表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/22

恋に堕ちたジン?

よろしくお願いいたします。

「姫、俺と鍛錬しないか?」

「嫌よ、ダーリンとイチャイチャするから」

「いいから離れろ!」


 今、この城には使用人を除いて国王夫妻、レンカ、ジン、マーク、ロウそしてリンカが住んでいる。

 ジンはリンカ専用の護衛、マークは近衛騎士、そしてロウはただの居候である。

 獣人世界に帰って来てからと言うもの矢鱈とマークがリンカに絡んでいた。マークは愛するリンカをジンから引き離そうとしているのだがリンカは別の意味に捉えている。


(分かっているわ、マーク兄ちゃんもダーリンが好きなんだもんね? でも渡す訳ないでしょう! マーク兄ちゃんはロウ君とでもイチャコラすればいいのよ!)


 リンカのマークに対する誤解はまだ解けてはいなかった。


「リンちゃん今おぞましい事考えて無い?」


 暗殺のスキルは皆無でも勘だけはズバ抜けて良いロウだった。


「ううん。マーク兄ちゃんが私より強くなったら鍛錬するのにって思ってた」

「何だと!」

「それは俺も思っていた」

「何だと!! だったらジンお前が相手しろ」

「嫌だよ、マーク兄さん弱いから相手にならない」


 ジンはマークが昔憧れていた『マーク兄さん』だったと分かり微妙な顔をした。そして「オカマになって弱くなったのか」と結論付けた。

 マークはジンの事を『キラキラした瞳の少年』という事を思い出した。「すっかり生意気なチンチクリンに成り果てたな」マークはリンカ以外どうでも良い存在なので全てがチンチクリンに見えるのだ。


「じゃあ僕が相手しようか?」

「いや、意味無いし、気を遣わなくていいぞ?」

「ロウ君……死ぬよ?」 




 そこへ何時ものようにロウの弟のガロがやって来た。ロウを連れ戻しに毎日やってきてはリンカに喧嘩を吹っ掛けて返り討ちにされるのが最近の日課だ。


「兄さんを返せ! 暴力姫!」

「どうぞ~連れて帰って」

「リンちゃん冷たい! デコピンよろしく」


 ついでに変態人狼クウガもやってきた。リンカとの結婚を諦めきれないクウガはリンカを掛けた決闘をジンに挑み玉砕されていた。既に三回半殺しになっている。


「ジン! リンカを掛けて俺と決闘だ!」

「もう3回勝ったけど? 死ぬ?」

「俺が相手になってもいいぞ?」

「マーク兄ちゃん仕事しなよ!」


 ガロがデコピンで飛ばされ、半殺し状態のクウガも従者に担がれて帰って行く姿を見たロウが優雅に紅茶を飲みながら啓発本を読む風景。


「うん。今日も静かで良い朝だ」

「ロウ君、まだ仕事しないの?」

「まだ充電中! 当分の間は居候かな?」

「ニートの都合の良い言い訳だな」


 ギロリとジンに睨まれたロウは肩をすくめる。


 此処に来てからと言うものジンがロウをチクチクと攻撃してくる。実家に戻れだの、リンカに甘えるなだの、仕事を見付けろだの……まるでリンカに近寄るロウを牽制しているかのようだ。


(公園で会った時はそこまでリンちゃんに執着しているようにはみえなかったのにね。リンちゃんも元は美人だし、殺し屋にとってああいう性格も許容範囲かもしれないね。僕は無理だけど)


 そしてマークもジンの急変を訝しげに思っていた。


(店で会っていた時はどちらかといえば迷惑そうにしていたジンだった。だのに今は蕩けるような眼差しを姫に向けている。正体の美しさに魅了された? 命を助けられて絆さられた? どちらにしても姫から引き離さなければならない!)


「リンカ、二人きりでお茶しよう」

「喜んで! ダーリン!」

「俺も一緒にお茶する」

「マーク兄ちゃん空気読んで!」


 リンカに拒絶され、ちょっとだけ心が折れたマークだったが、ここで二人きりにしたらリンカの貞操が危険に晒されるかもしれないと思い立ち上がりついていく。


(何だよジン? 不満そうな顔しやがって! 昔はマーク兄さんマーク兄さんって憧れの目をして追い掛けてきていたのによぉ!)


「仕事しろよ、マーク」

「とうとう呼び捨てにしやがったコイツ! 姫、こんなのと一緒になったら不幸になるぞ!」

「ジンと別れる方が不幸よ!」

「邪魔しないでくれるかな~オジサン?」

「オジサンだと!! 俺はまだ二十代だ!」


 口喧嘩を始めた二人を紅茶を飲みながらジッと見つめていたロウが呟いた。


「うわ~マークさんまで牽制し始めた」





 マークを絨毯の上に沈めた二人はリンカの部屋で寄り添いお茶を楽しんでいた。微笑みを携えて見つめてくるジンの眼差しにリンカは頬を赤く染める。


(とうとう俺は出逢ってしまった)

(リンカ……俺の唯一)

(美しく強靭なその姿が愛おしくて堪らない)

(誰にも触れさせない。誰にも渡さない)


(ああ……リンカ……)


(君の美しい顔はどんなふうに歪むのだろう?)

(その激しい鼓動はどれ位で止まるのだろう?)


(リンカ……リンカ……リンカ……)


(早く君を殺してみたい)


読んでいただきありがとうございます。


ブクマ、評価、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ