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 長い様で短い短い様で長い、一秒の様で何千時間と気持ちが悪いのか心地良いのか訳の分からない感覚がホシモリを駆け抜けた後に聞き慣れた相棒の声が耳に届く。


「おはようございます。相棒」


「ああ。おはよう相棒。俺はどれぐらい意識を失っていた?」


「地球時間で十時間と二三分です」


 かなり寝ていたなと体を動かそうとすると相棒のコクピットの中だとしりモニターを見渡すが相棒のイクシオーネもワープポッドからまだ出ていない様で狭いポッドの中の無機質な装甲が写っているだけだった。


「もしかしてワープポッドのハッチが開かないのか?」


「いいえ。私も転送された時に電力が落ちたので相棒が目覚める五分前にようやく再起動が完了し目覚めましたので目覚めるのを待っていました」


「そうか……ありがとよ相棒」


「どういたしまして相棒」


 そしてイクシオーネが中から操作しワープポッドのハッチを開けようとするがワープの衝撃で壊れてしまったようで全ての入力を受け付けずにいた。


 このワープポッドだけではワープする事は不可能だったので仕方なくイクシオーネが中からけり破り外へと出る。


 外に出て見えた景色にホシモリもイクシオーネも言葉を無くし圧倒された。


 ホシモリ達がいた場所は起伏の激しい崖が切り立つ山脈だったが青く美しい空には雲が流れ山裾には草木が青々と生い茂り生命体の存在を感じられた。


 目に映る景色は見た事は無かったが話に聞いた事がある景色とよく似ていたのでホシモリはイクシオーネに話しかける。


「もしかして地球にワープしたのか?」


「いいえ。景色供にデータベースにある地球によく似ていますが未知の惑星です」


 それもそうかとホシモリが少しだけがっかりしていると大気を解析していたイクシオーネがこの惑星には地球とほぼ同じ大気成分でできており人がマスクなしでも暮らせると話す。


「相棒。ほぼ同じってなんだ?」


「はい。酸素や二酸化炭素など成分はデータベースにある物と同じですが、未知の成分が大気に混ざっています」


「なるほどな……未知って事だから人体にどういう影響があるかは判らないって事か」


「はい。ですがパイロットである相棒に危険がある物なら感知できますので95%以上の確率で安全かと思われます」


 ホシモリは少し悩んだがここで相棒のコックピットにずっといる訳にもいかないし、何より十時間以上前までは激しい戦闘をしていたので自身の目で相棒の損傷具合を確かめる為に外へ出る事を決意する。


「開けてくれ相棒」


「了解しました」


 プシューっと背後のハッチが開きイクシオーネのコックピットからホシモリはゆっくりと降りこのよく分からない惑星の大地を踏みしめた。


「本当に空が青いし空気があるな……重力はどれぐらいだ?」


「地球の重力とほぼ同じですがこの星の方が少しだけ重いようです。ですが誤差の範囲です。体に不調は出ていませんか?相棒」


「ああ、問題は無いみたいだな。俺の場合は肺と肝臓、心臓は人工強化臓器だから普通の人よりは劣悪な環境でも生活できるけどな」


「判りました。ですが体に異常を感じたら即座に報告して下さい」


「了解」


「これからどうしますか?水と食料の確保が最重要になります。数時間も山脈を下れば森に入るので食料の確保は容易かと思われます」


「いや、襲撃される前に高カロリー食を喰ったし携帯食料がいくつか残っているから、まずは俺と相棒のメディカルチェックと装備の確認だな。ワープポッドもプラネット用のだからな使える物も色々あるだろう」


「了解しました。ですが早めに山を下りる事をオススメします。地球によく似た気候でであればこの場所も日が落ちると温度が下がると思われます」


「了解っとまずは俺のメディカルチェックだな」


 イクシオーネは向けて屈み背分にあるハッチを開き、もう一度ホシモリをコックピットに搭乗させる。そしてホシモリを神経系のリンクを確率させ体の隅々まで異常が無いかを調べていく。


 ものの十分も立たない内にホシモリの体はスキャンされコックピットに移されたモニターに異常箇所が表示される。


 表示された異常箇所を確認し自身の治癒能力で治る事が分かりホシモリはほっと胸をなで下ろす。


「そこまで大きな異常がある所は無さそうだな」


「はい。日常生活に問題ありませんが、戦闘になれば強化骨格の神経針が数本折れているので50%ほど出力が落ちます」


 ホシモリが腕を背に回し首から腰まで皮膚と同化した器具を戦闘服越しに撫でた。


「まぁ仕方ないか……左目の義眼なら連合軍の医療班の所で調整してもらわないとダメだしな。確か、背中の強化骨格って俺の体と同じ素材でできてるから怪我が治る様に修復されるんだよな?」


「はい。バランスの良い食事と睡眠を取れば数週間もあれば治ります」


 自身の体の異常が判ったので次はコックピットの上部にあるケーブルを引っ張りホシモリの左の義眼に接続しイクシオーネの状態を隅々まで調べていく。


 こちらもホシモリの体を調べた時と同じ様にものの十分程で終わり、義眼からケーブルを外しモニターに表示させる。


 その表示されたイクシオーネの破損具合をホシモリは確認し頭を悩ませた。


「死んでいないのが嘘な程の戦闘だったからな……これぐらいで済んだのが幸いか?」


「はい。あの戦闘の規模を考えるとこの程度で済んだのは天文学的な数字になります。詳細を聞きますか?」


「いらんいらん」


 徹甲弾やイオン弾による外装への大きなダメージ。そしてそこから動力パイプが剥き出しになっており近距離で発砲を行うと飛び散った瓦礫などで自身がダメージを受ける可能性が大いにあった。


 中でも深刻だったのがコックピットの下部に取り付けられている四つのバッテリーの内二つが破損しエネルギー供給が止まっている事だった。


「動く分には問題無いが……外装のナノニウム合金を修復させるほどのエネルギーは確保できないか……」


「はい。装備も両手のハンドイオンが出力低下。接近用ヒートマチェット、そして私の最大兵器の左方に装着されたイオンレーザーカノンが使用不可です」


「相棒の型番のイクシオーネS3000RSはレーザーとか光化学兵器主体のプラネットなのに予備のバッテリーとか無いんだろうな?」


「拠点防衛がコンセプトだったので壊れたら拠点で交換すればいいという考えだったのでしょう。それとヒートマチェットは切れ味はかなり落ちますがマチェットとしてしよう可能です」


「あいよ。降りてちゃんと見ておくか。相棒開けてくれ」


「判りました」


 背分にあるハッチが開きホシモリがコックピットかり降りて先ほどのデータと確認しながらイクシオーネの傷を目視していく。


「配線とか……思った以上に剥き出しになってるな。ここは後で応急措置がいるな。それでここのダクトに穴が開いてて……相棒。コックピットのエアコンってつくか?」


「確認します…………温風は出ますが冷風は出ません。先ほど確認した場所から抜けている様です」


「了解っと……過ごしやすい気候でよかったな。よし、相棒。バッテリーを確認するからコックピットを開けて座席を上げてくれ」


「判りました」


 イクシオーネは言われた通りに屈みホシモリに向けて背中もハッチを開け、ホシモリ座り慣れた座席を折りたたみ上昇させその下にある長方形のバッテリーを露出させさせた。


「「よし。一度全部外して状態を確認するから予備電源に切り替えてくれ」


「了解しました」


 イクシオーネのモノアイが数回点滅しカチッと音が鳴り予備電源に切り変わったのでホシモリは赤子に触る様な優しい手つきで丁寧に四つのバッテリーを引き抜いていく。


 抜かれたバッテリーの状態を診ながらホシモリはイクシオーネに話しかける。


「接続部が融解してエネルギーが本体までいかないのか……本体の方も見るか」


「お願いします」


 バッテリーを抜いた場所に持っていたペンライトを照らすと外側が二カ所ほど溶けて融解していた。


 その状態を確認したホシモリは頷いてからもう一度バッテリーを見てイクシオーネに考えを伝える。


「バッテリーが壊れていないから何とか直りそうだ。ただこの星で金とかそれに近い金属があればの話だが……」


「金を使って応急措置をすれば電力が確保できるので自動修復が発動するので素早く直ります」


「そうだな。とりあえずは漏電してシステムに不調が出る方が大変だから接続部が壊れてる所は確実に止めておいてくれ。壊れてるバッテリーも内部に収納しておくからな」


「了解しました…………破損バッテリー接続部を切断しました。これでエネルギーは本体に伝わりません」


 ホシモリは頷いてから取り出したバッテリーを元の位置に戻し座席を元の位置に戻させてからハッチを閉める。そしてイクシオーネに電源の切り替えさせる。


「さてと今後の最重要課題は相棒のバッテリーの修理だな」


「いいえ。最重要課題は相棒の衣食住の確保です」


 長年の付き合いでこうなるとお互い退かないのが分かっている一人と一機は少し笑った後にホシモリが妥協案を提示する。


「じゃあ、俺の衣食住の確保してからバッテリー修理でいいか?確率は低そうだが文明も存在してそうだしそれを探すのもありだな」


「それで問題ありません。意思疎通のできる生命体が繁殖している確率は非常に高いかと」


「できたら人型がいいなーガス生命体とか粘菌生体とか意思疎通が難しいもんな」


「生命体に関する差別発言を感知。私の前では大丈夫ですが公の前では控えてください」


「……住みにくい世の中だ」


「いいえ。大気があり空気がある星は人型生命にとってはとても住みやすいです」


「冗談だぞ。相棒」


「はい私も冗談です相棒。まだ大丈夫ですが日が暮れる前にワープポッドの中を確認していまいましょう」


「あいよ」


 イクシオーネが中に入ると狭くなるので外に待機して貰いホシモリがワープポッドの中を調べていく。


 兵器の類いはほとんど詰まれていなかったが数日分の携帯食料と携帯液体濾過器等がワープポッドの中に入っていたので一度全部を外に出して並べる。


「食料と濾過器はありがた過ぎるな……後はヒートナイフとダストレールガンが俺用だな。充電もされてるしワープ事故も想定されてたんだろな」


「その可能性は大いにあります。敵地に転送される事も考えてでしょう」


「にしては貧弱装備だけどな。そっちのグレネードとミサイルは使えそうか?」


「はい。問題ありません。右側のショルダーランチャーからミサイルは発射可能です。十発ですが直撃させれば新型のプラネットも楽に沈みます」


「そいつは頼もしい。グレネードは?」


「どちらもスモークタイプです、一つは電磁スモークで対象が人であった場合、感電死させあた対象がプラネットだった場合、感電により兵装を無効化します。そしてもう一つはナノソナースモークです」


「……なんでそんな高級品のってるんだよ。そのスモークって煙幕内の対象にナノマシンが干渉しステルスしようが何しようが全部モニターに映るんだよな?」


「はいそうです。付け加えるならナノマシンが脳にまで侵入すると対象をプラネット側で操れます。……たぶんですが横流しでしょう」


「……そんな事やってるから基地の情報が帝国に流れたんだろうな」


「はい。帰還した際には上層部に伝え調べてもらう必要があります」


 そんな話をしながらイクシオーネは左右大腿部のパーツを開きグレネード詰めていき、右肩のショルダーランチャーにミサイルを詰めていく。


 ホシモリは自身が装備しているジャケットに手に入れたヒートナイフを装着し、ダストレールガンを起動し使えるかどうかを確認し始める。


「……空気中に塵が少ないから弾ができん」


「その形式番号なら足元の砂利等でも可能です」


 凄いなと呆れながらホシモリが足元の砂利を手で掬い銃のグリップに入れて閉めると、弾を生成していますと宙に字が浮かび上がる。


 そし十秒もしない内に弾が完成したようで弾丸の数が本体に表示された。


 そして試し打ちをするのでイクシオーネにデータを取るようにホシモリは頼み数百メートル先の尖った岩に目標を定めた。


「細かいデータを表示させますか?」


「いや、俺の義眼でもある程度のデータはでるしこれぐらいの距離なら勘で当たるだろ」


 そう言って軽口を叩きながら引き金を引くと空気を切るような音がした後に弾丸は目標に命中し砕け散った。


「流石は相棒。惚れ惚れする狙撃技術ですね」


「当たった本人が一番驚いているけどな。ダストレールガンも問題無いな。おれの装備も元から持ってた超振動ナイフもあるし……何とかなるか」


「それだけ狙撃技術があるのに接近戦のスペシャリストですから人と言うのは面白いですね」


「俺にナイフ技術を叩き込んだガットマン教官に言ってくれ。と言うか俺がいた兵舎は皆これぐらいやってたぞ」


「兵力で上回る帝国が押されているのがよく分かった気がします」


 それから残ったワープポッドに使える物が残ってい無いかを調べホシモリ達は山を下りる準備を進める。

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