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初めてのデートサイドA

「ねえ、静ちゃん晴明君の家に行ったのよ」

 電話の相手は同級生の瀬戸だ今日の出来事をにさっそく報告した。

「このままガンガン押しまくたらいいじゃん」

「そうよね。ご両親にも好印象だし」

「えっ晴明君のお母さんにも会ったのちょっと変わってたでしょ。なんていうか天然だったでしょ」

「えっ?普通の感じだったよ」

「ごめん、あんたの常識もたまについていけなかったわね」

 好きな人の誕生日プレゼントに数珠を選ぶ晴海の感性に瀬戸はあきれていた。

「これからどうしたらいいと思うアドバイスしてよ」

「あせりすぎちゃダメよ。少しじらすぐらいがいいのよ」

「それってこの間貸してあげた白鳥先生の本に書いてたことじゃない」

「実生活に取り入れろってこと」

「男の子と付き合ったことのない静ちゃんに聞いたのが間違えね。白鳥先生に相談しよ」

「晴海、明日の約束、博物館へ行くの忘れてない」

「駅で待ち合わせでいいよね」

「じゃ、お休み」

 明日は瀬戸と市立博物館へ平安の暮らし展を見に行く約束をしていた。瀬戸の歴史好きに付き合うことになっていたが歴史に興味がない晴海だった。


 約束の時間、駅前で瀬戸を待っていると

「ごめん、出かかけようとしてたらお父さんと用事ができちゃって観覧券二枚あるから、八雲君を誘えば誘えば」

 といって券を渡され帰ってしまった。

「もう、いきなり言われても」

 と戸惑っているところに晴明も電車に乗ろうとやってきた。

 まさかそんな偶然が晴海は運命を感じていた。

「やあ、晴美さん、おはよう」

「おはよう、晴明君、どこに行こうとしてるの」

「うん、湊川駅まで乗って平野に行こうと思って」

「平野?」

「平清盛が住んでたとこなんだ」

「歴史大好きなの、ちょっと時間ある」

「まあ、用事はそんなに時間がかからないと思うけど」

「じゃあ博物館に行かない。『平安の暮らし展』の券があるの静香と行こうと思ったらドタキャンされちゃって」

「おもしろそうだね」

「そうでしょ、行きましょうよ」

 まったく興味がなかったくせに現金である。

「面白そうだから、いいの僕とでなんて」

「話は決まり!行きましょ」

 グイと晴明の手を取り改札をくぐっていった。


 電車の中では晴明は質問攻めに会っていた。

「詳しいのね晴明君、平安時代ってそんな生活だったの」

「結構のんびりしていたんだよ。宋との貿易で神戸もにぎやかだったんだよ」

「なんだか見てきたみたいに詳しいのね。博物館でもいろいろ教えてね」

 にわか歴史好きを演じる晴海であった。


 博物館では晴海が感心するほど博識な晴明であった。展示物を解説も見ずに丁寧に説明してくれた。

「晴明君てすごいね。歴史学者になれんじゃない」

「得意分野というか平安の暮らしに詳しいだけだよ」

 静香、ありがとう、晴明とこんなに近づけたのはあなたのおかげよ。と晴海はこの出会いを感謝していた。

「ねえ、平野に行くご用事も一緒に行っていい」

 少し戸惑っているな晴明が見えたが

「いいよ、大事な話もあるし」

 大事な話、どきりとした晴海

「どういうことかしら、でも晴海うれしい」

「バスで行くのが早いんだけど歩いていってもいい30分くらいかかるけど」

「もちろん、晴明と歩きたいわ」

「おなかすいたね。何か食べようか」

「南京町でも行く」

「あそこは観光客だらけで僕の知ってるところでもいい、何が食べたいの晴美ちゃんは」

 意外なことだけど結構リードしてくれる晴明に晴海は喜んでいるが、食い意地が張っているだけの男だった。

 中学生の小遣いで十分美味しいものを食べれる店に晴明は案内していった。

「新開地って怖いところだと思ってたけど美味しい店知ってるのね晴明」

 いつの間にか君がなくなっている。自分の中では距離が一気に縮まったのだろう。

「お父さんと一緒に食べ歩いてるからだよ。このまま北の方へいくと平野だよ」

 湊川公園を抜け市場の中を歩いていく二人

 そのとき晴海はメダルを感知した。こんなときにと戸惑う晴海、晴明の顔もなぜか険しくなっていた。

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