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船着き場に到着した時は夜だった事もあり、快適な馬車の中で一夜を明かし早朝から荷物の積み込みの準備を始める。
と言っても運河も川というには想像以上に広く深かったのでその大きさに合わすように船もまた大きくキャリーホースが馬車とイクシオーネ達が乗る荷台ご入って行っても楽々と乗れる大きさがあった。
そして馬車からキャリーホースの連結を解き生き物は別の場所に待機させるとシルバが先頭を歩き船の中を進んで行く。
大きな船の割に人がいなかったのでホシモリがシモンに質問する。
「でっかい船だが人が少なくないか?」
「そう言えばホシモリさんには言ってませんでしか?この魔導船はトルキャット商会の物なのでほとんど貸し切り見たいなものですよ。商人達で王立都市や魔導工業都市に都市に向かう人達は乗ってもらっていますが……一般の方や兵士の方々は基本的には乗れないので」
「流石は天下のトルキャット商会だな……」
「ふっふっふ……まだ天下は取っていませんがいずれは……と言うのは冗談でもうすぐデッキに出ます」
本当か冗談か分からないシモンの話を聞いていると言っていた様にデッキに出る事ができた。
デッキの上は想像以上に広く、川の上と言う事もあり風が通るので小さなベルナは少しふらつきホシモリに支えられる。
「あっありがとうございます」
「おう。どういたしまして……デッキの上と言うから小洒落た物を想像したがデッキと言うよりは甲板だな……荷物が入った場所のほぼ真上だからここにレムザスとか配置できるのか?」
近くにいたシモンが正解ですと言った後にデッキの真ん中を指さすとエレベーターの様にデッキの一部が動きそこからデッキにレムザスを配置できるとの事だった。
「水竜が引く船ですと魔獣が襲ってきても水竜やハンターなどが戦いますが魔導船は備え付けられた武器かレムザスを配置するしかありませんので」
なるほどとホシモリが納得しシモン達の後をついていくとそこは豪華客船のデッキの様になっており様々な商人がくつろいだり情報交換をしている様な場所だった。
そしてその場所は他の場所よりも高い位置にあり運河や他の船もよく見えた。
他の船はシモンが言った様に船にから鎖が出ており馬が荷車を引くように大きな蛇に水かきをつけた様な生き物が船を引いている光景がいくつもあった。
ホシモリ達が乗っている魔導船とよばれる船も数は少なかったが何隻も存在していた。
そしてその光景を眺めているとホシモリたちが乗っている船から汽笛が鳴りゆっくりと動き始める。
プラネットの整備士でもあるホシモリがどういう構造で動くのか気にしているとシルバがやって来て周りに聞こえない様にホシモリに質問する。
「……ホシモリさん。甲板に商人の皆様達がレムザスをあげ何かあった時の為に待機させますが……イクシオーネ様はどうしますか?デッキに上がってもらうのであれば他のレムザスも一緒にあげますので」
「そうだな……上にいた方がすぐに対処できるし相棒も他のレムザスとかのデータを取りたいだろうから上げてやってくれるか?」
畏まりましたとシルバが頭を下げてデッキの下に下って行く。
そしてしばらくした後に先ほどシモンから教えてもらった場所から様々なタイプのレムザスが上がってきて甲板の配置場所で待機する。
その光景を見てシモンにレムザスの事を質問しようとしたがいつの間にか商人達への挨拶周りに行っていたのでホシモリとベルナの二人っきりになっていた。
「城塞都市にいた警備兵達が使っていた奴より派手だな……」
ホシモリが言うようにデッキの下から現れたレムザスは大中小と様々でカラーリングは赤だったり青だったりと色鮮やかな物が多かった。
「軍隊が使う物はカラーリングは統一されていると聞きましたよ。商人達が使っているレムザスはその商人が好きな色だったりとする様です。国は別ですがレムザスを売る時に派手な方が目に付くので売れるとの事ですよ」
「反射する様なカラーリングだと森の中とかだと周りの色を取り込むから迷彩になるから良いんだが……赤とかどうよって思うんだが?」
「当たらなければ問題無いのではないでしょうか?」
「……レムザスに人は乗れないから問題大ありだな」
何処かで聞いた様な台詞を別の星でも聞く事になるとは夢にも思わないなとホシモリが思っていると下からシルバが二体のレムザスとイクシオーネを連れて上がり指示をしてデッキの上に配置する。
上がってきたイクシオーネはホシモリ達の位置を確認したようでベルナが手を振るとモノアイカメラのライトを小さく光らせ返事をする。
「シルバさんがあそこにいるならシモンさん……の近くで護衛しないと駄目だな」
「あー……父ならたぶん大丈夫ですよ。ハンターの資格は取っていませんが幼少の頃より曾祖母のランバルトお爺さまに鍛えられたと事なのでゴールドハンター並には戦えるらしいですよ?私はお父様が戦っている所を見た事はありませんが……」
「なるほどな。体型の割に体の芯がしっかりしてるのはそのせいか……よし良い事を聞いた。おじさんがランバルト大尉の孫の実力を見てやろうじゃないか」
シモンに向かって不適な笑みを浮かべるとシモンの奇妙なさっきに気がついたようで辺りをキョロキョロとする。そして自身の守るべき存在が窮地に陥っているのをみてシルバが大きな他ため息をついて戻って来る。
「ホシモリさん……本当におやめください。確かに他の商人よりは戦えますがそれもベルナ様達が生まれる前の話です。娘や息子の前で良い所を見せたいだけのホラ話ですでよ。旦那様の実力は……今ですとシルバーの半ばぐらいです。ただ危険を余地する能力は高いぐらいですね」
「……そこまで言われると何もできないじゃないか」
「気のよい商人ですから何もしないであげてください……体が鈍りそうでしたら私で避ければ組手程度ならお付き合いしますので」
「了解。お世話になってるし変な事はしないしない」
ホシモリが笑ってそう言うとシルバも冗談を言っていると分かった様でお嬢様をお任せしますと言ってシモンの元へと歩いていった。
デッキに全てのレムザスが配置されたのでイクシオーネに会いに行く為にホシモリとベルナが移動するとベルナが先ほどの事を質問する。
「シルバは私が生まれた頃から知っていますが……どれくらい強いか分からないんですよ。戦った所って見た事無いですし」
「そうだなー。リセムさんの隊長のガーランドさんって知ってるか?」
「はい。遠目でした見た事はありませんが……城塞都市を任されている方ですよね?」
「そんな沢山の人に出会った訳じゃないし只の勘だが……シルバさんはその人の次ぐらいに強いかな?」
「えっ?……本当でですか?って言おうと思いましたが……気がつくと後ろにいたり消えたりしているのであってるような気がします……と言ってもガーランドさんの強さが分かりませんが……」
「大型のレムザスぐらいなら単機で破壊するぞあの人……」
「ホシモリさん……それは流石に無理ですし失礼ですよ」
話をしている内にイクシオーネの元に辿り着くと辺りに誰もいないのを確認してから話し始める。
「退屈してないか?相棒」
「はい。様々なレムザスを見られますし陸上とは違う生物も運河内に確認できますのでとても楽しいです」
「それはよかった。面白い発見はあったか?」
「身内びいきと言う訳ではありませんが、トルキャット商会のレムザスの方が総合的な面で上ですね。ただ構造的にあちらの方が耐久性は上、速度はあちらが上などはありますが」
「あきらかに重装甲だな……であっちが逆関節型か」
イクシオーネが指さしホシモリが言った様なレムザスは使用に合わせて形状を変えているようクレーンがついた物まであり本当に様々なな物が待機していた。
ただその事を少し考え重装甲のレムザスは甲板の上にいても分かるし百歩譲って高速型レムザスも許すとして建設型の様なクレーンがついたレムザスが事をベルナに尋ねる。
すると船の上で魔獣と戦闘になった時に落ちたレムザスや倒した魔獣を回収する為の物だと話した。
「なるほどなー」
「たまに思うんですけど……レムザスはどうして人型なんでしょうね?兵器なんですから人型でなくても良いと思うんですけど」
「浪漫じゃないのか?」
「えぇ……絶対に違うと思います……」
「それは冗談。人型にすると兵装とかを一から考えなくて良いって楽なメリットはあるな。極端な話だが人が持ってる物を大きくして軽くすれば良いだけの話になるからな」
「なるほど……」
「それと本に書いてありましたが人型にすると魔獣が少し警戒するというのもあるそうです。魔獣と人の戦いは長いと書かれていましたので本能に危険な形として覚えているのかも知れません」
「人型だと汎用性が高いってのもあるかな?戦車とかだと登れない所もあったりするしな」
「戦車ってどういう物でしょうか?」
「戦車がないのに二足歩行の兵器があるのか……」
「戦車と言う言葉が無いだけだと思われます」
戦車の事を絵に描いたり口に出して説明すると似た様な物はあると言う事だった。キャリーホースより更に大きく力も強いバトルホースと言う馬が魔法銃を装備したり兵器を積んだ荷車を運んだりするそうでそれが一番近い物だった。
「魔導車でもできそうだが……馬で引っ張る方が強いのか」
「バトルホースにもよりますが大型のレムザスより力が強いのもいますしそれこそアースドラゴンの様な竜種と戦える馬もいますからかなり強い生き物ですよ」
「星が変われば武器変わるって奴か……この国で行き残るのは大変そうだ」
「あの……ホシモリさん。お言葉ですが平和な国ですよ?」
「ベルナちゃんが言っても全然説得力ないからな」
「私も相棒の意見に賛同します」
他のレムザスも商人達に許可を得てから見させて貰いホシモリは自分なりにプラネットと違いの見識を深めていった。
それから二日は同じ様な景色が続き、夜になれば割り当てられた部屋に入り睡眠を取った。ホシモリの部屋はシモンとベルナの隣だったので何かあればすぐに駆けつける様にはしていたが等に何かが起こる事も無く平和な物だった。
三日目に入るとデッキか見えていた景色が代わり緑が多かった場所が砂に代わり運河もかなり狭くなり船の速度もかなり遅くなった。
ホシモリがその事をベルナに尋ねようとするとかなり前を走っていた水竜の咆哮が聞こえた。
その咆哮に目を向け義眼を望遠モードに調整すると水竜が蟹の様な生き物を加えて近くの砂山に叩きつけて口から水を吐き巨大な鋏を切断していた。
「水竜がでっかい蟹に水鉄砲をぶっかけた所なんだが……危険地帯にでも入ったのか?」
ベルナもホシモリと同じ様に前を走る水竜船を見るが少し霧がかかり始めたのありかなり遠くを正確に見えるホシモリの視力にとても驚いていた。
「ゴリラの視力は人間と同じぐらいだと聞きますのでベルナ・トルキャットも頑張れば見えるようになります」
「ならねーよ!……魔法っていう便利な物があるんだから応用を聞かせれば見えるんじゃないのか?」
「わっ私は魔法が苦手なので……望遠鏡を持って来た方が早いです……それとこの辺りの砂漠地帯ですがホシモリさんが言った様に危険地帯で船が引き起こす波で運河の岸が浸食されない様にしていると聞きました」
「私の索敵にも見えてはいませんがかなりの魔獣が砂の中にいます。ほとんどが寝ている様ですが大きなものはこの船より大きいです」
言ったベルナが一番驚いたのでイクシオーネがその方向を指さすとそこには船より大きな岩の塊があった。
「生物がの岩に擬態しているかは分かりませんが、あの岩の下に大きな生き物がいるのは確実です」
「それはたぶん竜種という生き物です。種類がかなり多く大型になると船より大きくレムザスよりも遙かに強い聞きます……起きないと良いんですが」
「たぶん。大丈夫だろ水竜が蟹と戦ってたのに起きてないから元から静かな奴なんだろ」
「言われてみれば城塞都市に来る時にもこの運河を通りましたがあの岩山はあった気がします」
かなり速度をおとしゆっくり進む魔導船のデッキから砂漠の水際を見ていると大きなワニの様な生き物が日向ぼっこをしたり先ほどの蟹が仲間同士で喧嘩をしていた。
それから先ほどからうっすらとかかっていた霧が一気に魔導船を包み込み視界を奪った。
自然が起こした霧に比べれば違和感があり人為的に起こされたと言っても違和感を感じたホシモリはイクシオーネに警戒させベルナを船内の部屋と連れ行く。
するとシルバもシモンを待避させた様でそのタイミングで船がガクンと止まった。
初めての事にシモンも驚いているとイクシオーネから通信が入った。
「相棒。気をつけてください。大型の魔獣が船底の絡みつき船を停止させ待機していたレムザスを二体河へ引きずり込みました」