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「おー、あの時の手綱娘。あんたのおかげで無事に街まで来られたからな。あの時は世話になった」


 その台詞が面白かったのか甲冑を着た女性はそれは私の台詞ですよと笑った。


 ホシモリは言葉を完璧に話せる訳では無かったが留置場の中でも魔法で会話が通じその効果がホシモリ達がいた辺りまで及んでいたので二人は会話に困る事がなく自己紹介を始める。


「私の名前はリセム・ランストと言います。この都市の警備兵でガーランド隊長の部下になります」


「俺の名前はツグヒト・ホシモリだ。まぁ自己紹介をしなくてもさっき喧嘩してきたから名前ぐらいはしってるか」


「喧嘩……喧嘩と言っていいんでしょうか?」


「喧嘩だな。それで?ガーランドさんに素材を売りたいって尋ねたら外に出れば分かると言われてランストさんがいた訳だが……何処か売れる所とか知ってたりするか?」


「良い所を知っているので任せておいてください。ちょうどその店の主人も礼を直接言いたいと貴方を探していて保釈されたら連れてくるように頼まれていたので」


 自分を探している人間など人攫いから助けた人達しか思いつかなかったので、質問すると助けた少女の父が丁度、今から行く商家の商人と言う事だった。


「だったら行っても悪い様にはされなさそうだな」


「そうそう悪事をする人間はいないと思いますけど……」


「あんたもあの娘も攫われて俺もこの都市で盛大に絡まれたんだが?」


ホシモリが正論を言うとリセムは言葉に詰まりそれ以上は言い返す事ができずに少し笑った。


 そしてその商人の家に向かう為に移動を始める。


 留置場から離れると言葉が通じる魔法の効果が失われたのでホシモリは少し聞き取りにくくなったのでイクシオーネに通信を入れ、サポートを頼んだ。


『流石に何も無いと思うが右目の義眼に接続して相棒もデータを収集しておいてくれ』


『了解しました』


 イクシオーネとの通信を終えるとリセムがホシモリの方を見ながら質問をする。


「ホシモリさんは森の中でも今の様にかなりの小声で誰かと話しているように見えますが……精霊とでも話しているんですか?」


「さぁ?どうだろうな。兵士が自分の事を簡単には教えるなとガーランドさんに習わなかったか?」


「……確かに習いましたね」


 ほぼ口だけ動かし声など聞こえない程の音量で話していたのにそれを聞き取れる人物がいる事にホシモリはかなり驚いたが、話の流れを変える為に質問する。


「そう言えば助かった人達ってどうなったんだ?」


「そうですね。ホシモリさんがシルバーランスウルフの毛皮や盗品を分けたので、帰られる金額はあったので国に帰る人もいればこの国で新たな人生を始める人もいますね」


「それは良かった」


「盗品だと分かる物は持ち主に返却しましたが……それでも一般人からすればかなりの額が手に入ったので皆さんとても喜んでいましたよ」


「元気で金があれば割となんでもできるからな……あの人攫い貴族は二ヶ月後に王立都市で処刑って事だが大丈夫なのか?色んな所に根回ししてる奴なんだろ?」


 リセムは少し顔を曇らせて辺りに聞き耳を立てている者がいないかを確認してから話し始める。


「はい。まだこの城塞都市の監獄に監禁してあります。今、王立都市につれて行くと逃げられる可能性がかなり高いので……」


「まぁ何処の国でもそんなもんだしな」


「ですので……城塞都市から王立都市への移動はかなりの人数を使い厳重に移動します」


「個人的にそこは力を抜いて良いと思うぞ?ガーランドさんぐらいできる奴が率いる部隊なら相手がいるかいないかは分からんが……普通は襲って来ない。動くとしたら向こうに着いてからか、もう動いているかだな」


「ガーランド隊長と同じ様な事を言っていますね……」


「たぶん似たもの同士だからな」


 暗くなった景色をランプのような街灯が照らす整備された道路を二人で世間話や情報交換をしながら歩いて行く少し毛並みの違う住宅街へと出る。


 そこは家の作りも先ほどまでいた区画とは違い時間をかけ丁寧に作られた多く高級住宅街の様な感じの場所だった。


 そしてその地域の庭には中型サイズのレムザスが配備されておりその家を守るかの様に一定の間隔で徘徊していた。


「金持ちが住むって感じの場所だな……中型のレムザスでも高いんだろ?」


「それで合ってますね。この辺りは基本的に裕福な方が多く治安も良い場所ですから」


十字路を左に曲がりさらに先にすすんで行くと人の背丈の二倍ぐらいの大きさのレムザスが守る門がありそこが目的地だったようでリセムは門を開け中へと入って行く。


「ランストさんの知り合いの家か?」


「親戚ですね。」


 そのまま手入れをされた庭を歩いているととても大きな建物が見え、その建物の玄関だと思われる場所に数人の人が立っていた。


 そこにはホシモリが助けた少女も立っており身嗜みも整えられておりお嬢様と言う言葉がとても良く似合う似合う感じに仕上がっていた。


 だがホシモリも義眼を通して見るホシモリもそこには目が行かず。その人達の中心にいたにこやかに笑うふくよかなおじさんに釘付けになっていた。


「……ランバルト大尉か?」


『いいえ。髪の色。体格供に全くの別人です。……ですが別人と言うには少し似すぎています』


 ホシモリの呟きを拾いリセムがあれはシモン・トムキャットという人でこの国でレムザス兵装などを作る商人だと教えてくれた。


「知り合いに似ていましたか?」


「顔だけ見ればそっくりだな」


「世の中には自分に似た人が四人はいるといいますからね」


「……それはけっこう嫌だな」


 近づくに連れてその商人が前哨基地で死に別れたランバルト大尉と本当によく似ていた。


 そして会話ができる距離まで接近するとその商人が頭を下げてから自己紹介を始める。


「初めまして。私の名前はシモン・トルキャットと申します。娘を助けて本当にありがとうございます」


 次はホシモリが名乗ろうとしたがその前に助けた少女が前に出て先に名乗った。


「わっ私は、ベルナ・トムキャットと言います。その説は助けて頂き本当にありがとうございました」


「元気そうでよかった。私の名前はツグヒト・ホシモリと言います。今日はお招き頂きありがとうございます」


 急に話し方が変わったホシモリをリセムは驚くがホシモリが兵士と金持ちで言葉を使い分けるのは普通だ? と言うと妙に納得していた。


 その話が聞こえていたベルナはアハハと苦笑いしていたがシモンは腕を組み少し考え込む仕草をしていた。


 その光景を不思議に思いベルナがお父様? と尋ねるとようやく我に返ったようで皆に頭を下げて中へと入って行った。


 中に入ると使用人達が頭を下げて皆を出迎え金持ちの屋敷という言葉とても良く似合う建物だった。


 その光景にホシモリは珍しく圧倒されていると先頭をシモンが歩き、ベルナ、ホシモリ、リセムと執事と思わせる初老の男性が続いた。


「ずっとベルナやリセムを助けてもらったお礼を言いたくて探していたんですが……なかなか見つけられずにいたんですよ。ホシモリさんは何処に泊まられていたんですか?」


「はい。東門の近くの小屋ですね……と言ってもほとんどは森の中で生活していたのでよほどの事が無い限りは街に戻りませんでしたので」


「そう言えば貴方は私達を助けてくれた後も森でトカゲ等を焼いて食べてたな……」


「私が起きた時にシルバーランスウルフを焼いて食べてた時は本当にビックリしました」


「いや……あれは私の方がビックリしましたけどね。悲鳴に近い叫び声でしたから」


 その時の事を思い出したのかリセムはベルナをからかう様に確かにと言い皆で笑い合った。


 その話の繋がりで今まで森の中で暮らしていて川で体を洗うのが日常だったホシモリが軽く後ろを振り返るとホシモリやリセムが通った後には足跡がついておりそれを使用人達がすぐに掃除していた。


 自分の匂いなどは気にならない方だったが兵士時代に上官達と食事に行く事もあったホシモリはシモンに質問する。


「トルキャットさん。先ほどの話では無いけど私はずっと森の中にいたので屋敷を汚してしまうと思うんですが……大丈夫ですか?」


 シモンもベルナも特に気にしていない様だったが……少しだけ考えた後に提案する。


「そうですね。これから皆で食事と思っていましたが……少し時間をずらしてホシモリさんとリセムは先にお風呂に入りますか?その間に身につけている物は魔法で浄化しておきますので」


 言い出した本人はこの屋敷の主が気にしないのなら別に良いかと思ったが、リセムが切実にそうしようとシモンに訴えたので先にお風呂に入る事になった。


 ベルナはもう入っていたようだったがリセムが入るとしったので自分ももう一度入るといい、仲の良い姉妹の様に手を繋ぎ先にいった。


 その光景を眺めながらホシモリが助けてよかったなと思っていると執事の男性がこちらへと行って案内してくれる様だったのでシモンと別れお風呂へと向かった。


 壁に飾られた絵画を見ながら俺の方が上手いなと考えているとその執事の男性からも礼を言われる。


「お嬢様達を助けて頂いてありがとうございました」


「どういたしまして。初めて見た時は言葉も分からなかったので助けて良い物か悩みましたが……助けて良かったですよ」


「良い目と心をお持ちで」


 執事の男性のよく分からない言い方に愛想笑いをしていると目的の場所についた様で執事の男性が扉を開ける。


 衣服や装備などはこちらに入れてもらえれば私が魔法で綺麗にしておきますといったので、ホシモリは荷物を置いてから服を脱ぎ始める。


「……執事さん。見られてると脱ぎづらいんですが」


 ホシモリの体につく無数の傷に執事が息を飲み込み固まる


「失礼しました。そういう趣味はございませんのでごゆっくり」


 どういう趣味だよ! 心の中で突っ込むと執事は出て行ったので馬鹿みたいに広い浴場に入りまずは体や頭を洗った。


 自分が思っていた以上に汚れていた様で石鹸をつけて体を洗うと垢や血のりなどが落ち流れる温水を茶色く染めた。


 ようやく綺麗にあらい湯船に浸かると何年ぶりに入った風呂にため息をもらす。


「ふぃ。なかなかいいもんだ」


『風呂は良い物です。先ほどの戦闘データの解析が終わりました』


『どうだった?』


『はい。ゴールドランクのハンターは連合国でいうソルジャーです。ミスリルの三人でようやくコマンダーと言った程度の実力です』


『ソルジャー・コマンダー・デストロイ・レギオンだったな』


『ですが、ここからが問題で戦闘力以上に肉体が頑丈です。相棒が加減したとはいえ顎を粉砕した程度で絶命は免れています』


『俺も思ったなゴールドの奴は喧嘩だったからあれだが。ミスリルは殺すつもりだったからな……その辺りは分かるか?』


『無意識だと思われますが生命の危機を感じる箇所に魔力が流れるようです。この映像を見てください』


 義眼にホシモリが戦った映像が流れ前と同じように魔力の流れには色がつけられていた。そしてホシモリが顎を砕く為の拳が動くとその辺りに魔力が集まっていた。


 その映像を見ながら魔力を使える者達と戦いになった事を考えイクシオーネに指示を出す。


『戦闘に関して大した事はないが……魔法や魔力が未知だな。魔力を扱える者とやり合う時は危険度を二つあげて対処するようにしよう』


『分かりました。この魔法使いと呼べる女性が使った魔法を軽く躱していますがそれでもですか?』


『ああ。ミスリルだから躱せたのもあるだろうしな。オリハルコンやエンペライトとか更に上位だと何をしてくるかも分からないそれでいい』


『了解しました。この館の主。シモン・トルキャットは少し警戒しているようですが相棒には本当に感謝しているようなのでゆっくり食事を楽しんでください』


『了解。相棒の事だから近くで中型を小型のレムザスをスキャンしてるんだろ?』


『はい。面白いデータが取れていますので戻ったら伝えます』


『あいよ。久しぶりの食事らしい食事を楽しむは』


 イクシオーネを話していて少し風呂が長引いたので上がると脱衣所には新品の様に綺麗になった装備が畳まれていたので綺麗にしてくれたであろう執事に心の中で礼を言ってそれらを身につける。


 そして脱衣所から出ると執事が待っていたので礼を言ってから後についていく。


 女性陣はまだ上がっていないなど世間話をしながら後についていくと、そこで食事をするだろう思われる広い部屋出た。


 食事などはテーブルに並べられておらずシモンが額縁に入れられた何かを静かに眺めていたのでホシモリはゆっくりと近づき話しかける。


「とても気持ちの良いお風呂でした。トルキャットさんありがとうございました」


「そう言って頂けると私も嬉しく思います」


 そう言って笑顔で返した後にまた上に上にかけてあった額縁を眺める。


 ホシモリも釣られてその方向に目を向けるとそこには、流石のホシモリも驚愕する物が存在した。


 この星では絶対に見る事は無いと思っていた元の星の字で書かれた文字が並んでいた。

 

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