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瑠璃峡キャンプ場

 晴海は晴明の斜め後ろの席で期末試験と格闘していた。


「”唐が滅んで小国にわかれた中国を統一した王朝を答えよ”だって、天鼓君に教えてもらってたのになぁ」

 頭を掻きながら窓際の席の晴明を見て思い出そうとしていた。

「おい!八雲、黙って書きなさい」

 問題をぶつぶつと読んでいた晴明が先生に叱られた。

 答えもつぶやいてくれたらいいのにと思い窓の外を眺めた。

「きれいな鳥さん」

 朱色と緋色の混じった小さな鳥が木の枝に止まっていた。

 次のテストは英語、晴海の得意とする科目だった。そこそこの点が取れたと思い給食の時間となった。

 晴海は意を決して今日のプレゼントを渡すきっかけ作りに話しかけた。

「八雲くん、どうだった難しくなかったか日本史」

「一夜漬けで覚えたとこが当たったみたいで楽勝だったよ」

 なんだかこの前とは違い頼もしい雰囲気を感じて思わず。

「今度は私にも教えてね。でもなんか雰囲気変わったよね八雲くん」

「そうかな別にいつもと変わらないけど」

「なんか頼れるようになったというか大人っぽくなったね」

 素直に思ったことを口にした。少し恥ずかしそうにする晴明を見て作戦決行を心に決めた。

 数学、国語、理科と試験が終えて駅へ向かう晴明を追いかけていった。

「八雲くん」

 ふりむいて立ち止まった晴明

「あのうこれ」

 かわいいリボンのついた細長い箱を手渡した。

「誕生日おめでとう」

 恥ずかしくなって顔が真っ赤になった。

「ありがとう水無瀬さん。開けてもいい」

「うん」

 喜んでくれるだろうかドキドキとしながら返事をした。

「えっ、数珠」

 驚く晴明にお構いなしに

「私とお揃いなの」

「ありがとう大切にするよ」

 もうここまでくればもっとお話をして帰ろうと思っていた。

「よかった。八雲くんなら大丈夫だと思ったの、妖怪や鬼とか興味あるでしょ」

 勝手に決めつけて強引に話を進める。

「いや特にオカルトはどちらかというと特撮なんだけど」

「今度、本とか貸してあげるから興味持つわよ」

 ぐいぐいと顔を寄せて迫った。

「いいよ。興味ないから」

 この話題はまずかったのかとしなだれる晴海

「そう言えば、試験中見なかった。鳳凰がいたでしょ」

「えっ水無瀬さんも見たの!鳳凰なのあの鳥」

「そうよ。本に載っているもん」

 食いついてきた。にっこりと笑顔を作った。

「やっぱり貸してもらおうかな」

 やった―これでお家に行く理由ができた。

 電車の中では、妖怪の話を思いっきり一方的に話した。

「水無瀬さん、今日はありがとう。また来週学校でね。バイバイ」

「八雲くん、晴明って呼んでいい。私も晴海って呼んでね。バイバイ」

 満足顔の晴海であった。


「えらく上機嫌じゃの晴海試験がよくできたのかい」

 鼻歌を歌いながら帰ってきた晴海に晴山は言った。

「試験なんてどうでもいいのふっふっふっ」

 不思議がる祖父を後目に父の書斎に向かった。

「どの本がいいかな」

 夢中で晴明に貸す本を選んでいた。


「晴海様、一緒に来てください」

 突然、久遠がやってきて連れ出されてしまった。

 研究所に着くと宝蔵院が難しい顔をして

「古代の兵器が脱走してしまったんです」

「どういうことなの天鼓君」

 詳しい話を聞くと

「大変じゃない。人を襲ったりしたら」

「北東の方角に飛んでいったから、発掘場所の京都へ向かったんじゃないか」

 軽足はそう推察した。

「こんなことになるとは思ってもいなかったので追跡装置がついてないんです。今近辺の防犯カメラをつないで探しているんです。あのジェットの航続距離はせいぜい五、六キロしかないので軽足さんから逃げた後は歩いて進んでいるはずです」

「京都府警にも連絡して警戒態勢には入っているけど僕たちも現地入りしたほうがいいので明日は京都だよ晴海様」

「わかったわ。明日準備して待っているから。よろしくね久太郎」


「せっかく今日は晴明君の家に行って妖怪のお話ししようと思ってたのに計画が台無しね」

 晴海は久遠とともに京都の愛宕山へと向かった。

 宝蔵院は軽足たちと共に先に待機していた。

「ここへ戻ってくる確率は80%はあると思います」

 からくりを待つ一向に連絡が入った。

「宝蔵院君、瑠璃峡のキャンプ場に手配のからくりが現れた」

「どうして、そんなところに?」


 宝蔵院たちがたどり着いたときには騒ぎが収まっていた。

「あのからくりがこんなに壊れるなんて」

 残骸を調べる宝蔵院は驚いていた。

「どうやら怪我には出ていないようだ。現場にいた人たちにいろいろ聞いてみたけど突然バラバラになったそうだよ。自爆したんじゃないのか」

「そんなわけはありませんよこの壊れ方はパーツがなくなっているんですよ」

 破片を掴みあげながら唸っていった。

 被害にあわれた人たちを見つめる宝蔵院、家族連れや恋人同士たち

「皆さんにお詫びしたいです。僕のせいで大切な休みの日にこんな目に合わせて」

 肩を落としてしょんぼりする宝蔵院に

「受付で来客者のリストをもらってくるから僕と一緒に謝りに行こうか」

「久遠さんありがとうございます。助かります」

「天ちゃんどうするんだい。せっかく借りた異物を壊しちゃったな」

「研究所の3Dプリンターでレプリカ作りますからばれないと思います。最初からそのつもりでしたから」

「そうね。こんな危険なもの壊れたほうがいいんのよ」

「しかしどうやって破壊したんだろう。興味深いよ」

 晴海たちは研究所に戻って行った。

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