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「さぁ!ホシモリさん落差の山脈にアースドラゴンの素材の残りを回収しに行きますよ!」


 トルキャット商会に戻ったホシモリとイクシオーネが大トカゲの皮や牙を買い取ってもらおうと鑑定してもらうとそれなりに貴重な素材だった。


 その素材をどうしたのか? とシモンに問われたのでホシモリ達が素直に倒して皮を剥ぎ取り牙や爪を持って来たと伝えると骨や頭蓋骨も高額で売れるとの事なので回収にいこうと言い出したのであった……


「シモン様……流石に今から向かわれますとベルナお嬢様の学校が始まるのに間に合わないと思われます」


「シルバ。確かに学校は大事ですが、それが一番大事という訳でもありません。ですから少し遅れてもいいのでホシモリさん達が倒したアースドラゴンを回収してら向かいましょう。ホシモリさん達に護衛をしてもらいながら回収しても儲けは出ます!」


 盛り上がっている所に水を指すのは嫌だったが……ホシモリは手を上げてから話した。


「シモンさん。悪いが……大トカゲ……いやアースドラゴンって言ったか?ここに持って帰ってる物以外は焼却したぞ。置いといて他の生き物が集まっても嫌だしな」


「嘘ですよね?」


「本当です。嘘を言う場面でも無いし」


 そう言われるとシモンは膝から崩れ落ち本当ですかー! と叫んだ後にアースドラゴン骨には金属を堅くする性質があるのでレムザスの骨格部分を作る時にとても重宝される素材との事だった。


 しかも全てのレムザスと言う訳では無く金持ちや国に特注で頼まれた時に使う物なのでかなりの高額で取引されるとの事。


「鬼のホシモリの強さは祖父から聞いていたのに!どうして私はもう少し大きなコンテナを用意しなかったんだーー!」


「知らんがな。シルバさん。アースドラゴンの強さってどんなもんなんだ?」


「そうですね……オリハルコンクラスの冒険者が数人で倒せる強さですね。アースドラゴン歯や爪はレムザスの装甲を引き裂く強さを持っています。大型レムザスなら倒せますが、あの険しい森や山脈に入って行くのはきついので中型、小型のを使うのですが……それだと力負けするので素材が欲しい時は冒険者に頼む事が多いですね」


「なるほどな。落差の山脈にしかいないって事はないんだろ?」


「はい。基本的には高い山を好んで住むようで標高が高い山なら割と見かけます、ですが自分より上位の生物がいる場所だと餌にされるの嫌がって数は少ない様です」


「まぁ誰も食べられたくないもんな」


「これだけ牙があれば人用の武器が作れますがどうしますか?城塞都市では無理ですが魔導工業都市ならトルキャット商会でナイフ等を作る事もできます。ホシモリ様はナイフをメインで戦う様なのでご提案しましたが……」


「使えるか使えんか分からんが……とりあえず作ってもらうか。代金の方は今回の買い取り分から引いておいてくれるか?」


「かしこまりました」


「まぁあれだ。シモンさん元気出せ。見かけたら捕まえてくるから」


 そう言うと急に元気が出たのか本当にお願いしますよ! と立ち上がりホシモリの手を握った。


 そしてそろそろ食事にしましょうとシモンが言った所で静かにしていたイクシオーネが話しかける。


「シモン・トルキャット。少しいいですか?」


「イクシオーネさん。どうしましたか全然いいですよ?」


「はい。相棒はミスリルランクのハンターですが前にも言っていた様にハンターを辞める様に言うつもりですが、辞めた場合。レムザスの資格を取るのは難しくなりますか?」


 どうしてか? と聞く前に腕を組み考え始めたのでホシモリはイクシオーネに通信を入れる。


『蛮族の事でか?』


『元から辞めるつもりでしたから良い機会かと。あのフルプレートの者にミスリルランクのハンターだと言う事が分かってしまったので』


『確かに……人攫いや蛮族や盗賊にしては少し装備にしても物がよかったな。あのガキンチョも姫とか言われてたしな』


『はい。もし他国の者だった場合ややこしいので蛮族で統一しておきましょう。それと記録は残ってはいますが相棒がハンターなった期間は短いので情報は残らないと思います』


『レムザスの資格とったら辞めるつもりだったし遅いか速いかの違いか』


 ホシモリとイクシオーネが話しているとシモンはシルバを呼び相談し始めたのでしばらく待ているとようやく話が終わった様でホシモリの方を向いた。


「やはりその場合は少し難しくなってきますね。レムザスは他国にもある程度技術は出回っていますがこの国の宝になりますから身元が不明な者に資格を取らせ無いとは思います」


「言いたい事はよく分かるな」


「方法としてはいくつかあります。このままハンターを続ける。かなりお金を貯めて王立都市の教会に寄付する。オススメは三つ目のトルキャット商会の傭兵として雇われるですね」


「三つ目でいけるならありがたいが……自分で言うのもあれだがこんな危険人物を取り入れて大丈夫か?」


「自分で言うんですね……娘を助けてもらいましたし極悪人でないと思いますしそれこそトルキャット商会は王立都市や魔導工業都市で顔が効きますから……多少は経歴をいじっても何の問題もありません。かなりの額を蒔いてますからね」


「それこそ……俺が問題を起こしたらヤバいだろ」


「問題を起こさなければ大丈夫ですよ。ずっと傭兵としていてもらっても大丈夫ですがレムザスの試験合格までという形にしておきましょう」


 イクシオーネに相談しても断る理由が無かったので二人は礼を言ってからシモンの案を受ける事になった。


「でもどうして急にハンターを辞めるつもりになったんですか?」


「山の帰りに人攫いの洞窟によったら人攫いの生き残りか蛮族が出たからな」


「なるほど……まだ残っていたんですね」


「こっちが殺されかけたからほぼ全員倒して何人かは条件付きで見逃したから面倒な事にならない様にハンターを辞めておこうと思ってな」


「その条件というのは?」


「俺達に金輪際関わらない事。ここであった事を言いふらさない事だな。話も聞かずに攻撃を仕掛けてくるような連中だったから守られる保証は無いんだが……」


「何というか……ホシモリさんも丸くなられたんですね。祖父から聞いた話だと敵は皆殺しと聞きましたが」


「あのな……俺を何だと思ってるんだ」


「鬼のホシモリでは?」


 シモンに上手いこと言われたのでホシモリが言い返せないでいるとシモンとシルバが笑いそろそろ食事に行きましょうと話を切り替えた。


 ホシモリも返ってきたばかりで汚れていたので前と同じ様に浴場を借りて体の汚れを落とした。そして少し湯船に浸かってから上がるとシルバが魔法でホシモリの服を綺麗にしてくれていた。


 綺麗になった戦闘服に身を包んでいるとポケットからコロンと何かが落ちた。


 それは人攫いのアジトで拾ったブローチだったのでそれをポケットに入れて食堂へと向かう。


 その途中で侍女を連れて歩くベルナを見かけたので声をかける。


「そうやって見ると普通にお嬢様だな」


「ホッホシモリ様……普通にお嬢様では無くれっきとしたお嬢様です。天下のトルキャット商会の愛娘ですよ?」と次女が言ってきたので確かにその通りだなと一人で納得する。


「普通じゃないお嬢様がいるかどうかは知りませんが……お帰りなさいホシモリさん。落差の山脈は大丈夫でしたか?」


「落差の山脈は問題無かったが……帰りの森で襲われたな。蛮族か人攫いんも生き残りかは知らないが……」


「だっ大丈夫ですか?」


「あれぐらいだったら問題無いな。それで落差の山脈でアースドラゴンの牙とか持って帰って来たから後でシモンさんに頼んで見せてもらうといい」


 そうしますとベルナが頷いていると人攫いの洞窟で拾ったブローチの事を思い出したので、少し悩んだ後にベルナに尋ねる。


「あの時の事を思い出したら申し訳ないが……このブローチって誰のとかわかるか?」


 ホシモリさんが助けてくれたので大丈夫ですよ言ってそれを受け取ろうとすると侍女かお嬢様恋してますねーと茶々入れがあったので頑張って否定してからそれを受け取った。


「これは……リセム姉さんのだと思います。子供の頃に見せてもらった記憶があるので間違い無いと思います」


「持ち主がいないならシモンさに買い取ってもらおうかと思ったが……飯くったら届けてやるか」


「とても大切にしていたと思いますので喜ぶと思います」


 そして食堂に豪華な食事が始まりホシモリは腹が減っていたのもあったがシモンやベルナが驚く程の量の食事を食べた。


「ホッホシモリさん……全然良いですし見ていて気持ちいいんですが食べますね」


「ここの料理が美味しいのもあるが……戦いになった時に魔法とか訳の分からない物が多いからな。食べられる時にしっかりと食べておかないとな。魔法銃もアースドラゴンにはほとんど効かなかったとか色々あったしな」


「魔法耐性が高い生き物には効きが悪いですね……対人と言う事はありませんが人にはよく効きますよ」


「蛮族に試したからある程度は分かったんだが……真面目に魔法の勉強したいんだが……シモンさんもベルナちゃんも何かツテはないか?」


 ベルナは学生という事で魔法に関しては習っているとの事でシモンが考えているとシルバが手を上げて話に混ざった。


「王立都市に着くまで時間があります。ホシモリ様も四六時中護衛を出来る訳でもないので休憩の時にでも私が教えましょうか?専門職では無いとはいえ基本的な事は教えられますので」


「むしろ基本から教えてもらえるなら本当にありがたい。じゃあシルバさん悪いが頼む」


「畏まりました。お嬢様もホシモリさんと一緒にお勉強ですね。魔法が苦手と言っていましたので」


 少し嫌そうな顔をした後に年相応な女の子の様にはぁいとベルナは返事をそれを皆で笑い食事を楽しんだ。


 食事も終わり寝るには速い時間だったのでやると決めたら割と問答無用でやるタイプの人間のホシモリはシルバに頼み外出許可をもらってハンター組合へ向かう事にする。


「という訳でシルバさんちょっと行って来る。すぐに戻ってくる」


「畏まりました。お風呂は沸いていますので喧嘩ぐらいなら大丈夫ですよ」


「……反論しようと思ったが反論の余地が無かった。そう言えばガーランドさんさから魔力についた死臭を消す物をもらったが、そう言うのってあるのか?」


「はい。ございます。ガーランド様クラスの兵士になると城にも呼ばれますから必需品になりますね」


「都市に入る時のエチケットって言われたな」


「この国は平和な国ですからあまり必要無いかも知れませんが……確かに兵士の嗜みですね」


「この星に来てから人攫いに会うは、組合で喧嘩売られるは刃物で襲って来られるは、森では蛮族に襲われるは……シルバさんとは平和に関して議論したい気分だが?」


「反論しようと思いましたが余地はありませんね」


 二人で少し笑い合ったあとにシルバがお気をつけてと言ったのでホシモリは手をあげてからハンター組合へと向かった。


 ハンター組合の中に入ると乱闘になった時のホシモリを覚えていた者やミスリルランクハンターやハンター長を病院送りにしたと噂が色々と伝わっているようでそこら中でヒソヒソ話が上がっていた。


「おっおい……あの新入りがハンター長を病院送りしたらしいぞ」


「まじかよ……確かに歴戦のの戦士って感じはするな。何処の国の奴だ?」


「お前話しかけて聞いてこいよ」


「絶対にいらん……話しただけで手首を切られるって話だぜ?」


 思った以上に平和だなーとホシモリは考え進んで行くと丁度、開いている受付がありそこの受付嬢がこっちに来るなオーラを誰が見ても分かるぐらい発していたのでホシモリはとてもよい笑顔でその受付にいった。


 すると顔を引きつらせ「ほっ本日のご用件は?」と尋ねてきたので良い事したなと自分を褒めた後にブロンズの腕輪とミスリルの腕輪を受付の上にのせた。


「そんな嬉しそうな顔するなってハンター辞めるから手続きを頼む」


 その言葉が以外だったのか受付嬢はホシモリと腕輪を何度も見比べた後に本当ですか?と質問した。


「嘘を言ってどうするんだよ」


「いっいえ……ミスリルランクなら国からの依頼もあり人格はともかく仕事はとても多く、怪我などで引退する人は多いですが自分から辞める人はほとんどいないので」


「素材とか買い取ってくれる所とか見つかったしハンターをやる意味も無いからな。という訳で手続きを頼む」


「分かりました……もしまたハンターになる時はブロンズからになりますが良いですか?」


「ならんから大丈夫だ」


 変な人を見る目で分かりました。といいブロンズとミスリルの腕輪に何かの魔法を唱えるとその腕輪は輝き出した。そして光が収まると受付嬢がこれで手続きは終わりですと言ったのでホシモリは礼を言ってからささっと外へ出ようとする。


 だが丁度、ホシモリ達に喧嘩を売ってきたハンター達と鉢合わせし、ホシモリの顔を見るやいなや嫌そうな顔をしてゲッと言ってきた。


「あのな……嫌いな奴をみて話しかけて嫌な気持ちになるなら無視しろよ。俺も腐ったおっさんの顔なんか見たくねーよ」


「誰が腐ったおっさんだ!」


「なんでも良いけどな。で?またやるか?」


 そう言ってホシモリはシャドーボクシングをするように構えシュッシュッと拳を放つと周りの雰囲気が少し変わる



 だがホシモリに話しかけたハンター達はそんな気も無いようで聞こえない程の小さな声でホシモリにこの前は済まなかったと謝った。


「おう。いいぞ。許したろ。大人になると謝らない奴が多いからなその点お前等は立派だな。これに懲りて新米のハンターは狙うなよ」


「何でそれだけ上から目線なんだよ……」


「俺の方が強いからな」


 それを言われてはどうしようもないので男達は大きくため息をついた。その光景を見ながらホシモリは笑い話しかける。


「職員と手を組んでやった事はともかく、喧嘩としてはあれが正解だからな。刃物をだしたら喧嘩じゃないからな。あれでいいんだよ……という訳で俺は忙しいが喧嘩したくなったら言ってくれ。いつでも買ってやる」


「ハンター長やミスリル冒険者パーティーを病院送りにする奴に喧嘩とか売るか!」


 じゃあなーと言って友人と別れる様に手を振ってホシモリはハンター組合を出て行った。


 その光景を見ながらそのパーティーの男がリーダーに話しかける。


「あの男……ハンター辞めたみたいですぜ」


「腕輪をしていなかったらそうみたいだな……」


「あれだけ強いのにもったいねー」


「あれだけ強いからハンターにならなくても食っていけるだろうな」


「リーダーがびびって剣を抜かなくて正解でしたね」


「びびってねーよ!喧嘩で剣なんか抜くか!」


 ガン!と硬い物を殴る音がしたのでホシモリはハンター組合の方を振り返っていた。そして再度トルキャット商会に向かおうとした所で探していた人がいたので声をかける。


「おーいたいた。リセムさんこんばんは。見回りか?」

 

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