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肉食系王女のハーレム

よろしくお願いいたします。

(頭が……痛い……割れそうだ……)


(んんん!! 口の中に何か突っ込まれた。止めろ! コレは物凄く身体が痛くなるヤツだ! 口を塞ぐな! 塞ぐなら柔らかい唇で塞げ! ゴクン! 飲み込んだ……あああ!! 痛いーー!! ううう……だからコレは痛いって……あれ? コレって何だ?)


 口を塞いでいる手を掴みジンは目を開けた。


「此処は……?」

「気が付いたのね? 良かったわ。貴方、死んじゃうところだったのよ?」

「死にかけた? 俺が?」

「覚えて無いの? 崖から落ちて滝壺で溺れていたのに」


(覚えて無い……そんな目に遭ってるのに覚えて無いなんて……と言うか……)


「俺は誰だ?」

「えっ?」




 その言葉を聞いた女獣人が内心歓喜していた。


(どうしましょう? 大変だわ! 記憶喪失ってやつかしら? なんて都合の良いこと! クスッ……いけない、笑っているのがバレてしまうわ)


 女獣人の名前はミュオン。人獅子族の王女だ。


 此処は人獅子王国の端にある離宮。国王におねだりして建てて貰ったミュオンの城だ。


 それも眉目秀麗な男獣人を集めたミュオンのハーレムだった。


 今現在十人の夫が居る。四王国の獣人は勿論、犬、猪、兎、羊、蛇、猫と様々な獣人を集めたのだ。

 夫達はミュオンに従順だ。何を隠そうレンカが躾けた獣人達なのだ。


 それなりに楽しく暮らしていたけれど従順すぎる夫達に物足りなさを感じていたミュオンは日々刺激を求めていた。


「私の乾いたこの身体を潤す熱い猛りが欲しい!」


 そして昨日、ミュオンにとって運命の出会いが訪れたのだ。





「姉上も参加するんですか?」

「当たり前じゃない! 狩猟大会よ? まあ、私が狩るのは夫(仮)だけどね」


 ミュオンの言葉に冷たい視線を送るのは人獅子族のジュオ。堅物で女嫌いのミュオンの双子の弟だ。


「大会のルールは守って下さいよ」


 そう言ってジュオは視線をとある女獣人に向けた。その様子に目を瞬かせるミュオンだった。


(あらあらまあまあ、ジュオが女獣人見つめているわ! 珍しい! でも、人狐にあんな奇麗な娘いたかしら?)


「人狐族の王女だそうです」


 ミュオンの視線に気付いて説明するジュオ、いつもと違う様子に首を傾げた。


「惚れたの? 惚れたのね? 一目惚れしてしまったのね? 白状なさい!」

「婚約者が居るそうです」

(秒で失恋したわね……不憫な子)

「隣の人猿族の男がそうらしいですよ?」

(何故そんなに詳しいの? 初対面よね? 会話してないわよね?)


 不憫な弟に勝ち目が有るかと隣の婚約者を見たミュオンはドッキュンとハートを射抜かれた。


 目にかかった黒髪を無造作に後ろへ撫で付け、銜え煙草の煙に細めた青い目は威嚇とも取れる鋭さ。はだけた軍服からのぞく厚い胸板が汗でキラキラと光っている。


(お止めになって! そこで腕捲りとか反則ですわ! 今すぐ此処で抱いてちょうだい!)


 ジンがミュオンにロックオンされた瞬間だった。


(それにしても……人猿族とはちょっと違う容姿だわ。亜種かしら? はっ! 狩りが始まったわ。見失ってしまう!)


 ミュオンはピーーっと指笛を吹き叫んだ。


「ヘイッ! ジョン! 彼を追いかけて! セバスは転移魔法の用意!」


 ジョンはペットのライオンでセバスはエルフの執事だ。追いかけていくペットと執事を見送りミュオンは優雅に微笑んだ。


「今日から貴方は私の夫! 躾なんて必要ないわ。本能のまま私を満足させて!」



 □□□



「お帰り、兄さん!」


 ロウは一時的に実家に戻る事にした。


(僕の憶測が正しければジンはきっと生きている)


 そう思ったロウは一家の力を借りてジンを探そうと思ったのだ。


「頭は?」

「引退したよ。言ってなかったっけ?」

「聞いて無いよ! これって自動的に僕が頭になる感じ? ヤバい、逃げなきゃ!」

「落ち着いてよ、兄さん。俺が跡を継いだから兄さんは奥の部屋でゆーーっくりしていて良いから」

「えっ? 引退? 本当に? いいの?」


(引退って間違いなくコイツの所為だよね? 父、生きているのかな?)


「勿論だ! 兄さん。もう何処にも行ったら駄目だからな!」


 一家でロウを一番甘やかすのはガロだ。ラッキーとばかりにガロの提案に乗るロウだった。


「ガロ、折り入ってお願いが有るんだけど?」

「何だい、兄さん? この家から出たいって事以外なら聞くが?」


(アハハハ。そんな事言う訳無いよ~黙って出て行くさ)


「とある屋敷に忍び込んで人を探して欲しいんだ」

「誰? 俺の知ってる奴か?」

「僕と一緒に異世界から来た絶賛行方不明中のジンだよ」

「もしかして……暴力姫の?」


「そう! 多分……ミュオン王女に攫われたと思うんだ」


 人獅子国の王女ミュオンの異種族ハーレムは有名だった。所謂肉食系女子で見目麗しい獣人が攫われ気付いた時には従順な夫になっていると囁かれていた。

 そしてその王女がエルフを連れて、ジンを襲っていたライオンの後方に隠れている姿が映っていたのだ。


(早く助け出さないとジンも……)


「任せな、兄さん! 丁度昨日有能な舎弟が入ったんだ」

「そうなんだ、どんな奴?」

「紹介する、おいシノブ! 入れ!」


 入ってきた男を見てロウは目を見開いた。


「モンチ……」



 それは昨日の事。マッパのシノブが草むらでキョロキョロしていた所にガロが通りかかった。


「おい、アンタ! 裸で何やってんだ?」

「ご主人様が服を返してくれなかったもので……この辺に捨てられていないかと探して……あっ……重要な事を今思い出しました……捕まった時に目の前で燃やされたのでした……下着ごと……スンッ」

「ウチ……来るか?」


 それがガロとシノブの出会いだった。


 ガロに保護されたシノブはその日の内に黒狼一家の舎弟になった。元々似たような仕事をしていたから即採用となったのだ。



 そして今、ガロの最も愛する兄のロウがシノブに助けを求めている。


「頼むよモンチ、ジンを助けて!」

「シノブです。モンチと二度と呼ばないで頂きたい」

「察し。兎に角、ジンを助けて欲しいんだ」


(ジンを助けろだって? コイツ、何ふざけてこと言ってんだよ!)

(だよね~助ける訳ないじゃん。超ウケるんですけど~)

(君たちは誠意と言うものが無いのか! 大恩人であるガロ様のお兄様の頼みなんだぞ!)

(うっぜ~! そんなの関係ねぇだろう? ジンは俺たちの敵なんだからよ!)

(そうだよね。ウルフの名前に泥を塗る事は出来ないよね)

(でもぉ、今はぁ、黒狼一家の一員だよぉ?)

(えっ?)

(ああ!)

(マジウケる)

(こいつは一本とられたな! アハハハハ!)


「アハハハハ!」


 心の中で葛藤していたシノブが急に笑い出し辺りは騒然となる。若干増えている人格も含め結論が出たようだ。


「おい! どうしたんだ急に笑い出して」

「察し。そうとう病んでいるんだね」


 生温かい視線を向けられたシノブがコホンと咳払いし居住まいをただした。


「ジンは亡くなったと聞き及んでおりますが……ロウ様、私は何をすれば良いのでしょうか?」

「やってくれるの? ありがとう、シノブ!」


 ロウは地図を広げ人獅子国の端に丸を書いた。


「この離宮にジンは囚われていると踏んでるんだ。それを確かめてきて欲しい。そして出来れば助け出して欲しいんだよ」

「御意!」





 懐かしい黒装束に身を包み暗闇に紛れて任務を遂行していたシノブだった……が。


「くせ者!」


 あっけなくエルフの執事に捕まってしまった。


「此処には魔法の結界が張ってあるのよ? この盗賊を牢屋にぶち込んでおしまい!」


 不憫属性シノブ。囚われの身……再スタートです。




 一夜明け、帰って来ないシノブを含む舎弟たちにロウとガロは頭を抱えた。


「ウチの舎弟が返り討ちとか人獅子王女の離宮には相当の手練れが居るみたいだ」

「シノブもハーレムの一員になるかもね~調教済みだし、一旦王宮に戻るよ」

「はぁ? 何言ってるんだ? 行かせる訳無いだろう!」

「ガロも一緒に来てくれる?」

「地の果てまで付いてくよ、兄さん♡」



読んでいただきありがとうございます。


ブクマ、評価、よろしくお願いいたします。

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