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強制的な異世界帰省

よろしくお願いいたします。

「我々は時空を越えて此処に避難して来た人狐だ」

「私、捨てられたんじゃ無かったのね……うっ……うっ……」

「お前、いい加減その悲劇のヒロインごっこ止めろ!」

「ふえ~い」


 リンカ達はマークの店まで戻って来ていた。ジンに今までの説明をする為だ。「秘密を知られたからには始末するのがセオリー」と言ったマークをリンカが暴力で訴えて止めたからだ。いつの間にかリンカはマークより強くなっていた。


「そしてコイツは人狐族の王の娘で俺はコイツの護衛の騎士だ」

「オカマの騎士……人狐って変わっているんだな」

「これは敵を欺く為の仮の姿だ!」

「えっ? そうなの?」

「何でお前が疑う!?」


 真顔のリンカにマークが憤慨した。


「で? 何でこの世界に避難している訳?」

「ダーリンと出会う為です♡」

「黙れ姫! んな訳あるか! こら! くっつくな! 離れろーー!!」


 すっかりジンにメロメロなリンカに今直ぐ何処かに監禁しなければと焦るマークだった。


「そう言えば何でイーリンに化けているんだ?」

「イーリンて、誰?」

「その姿の女だよ、さっきアンタが消し炭にした奴」

「あら実在する人物だったんだ? この顔はダーリンが侍らせていた女を組み合わせたものなの。元の私はこれよ?」


 リンカは幼い頃から過ごしてきた姿に変化した。ジンは数か月前に殺して埋めた女の登場に目を見開く。


「嘘だろ……生きていたのかよ」

「そうよ~安心した? 愛するリンカはジンの為に蘇りました~!」


 己の暗殺人生に新たな汚点を加えられ少しだけ自信を無くしたジンだった。





「姫がこの世界に逃げてきたのは我々人狐族と人狼族の戦争が始まったからだ」

「戦争……?」


「姫が幼い頃、人狼族の王子をこっ酷くふったのが原因だ」

「あの変態、死ねばいいのに」


 と、その時……。


「上手く隠れていたよね~リンちゃん?」


 突然聞こえてきた声に三人は素早く振り返る。そこにはロウがニコリと笑い立っていた。


「ロウ君?」

「ロウ……? まさか、黒狼一家の頭の息子!?」

「えっ? 僕を知っているの? なら話は早いや」

「なにっ!?」


 ロウは素早い身の動きでカウンター席まで来るとリンカを後ろから抱き込み距離を取る。瞬時に人狼へと変化したロウがリンカを抱き締めニヤリと笑う。


「くそ! 姫を放せ!」

「ロウ君が刺客だったの?」

「チッ! 間に合わない……」


 怒号するマークの声、落胆するリンカの声、諦観するジンの声。一触即発の緊迫した空間にロウの声が響いた。


「リンちゃん、僕を匿って~!!」


「「「…………はぁ?」」」






 ロウがリンカに保護を求めに来た数時間前。


「波動? 直ぐ近くだ!」


 身体に感じたピリピリとした感覚にロウは星の観察の仕事を一旦止めて出所を確かめる事にした。


「僕でも感じる強い波動……もしかすると……」


 駆け付けた倉庫から聞こえてくる阿鼻叫喚に逃げたくなったロウだったが勇気を振り絞ってそっと中を覗き込んだ。


「あれは、狐の姫! やっぱりあの波動の主はターゲットの物だったんだ」


 ロウは気配を消して暫くの間覗いていた。すると数人の人狐族とみられる若者が来て黒焦げのモノを運び出していた。


「噴火口に捨てておいて」


(えげつない! まるでリンちゃんだ)


「またですか~この前捨ててきたばかりなのに~」


(どうやら以前も殺ったみたいだ……怖いな狐の姫!)


 暫くすると狐の姫はリンカに変化した。ロウは目が点になった。


(うそ~! リンちゃんが狐の姫だったの~? 灯台下暗しってこういう事か)


 ロウはそのままリンカ達の後を付け今に至ると言うわけだ。




「僕の性格だと家業に向かなくて此処で転職先を見付けていたんだ」

「だから色んな仕事していたんだね」

「で? どうして姫に匿って貰いたいんだ?」


 ギロリと睨むマークにビクリと肩を震わせるロウ。ロウはリンカの陰に隠れて話始めた。


「そもそも黒狼一家が狐の姫の情報を掴んだのは偶然で、他の人狼族は気付いていなかったし、僕ら一家も敢えて情報を流してはいなかったんだ。王からの褒美を独り占めする為にね。だけど、さっきの波動はきっと各所に取り付けられた探知機にキャッチされてる筈。今にわんさかやって来るよ、人狼族」

「同族がやって来るのに匿われる理由ねーだろ?」

「逃げているのバレるし連れ戻されるじゃん! 僕、暗殺者にはなりたくない!」


 生温かい三人の目がロウに集中する。


「何その三人の微妙な顔。はいはいヘタレですよ! 血を見ると貧血起こしますよ!」

「致命的だな」

「でしょう? だから匿って一緒に逃げて?」

「断る! 狼は敵だ!」

「えええ! ロウ君は良い子だよ~」

「お前、コイツの事も好きなのか!?」

「えっ? 迷惑なんだけど」

「ちょっとロウ君? それどういう意味?」

「あっ! また心の声が表に出て……ん?」


 わちゃわちゃと話し込んでいた四人は気が付かなかった。店の床に大きな魔法陣が浮かび上がっている事を。それにいち早く気が付いたロウが叫ぶ。


「リンちゃん逃げて!」

「えっ? 何?」

「マズい! 転移魔法だ!」

「ファンタジーかよ?」

「……」


 眩しい光に包まれたリンカ達は魔法陣へと吸い込まれた。





 大広間に施された魔法陣から眩しい光が放たれた。魔法陣の周りに居た人狼の騎士達が目を眇め陣の中央を凝視する。すると徐々に人型が浮かび上がりリンカ達が姿を現した。


「万事休す……かな?」

「えええ! ここ何処!?」

「くそ! 此処は人狼国の城じゃねーか!」

「マジかよ? もろファンタジーの世界だな」


 リンカ達を取り囲むように立っていた人狼族のひとりがロウを見付け駆け寄って来た。


「ああ……兄さん! 良かった無事だったんだ!」


 そう叫びロウに抱きつく。抱きつかれたロウは微妙な顔を抱きついている弟に向けていた。他の三人は取り囲む人狼たちに鋭い視線を向けていた。


「やっと捕まえたぞ、リンカ!」


 そこには漆黒の髪に銀色の目を光らせた人狼族の王子、クウガの姿があった。



読んでいただきありがとうございます。


この回で現実世界編は終了です。


次回から異世界編突入! 本日の21時の投稿はありません。


ブクマ、評価、よろしくお願いいたします。

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