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【番外編】異世界十日間の旅 後編

番外編後編です。


よろしくお願いいたします。

「何処が安全じゃーー!! 今直ぐ帰せーーーー!!」


 再び寸での所で引き戻された私は、神の胸ぐらを掴み激しく揺らした。

 矢張り此処は選択肢を間違えると即バッドエンドの世界! 三次元に二次元を求めるのはもう止めるわ!


「落ち着きなって、サヤカちん。偶々王子の虫の居所が悪かったんだよ」

「偶々で殺されて堪るかーー!」

「そうだ! 取って置きのキャラが居るんだけど……興味無い?」

「はぁ? 隠しキャラって居たっけ?」

「違うよ~サポートキャラだよ~黒狼一族のガロ」


 黒狼一族の次男……ガロ。


 代々王家に仕える隠密の一族。優秀な兄にコンプレックスを持っていて何事にも兄には勝てないと思い悩んでいた。主人公に「君にはお兄さんに無い優しさが有る」と言われ主人公のサポート役として走り回るのだ。


「きっと、サヤカちんの手となり足となって協力してくれるよ」


 縁の下の力持ちとして主人公を陰で助けてくれる心優しい人狼。彼が居れば色々なアドバイスをしてくれるかもしれない。


「今、王宮での話し合いに参加しているみたいだから行ってみよう!」

「えっ? 王宮に忍び込んで大丈夫なの?」

「基本ポンコツだらけの世界だから気付かないよ」


 色んな意味で大丈夫か? この世界。なんて考えてる間に円卓のある暗い部屋に放り込まれていた。どうやら虹色の空間は周りに見えないらしい。


「じゃあガロを仲間にするんだよ」

「えーー!! ちょっと神ーー!」


 ガロに丸投げして逃げやがった。


 円卓には数人の狼の獣人が座っていて何やら会議が行われていた。何だか偉そーうなオッサン連中だな?私は部下みたいな人達に混じって壁際に立った。ん? あれは……クウガ!?


 狼の獣人……クウガ王子。


 怪我をした幼い狐の女の子を助けた際、怖がられ思い切り泣かれた為、無体を働いたと勘違いされ謂れの無い中傷を受ける。誤解を解こうと近寄ればストーカー扱いされ、思春期だったクウガの心はギタギタに壊された。誇り高き狼の王子として繊細な心を隠す為わざと高慢な態度を取るようになったのだ。


 主人公に「強がってみせているけど貴方の心が悲鳴を上げているわ」と諫められ主人公にだけ甘えるようになる。


「おい! キョロキョロするな!」


 うお! ガロきゅん! まさか隣に居るなんて! でかした神! ペコリと頭を下げ横目で観察。ガロきゅんてば何気にイケメン! もうガロきゅんで良いんじゃない? 優しいしイケメンだし。


「ねえ、ガロきゅん」

「気色の悪い呼び方をするな!」

「君さぁ、お兄さんの事で悩んでいるんじゃない?」

「どうして……それを?」

「お兄さんが優秀なのは分かるわ」

「そうだろう! 兄さんは世界一なんだ! 尊い存在なんだ!」

「でも、私知ってるよ? ガロきゅんがお兄さんに無い優しさを持ってるって」

「ああ? 兄さんの方が優しいに決まってるだろう!」

「ううん、ガロきゅんの方が……」


「貴様……兄さんを愚弄するのか? 殺すぞ!」


「神――!!!」

「……」

「ちょっ神――!!!」

「ZZZ……」

「寝てるーー!?」


「おいそこ! 静かにしろ!」


 クウガの一声でガロきゅんが剣を鞘に納めてくれた。助かった~!

 つか神――起きろーー!!


「これより第四百八十五回捜索会議を始める」


 捜索会議? 何それ? 誰か探してるの?


「移動可能な異世界には波動探知機を設置済みですが……まだ引っ掛かりませんね、恐らく平和な世界に居るものと思われます」


 四百八十五回も会議開いてて見付からないの? 諦めなよ!


「精密度を上げて数を増やせ」

「御意」


 物々しいわね……大きな犯罪でも起きたのかしら?


「王子。苦言を呈するようで恐縮ですが……そろそろ諦めては如何ですかな?」


 おっと、長老っぽい人よく言った。


「そのセリフ……十年前にも聞いたが?」


 ふえええ!!! こんな事十年以上もやってたの?


「ねえねえ、ガロきゅん。誰を探してるの? ……ごめんなさい」


 うわーめっちゃ睨まれた。視線で死ぬわー。


「リンカの死を確認するまで諦めるものか!」

「えっ? リンカ?」


 あっ……声大きかった。全員注目してる~~~!


「お前……リンカを知っている口振りだな?」

「あーー。そのリンカとは違いますよ? 多分……」

「お前の知っているリンカは何処に居る?」

「いや……あの~此処じゃない世界と言うか~きっと人違いです」

「構わぬ! それは何処だ!」

「だから、違いますって!」

「その者を捕らえろ! 痛め付けて居所を吐かせるんだ!」


「何でーーーー?」


 命の危険を感じた私は近くの扉から勢いよく飛び出し一目散に逃げだした。

 何で5分おきに殺されそうになるのよーー!!!


 それより神――!まだ寝てるのか? 死んだら化けて出てやる!!!


 陸上部で鍛えた足のお蔭で王宮から逃げ出せた私は森の中へ身を隠した。


「此処までくれば……」

「み~つけた」

「ひっ! ウグッ!」


 ギリギリと首が絞まる……苦しい……死ぬ……。心で神を罵倒しながら私は意識を失った。





 寒気を感じ目を覚ます。私……生きてる?


「おや? ラビピョン。起きたかい?」


 ビクッとして声のした方へ顔を向ける。レンカ王子……。


 狐の獣人……レンカ王子。


 可愛い物が好きで内気で大人しく、花や蝶と戯れる心優しい王子。だが溺愛していた妹の死により塞ぎ込んでしまったのだ。心配した父王が可愛いペットを与えた事で少しだけ元気になるがポッカリ空いた心の穴を埋める事は無かった。


 そこに現れた主人公に妹の面影を感じ次第に惹かれていく。


「今日からラビピョンは僕のペットだよ? 可愛がってあげるね」


 ぺぺぺ……ペットーー!!! ああ……だから首輪なんだ……って違う!


 私、人間です! 人間をペットにしてはいけません! うううう! 猿ぐつわの所為で喋れない!


「ラビピョンはメスだから全裸は可哀想だよね~」


 オスは全裸確定なの?


「衣服代わりにロープと包帯どっちが良いかな~」


 何故その二択? どっちもアウトでしょう!


「包帯が大量に有るからこっちで良いか」


 ひん剥かれた私は身体を包帯でグルグル巻きにされました。一つ聞いて良いかな? 何の為に大量の包帯が有る? やっぱり怖いので答えは要りません!


「あれ? 涙流してる。可愛いね~お腹空いたのかな?」


 レンカが猿ぐつわを外した……今だ!


「神……むぐぐ」


 途端に口を塞がれた。


「兎は鳴かないんだよ? 次、声を出したらお仕置きだからね?」


 喉元にナイフを突きつけられた……さっきの質問の答え頂きました。

 声を出さずにウンウンウンと何回も頷きポロポロ涙を流す。


「いい子だね~声を漏らさず鳴いてる姿……うん、可愛い」


 その後「はい、餌」と出された野菜をムシャムシャと食べました……苦い!


「トイレはそこだから」


 部屋の隅には四角く囲った砂の山。ニッコリ笑うレンカの瞳の奥にキラリと光る狂気を見た瞬間、バキッと心が砕ける音がした。


「大丈夫。ラビピョンはメスだから衝立用意するよ?」


 オスは衝立無しなんだ~メスで良かった~。


 それから9日と22時間、私はレンカ王子のペットとして過ごしました。





「もう野菜は要りません! お肉をください!」


 ハッと目を覚ますと見慣れた部屋……帰って来れたと号泣したわ。急いでゲームソフトをゴミ箱に捨てセーブデータを消去! その日一日ガタガタと毛布に包まり震えていました。良かった……生きて帰れた。


 空腹を覚え外に出る。無性に肉が食べたい! トンカツ弁当でも買って食べるか。


「もしかしてサヤカ?」


 弁当屋の店員が声を掛けてきた。誰この人? 見た事無いけど。


「中学で一緒だったリンカよ」


 リンカ? あの地味で陰気なブスで、私の口にカナブン放り込んだリンカ?


「えっ……? リンカ……なの?」

「整形したの、奇麗になったでしょう?」


 ニッコリ笑う瞳の奥にレンカと同じ色を見る。


「そうね……さようなら!」


 私は弁当を掴むと一目散に逃げだした。



 □□□



 《神のひとりごと》


 サヤカちん、無事元の世界に戻ったみたいだね~。

 あれから一度も呼ばれてないからきっと楽しんだんだね~。


 良かった、良かった。 




 ◆おしまい◆



読んでいただきありがとうございました。


自己満足ですが再投稿出来て良かった。


評価して頂ければ幸いです。



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