◆◆◆◆◆ 結
「久太郎、あんた雨男なのもうちょっとだったのに」
河童から逃げてきた久遠に言った。
「そんなこと言われても自然現象だし勘弁してくださいよ」
「もう、ひとりで倒せると思ったのに」
というと遊環にキスをして
「オンキリキリバザラウンバッタ」
日輪、月光を召還した。
「やっちゃって!」
晴海が二体に言うと頷いた日輪、月光が河童に向かって行った。
「あの二体は白鳥運晴という仏師が彫った彫像に一人の鬼の魂が宿っているでやんす。あの程度の敵なら問題はないでやんっしょが合体するともっとすごいでやんす」
「白鳥先生のご先祖様じゃない。へーそんなこともできるの」
二体の鬼ははめていた指輪を金棒へと変化させて河童を殴りつけている。
「鬼に金棒ね。どこから出てきたの」
「あれは友情の指輪というアイテムでやんす。念を込めると金棒になるのでやんす」
すでに河童はよれよれとなってしまった。通り雨だったようで雲の合間には青空も見えてきた。
「そろそろ潮時ね」
晴海はつかつかと河童に近寄って
河童の額にバッシッと封印呪符を張った。
「オンキリキリバザラウンバッタ!お祓いいたし候」
メダルがころりと落ち、警備員の門田が人間に戻り倒れた。久遠が詰め寄り捕獲した。
「門田守、11時30分確保!暴行の現行犯逮捕する」
久遠は腕時計を見て手錠をかけた。
尻子玉が下に転げ落ちていた。
「久太郎、尻子玉を持ち主に帰しといてね」
「どれが誰のかわかりませんよ」
「警察でしょう。DNA鑑定すればいいじゃない」
「よくやったね、晴海さん、一人でよく事件解決したね」
舎利弗が近づき晴海に言った。
「あのう僕も活躍したんですけど本部長」
「お願いがあるんだけどそのかわいい姿、写真にとってもいいかい」
舎利弗は晴海にお願いをした。
「いいわよ。どうぞ」
様々にポーズを取り答えた。
サイレンの音が鳴りパトカーが数台やってきた。
「舎利弗君、ありがとうこれで事件が解決したな」
河田社長が舎利弗に感謝していた。
「まだよ。事件はまだ解決してないわ。応接室に戻りましょう」
晴海は元の姿に戻ってそう言った。
応接室には舎利弗、久遠、そして研究員の二人と河田親子が残った。
「晴海様、見事な推理で門田も逮捕されて事件は解決じゃないんですか」
久遠は晴海に言った。
「バカね、推理なんかじゃないわよ、最初に受付であったときから見抜いていたわ門田が憑き人だと、妖気がプンプン漂っていたから、蕎麦は追い詰めるきっかけよ」
「なんだって、門田は犯人じゃないのかね」
「いえ、犯人です。しかし機密文書は盗んでいません。開発を遅らせる妨害をしていただけだったんです」
「じゃあ三木田さんと狭川さんを襲うつもりだったんだ。でもどうして無事だったんだ」
三木田、狭川の方を向いて晴海が聞いた。
「お蕎麦を食べてた時に誰か来たでしょ」
「ええ、そのとおりです」
晴海は立ち上がりある人物を指さした。
「あなたが機密文書盗み出した犯人よ!河田圭子!」
「圭子が、どういうことだお嬢ちゃん」
河田社長も立ち上がった。
「理由はわからないわ。ただ監視センターを付喪神でハッキングしていたのは圭子さんよね。どう?」
「私じゃないわなにを言っているのかしら」
「あなたは、付喪神を払った時『これは手品で何を隠したのですか?』と言ったわね。ハッキングの目的をばらしてしまったのよ。証拠を隠すという。あなたは監視カメラをハッキングしてUSBを盗み出すチャンスをうかがっていたところ、二人が襲われることに気が付き、お茶を持って行って阻止した。そうよね」
三木田、狭川を見ると頷いていた。
「証拠がないわ」
晴海はメダルを取り出し
「もう一度付喪神にして録画を回復することができるのよ。それでもいい」
河田圭子はがっくりとうなだれた。
「そうよ私がUSBを盗み出したのよ。父さんに目を覚ましてもらいたかったの」
「何を言い出すんだ圭子」
「私は知っていたのよ。うちの会社で開発したレーダーの部品が軍事利用で輸出されていたことを、このデータが盗まれたとわかれば考えを改めてくれると思ったのよ」
「聞き捨てならんことだな河田君、友達とは言え職務だ。署までご同行願おう」
舎利弗刑事本部長は河田の手を引いた。
そして事件は解決したのだった。
満腹寺の帰りの車は久遠が運転して晴海と二人きりだった。舎利弗は河田の取り調べに署に戻っていた。
「晴海様、見事な推理でしたね。どうして犯人が二人いることに気が付いたんですか」
「だって、河童は防犯カメラに写ってたんでしょ。門田がその気なら管理センターの録画を操作することができるじゃない」
「ああ、その通りですね」
「もっと頭を使いなさいよ。久太郎、それで管理センターの付喪神は別人の仕業だと思ったの」
「しかしまた付喪神にして証拠を見せることができるなんて晴海様は万能ですね」
「あれはブラフよ。そんなことできないもん」
「開いた口がふさがらないな。その大胆さ」
「お腹が空いたからどこかで食べて帰りたいわ。おごってよ久太郎」
「そこのファミレスでいいですか」
「何言ってんのよ。蕎麦の口になってるの天ざる食べたいわ。さあ行って」
「はいわかりました。いかせていただきます」
次なる事件は、晴海と久太郎コンビの活躍やいかに。