firefly
段々と蒸し暑くなり
日差しが木々を色付け
少し息苦しさを覚える今日。
胸に焦げ付いたあの日を思い出す。
遠目に色付く街明かりに
お互いがそばにいるのか、いないのか
現実を曖昧にする薄暗さの中
若き男女が時間と明日を忘れて
騒がしい波音と、優しい砂に
身を任せ、ただ今を楽しんだ。
どこまで続くのだろう?と
前を探し見つめても、先はうまく見えない。
だけど、目の前で
波の衝撃に輝く夜光虫は
確かに、そこにいた。
私達は確かに、ここにいる。
この先どうなるかなんて
誰にもわからない。
私達にも、分からなかった。
どうにかなりたかった訳じゃない。
彼女でも友達でも同級生でもない
あの時の私達を表す言葉は、見つからない。
傷の舐め合いをする関係だったのか
それともただ1人でいることを恐れ
寄り添いあっていただけなのか
今振り返っても表す言葉が見つからない。
貴方が私の事をどう思っていたのかは知らないけれど
ただただ何かが、私を貴方に
繋ぎ止めていた。
身体を重ね合って、
特別満たされた訳でもないのにね。
あの夜光虫が、私の脳裏に
焦げ付いてしまったのかも知れない。
青く、白く、柔く 輝いていたから。
まるで、ここにいる。
そう言われているかの様で。
あの日、あの海に私はいたの。
愛なのか恋なのかわからない
ヒリヒリした感情を、
貴方に抱いた
私がそこにいたの。