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エピローグ

本編完結です。


よろしくお願いいたします。

 ジン目の前に現れた凄まじい炎。全ての物を焼き尽くし消し炭にしている。


(俺はこの炎を知っている……?)

(うっ……また頭痛が……!)


 ミュオンはジンの腕を掴み引きずるように会場の外へと出ようとするが、炎が行く手を阻み思うように動けないでいた。


「セバス! 防御壁を張って!」

「畏まりました」


 エルフのセバスが魔法を使い炎を遮断しようとするがリンカの怒りの炎には敵わない。防御壁がみるみる真っ黒になり崩れ落ちる。


「小癪な女狐ね! さっさと殺して!」


(女狐? 攻撃しているのは女なのか? 炎と煙で姿が見えない……うっ……頭が割れそうだ……)


「モンチ、此方へ。逃げますわよ」

「待ってくれ……頭が痛くて思うように動けない……」


 ジンは頭を押さえながら覚束無い足取りで長い廊下に出た。後方から押し寄せて来た熱風をセバスの防御壁が回避する。


「セバス! 転移魔法を展開して!」

「無理です! 防御しながらでは展開出来ません」

「ならば私が反撃するわ! セバスはその隙に……」


「させるかーー!!」


(この声は……?)


 振り向いたジンの目に映ったのは炎に包まれるセバスの姿と何の物かも分からない消し炭がゴロゴロと横たわる地獄絵図。


 その光景を見たジンが頭痛も忘れ目を見開いた。


「この光景も見た気が……う……ああああ!!!」


 あまりの痛さに膝から崩れ落ちるジン。膝をつき肩で息をしながら呼吸を整えていた。


「モンチ! 大丈夫?」


 手を貸そうと伸ばしたミュオンの手に炎の玉が飛んでくる。寸での所で手を引っ込めたミュオンは会場の出入り口をギロリと睨んだ。


「その人はモンチなんて名前じゃ無い!」


 炎と煙の中に赤いシルエットが浮かび上がる。


「アンタの夫でも無い!」


 緋色の軍服を纏ったリンカが姿を現した。


「私のダーリンよ!」


 パリーンとジンの頭の中で摺りガラスが割れる。霞が消え鮮明になった。ジンは力強く立ち上がり縋り付いてきたミュオンを振り払う。


(何故忘れていたんだろう? こんなにも愛おしい人を……)


「リンカ……」

「ダーリン!」


 ジンはリンカに駆け寄り抱き締めた。


(ああ、リンカ……俺が焦がれて焦がれて止まないのは、君だ!)


「ちょっと! 狐の小娘その人から離れなさいよ! モンチは私の……」

「ジンだ……モンチじゃ無い。それに……あり得ない間違いを犯した」

「何なの間違いを犯したって……? まだナニもしてないわよ?」


 訝しい顔のミュオン。ジンは深い溜息を吐く。


「記憶喪失だったとはいえ、君程度の女を俺の愛しい人と勘違いした」

「なっ!」


 ジンは抱き締めた腕に力を入れる。初めての抱擁に戸惑うリンカ。


「だだだだ、ダーリン?」


「俺には君が必要だ! リンカ……俺の唯一」



 □□□



 ーーその後の獣人界の日常




 《マークのひとりごと》


 ジンが帰って来た……くそっ! 生きていたのか。

 帰って来て早々、鍛錬に誘われた。気の所為か殺意を感じる。


 …………殺されかけた! 気の所為じゃ無かった!

 弁当のお礼にって……お礼参りだなそれ! 俺が悪いから怒らねーよ!


 姫達は今、あっちの世界に行っている。

 帰って来たら今度こそ誰も見付ける事の出来ない新しい愛の巣へ……。


 認識阻害の所為で俺も見付ける事が出来なかったから只今建設中だ!




 《ロウのひとりごと》


 リンちゃん良かったね! ジンが帰って来て。

 喜んでいるのリンちゃんと僕くらいだけど。


 僕は今、実家に監禁中です。ガロの目が充血してる……寝て無いのかな?

 リンちゃんが帰って来たらリンちゃん付き執事になる予定。

 ガロが邪魔するって? 大丈夫! 僕の言う事は何でも聞いてくれるから。


 下僕って呼ぼうかな?




 《ガロのひとりごと》


 兄さん……何か企んでいるみたいだけど無駄だぞ?

 とうとう手に入れたんだ、どんな獣人も外す事の出来ない拘束具。




 《クウガのひとりごと》


 嫁(仮)がまた異世界に行ってしまった。《新婚旅行は異世界で》だと? 許さーーん!

 何だ? もういい歳だから諦めて他の嫁を娶れだと? 断る! 此処まで拗らせたんだから最後まで全うする!

 ん? 若くて美人な娘?


 会ってやらん事も無い!




 《レンカのひとりごと》


 今回の僕の企みはジンが生きて戻った事により失敗に終わった。

 そう今回は、ね? チャンスは無限に有るよ?

 ジンの用事が終われば戻って来るからね。先ずは結婚を猛反対して泣かそう。父も許して無いしね。


 待てよ……リンカの子供って可愛いんじゃないかな?


 どんな顔で泣くんだろう?




 《コクトのひとりごと》


 僕はダニじゃない! 第二王子コクトだ!

 クズでもなーーい!




 《ジュオのひとりごと》


 披露の宴では姉が惨殺される事も無く不完全燃焼です。

 まあ、離宮は燃え落ちましたが(笑)

 姉の夫達も何処かへ逃げたみたいです。

 しかし、またしてもハーレムを建てています。懲りない奴だ。


 次はどんな舞台に担ぎ上げようか……。




 《シノブのひとりごと》


 地上の火災から助けられた私は……今……。


『あら? よく見ると美丈夫じゃないの』


 また、ミュオンに捕まりました。


 黒狼一家の皆さん助けてください!

 アンタごときを助けに来るわけないじゃん、ウケる~。

 なんだと! 親友のガロが見捨てる訳ねぇだろ!

 でもミュオン王女に気に入られたら可愛がってもらえるかもね。

 某はニートなヒモ生活に憧れているでござるよ。


『逃がした人猿よりは劣るけどまあいいわ。私の夫になりなさい』


 夫? 私に足を開いた女は太平洋に沈みますが……?


 ここにはぁ太平洋ぉ無いよぉ。





 《リンカとジンのひとりごと》


「リンカ、終わったよ」


 私達は今、暗殺組織フォックスのボスに会う為こっちの世界に来ています。組織を抜ける事と今まで育ててくれたお礼を言いたかったみたい。


「回復薬100本で手を打ってくれた」


 あの日、私とジンは晴れて恋人同士になりました。

 今直ぐ結ばれたい! って言ったけど、楽しみは後に取っておくって。結婚式まで我慢するのかな?

 でも焦る必要は無い。あの日、必要って言われたから。

 俺の唯一。そう言ってくれたから……。




「そろそろ帰りましょう?」


 リンカが振り向いて微笑み掛ける。ああ、早く帰ろう。

 久し振りに見る地味なブスのリンカ。息の根を止めたい。

 駄目だ! 今は駄目だ! 楽しみは後に……。


 ボスから貰った最新式の暗殺道具。異世界の武器じゃリンカは殺せないからな。

 ごめんよリンカ……こんな恋人で。俺の愛は歪んでいるらしい。

 君への執着は確かだけど、一般人のそれとは違うみたいだ。


「リンカ、せめてイーリンの姿に変化しないか?」

「駄目よ、ダーリン! 此処では変化って言わずに整形って言わなくちゃ」



 ずっと、恋したい。

 いつか、殺したい。



 ◆おしまい◆



読んでいただきありがとうございます。


これにて本編完結です。


他視点で番外編をひとつ投稿します。


そちらもよろしくお願いいたします。

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