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2発目の爆発は無く水柱も上がる事は無かったのでホシモリ引きあげる様に連絡が入ったので先ほどの商人に頼みクレーンを引きあげる。
ただ先ほどより非常に重たい様で簡単には上がらない様だった。
「あの……傭兵さん。動くには動きますが……何かに引っかかっているようですが?」
少しまってなと言ってからホシモリはイクシオーネに連絡を入れる。
『どうした?何かに引っかかってないか?』
『先ほどの貝の殻がショルダーランチャーによる攻撃でも破損していませんの甲板で詳しく解析をしようと倒した貝をフックに引っかけています。どうにか上がりませんか?』
『まじか?並の装甲より硬いな……ちょっと待ってろよ』
そう言ってイクシオーネとの通信を切りホシモリは先ほどの商人に話しかける。
「あんたのクレーンに倒した貝が引っかかってるみたいだな。甲板に上げたいが他にクレーン付きのレムザスっているか?」
「わっ分かりました。私も船を止める程の魔獣を見たいので全て動員します」
ホシモリが頼むといって頭をさげるとその商人は形は違っていたが他のクレーンがついたレムザスをデッキの上に上げフックを水中に落とした。
『相棒。三つほどフックがそっちに行くと思うから貝にかけてくれるか』
『確認しました。架けていきます』
全てのフックが貝に魔獣にかかったのを確認してから商人が指示を出すと巻き上がり始める。
先ほどよりは圧倒的に巻き上がっており水面にその巨大な影が浮かび上がった。
「思ったより大きいな……」
その大きさにその商人も腰を抜かして転んでしまし甲板にいた傭兵や商人達は何事かとすぐに集まってきた。
「流石に引きあげるのは無理か?」
「いえフックを架ける位置に注意さえすれば水の抵抗がないので上げる事は可能ですが……この船はトルキャット商会の船なので勝手に上げてよい物かと」
「確かに……シモンさんに聞くか」とホシモリが呟くといつの間にかシモンもベルナもデッキに上がっていたようで貝の大きさに驚き固まっていたのでシルバが近づいてきてホシモリに質問する。
「その兜はホシモリさんですよね?」
戦闘は終わっていたが硬質化していたフードを外していなかったので戦闘態勢を解いてから貝の魔物を倒した事を説明した。
「あの船のが傾く様な爆発はホシモリ様でしたか……」
「相棒だけどな。あの爆発に耐える程の殻だから上げて確認したいが……無理か?」
「いえ、大丈夫です。あれは大きさはおかしいですがダイオウガイに間違いありません。ダイオウガイは長く生きれば生きるほど大きく、殻が固くなると聞きましたのであの大きさなら殻の強度は凄まじい物だと思います。あれを乗せた所で船は沈む事は無いので他の商人の皆様に理由を説明しレムザス達を格納してもらう様に頼みます」
「わかった。じゃあ俺は貝の所にいってフックを付け替えたりするから任せていいか?」
「はい。分かりました。ですがその前にお嬢様と旦那様がとても心配していたので顔を見せてからお願いできますか?」
了解と軽く手を上げてからホシモリはベルナとシモンがいる所に行ってから、あれが船底に張り付いていた魔獣でそれを倒したのがイクシオーネだと言う事を説明する。
二人ともとても驚いていたが魔獣が倒された事とホシモリやイクシオーネが無事な事にほっとしていた。
それからホシモリは器用にワイヤーを伝い貝の上にいるイクシオーネの元に向かい大きな声でクレーンの持ち主に指示を仰いだ。
「しっかし硬い殻だよな?相棒が本気で殴れば割れるか?」
「ヒートマチェットやイオンレーザーカノンなら破壊する事は可能だと思いますが私が殴った程度では無理です。水中とはいえショルダーランチャーのミサイルをまともに食らって破壊されていないのですから」
「だよな……重装甲のプラネットより硬い生き物か……宇宙にいなかった訳じゃないが、こんな簡単に出くわすとなるとほんとに恐ろしい星だな」
「はい。今は晴れて来ましたが霧を操り視界を奪いますから、気づかれずに捕食された者は多いと思われます」
吊り上げられる貝の上でホシモリとイクシオーネが話をしていると甲板の上では他のレムザスや傭兵達も手伝い始めた様でスムーズに作業が進んでいく。
そして巨大な貝が甲板の上にのせられると改めてみる大きさに皆は驚き声を忘れた。
ホシモリのイクシオーネもやる事はやったので貝についていたフックを外し下へと下りる。
イクシオーネと人前で話す訳にも行かないのでホシモリはシモンの元にイクシオーネはレムザスと供に待機モードにはいった。
ホシモリが戻るとシモンは他の商人達からの賞賛の嵐だったのでベルナを連れて避難すると先ほど助けた商人が挨拶にやって来た。
「トルキャット商会の傭兵さん。先ほどは助けて頂いてありがとうございました」
「おお。あんたか。あの貝を見たかったらから助かった。こちらこそありがとう」
それからしばらく話をした後に名刺の様な物をもらいシモンに挨拶に行くと行ってから別れた。
船の方は多少の損傷はあったが運行に問題は無かった様で一時間もしない内に補修を終えてまた動き始める。
デッキから貝やそれに付いて話をする商人達を眺めていても良かったがベルナが小さくくしゃみをしたので船内の部屋へと戻る。
陽も少し落ちてきていたので部屋に戻るとシルバが暖かい飲み物を入れてくれたのでシルバに礼を言って飲み物受け取った。
「船底に穴が空いてたと思ったが……浸水とかしなかったんだな?」
「魔法……では無く魔術になりますが水よけの魔術というのがあるのである程度なら浸水は防げます」
また新たな言葉出てきたのでホシモリは手を上げてその事を質問しシルバが答える。
「もの凄く簡単に言えば物に術式を書いて発動させるのが魔術です。メリットとしては消えない限りは周りの魔力を取り込み長い間発動し続けます。デメリットは少しの間違いでも発動しないなどがありますね」
「……色々あるんだな」
「魔術から進化して魔法になってそこからさらに進化して誰にでも使える様になったのが魔法銃と覚えておくといいと思います」
「なるほど……まだまだ分からない事も多いからシルバさんの授業を受けたいもんだ」
「ホシモリさんは学ぶ事がお好きなんですね」
「しなくていいならしないが……やらないと確実に死ぬからなー。今回のダイオウガイにしてもハンター組合で喧嘩した時も運が良くて助かってるだけだからな」
なるほどと納得しながらベルナがホシモリに強いのに新調なんですねと言うと慎重だから強いのか強いから慎重なのかは分からないけどなといい話を続けた。
それからもダイオウガイに関して色々な話し合いがあった様でホシモリ達は先に夕食を済ませシルバからの魔法の話をしていると困った様な嬉しいような顔をしてシモンが帰って来た。
そしてホシモリに話がありダイオウガイの今後の事を話し始める。
「ホシモリさん。先に謝らせて頂きますが……貴方達が倒したダイオウガイの行方を勝手に決めてすみませんでした」
「全部はいらないが素材になるならトルキャット商会と商会に買い取ってもらおうと思っていたから別にいいが……問題あったのか?」
「はい……ダイオウガイを解体していたのですが中から極まれに取れる七色真珠という宝石の超特大が取れましてそれの扱いや殻の扱いに困っていました」
「ほーん……その真珠って魔法とかの触媒になったりするのか?」
「いえ、現物を見る事も少ないですが……極端に言えば硬い綺麗な宝石ですね。それでお話ですがホシモリさんその七色真珠を私に譲って頂けませんか?」
シモンが申し訳なさそうに言うがホシモリは宝石に興味が無いので何も考えずにいいぞと言って返事をする。
絶対に断られると思っていた上にあまりににも即答だったのでシモンが間の抜けた顔をして聞き返す。
「え?ホシモリさん七色真珠ですよ?しかも誰も見た事の無い様な大きなものですよ?」
「あのな……知らない物を力説されても分からん。シモンさんに最新鋭のプラネットはアンタレスで性能はうんたらかんたらとか言ってもわからんだろ?」
「いやまぁ……そうですけど」
「宝石の価値は欲しい人が決めたらいい俺はいらん。硬いってのには興味あるが……たまに生き物の体内から取れる魔力の籠もった結石とは違うただの石だろ?」
ホシモリがいった魔力の籠もった結石の事が分からなかったので少し考えた後に分かりあれはその生き物の特製を映す魔石とよばれる滅多に取れない貴重な石だとシモンは言った。
「なるほど……魔石ね」
「魔石の様に力がある訳ではありませんが大変貴重な物です」
「相棒とベルナちゃんいるか?」
『解体する時に私も手伝いましたが必要ありません。硬度なら殻の方が上です』
「いっいえ!私はいりません」
「相棒もベルナちゃんもいらないらしいから俺の取り分があるならシモンさんが買い取ってくれ。というか買い取ってどうするんだ?奥さんにプレゼントか?」
「そんなロマンチックな話なら良かったんですが……今回、船に乗ってる商人達と王族を味方につけようと考えているので商人達と合同で討伐した事にして王家に献上する事を考えています。今まで無頓着だった訳でもありませんが……ベルナやリセムが誘拐されたので今後はもっと上位の貴族を味方につけようと考えています」
「考えて使うなら俺はいらないから好きに使っていいぞ。宝石とか使い方がわからんしな」
「女性にプレゼントするなどあると思いますよ」
「今さっきいるか?って聞いたらいらないって言われたけどな」
そう言ってベルナをみると少し困ったように慌てていた。その様子をみてシモンはホシモリに再度、頭を下げて礼をいった。
「換算して幾らになるかは分かりませんがすぐにお支払いしますのでお待ちください」
「それを言い出すとシルバさんに授業料払わないと駄目になるし……それでお釣りが来るなら王立都市か魔導工業都市で家か土地を買う時に手伝ってくれたらいいぞ
シモンがトルキャット商会総出でお手伝いしますと力を込めて言ったのでシルバも笑いながら教えるのにも力が入りますなと言い話を続ける。
「宝石はいいが……殻のほうはどうなった?あれも相当な硬さだから皆欲しがってるんじゃないのか?」
「まさにその通りでトルキャット商会の傭兵が倒したと言う事でトルキャット商会の物という形にはなっていますが……ホシモリさんが欲しいのはどの程度ですか?」
「という訳だが……相棒はどれぐらい欲しい?」
『そうですね……良くを言えば半分は欲しいですが……それをもらうといらない敵を作りそうなので四分の一は欲しいと伝えてください』
「相棒は四分の一は欲しいと言ってるが大丈夫か?」
「流石……イクシオーネさん。話を聞いていただけの事はあり手堅い所を……大丈夫です。問題ありません
「あれだけ硬い殻だしな。なんにでも使えるが……どうするんだ?」
「はい。今回の戦いでかなりの商人達がレムザスを失いましたので、殻の半分をオークションにかけた後にそれを私達商人で分ける形にしようと考えています」
「……それってシモンさんに儲け出るのか?」
「多くは出ませんが損もしません。先ほども言いましたが商人達で倒したと言う形にするので分けないと変ですし。味方を多く作ろうと思いましてね」
「なるほど。残りは?」
「欲しがる商人も多いので明日でもデッキで競売ですね」
そこまで話を来たのでホシモリの方からはこれ以上言う事は無いと思っていたがベルナ小さく手を上げて父のシモンに質問する。
「あのダイオウガイはホシモリさんとイクシオーネさんが倒したのにホシモリさん達の物になる訳ではないんですね」
その質問に変な小田をするとホシモリの気を悪くさせてしまわないかとシモンが考えているとホシモリが答える。
「こっちの国だとどうかは知らないが傭兵が雇われている時に倒した物はほとんどは雇い主の物になるんだぞ。だから今回はシモンさんに雇われてるって形だから確かに相棒が倒したがシモンさんの物だぞ」
そうなんですか? とベルナが驚きシモンに尋ねるとこの星でもそうだと伝える。
「ですがホシモリさんの場合は恩人でもあり客人でもありますので丁寧に話し合いになったという感じです」
「なっなるほど」
「ホシモリさんが七色真珠を欲しがったらどうしようかと思いましたが……」
「お金だけはいくらあってもいいが……知らない土地で生きて行くなら世間に顔の聞く金持ちの知り合いと仲良くする方が絶対に得だしな。という訳で困った時はよろしく頼んだシモンさん」
「任されました。私にできる事ならお手伝いしますのでお任せください。それとホシモリさんの分のダイオウガイの殻はいらなくなったら私に売ってくださいね」
そういう所が商人だなと笑いダイオウガイの行く末が決まった。船上では硬い殻を加工できないのでそれは王立都市に行ってからとなどと細かい話が進んで行く間に船も大きな問題も無く進んで行く。
そしてホシモリが他の商人にトルキャット商会の傭兵として紹介されたり、シルバの魔法講座を受けているとようやく運河の終わりが見えて来た。
港運な事に魔導船に乗っていた全ての商人が王立都市行きだったので船着き場で全ての商人や傭兵が下りた
そこで商人達が協力しレムザスを積むキャリーカーやバトルホースを空け、そこにダイオウガイを積み込み王立都市に向かって運搬する。
物が物だけに襲われても奪われる事は無さそうだだったが他の傭兵やレムザスと協力しホシモリとイクシオーネも護衛に参加する。
ハンター達に比べ傭兵と言うだけあり兵士のホシモリと考え方も近かったので大きな喧嘩は無かった。
たまにベルナはホシモリの顔に絆創膏を貼る事もあったが何かに襲撃される事も無く整備された街道というより道路に近い道を進んでいくと船を下りた船着き場かた二日ほど経った頃に大型のレムザスが数機で守る巨大な門が見えた。
それを指さしてベルナが休憩で戻っていたホシモリに伝える。
「ホシモリさん!あれが王立都市フライスです」