう。頼む運んでくれ」
「了解しました。シモン・トルキャットが区切りが良いので休憩にしましょうとの事です」
「あいよ」
ホシモリがシモン達の元に行くとシルバが紅茶を用意しておりホシモリも席に着いた。
しばらくゆっくりしホシモリが紅茶をがぶ飲みしているとトルキャット商会の正門の呼び鈴というには少し大きな鐘の音が鳴り響いたのでシルバが失礼しますとそちらに向かった。
ホシモリもシモンも誰が来たのかが想像出来たので少し笑いながら待っていると黒を基調とした本体に色鮮やかに装飾された美しい馬車が現れた。そしてその中かから使用人と思われる男性が現れた現れた後に、本日遊びに来ると言っていた。ごきげんさんことセレット・スクパーレ嬢が現れた。
そしてトルキャット商会の会長であるシモンに丁寧に挨拶をした後にホシモリとロチェットにも挨拶をする。
そして挨拶が終わった後に軽くパンパンと手を叩くと使用人の男性がA4サイズより少し大きな金属の板を馬車から取り出しホシモリに手渡した。
「ホシモリさん。それが昨日ニケルに頼んでいたスクパーレ商会の商品がまとめられた物になりますわ。紙媒介も考えましたが……流石に大型レムザスを抜きにしても鋼材や兵装、中型レムザスになると凄まじい量になるのでそちらをお持ちしましたわ」
「ありがたいが……どう使うんだ?」
「右上についている突起物に手で触れると起動しますわ」
言われた通りに右上についていた突起物に手を触れると金属板が少しだけ発光しホログラフィックの様に金属板より少し上にスクパーレ商会のロゴと思われるロゴを表示させた。
「凄いな……」
「それはスクパーレ商会が開発した魔導板の最新型ですわ。そのロゴが表示されると仕様が可能ですわ。使い方ですけど話しかけるだけで大丈夫ですわ。……そうですわね。小型レムザスの背部強化ユニットを表示させなさい」
セレットがそう言うと魔導板に伝わった様で何種類かの候補が画面に表示された。そしてその表示された名称にセレットの小さな指が触れるとそのパーツが立体的に表示され各種データや金額や簡単な納期が表示された。
「ほー。コイツは便利いいな。この感じだと新商品とか出たらスクパーレ商会に持って行けばデータ更新してくれるのか?」
「話が速くて助かりますわ。来て頂ければ私が喜びますけどデータの更新ならトルキャット商会にも送っているのでシモンさんに頼めば出来ますわ」
「分かった。ありがとうって言いたい所なんだが……これ幾ら払えばいいんだ?試験会場で似た様なの見たが……街でもこんなの見てないぞ」
「軍とかそれなりの地位以上の人しか持っていないので基本的に一般の方には出回っていないものですわ。ですけれどそれは差し上げますわ」
「いいのか?病気と放たれた弾丸以外は割ともらうタイプだが……」
「かまいませんわ。試験を一発合格でベルナさんのお兄さんのような方ですからね。恩を売るとは言いませんけどどんな縁であれ作っておくのが正解と私は思っていますのでその程度安い物ですわ。あと風の噂でとてもお強いと聞きますし」
「分かった。じゃあ遠慮無くもらっておく。困った事があったら犬の散歩から魔獣の討伐まで頼ってくれ。一回は無料にしとく」
「分かりました。でしたら私とデートでもしませんか?」
「奢ってくれるならサービスにしとく」
「なるほどそれは難しいですわね。ではわたくしはベルナさんの所に行きますので皆様ごきげんよう」
ご令嬢らしく丁寧に頭を下げて馬車の方に向かっていたが職業病か何かしらないが待機していたイクシオーネの方に向かって歩き始めたのでホシモリが笑いながらそれは中型レムザスの格好をしているがトルキャット商会の新型だからあんまり見たら駄目と言うと誤魔化すようにオホホと笑った後に馬車に乗って本宅へと向かった。
「あの歳で凄いな……トリシュさんと同じ気配がするな……将来が楽しみな反面、敵対したらトルキャット商会潰されないか?」
「本当にそう思いますね……ですからクラスメイトで友人と言って頂けてる間にベルナはセレットさんと仲良くして頂きたい物です」
ホシモリが少し冷えた紅茶を飲んでいると魔導板に興味があったのかイクシオーネが近くにやって来た。
「相棒。その魔導板を貸してもらえますか?私でも使えるのかが気になります」
イクシオーネに魔導板を渡すと問題無く使用できる様でスキャンをしたり様々なデータを見てい楽しんでいた。
そしてそろそろ拠点に荷物を運ぼうかと考えていたタイミングでロチェットがホシモリに喧嘩を売る。
「……ホシゴリってベルナお嬢とかあんな感じなのが好みなの?……まさか小さい子大好き子おじさん?」
そのニヤニヤしながら煽るロチェットにかなりイラッとしながらも優雅にホシモリも喧嘩を売る。
「まぁ……言いたい事はわかる。セレットちゃんは誰が見ても美人だし冗談も通じて頭も良いし家が金持ちだからって天狗にならずに俺みたいな一般兵にも話しかけてくれる程に人間出来てるもんな。誰かと違って」
「ホシゴリ……何が言いたい」
「比べるのもおこがましいが…………お前!ブスだもんな!」
その瞬間に机が吹き飛びいつの間にか戻って来ていたシルバがシモンを抱え本宅へと避難した。
それから後はホシモリとロチェットの実戦訓練となったので拠点に荷物を運ぶのは午後からになった。
ベルナ達も午後からは街へ買い物に行ったらしいが戻って来た頃にはホシモリの顔を見ると少し赤くなっていた。