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第二話 は・じ・ま・り

次に目が覚めると暗闇だった……目はおろか身体自体が動かせず意識と聴覚だけがハッキリとしている状態で何か柔らかいものを弄る様な気持ち悪い音と話し声だけが聞こえていた。


「マスター 旧NO62484927が覚醒状態 脳波α波に移行しました。」


「流石()()() もうお目覚めか 残念ながら夢でも現実でもない」


(ッ………この声……意識を失う前に聞いたシルクハットの……)


「うむ……やはり記憶消去も出来ていないか」


「マスター 2000回目の身体一部領域におけるセキュリティロック解除失敗 旧NO62484927の廃棄を推奨」

「その案は却下だ」


(記憶消去……一体何の話を……っというか俺喋っても無いのにどうして!!)


「マスター 旧NO62484927の脳波β波に移行しました。」


「イライザ 逐一の報告はもういらない 作業を続けろ それと()()() そもそも会話など下等生物のする事だ 今私は基準をお前に合わせてやっている 感謝しろ」


(拘束を解いてくれれば幾らでも感謝するさ だから拘束を解け)


「それは無理だ そもそも拘束なんてしていないし、今お前の身体(アバター)はモデリング作業中でここに存在していないのだから 」


(どういうことだ……俺は俺だろう……今こうして意識だって……)


「前提として先程も言ったがここは現実じゃない 現実のお前ら人間は一人一人培養液の中でスリープ状態 水槽の中のお前の身体リンクは切ってあるし仮想世界上の身体(アバター)も無い 身体が動かせないのではなく動かせる身体が無いのだよ」


(じゃあやはりここは現実じゃなくて……俺はもうあそこ(日本)に帰れないのか?)


「そうだ 日頃から非現実的に感じていたが故にお前は()()()管理世界(ワールド)から抹消された」


(これから………これから俺はどうなる……廃棄するのか(殺すのか)……)


「廃棄はしない お前は中身の()()()()不良品ではあるがそれはそれで利用価値がある お前の腕をもぎった性悪女も言ってただろう? 真実に気付いた奴の悪感情は美味いんだ」


(一体……俺に何をさせるつもりなんだ……)


「何もさせないし何も出来ないさ そもそも俺の管理世界はお前の居た管理世界(性悪女の所)とは方向性も文明レベルも違う 人間同士で争わせるのではなく人類共通の敵 魔物を作り出しそいつらとの対立によって悪感情(エサ)を集めている世界。では魔物はどうやって作り出すか……はご想像にお任せしよう」


(まさか!!中身や外見(アバター)を弄るってのは!!)


「少なくとも中身を弄れないお前は記憶消去もされない 良かったな だが真実を知っているお前は魔物と人類どちら側に立つのだろうな そしてその時お前はどれ程の悪感情を抱くのであろうな?」


(ふ、ふざけるあぁぁぁッ!!!!!)


「フハハハハッ!!! 美味い悪感情を御馳走様 馳走してくれた礼に醜悪な外見(アバター)をくれてやろう!! 俺の管理世界を思う存分楽しんでくれ」






* * *






そう、これが世界の真実を知りイケメンから化け物(オーク)に変えられた哀れな男の顛末……プロローグで語られなかった紙芝居の内容である………え? その割には元気そうだって? アホか!! メランコリーで陰鬱で鬱屈だわ!! 現実(バーチャル)に向き合うとチュパカブラ(コイツ)が噛みついている尻が痛むんじゃ!


「ホラ痛ぇッ!! このッ!!」


噛みつきを強め再び血を飲み始めたチュパ美をもう一度引きはがそうと俺は奮起するが歯が返しになっている様で簡単には外れず大きな赤い瞳からは絶対外れてやるもんかという強い意思さえ感じる。


周辺は鬱蒼とした森林地帯で現地の人間を見つけられる希望も薄い 現実逃避(バーチャルエスケープ)している間は空腹感を感じないが痛む尻と同じく現実(バーチャル)に引き戻されると一気に襲ってくる 一番気に食わないのが今もこうして俺から出る悪感情を管理者達(上の奴)が旨そうに食ってるって点


「だからいって仮想世界から出る方法も奴らの支配から逃れる方法も何もわかんないんだよなぁ……ちゅぱみ……俺このまま野垂れ死ぬのかな……このまま一人で……やだよぉ」


俺は落胆と空腹から足の力が完全に抜けその場に倒れ込んだ……が


『諦めちゃダメッ 光一郎はそんな事で弱音を吐かないし諦めないよ!!』


背後から聞こえたその謎の声に鼓舞され俺は直ぐに立ち上がった。

「まさか……ちゅぱ美なのか?」

『そうだよ!! やっと私の声が届いた!!』


自分の股の間からチュパミをくぐらせてしばらく熱い抱擁とキスを交わしながらゴロゴロのたうち回っていると草の揺れる音が聞こえふと視線を向けた。


「あっ……」


視線の先には顔を引きつらせながら俺を見下ろす大きな帽子に赤い長髪のナイスバディ―な女が立っていた。

彼女がこんな表情をする理由を俺は理解できなかった……ただチュパミにアフレコして寂しさ、人恋しさを紛らわせていただけだというのに……やはりこんな姿じゃ人間とは分かり合えないのかもしれない


『あの……えっと……光一郎見られちゃった 恥ずかしいね (裏声)』


赤髪の女は逃げ出した。


「マァあぁあぁぁあぁ!!! どうか行かないでッ!! 好感度落としちゃったアァァッ!!」


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