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「ではお互いが身の潔白を証明する為に決闘を行いますが……両者質問はありますか?」


 トロメスタ侯爵は無いと頭を左右に振ったがホシモリは初めての事だったのでいくつかの質問をする。


「裁判長。申し訳ないが決闘と言うのは初めてなのでいくつかの質問はいいですか?」


 はい。大丈夫ですよと裁判長は言いトロメスタ侯爵は田舎者がとホシモリを笑った。


「殺しては駄目とかそういう細かいルールは無いんですよね?」


「はい。生死は勝者の判断に任されますが……基本的に生きている方が勝者です」


「なるほど……勝者として残った場合は仇討ちなどは大丈夫でしょうか?私自身なら何も問題はありませんがお世話になっているトルキャット商会等に迷惑がかかると……」


「敵討ち等はこの国の法で守られていますので大丈夫です。もし行った場合は一族全てこの国や友好国などから追放という形になるのでそんな事をする者はいないはずです」


「なるほど……後は……」


「決闘について詳しくない様子なので私からも一つ。決闘に参加し負けた者が身につけている者は勝者の物になりなります。いらない物もあるかも知れませんが昔ながらの伝統と思ってください」


「教えてくれてありがとうございます」


「質問は以上ですか?」


「はい。ありがとうございました」


「どういたしまして。決闘は国王の合図と供に始まりますのでお互いに位置についてください」


 ホシモリが移動しようとすると一人減ったパーティーのリーダーが話しかける。


「……あんたに恨みは無いがすまんな。俺達も金が必要だからな」


「ああ。気にすんな、お互いに傭兵だろ?俺も家建てて金ないからあんたらの持ち物を売って小遣いにするよ」


「そいつは面白い。装備には金をかけてるからな俺達を倒したら一財産だぞ」


「俺の装備は……トルキャット商会のシモンさんなら買い取ってくれると思うからそこに行ってくれ」


 お互いが顔見知りの様に話をしているとそれが気に入らないのかトロメスタ侯爵は速くしろ!と大声で叫ぶ。


 その事でホシモリが笑い雇われた傭兵は大げさに両手を挙げてふぅっとため息をつき配置につく。


 そしてその傭兵のリーダーが前衛に立ち、右に杖を持った魔法使い左に弓を持ったアーチャーそして一番後ろに立つトロメスタ侯爵を守る様に陣形が組まれた。


(全員が魔法を使えると思うが……やっぱり一番怖いのは杖を持った奴か、シルバさんとも戦ったが……範囲や威力を調整できるのは怖いな)


 加減などして自分が殺される事があっては話にならないので目の前の四人を全て敵と考え処理する事に決めた。


 そのタイミングで国王が手を上げる。


 そして声を高らかに「始め!」と大きく宣言した。


 ドン!ドン!


 始め! と国王が宣言した次の瞬間には今まで銃を背負っていたホシモリが銃を構え傭兵達が認識した後には打ち終わっていた。


 傭兵のリーダーが自身の背後にいた二人の命が消えた事が気配で分かったが目の前で銃を構えるものから目を離すと次は自分の番だと本能で悟ったので目を離せなかった。


 だが仲間のアーチャーはそうでは無いようで気配が無くなった方を向き大声で叫ぶ。


「リーダー!トロメスタ侯爵とアリスタが!頭を打たれた!」


「いいから!目の前の男から目を離すな!」


 ゴキン!


 リーダーはホシモリから目を話したつもりは無かったがいつの間にか姿が消えており、何かが折れる音がした後に今まで話していたアーチャーの気配が消えた。


 自分では勝てない事を悟り後ろにいる何かに話しかける。


「……痛いのは苦手なんでな。苦しまずにやってくれるか?」


「任せろ。そういうのは得意だ」


 その会話の直後にリーダーの首の後ろから一本の綺麗な筋が入り胴体と頭部が綺麗に切り離され地面に置かれた。


「流石に生き返らないよな?そんな気配ないし」


 元の位置まで戻り周りを確認すると決闘を見ていた全員が大きく目を見開き固まっていたのでホシモリはイクシオーネに連絡を入れ生死の確認をさせる。


『死んでると思うがどうだ?』


『はい。問題ありません。魔法と言う不確定要素以外では確実に死亡しています。一つ質問ですが……戦闘開始直後に四人射殺しなかったのはどうしてですか?』


『恥ずかしい話だが……チェックして無かったから弾が二発しか無かった』


『気が抜けてると言う事はないので……心身にストレスがかかって見過ごしたと思われますので今日は早く寝る事を推奨します』


『了解っと』


 イクシオーネとの通信を切ってもまだ周りの人間は固まっていたのでホシモリは手を上げて裁判長にたぶん終わりましたと告げる。


 するとようやく体に魂が戻ったようではっとした後に確認の者を向かわせホシモリが倒した者達の生死を確認させた。


 そして生き返る魔道具の様な物は持っていなかった様で全員死亡によりホシモリの勝利が決まった。


「では……決闘によりトロメスタ侯爵が敗北し死亡しましたので、ツグヒト・ホシモリ殿が正しいと証明され勝利を収めましたのでこれにて閉廷とします」


 青い顔をしながら裁判長達が帰って行こうとしたのでホシモリは礼を言ってから頭を下げると国王がホシモリに話しかけた。


「その戦闘能力の高さ……本当にランバルト殿を思い出させるよ」


「ありがとうございます」


「その強さがこの国に向かない事を心から祈っているよ」と言って国王は去って行ったのでホシモリは特に何も言わずに頭だけを下げた。


 そして国王の姿も見えなくなってからガーランドが闘技場の上に登りホシモリに話しかける。


「強いとは思っていたが……君は想像以上だな」


「よく言うは……俺が最初に二発打った時に目で弾を追っかけてただろ」


「それぐらいや姿が消えたぐらいなら驚かないが……君を倒せと命令されたら確実に無理だと思ってな」


「そういう任務があるなら今のうちだぞ?魔法の対策がまだ全然だから今ならまだ倒しやすいぞ」


 そうホシモリが言うとガーランドは大きく笑いそんな予定は無いなと言った。


 普通に笑っていれば男女問わずに惹かれる笑顔にホシモリは色々勿体ないなと思いながら話を続ける。


「裁判長が言ってたが倒した奴の物ってもらえるんだよな?」


「ああ。このまま剥いで持って帰ってもいいが……流石に引かれると思うから少し待て」


 そうガーランドが言った直後に奥から甲冑をきた者達が現れ、ガーランドに敬礼をしてからホシモリが倒した者達を丁重に片付け始める。


 ホシモリがその者達について尋ねると王立都市を守る兵でその中でも上位の王城守る騎士という者達だと話した。


 そのまま片付けるのを見守っても良かったが決闘前に国王が言っていた言葉を思いだしたのでガーランドに尋ねた。


「そういや。国王様がガーランドさんに六防って言ってたけど何か凄い人の集まりか?」


「凄いかどうかは私がいる時点でお察しだが……王族や国を守る六人の事だな。基本的に私を筆頭にくせ者だから関わらない方がいい」


「ガーランドさんクラスが六人か……流石に襲われたら死ぬな」


「そうだな……君が死ぬ気で戦えば全員倒せるだろうが……私はそうなったら逃げるから君は行き残るぞ」


「はいはい。先陣切りそうな奴がよく言いやがりますわ。それで?その凄い人六人の一人が何で城塞都市にいたんだ?」


「国を守るのが仕事だから危険な所に行く物だろう?と言うのは冗談だが……トロメスタ侯爵を追いかけていたのとお守りが嫌いだからな」


 服以外の装備を外され白い布にくるまれたトロメスタ侯爵をガーランドは少し同情しながら見つめそう言った。


「お守りね……ベルナちゃんの上級生にイケメン王子がいたけどあれのお守りか?」


「君は城で凄い言い様だな。私がいるからいいが……外では気を付けたまえよ。王子の上に姉がいてその子の事だな。姫騎士と名乗っているからそれなりに腕は立つが危なっかしくてな六坊の何人かは護衛についてる」


 また新たな単語が出てきてホシモリを悩ませたのでまだ時間がかかりそうだったので素直にホシモリは質問する。


「姫なのに騎士ってなんだ?敵からすれば誘拐してくれって行ってるもんじゃないのか?」


「私に聞かれても知らんとしか言えんが……騎士姫よりは言いやすいから姫騎士だろう。あと君の言いたい事はよく分かるが……戦争中でも無い限り王族を誘拐してもメリットはあまり無いな。まぁ六坊もいるし本人もそれなりに腕は立つからな」


「姫騎士ね……俺の想像力を越えてるから女騎士とかハゲ騎士の亜種って言う位置づけにしておくか……」


 その話が聞こえていたのか近くで作業をしていた騎士達が少し吹き出し誤魔化す様に咳をしたのでそれに釣られガーランドも大きな声で笑いその認識でいいと言った。


 そして騎士達の迅速な作業で決闘場は綺麗に片付けられ血や肉片がついていた装備も魔法によって綺麗にされ大きく四角い木箱に詰められてホシモリに渡された。


 騎士達にホシモリが礼を言うと騎士達もガーランドとホシモリに丁寧に頭を下げてその場から去って行った。


「素晴らしい兵だ、流石は王立都市。一般人にも頭を下げられるとは兵士の鏡だな」


「はっ。君のような一般人が居てたまるか。連中も騎士と呼ばれるエリートだからな相手の強さの判別くらいはつくさ」


 そんな話をしながらホシモリはガーランドに城の外まで送ってもらう事になったので世間話などをしながら向かった。


 そして城の外にでるとシモンとシルバが魔導車で迎えに来ていたのでそれに乗り込みガーランドに礼を言って別れる。



 それからガーランドは振り返りまた来た道を少し戻り国王が居る場所へと向かった。


 王の前で膝をつくガーランドに国王は玉座から話しかける。


「さて、アズスベルン・ガーランド……ホシモリ殿と言ったかな?君はどう見た?」


「はっ。正直に申し上げますと私より強いと思われます。まだ魔法に関しては本人は素人だと言っていましたが、その弱点を遙かに上回る戦闘能力を有しています」


「やはりそう思うか……私もランバルト殿に鍛えてもらった事があるが……その比では無いように思えたな。銃も魔法銃とは少し違う様だしな」


「彼自身も兵士だと言っていたのでまだ隠している力はあると思います。王宮の騎士達もその強さには気づいていたようです」


「オリハルコンクラスのハンターと同等の傭兵を文字通り瞬殺だからな……彼は悪人か善人か……」


 王の質問に答えを持たないガーランドは答えられずにいると王はガーランドに新たなる命令をだす。


「アズスベルン・ガーランドよ。そなたは城塞都市より部下を連れ王立都市に帰還しこの都市の警備を強化せよ。ホシモリ殿が善人か悪人か分かるまでは都市の警備を厚くしても問題はあるまい。城塞都市の方には違う者を送ろう」


「はっ!分かりました」


 国王とガーランドがそんな話をしているとはつゆ知らずホシモリはゆれゆく魔導車の中で何処か遠くから視線を感じていた。


「まぁ……ふつう殺したら狙われるわな」


 その呟きを拾いホシモリが乗せた木箱を見ながらシルバが話しかける。


「私の時代なら敵討ちはよくありましたが今は本当にありませんし……私は見られている気はしないので気のせいでは?」


「恨みとかそういう視線じゃないからな。何というかお金もらって襲う感じの瞳だな……という訳で相棒。聞こえていると思うが分かるか?」


『いえ。こちら方は判断できません。ですが相棒の勘のおかげで助かった事は多いので警戒レベルを上げておきます』


 イクシオーネとの会話が終わった様だったので心配していたシモンが終わりましたか? と尋ねたのでホシモリは答える。


「ああ。ガーランドさんが言っていた様に決闘になったから俺が勝ったな」


「そうですか……ホシモリさん。本当にありがとうございます……そして申し訳ありません。その手を汚させてしまって」


「ん?人は死んだら終わりだからそこに汚れたとか綺麗とかそんなのは何も無いから気にしなくていい。ベルナちゃんにも言ったが死者に足を引っ張られたら駄目だぞ。生きてる者だけが歩けるんだからな。ベルナちゃんで思ったが……城で洞窟内であった事を聞かれたぐらい答えればいいか?」


「はい。お気遣いありがとうございます。ホシモリさんの事ですからこの装備もトルキャット商会で売ってくれると思うのでこのまま家には行かず店舗に預けます。ベルナにしてもライグにしても生々しい話はいりませんからね。その後に武具についた能力等を紙に書き上げお渡しししますのでそれから判断してください。かなりの武具なので使える物も多いと思います」


「ありがとう。あと先に謝っておくが……感じ的に近い内に襲撃されると思うから……ちょっと家が壊れると思う」


「……冗談ですよね?」


「だったらいいなー。かなり遠くから見られてる感じがするからかなりやり手だな。という訳でシルバさんはシモンさんの護衛は任せたぞ」


「ホシモリさんがやり手と言う相手に初老の私にどうしろと……」


 ホシモリが気合いと言って場を和ませ魔導車はトルキャット商会へと帰って行った。


 そしてその夜……言った通りに襲撃がありホシモリが寝ていた部屋が大爆発と供に吹き飛んだ。

 

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