鬼
「な、何してんだ」
さらにさらにと傾いていく電車、取れたアガサの親指
…俺の頭はそろそろキャパオーバーだ
「何って鬼化じゃ」
何もおかしなことが内無いかのようにそう言う。その直後アガサの体がほんのり赤くなり幼い体が少し筋肉質へ変わっていった。頭に小さい角のようなものが2本生えていて牙鋭くなっている。その姿はまるで子鬼のようだ。そして何より親指が徐々に治っていっている…
俺と同じぐらいまで体がでかくなると成長が止まり大きく一息を吐いた
わけも分からずただ見つめているとアガサは上がっていっている電車の底を手で抑え、深呼吸し底を押し始めた
ギシギシと音を立て窓の外は火花を出しているが徐々に列車は傾きを取り戻し元に戻っていく。
このまま押し続ければ何とか戻りそうだ
「無理そうじゃな」
いきなり底から手を離しすぐに俺を抱き抱え電車の窓を突き破って外に出た。ガラスの破片がキラキラと舞う光景が目に映るが全てアガサの筋肉が破片から守ってくれた
そのまま地面に突き当てられ何とか俺たちは助かった
ゆっくりと息を整えるより先に電車は少し行ったところで脱線し地面とぶつかり激しい爆発を起こした。あのまま乗っていたらどうなっていたか。
「な、何とか助かった。ありがとうな」
「お主に正面から礼を言われるとなんか違和感があるのじゃ」
そう言いつつもアガサほっぺが赤くなり照れてるのが分かる。ツンデレかよ…
「助けられた身で言うのもあれなんだが、あのまま抑えとけば何とかなったんじゃないか?」
「そんな事わしが1番よくわかっとるのじゃ。ただ押し続けると疲れるし、どうせ助けるのがお主じゃから別にいっかって思ったんじゃ」
…それは良いのか悪いのか?…まぁ助かったし良いのか
「それよりきっと近くにまた万がいるぞ」
「多分そうじゃな。さっきから放で見とるが強いのがおるじゃ」
アガサは目をつぶり何かを感じている
だが辺りを見渡しても誰もいない。耳をすましてもヒューヒューと風のなびく音だけだ。
「来るのじゃ」
カット目を開けると俺を抱きつき地面に伏せる。その直後に台風程の大風が吹き俺たちを襲った。風はどんどんと強くなり近くの草花を飛ばしていく。咄嗟にアガサの鬼化した爪を地面に差し込んだおかげで杭の役割を果たしなんとか体勢を保てている
幸いに風は通り雨のように直ぐなくなりいつしか周りは凪となった
「どこから攻撃してるんだ」
俺は何とか起き上がってウェポンを構えるがそれを横目にアガサの体からは煙のようなものが音を出しながら上がっていた
煙がどんどん激しくなるにつれ体は元の幼女に変わっていきアガサは「ぐてー」と倒れた
「ひぇー疲れたのじゃー。お主ー飯くれじゃー」
「えっ、もう終わりなのか?」
「煽り性能高めじゃな。まぁホントのことなんじゃが」
地面に顔を埋めたままそう言い話を続ける
「わしの異能は鬼化じゃから変身する時めっちゃ異能力つかうんじゃ。おまけにあの姿じゃと息するだけでも異能力を喰うからすーぐ疲れるんじゃ。あんな電車で………(ブツブツ)」
どんどん喋っていくにつれ声が小さくなって最後の方はもう聞きとることすらできない
こりゃまずいな。電車で死ぬ危険が去ることと引き替えにアガサが疲れきってしまった。近くに万がいるのにアガサ無理、もちろん俺一人じゃ全然戦えないし1人逃げる訳にも行かない。万事休すってやつか
思考をめぐらしているとアガサ髪がすこし揺れているのがわかった。気づくと俺の髪もなびいていきどんどん風が激しさを増す
「くっ、また来るぞ、このままじゃ俺たちどっちも飛ばされるぞ」
そう言ったところで何も変わらない。周りを見渡して風から隠れる場所を探しているとうつ伏せのままアガサが右手をグーにして挙げた
右手からは血がたれていて今度は人差し指がなかった。
風が俺の体を吹き飛ばす程の強さになる前にその右手は再びムキムキになり地面を叩きつけた。
地面はドゴドゴと砕け小さなクレーターとなった。
また嵐のような風が吹き付けるがクレーターのおかげで俺たちにはかからずただ地上を吹き付けるだけとなった
疲れきってるアガサが助けてくれたみたいだ
「これで…何とか…大丈夫じゃー」
シュウシュウと煙を上げ手が戻っていきさっきよりも疲れた表情でアガサは大の字で寝そべった
「これで一安心だな」
「それはちょっと過信しすぎじゃない?」
声のする方に振り返ると下駄を鳴らした真っ赤な鼻の天狗がいた
---ある人達の物語---
「おう、いさな知ってるか?羊が1匹2匹ってあれ眠くなんねぇらしいぞ。元々アメリカで言われて羊のsheepとsleepingって似てるから脳のバグらしいぞ」
「へぇーそうだったんだ。けど僕いつも数えて寝てるよ?」
「そりゃお前がアホなだけだ」
チェリー、いさな




