17
一人の職員を殴り飛ばし感じ的にホシモリが知っている兵士よりは弱かったので心の中で謝ってから囲んでいた残りの職員も加減し殴り飛ばし気絶させる。
首と手を鳴らしながらホシモリはスターランスというハンター達に話しかける。
「相棒には良くゴリラとか言われるが……これでもレギオンなんでな。俺は結構強いからこの鳥の足が欲しかったらかなり頑張れよ」
「何を訳の分からねー事を言ってやがるんだ!皆やっちまえ!」
お前が先陣切れよ! とホシモリは心の中で突っ込むとまずは二人ほどがホシモリに向かって殴りかかってくる。
それを簡単にホシモリは避けて腹に拳を叩き込むが職員を殴った程度の力ではあまり効かない様だった。
「こいつ大した事ねーぞ!皆で囲め!」
(ゴールドランクのハンターだし一般人よりは強いな……強化骨格まで使用しなくてもいいが加減もしなくて良さそうだな)
そう考えた後に右ストレートを叫んだ男の顔面に叩き込むとその男が軽かったのか、宙を舞い受付をぶっ壊し着弾した。
ピクピクと足は動いていたので加減はちょうどいいなと納得しホシモリは残った相手に向き合う。
うおぉぉぉ! という叫び声と共にスターランスが全員で襲いかかって来たのでホシモリも腕を回して喜びながら真っ正面から突っ込んでいった。
近くにあった椅子や机がが宙をまったり近くにいたハンター達に直撃しブチ切れ大乱闘に発展する。
名前も知らないハンターの歯が折れたり、奇抜な服装のハンターの拳がホシモリの顔面に直撃し鼻血が出たりもしたが……中心にいる等の本人は連合国軍に入った時もこんな感じで喧嘩したなーと若い頃を思い出し一人だけ楽しんでいた。
「何を笑ってやがる!」
「俺もまだまだ若いなと思ってな。というかお前はしゃべってる暇あったら避けろよ」
その忠告に反応したスターランスのリーダーっぽい男は避けるのが少し遅れホシモリの強烈なボディーブローをまともにくらい腹を押さえながら崩れ落ちる。
「ぐっ!げはっ!……お前……ハンター組合で喧嘩……しやがって……どうなっても知らんぞ」
「俺も知らん。後先の事を考えて喧嘩する奴とかいないだろ」
腹を押さえうずくまる男の顔面に蹴りを叩き込むが思った以上に頑丈な様で吹き飛ばされはしたが気絶する事は無かった。
そこら中の物が破壊され全員の頭に血が上り男も女も関係の無いまさに大乱闘という言葉がふさわしい場所に仕上がっていたが外野が現れた事で一変する。
「何をやっている!」という男の声が聞こたが、血の気の多いハンター達がそれで止まる訳も無く無視をして喧嘩を続けているとその男は剣を抜き仲間の魔法使いであろう女性に命令をする。
「テスタ!レスティア!この場にいる全員を束縛しろ!私はこの喧嘩の原因を作った者の腕を切り落とす!」
そう叫ぶ男の方に目を向けるとそこに白いフルプレートを着た青年と紫のとんがり帽子を被り同じ色のローブにみを包んだ女性と濃い青色のローブに身を包んだ女性がい。
そしてその女性達が何かを唱えると足元から奇妙な図形が現れると同時に鎖の様な物が現れ喧嘩をしていた者達に巻き付き始めた。
ホシモリはそれを難なく躱すが躱した先に剣を抜いた先ほどの青年がおりホシモリめがけて剣を振り下ろす動作に入っていた。
何かを言いながら剣を振り下ろす青年の姿を見て、今まで喧嘩を楽しんで笑っていたホシモリの表情と雰囲気が一変し戦場で帝国兵に連合国軍の悪夢とまで言わしめた兵士としてのツグヒト・ホシモリが顔を出す。
「たかが喧嘩で刃物を抜くなよ」
そこには冗談を言って笑うホシモリの存在はいなくなっていた。
その青年の振り下ろす剣より更に速くコンパクトに超振動ナイフを抜き、勢いそのままに青年の甲冑ごと両腕を切断する。
切断された痛みが青年に伝わるよりも速く腕がついた剣を青年の太ももに突き刺した。
そして何も無い左手で的確な角度と速度で顎を砕くとようやく自身に何が起こったのかを察知し声にならない叫び声をあげる。
その事でワンテンポ遅れて仲間に何があったのかを悟り二人の女達がその青年の名を叫ぶ。
「「セトナ!!」」
ホシモリを敵と認識した女性達が魔法を唱え始めるが、ホシモリは近くにあった壊れた椅子を女性達に向かって蹴り飛ばし詠唱を中断させる。
女性達は間一髪の所で避けるが……とんがり帽子を被った女性が避けた先にはホシモリがすでに周り込んでいた。
魔法に対してかなりの危険を感じているホシモリが手加減などするはずも無く、一撃で肺を潰してそのまま掴んで受け身が取れないように地面に叩き付け腕を折った。
「ひっ!」
残った一人がホシモリに恐怖し後ろに倒れそうになったが倒れる前に顎を砕き気絶させる。
ホシモリの容赦のなさと狂戦士の様な戦い方に心が弱い者はその場で崩れ落ち小便をもらす。
そして職員だと思われる人が「あそこです!ハンター長!」と叫ぶと初老の男性と思われる人が姿を現す。
ホシモリがその男性に目を向ける頃には急接近されいつの間にか首元に二本のナイフを当てられていた。
その男性はホシモリの首にナイフを突き付けて話かける。
「これでも現役時代は短刀使いでしたが……もしよろしければご指導お願い出来ますか?」
「一つ。刃物は脅しの道具じゃなくて殺しの道具だ。二つ。ナイフに殺気を乗せすぎそれだと軌道を読まれるぞ。三つ。せっかく意思疎通ができるんだからまずは会話からだろ?」
「……ありがとうございます。次があればその様にします」と言ってその男性が笑うと両手首に一本の筋が入りホシモリが喉の当てられたナイフを押すと綺麗に手首から上がずり落ちた。
そして体を捻りホシモリはその男性の顔面を蹴りあげると壁に叩きつけられ意識を失った。
その場にいた全員がホシモリの戦闘能力の恐怖に怯えていると入り口の方が騒がしくなり出し金属がガチャガチャとすり合う音が大量に聞こえる。
その音に聞き覚えがあったホシモリがそちらを向くとそこにはこの都市の警備兵がおり先頭には微妙に顔見知りのアズスベルン・ガーランドが立っていたのでホシモリはナイフを仕舞い軽く挨拶をする。
「ふむ。私が小便をちびりそうなほどの気配を感じたが……ホシモリ君とは思わなかったな」
「……ガーランドさんの見た目で小便とか言うのやめないか?」
「王女は大便しないと言うが私は只の兵士なんでね……まぁそれはいい。衛生兵!早急に怪我人を治してやれ!」
はい! と言う返事と供にガーランドと一緒にいた兵士達は動き出し怪我人の治療を初めて行く。
ガーランドはハンター組合の職員やハンター達に話を聞く為に少し離れたのでホシモリは自分のリュックサックと鳥の足を手に取り帰ろうとしたがこの町に入ってきた時に出会った警備兵に止められた。
「ホシモリさん……流石にこの状況だと黙って帰られませんよ……」
「どさくさに紛れてって無理か?」
「無理ですね……ミスリル上位のハンターPTを病院送りにしてこのハンター組合のハンター長も病院送りですからね……」
「病院送りか……結構真面目に殺る気だったが魔法があると体も頑丈になるんだな」
「喧嘩で殺さないで下さい……まぁ相手が抜いた時点で喧嘩じゃないですね……あのプリーストの女性とか可愛かったのに顎とか粉砕しますか?」
「この国は女性の方が強そうだから大丈夫だろ」と言ってホシモリがガーランドの方を見ると警備兵も納得したように頷く。
ガーランドも職員から話を聞き終わった様でホシモリがいる所へとやって来て今後の事を伝える。
「流石に事が事だからな。ホシモリ君。悪いが留置場に来てくれるか?」
「ああ。問題無い」
素直に返事をしたのが以外だったのがガーランドは少しキョトンとしながらホシモリに質問する。
「ふむ。もう少し抵抗するかと思ったが?」
「あのな……そこまで野蛮人じゃないから。言葉には言葉で拳には拳でだぞ。それに兵士の大変さはよく分かるからな」
その答えが面白かったのかガーランドは少し笑った後に部下に命令を出しホシモリを留置場に連れて行く様に伝えた。
ホシモリも自分が言った様に何の抵抗もせずに後をついていく。そしてハンター組合の建物から外に出るとイクシオーネから通信が入る。
『特に問題はありませんでしたか?』
『ああ。義眼からデータを送っておくから小屋に戻って解析していてくれるか?』
『了解しました。戦闘モードから通常モードへ移行後、帰還します』
クローク機能を発動させいつの間にかハンター組合の建物近くにイクシオーネは潜んでおりホシモリに何かがあった時はすぐに戦闘に加わる様にしていたがそこまでの相手ではなかったので静かに小屋へと戻っていった。
ホシモリが留置場につれていかれ陽が落ちる頃には同じ兵士と言う事もあってかホシモリは兵士達と仲良くなり話に花を咲かせていた。
「東門を守っている兵が数日に一度しか帰ってこない野人がいると言っていましたがホシモリさんでしたが……」
「誰が野人だ。誰が」
「まぁあそこの森は食べられる物は多いですからね」
「あのセミっぽいのとか揚げるとなかなか美味いよな」
「私達が訓練してるような事してますね……ハーブを巻いて揚げるともっと美味しいですよ」
「辛くは鳴りますけど赤いキノコで包んであげてもいい味出ます」
「あーあのキノコか……生で食ったらケツから火がでそうだったわ」
「ホシモリさん……あなたはここの新兵ですか?」
ホシモリ達が兵士達にしか解らない様な話で盛り上がっているとハンター組合から事情を聞き終えたガーランドがやって来た。
上官が戻って来た事で兵士達も態度を改め敬礼をしホシモリも真似をして敬礼をする。
「ふむ。ホシモリ新兵なかなか様になっているじゃないか」
「はっ!ありがとうございます上官殿!」
一人の兵士がホシモリの態度に吹き出すと釣られて他の兵士達も笑い出した。
「先ほどの君とこうやって冗談を言える君。どっちが本物だろうな?」
その質問にホシモリはどちらも自分でありますと答えてから椅子座るとガーランドも向かい合う様に椅子に座り話を始める。
「先に結論から言うが君には特にお咎め無しだな」
「え?結構やり過ぎたと思うんだがもみ消して大丈夫なのか?」
「やり過ぎたと思うならもう少し手加減してやってくれ。君が病院送りしたハンターは全治二ヶ月だ。切り口が綺麗だったのと回復が早かったのが幸いして後遺症は無いそうだ。ハンター長も同じだ」
「魔法だから万能かと思ったがそうでも無いんだな」
「ああ。高位の魔法になれば時間が経っても治るが……基本的に人体欠損は治らないと考えた方が無難だ」
「なるほど勉強になった。それでお咎め無しというのは?」
「ああ。君がかなり暴れたせいでスターランスとか言うハンター達と美味い汁を吸おうとした組合の職員が全部ゲロったからな」
「えぇ……あの程度で吐くなら最初からするなよ」
「そうは言うが私でもびびる位には君の気配は怖かったぞ?」
「嘘くせー……」
「喧嘩に関してはそれでお咎め無しだ。君に襲いかかったハンター達だが勘違いで剣を抜き返り討ちに遭っただけの話で終わらせた」
「抜いたら殺し合いだしな」
「そういう事だ。剣を抜く魔法を使うと言うのは一つの覚悟だからな。まぁ君もやり過ぎという所もあるが……約束だからな少し圧力をかけてもみ消しておいた」
ホシモリが丁寧に頭を下げるとガーランドは気にしなくて良いと言ってから形は同じだが見た事もない金属でできた腕輪をホシモリの前に置く。
その腕輪を手に取りホシモリがこれは? とガーランドに質問する。
「ああ。君がまた喧嘩を売られない様にするのとミスリル上位の冒険者のパーティーを一人で殲滅し元とはいえオリハルコンのギルド長を一人で倒す者にブロンズはふさわしく無いとハンター組合と警備兵団が判断した結果だ」
「あー……ありがたいが拒否していいか?」
「ん?どういう事だ?その腕輪はミスリルだからミスリルランクの冒険者に格上げだぞ?」
「今回の事で俺の中でハンター組合の信用は無くなったからハンターは辞めようと思ってる。ある程度だが言葉も覚えてきたからな。素材とかは街で買い取ってもらおうと思ってる」
「私達もハンター組合には少し思う所はあるからな……だがハンターお辞める時は自分でハンター組合に行く必要があるそれまではつけておけ」
断る理由も無かったのでホシモリが腕輪を受け取り銅の腕輪を取り外し新しい腕輪を身につけた。
そこで話は終わりガーランドが部屋から出て行こうとしたのでホシモリは質問する。
「そうそう。ガーランドさん。どこか素材売れる良い所ってないか?」
「あるぞ。だがそれは私が答える必要はないな。外に出れば解る」
そう銀色の長い髪を翻してさって言ったのでホシモリはリュックサックを背負い二本の大きな足を持って立ち上がる。
「そういえばホシモリさん、そのスピリットイーターの足は本当にどうしたんですか?」
「倒したぞ。隠してあるがあの軽くなる羽も回収したしな」
その事が本当に凄かったようで近くいた兵士達はどよめき驚いた。
「スピリットイーターを撃破したのはガーランド隊長以来ですよ」
「やっぱり強いか……美人で強いとか反則だろ」
「でもまぁ……性格があれですから。バランスは取れてますね」
「すっげー解るわ。それでこの足って売れるのか?」
「はい。武具を作るのにとても重宝しますね。兵士達の憧れです」
じゃあこれは今回のお礼と口封じと言ってホシモリは二本持っていた足の一つを机の上に置いてから手を上げて部屋から出て行った。
その後に部屋から騒ぎ声と殴り合いをする音が聞こえたが気にせず留置場の外に出ると女性の兵士が立っておりホシモリを見ると大きく頭を下げた。
「お久しぶりです。ずっとお礼を言いたかったのですが……中々会うこできなかったので」
その女性はホシモリが森の中で人攫いからすくった甲冑を着た娘だった。