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「相棒。ハンドイオン砲で足を焼き機動力を奪え!」


「了解しました」


 コックピットに写る自分達の倍ほどもある巨大な相手にホシモリもイクシオーネも自分達が負ける事など一切考えずに距離を詰める。


 確実に当たる距離まで近づいた所でイクシオーネはホシモリに言われた通りにチャージしていたエネルギーをウィッカーマンと呼ばれた樹木で編み込まれ作られた兵器の足に向かって放つ。


 放たれイオン砲が直撃する寸前で一度止まった様な動きを見せたが狙った右足に直撃し大きく体勢を崩し膝をつく。


 距離を詰め攻撃を仕掛けるタイミングに思えたが魔法と言う物がある星のなので先ほどイオン砲が一瞬止まった現象をホシモリはイクシオーネに解析をさせた。


「一瞬だが……イオン砲が止まったな。解析できるか?」


「はい。もうスキャンをかけていてすぐに結果がでます…………出ました。ウィッカーマンを守る様に魔力が盾の様に展開しています。そしてそれは中央にいる杖を持った女のいる辺りが最も強固となっているようです」


「パイロットを守るのは当たり前か……」


 ゆっくり話していていた訳ではないがウィッカーマンの情報を集めている間に植物が根が根を伸ばす様にウィッカーマンは吹き飛ばされた足を修復し立ち上がる。


 その再生の速さにホシモリもイクシオーネも驚き声を上げる。


「やっぱ魔法って凄いな……新型のナノニウム合金でもあんなに速く再生しないぞ」


「魔法障壁があるとは言え木がメインでできていますので強度に関してはレムザスの方が上ですが……戦線復帰や戦闘継続率はウィッカーマンが遙かに上だと思われます」


「だよな。感じ的にレムザスは壊れたら修理だもんな。ウィッカーマンは再生か……殺し合いの最中にやる事じゃ無いがデータ取るか?」


「はう。中央にいるパイロットから魔力が供給され形状を維持しているように思えますので何かあれば中央の者を即座に潰しますので強度等のデータを取ろうと思います」


「分かった。もしもの事を考えて全ての兵装の使用を許可する。やるぞ」


「了解しました」


 イクシオーネの返事に合わせてウィッカーマンがイクシオーネを狙い拳を振り上げ叩き潰す様に動いた。


 ウィッカーマンより小型で機動性に関しても比べものにならないほど高性能のイクシオーネは難なくその攻撃を躱しヒートマチェットの出力をカットし普通のマチェットでその腕を切り落とす。


 切り落とした腕も先ほどと同じ様に難なく再生し同じ様に攻撃を繰り返すがその攻撃は当たる事はなかった。


 地面にめり込んだウィッカーマンの拳から圧力がどれ位かかっているかを導きだし、その圧力はイクシオーネのボディーが耐えられる圧力内だったので躱す事を止め受け止める。


 計算通りだった様でイクシオーネには何の問題も無くただ足が少し地面にめり込むぐらいだった。


 だが魔法という物は計算でどうにかなる範囲を超えているようでイクシオーネに叩きつけた拳が根を張るようにイクシオーネのボディに絡みつき始める。


「魔法に関してはまだ不用意に接近しては駄目ですね」


「だな。出て切って来ようか?」


 この程度の拘束では問題ありませんとイクシオーネは言い体に絡まった根を引きちぎり拘束から逃れる。


 そしてそのまま魔法に気をつけながら打撃攻撃に移行しヒートマチェットで切断をしたりハンドイオン砲で焼いたりを繰り返しウィッカーマンの性能を調べていく。


 そんな事を繰り返していくと目に見えてウィッカーマンの再生が遅くなりとうとう切られた部分が再生しなくなった。


「ん?ガス欠か?」


「正確には魔力欠だと思われます。中央と腹部にいるパイロット達から魔力が供給されていましたがそれが途絶えると同時に再生がしなくなりました」


「なるほど……って事は中央にいた奴がメインパイロットで腹の辺りにに何人も入られる空間があるから……基本的に一人で操縦すると言うよりは複数人で分担するんだろうな」


「そう考える方が無難でしょう。今回は少人数だったのでこの程度の性能で済みましたが本来の性能が出ていたらどうなっていたかは分かりません」


 再生しなくなったウィッカーマンの性能を判断しその潜在的な能力の高さにホシモリもイクシオーネも驚愕した。


 そして…………ウィッカーマンの中央にいた杖を持ったパイロットを引きずり出しイクシオーネは鉄よりも固い手で握り潰した。


 パイロットが死亡するとウィッカーマンは光の粒子になって消えていき、腹部にいた耳の長い女も地面に投げ出された。


 ウィッカーマンという脅威が去ったのでホシモリはイクシオーネから降りて背中のダストレールガンを手に取る。


 魔法を使われる危険性があるので不用意に接近する事はせずに銃を構え眉間に標準を合わせる。


 耳の長い女がまた小便をを漏らし助けてくれと懇願するが、それで若い時に痛い目を見ているホシモリは間違いがない決意をする。


 そして指に力を入れた瞬間にまたイクシオーネが警告を発した。


 ただ先ほどと違うのは本当にホシモリの危機だった様で返事を待たずに行動し凄まじい勢いで飛来した物を握り止めた。


「気をつけて下さい相棒。援軍ですが今までとは比べ物になりません。私に搭乗する事を強く推奨します」


 受け止めた物は美しい装飾が成された騎槍のような物で、イクシオーネが言う様にその威力は凄まじかったようで止めたイクシオーネの手からも湯気が上がっていた。


 その危険性を即座に判断したホシモリがイクシオーネの背後に周り乗り込もうとすると「待って下さい!と大きな声が聞こえる。


 イクシオーネの索敵機能に二人の姿を捉えたが声が届くには遠すぎたので魔法かと二人は考えた。


 ホシモリもイクシオーネも殺戮マシーンと言う訳でもないので待って下さいと言われたので、先ほどの女を人質に取り声の人物を待つことにし飛来した槍の解析をする。


「相棒のナノマシン合金に傷がいってこの槍には傷は無しか……どういう金属か?」


「言うのも飽きましたが未知の金属です。使用者から離れた様ですがまだ魔力を保有しています」


「なるほどな……投げるぐらいだから持って帰って詳しく調べるか。投げるって事は弾と一緒で消耗品だろうしな」


「はい。持って帰りしましょう。私のボディを少しとは融解させ自身に傷がない金属はとても気になります」


 と二人で話しているとイクシオーネの足の下で動きを封じられている耳の長い女が怯えながら話し始める。


「待ってくれ!それは私達の国に伝わる神槍だ!」


 ホシモリがそんな事には全く興味はなく「知らんがな」と言った所で森の奥から真っ白のフルプレートに身を包んだ者と抱き抱えられる様にベルナ・トルキャットと同じ様な年齢で周りと蛮族と同じ様に耳が長い少女が現れた。


 そしてフルプレートを着た者から降ろしてもらい守られる様にホシモリに話しかける。


「人攫いさん。待って下さいその者を殺さないでください」


 フルプレートを着た者はかなりヤバい奴だと分かったが、向こうから話しかけて来たので警戒はしつつも言葉で返す。


「あのな……あんたに言うのは初めてだが、何回も言ってるが俺は人違いじゃないぞ」


 大きなため息をつきながらそう言うとイクシオーネの足の下にいた女がいきなり怒りだし、姫に向かってその口の聞き方はなんだ!と叫び話の邪魔をしたのでホシモリは顔面に蹴りを入れ黙らせる。


「お前は本当に黙れ。お前の仲間が死んだのもお前が選んだ結果なんだから話の邪魔はするな」


 自分がまだ死地から脱出できていない事を悟り女は何度も頷いた。


 蛮族の姫はその光景がかなりの衝撃だった様で顔がみるみる内に青くなったがフルプレートを着た者は特に気にもせずに蛮族の姫を守っていた。


「ここまでやってるから信用しない信用するはあんた達に任せるが……俺は人攫いじゃないぞ。ある程度は戦えるからこの辺りで採取をしていた所をこの蛮族共に襲われた」


 本当ですか?と言って姫と呼ばれた者がイクシオーネの足元にいる者を見ると話すなと言われていたので首を左右に振るだけだった。


 なんとも頼りない姫がホシモリと足の下にいると女の顔を見比べてあたふたし始めたのでホシモリは大きくため息をつく。


「どうする?魔法には詳しく無いが……記憶を見て嘘か本当か見分ける魔法があるんだろう?少し手間だが……城塞都市までいけばどっちが嘘を言ってるか判断できるぞ?それかその女みたいに戦うか?」


 そうホシモリが尋ねると姫と呼ばれた少女はフルプレートの者に耳打ちをし、少し時間をもらい相談する。


 そして相談が終わるとフルプレートを来た者が足の下にいる女に向かって魔法を唱え始める。


 すると何もない空間に映像が浮かび上がり今を基準にゆっくりと映像が巻き戻されていきホシモリとが出てきた所で止まった。そしてそこからは普通に映像がながれ声なども鮮明に聞き取れホシモリとのやり取りが映し出された。


 その魔法にホシモリがイクシオーネは感心し恐怖も覚え姫と呼ばれる少女が答えを出すのを待った。


 しばらくしてようやく満足したのかフルプレートを着た者に頼み映像を消してもらいホシモリに大きく頭を下げた。


「貴方様が言った事が本当の様でした……私の部下が勝手な真似をして申し訳ありませんでした」


「こっちも話が通じるなら戦う気はないからな。槍を投げたそこの奴はともかく……後はこっちで始末してから帰るからあんたも気をつけてな」


 お互いに誤解が解けたのでホシモリは軽く挨拶をしてイクシオーネの足の下にいる女に銃を構える。


「まっ待ってください!」


「あんたもさっきの映像を見てこの女が大人数で襲いかかってきたのをみただろ?俺は殺されかけたんだぞ?それを分かって待てっていってるのか?」


 その問いかけに少女が黙ると今まで静かだったフルプレートの者が声をだす。


「私の投擲を防ぐ者がこの程度の雑魚にやられる事は無い。強者の余裕で見逃す気はないか?」


「当てないつもりだった投擲だから話は聞くが……俺は弱者だよ。怖いから殺すんだ。死んだら終わりだからな」


「ミスリルランクのハンターに見えるが……言いたい事はよく分かる」


「人攫いのアジトに人がいると言う事で、私にもしもの事があった為にその者は兵を連れて先行しました。貴方の言いたい事は分かりますがそれでも私の為を思って動いてくれた者を無下にはできません……」


「いや……結果オーライだからそんな事が言えるんだぞ?あんたと言う守る存在がいるのに勝手に攻撃を仕掛けてあんたを危険に晒しているんだ。守る為と言えば聞こえはいいが……その辺わかっているか?」


 そうホシモリが言うとまた少女は黙ってしまったのでまたフルプレートをきた者が話し始める。その声は先ほども聞こえたが少し鎧で音が反響しているようで声だけでは男か女かは分からなかった。


「だが、君ほど腕が立つ者なら分かると思うが……精鋭と呼ばれる者達がたかが人攫いのアジトに自分より強い者がいると思って行動はしないだろ?」


「自分の命だけならな。今回はそこの少女の護衛とかなんだろ?だったら命をかける場面出くわしたら逃がすのが一番重要だろ……何で自分から危険な橋を渡るっだよ……しかも部隊は壊滅してるし……指揮官としては駄目駄目だろ」


「そうだな……たしかに正論だ。だが年端もいかぬ少女の前で知り合いを殺すのは駄目と思うが?」


 その少女もすこし冷静さを失っており少し言葉使いも辺になりホシモリに何度も頭を下げ、その者を殺さない様に懇願する。


 その泣きながら頭をさげる姿が最近知り合ったベルナ・トルキャットに重なって見えたのでホシモリは色々と諦めてその少女とフルプレートの女に条件をだす。


「じゃあ……条件を出すがいいか?」


「はっはい!」


「俺達に金輪際関わらない事。ここであった事を言いふらさない事この二つを守れるか?」

 もっと凄い事を言われるかと怯えていたが大した事が無かったのでフルプレートの者にその少女は相談する。


 そして相談が終わるとホシモリに向き合った。


「分かりました。その条件を飲みますのでその者を離してもらえますか?」


「口約束だからな……守っても守らなくてもいいが約束だぞ?」と言ってイクシオーネに向かって頷くとイクシオーネは何も言わずに足上げる。


 体が自由になった事でゆっくりと立ち上がり少女の元へ向かう女の胸ぐらを掴みホシモリは最後の警告をする。


「殺したのは俺達だが……その種を巻いたのはお前で自分が使える者を死地へ連れ出したのもお前だ。これからお前がどう生きるかは知らんが同じ様な生き方をするなら忘れるなよ」


 ホシモリの本当の殺気を込めた瞳に射貫かれその女は頷く以外の選択肢はなかった。


 そしてその女は自分より小さな少女に抱きかけられ意識を失ったのでフルプレートの者が雑に掴みそのまま背負った。


 先に動いて後ろから狙われたらたまったものでは無いのでホシモリが少女達が動くのを待っていると何を勘違いしたのか少女がホシモリの名を尋ねた。


「あのな……金輪際関わらないんだから名前を知らなくても問題無いだろ」


「そっそうですね……でっでも私は名乗って起きます……私の名前は……」


「いらんいらん。蛮族の姫とかどーでもいいは」


 そこまで雑に扱われると思っていなかったのか少女は涙を溜めながらフルプレートの者の後ろに隠れた。


 その光景が面白かったのフルプレートの者が小さく笑うとホシモリが質問を投げかける。


「一ついいか?」その問いにフルプレートの者は頷いたのでホシモリは質問を続ける。


「あんた……かなり強いだろ?仲間の敵討ちとかは思って無いのか?」


「……私は仲間意識が薄い生き物だからな。勝手に動き守るべき者を危険に晒した屑共の事など知らん。それに負ける戦いは嫌いでね。私が死ねば君が言う蛮族の姫はこの森を抜ける事は不可能だからね」


「よく言うわって奴だな……あんたらが視界から消えたら俺も動くからささっと言ってくれないか?」


「分かった……私からも一ついい?」


「どうぞ」とホシモリが言うとイクシオーネが持っている槍を指さしてあれは国の物だから返してくれないか? と言って来たので、大事な物なら投げるなと少し言い合いになりようやくホシモリから奪い返しその場から去って行った。


 その姿が見えなくなってからイクシオーネがホシモリに話しかける。


「あの少女がベルナ・トルキャットに見えましたか?」


「ああ……昔だったら殺してると思うが……お前が言うように俺はロリコンになったのかもしれん」


 そういって本当に悩んでいるホシモリをみて少し笑った様な仕草をした後にイクシオーネが答える。


「いいえ。人間に近づきました。初めて貴方を見た時はただのキリング短髪でしたので」


「意味が分からん……」


 文句を言いながら辺りを見渡すと戦いの痕跡がいたる所に残っていたのでホシモリをイクシオーネは片づけてから城塞都市へと向かった。


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