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本日の試験勉強が終わりアンタレスことアンコと勝手にホシモリが名前をつけ使えるパーツと使えないパーツを相棒のイクシオーネと供に片付け終わる。
「アンコの装甲ってナノニウム合金じゃないんだな?」
「はい。帝国が新開発したゼオメテント合金です。ほぼ全ての毒物に耐性を持ちアルミより軽く鉄より硬い金属です」
「ほー……凄いな。再生はしないんだよな?」
「しないのとガラスによく似ているので衝撃には弱点があります。ですので見て分かる様に複数の金属が重なる様に使われていると思います」
「まぁ……よくこんな新型が投入された戦場で俺も相棒も行き残ったもんだ……特にこういう形に組み上げて欲しいとかは無いんだよな?」
「はい。ロチェットをの手伝いができる形であれば特に問題はありません」
「まぁ……使えるパーツはほとんど無いから中型より上は無理だな……ぼちぼち考えるか」
アンタレスへのエネルギーの供給は完全に安定し倉庫の片付けも終わったのでホシモリとイクシオーネは倉庫の前でベルナと遊んでいるロチェットに声をかけて隣の自分達の倉庫へと戻る。
そして試験勉強をしながらアンタレスのボディをどういう風に組み上げるかを勉強がてらに相談する。
「何処まで信用できるか分からんが……こっちの世界に残る気は満々そうだよな」
「はい。アンタレスから譲渡されたデータの中にはそれだけで帝国の基地が潰せる様な情報が入っているのでアンタレスに関しては信用できるかと思われます」
「ロチェットは?」
「ロチェット・ロエットはSRCとは言え人ですから感情と呼べる不確定要素があるのでプラネットの様には信用できません」
難しいもんだ。とホシモリが大きくため息をつきイクシオーネがそうですねと肯定しているとシモンが本を大量に抱えその体型でよくそれだけ走れるなと二人を感心させる速度でやって来た。
そしてホシモリとイクシオーネの間にドン!とその本を置いた後に大きく肩で息をする。
「……シモンさんどうした?」
呼吸を落ち着かせた後に頼まれていたプラネットのカタログですとシモンが言った後にホシモリの肩に手を乗せて前後に大きく揺らし質問する。
「ホシモリさん!バタバタしていて忘れていましたが!ベスに何を食べさせたか覚えていますか!」
「確か……キリンみたいに首の長い亀の肉だな。俺と相棒はキリンゾウガメって呼んでたが……」
「その肉やその他の素材はお持ちですかあぁぁぁぁ!」
目が血走り顔も赤くなり赤鬼に様なシモンに流石のホシモリも恐怖を覚えると、イクシオーネがシモンの首根っこを掴みその体を持ち上げた。
「落ち着いてくださいシモン・トルキャット。数%ですが私のパイロットであるツグヒト・ホシモリに生命の危機的状況が発生しています」
「すっすみません」と素直に謝り落ち着いたので落ちない様に手を添えてからシモンをを降ろした。
「シモンさん。思ったより力あるな。流石はランバルト大尉の孫だな、今からでも鍛えればある程度は戦えそうだから鍛えてやろうか?」
「本当にすみません……お金の事になるとブレーキが外れる様でして……」
「なるほど。相棒が武器を持った相手と対峙するとリミッターが外れると同じと言う事ですね」
「そこまで物騒な物ではありませんが……」
「似た様な物だろ。それで?キリンゾウガメの肉がどうしたんだ?」
ホシモリ達がキリンゾウガメと言っていた亀はキッチョウと呼ばれる竜種と呼ばれる竜の仲間との事だった。
「ほーん。アースドラゴンみたいな感じか?」
「確かに竜種と扱いでは似ていますが価値が違い過ぎます。その血や肉は全ての怪我や病を治し年齢を十年は若返らせると言われています」
「シモンさん……いい歳なんだからそういう嘘はどうかと思うぞ?怪我や病はともかく……十歳の子供が食べたら胎児に戻るのか?って話になるぞ」
「相棒。そう聞くと化粧品の様に聞こえますから面白いですね」
あまり信用していないホシモリとイクシオーネが胡散臭い顔でシモンを眺めていると持って来た本の中に図鑑も合った様で素早くページを探し開いた。
その開いたページをホシモリの顔に突きつけたので、ホシモリは本を受け取りそのページを見るとホシモリ達が倒したキリンゾウガメことキッチョウが載っていおりシモンが言った様な事が書かれていた。
「似てると言えば似てるが……違わなくないか?」
「はい。別の生き物の可能性はあります。相棒が描いた方がいいのでは?」
「ホシモリさん……絵が描けるんですね…………じゃなくてですね!ベスが若返ったので間違い無くキッチョウの肉です!今朝見たら脱けていた歯が生えて来てたんですよ!」
「おおー。よかったな。また狩猟とか行けるんじゃないのか?」
「私が太ったので山は辛いですね…………ではなくて!!キッチョウの素材はまだお持ちですか!甲羅などがあればレムザスの盾として使用できますし血や肉が残っていれば全ての病を治せる薬を作れます!骨や皮も武具に使えますし!捨てる所は一切ないんですよ」
「ほー……それで俺の強化骨格とかすぐに治ったのか……若くなった気はしないんだが……」
「シモン・トルキャットから聞いてる話ですと体の内部が十年は若返るという感じなのでその加減でしょう」
「そういう訳でホシモリさん。キッチョウの甲羅などはどちらに?まさかアースドラゴンと同じ様に処分したとかは言いませんよね?」
笑いながらそういうシモンにそうだぞ。とホシモリが伝えると今まで笑っていたシモンの動きが止まり油の切れた機械のような動きをしながらホシモリに質問する。
「……冗談ですよね?むしろ冗談だと言って欲しいんですが?キッチョウは生息数も少なく滅多に会える生き物でも無く倒せる人も限られている魔獣なんですよ?さてホシモリさん冗談は置いておいて商談に入りませんか?」
「あのな……売れる物なら出してると思わないか?俺は家を建てて金欠ってシモンさんも知ってるだろ?」
ホシモリが言ってる事が冗談ではないとわかりシモンはその場に崩れ落ち大粒の涙を流した。
「ベスが若返ったんだしそれだけでもいいだろ。十年は寿命が延びたんだろ?」
庭でベルナ達と遊ぶベスを見て色々と切り替えたのシモンはゆっくりと立ち上がりホシモリに礼を言ってから金貨が入った袋と指輪や腕輪と言ったアクセサリーが入った袋を取り出した。
「決闘でホシモリさんが倒した傭兵の方々の装備の残りがこちらになります前にお渡しした鑑定表もあると思いますがまた新たにこの中の物で書いた物を中に入れてありますのどうぞ。いらないと言われた装備ですが金貨二五〇枚になりました。全員分ですがなかなかよい装備でしたのでホシモリさんも使えると思いますが売ってよかったのですか?」
「腕輪とか指輪はともかくこの戦闘服は俺と繋がってるから甲冑とか鎧とかには変えにくいんだよな。姿も消せるし……と言うか結構な額になったな」
「そういえばベルナがホシモリさんは姿を消せる魔法を使えると言っていましたがその事でしたか……」
「指輪や腕輪には筋力を上げたり毒を無効化するものもあるって書いてあったから今の装備と並行して使えるか試して駄目だったらまた買い取ってくれ」
「分かりました。私としては何の問題もありませんのでこちらこそよろしくお願いします」
「相棒はこの星の人間ではないのでそのような身につけるタイプの魔道具を使った場合にどのような反作用が出るのかを調べないと使用する事はオススメしません」
「毒無効とか意味不明だしな……さてと臨時収入も入ったしちょっと行って来るか」
シモンが頭を傾かせ何処かへ行くんですか? と尋ねるとホシモリは祈る様な仕草をした後に神頼みと伝えた。
「なるほど。ホシモリさんならかなりレムザスの事を理解している様なので祈らなくても合格しますよ」
「祈って受かる事があるなら神様の気分で祈らなくて落とされる事もあるだろうしな。家の方もできてきたし落ちたら話にならないから必要経費だと思って祈ってくるは」
シモンは教会とも付き合いがあるようで苦笑いをしながそれもそうですねといった。
流石にイクシオーネは一緒には行けないので、ここの守りを任せてホシモリは散歩がてらに一人で教会へと向かった。
工業地区と高級住宅街をぬけホシモリは街の中心に向かって歩いて行く。
中央に近づくにつれ人がどんどんと増えて行き、少し前にホシモリを襲った様な耳の長い人達もいれば、ホシモリの身長の半分以下ぐらいの人達や獣の耳や尻尾が生えた人達と本当に様々な人達で王立都市フライスは賑わいを見せていた。
そんな人が多い中央区を抜けて進んで行くと少しずつだが人が少なくなってゆき目的の大きな教会が見えて来た。
王立都市に住み始めて少し経っていたので遠くから教会を見る機会はあり大きな教会だとホシモリは思っていたが改めて近くで見ると城を思わせる大きさに驚かされる。
「信者と書いて儲かるって教えてもらった事があるが……ほんとそんな感じだな」
教会前を掃除している聖職者達に話を聞くと今日は特に集会等はやっていないので空いていますよとの事なのでホシモリは礼を言ってから金がかかってそうな大きな扉を開けてゆっくりと中へと入って行く。
芸術という言葉とは縁がほど遠いホシモリだったが、内部の造りはとても美しく精巧な物だったのでホシモリを圧巻させた。
しばらく内部の造りを楽しんで見学していると神父の様な男が現れてホシモリに話しかけて来た。
「ようこそ教会へ。今日はどうされましたか?」
その男の気配の無さと雰囲気でかなり戦える男だとホシモリは悟ったがいきなり殺し合いをする訳もないので普通に来た理由を説明する。
「もうすぐレムザスの試験があるからな。できる限りの事はやったから最後に神様にお願いしようかと思ってな」
「そうですか。ではこちらへどうぞ」と言って神父は先を歩いたのでホシモリはその後をついていった。
(体の芯もブレてないし足音もしないか……どこから攻撃しても躱すか受けるかはできるな)
等とホシモリが考えていると神様を象った様な象の前に神父は立ち止まった。
「こちらの象の前で祈れば合格するとよく言われています。迷信だとは思いますが……祈りに来られる方は多いですね」
特に祈る様な事は無かったが適当に手を合わせホシモリは目を瞑った。
そして目を開けてから袋に入れてあった百枚の金貨をその神父に渡す。
「寄付ですかありがとうございます。それで貴方のお名前は?」
「ツグヒト・ホシモリだ。トルキャット商会で傭兵として働いている」
金貨を大事に仕舞いホシモリがどういう人物かを見極める様に神父は見つめ質問する。
「貴方は神は存在すると思いますか?」
「ん?どうだろな……ほぼ確実にいると思うぞ?」
「どうしてそう思いますか?」
「そうだな……いるか?いないか?だけで聞かれたらいる場合は連れてくるだけでいいが……いない場合はいないという可能性を全部潰さないと駄目だからいるだろうな」
「……なるほど。その捉え方はとても面白いですね」
「小さい存在は大きすぎる存在を認知できないから……人間が認知できない様な大きな存在を神と呼ぶのかもしれないぞ」
自身が宇宙で体験した事の中で科学では解明できない事がかなりの数があり、自身が今立っている星にも地球人と同じ様な生き物がいる事にも神の悪戯としか思えなかったのでホシモリは笑った。
そう言ったホシモリに少し思う所があったのか神父は少し考えた後に面白いと言って少しだけ笑った。
「神様にお祈りもしたしもう少し勉強すれば受かるだろう。じゃあ神父さん俺は帰るは」
「きっと受かるでしょう。今日は面白い話をありがとうございました。教会はいつでも開いていますでいつでも来てください。ホシモリさん」
教会でのやる事を終えたホシモリは神父に軽く手を上げてからその場から立ち去った。
立ち去ったホシモリの方向を見つめていた。
「なるほど……あれが噂のトルキャット商会のホシモリさんですか……ガーランドさんや国王陛下が一目置くだけの事はある人物ですね……その魂は人には見せませんが人よりは知性がお有りな様で……」
しばらく方向を見ていたが聖職者達に神父は呼ばれたので教会の奥へと戻って行った。