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過去との対面

 あれから晴海はなぜか晴明を意識するようになっていった。

「なんでだろう、あんなにボーとした顔しているのに言うときは言うのよねぇ」

 首を傾げながら晴明の真直ぐな性格が妙に気になるのだった。

「水無瀬さん、なんだか心ここにあらずな感じだけどどうしたの」

「天鼓君、八雲君のこと教えてくれない」

「えっ、どうして」

「一緒のクラスだったの晴明君とあんまり話したことがなくて。どんな子かなと思って」

「僕がクラスの乱暴者にいじめられてたら、かばってくれたんだけど、晴明君もそんなに腕っぷしが強いわけでもないのにすごい勇気があるなと思ったんだ。結局その子にも認められて仲良くなっちゃってさあ、僕も含めて二度とちょっかいを出されなくなったんだ」

「結構無鉄砲なところもあるんだ」

「人のいいとこばっかり見てるんだ。それは見習うべきだと思って僕も心掛けているんだ」

「その乱暴者って、今も同じ中学にいるの」

「いや、新聞で見たけど、伴君は私立の柔道の強い学校に行って中学のチャンピオンになっているよ」

「ふーん、不思議な子ね。もう少し背が高ければもっとモテそうね」

「水無瀬さん、晴明君が気になるの、お似合いのカップルだと思うけど」

「そんなんじゃないよ。天鼓君のバカっ」

 またも顔を赤くする晴海であった。

「晴海ちゃん、そろそろ調査に向かおうか」

「はーい、団長さん」

 何度か空間のひずみを探そうとしているのだが一向にその成果は上がらなかった。


 教団の動きもなく期末試験を残し中学二年生の三学期も終わろうとしていた。

「おじいちゃん元町まで行ってくるから」

「こらこら、期末試験ももうすぐじゃろう。真剣に勉強しなさい。もう三年生になるんだぞ。受験の準備は始まっているんだぞ」

「もう、まだ早いわよ。それに天鼓君に勉強教わっているから大丈夫、白鳥先生の個展にデパートまで行くだけよ。すぐ帰るわ」

 電車に乗り街へと降りていった。

「晴海ちゃん、もうすぐ期末試験だろう、こんなところへ来てていいのかい」

「もう、先生まで準備は万端です。天鼓先生がついているから」

「それは心強い味方だね。せっかくだからケーキでもごちそうしようか」

「わーい、先生と一緒なら喜んで」

 デパートを出てケーキ屋へ行くと

「おー晴人、奇遇だな。奥さんへのプレゼントかい」

 定宿の温泉旅館の主、八雲晴人がそこにいた。

「いや、晴明の誕生日がこの週末なんだ。バースデーケーキを注文に来たんだ。そういえば個展をしているんだったな。あとで寄せてもらうよ」

 晴人は去っていった。

「先生、今の人は」

 晴明という言葉に反応した晴海であった。

「ああ、今日も泊まっているが旅館の親父で俺の同級生の八雲だよ」

「そうか、期末試験の日が誕生日なんだ」

「どうしたんだいぶつぶつ言って」

「何でもないの、早くごちそうしてくださる」

 喫茶店を後にした晴海は白鳥と別れて元町をぶらぶらしていた。

「そうだ、プレゼント買っちゃおう」

 仏壇屋に入っていった晴海であった。


 宝蔵院は京都の歴史博物館にいた。

「宝蔵院教授、発掘品の分析と修復をしていただけるとは願ってもない光栄です」

 博物館の学芸員は少し興奮気味で宝蔵院を歓待していた。

「だいじょうぶなのかいこんな子供に触らせて」

「しっ、聞こえますよ。館長、宝蔵院教授はマサチューセッツ大学を卒業されて、古代マヤ文明の謎を解明された方なんですよ」

「天よ。こんなものそんなに重要なことなのかい」

 ヤーシャがボディガードとして同伴していた。館長は宝蔵院より彼女に興味を示していた。

「これは、奠胡(テンコ)の作った物に間違いありませんよ。実物を見て確信しました」

 宝蔵院が調べていくとその遺物の中にはミイラ化した死体があった。報道では詳しく述べられていなかった事実がそこにあった。

「持ち帰って、詳しく調べますので手続きお願いします」

「ええ、お願いします。こちらではこれが何か全く分からないものですから」

 二人は車にからくりを積み込み研究所まで運んでいった。


 ミイラ化した遺体はからくりと融合していた。宝蔵院は何か不思議な感覚に囚われていた。

「天ちゃんどうしたんだい。ぼんやりとして」

 軽足はいつもと違う宝蔵院の姿を見て心配していた。宝蔵院の目から涙がこぼれているのだった。

 フーがやってきて

「なんでこれがここにあるにゃ」

「フーさん、知っているんですか」

「こいつには痛い目にあわされたにゃ、見るのもいやにゃ。この男のことを見るのも嫌にゃ」

「やっぱり奠胡なんですね」

「それをどうするにゃ」

「修復して棺として完成させてやりたんです」

「天の好きなようにすればいい、私もそのほうがいいとなぜかそう思うんだ」

「仕方ない二人にゃ、好きにするにゃ」

 フーは逃げるように去っていった。


 宝蔵院は徹夜で修復を試みていた。そして週末の朝、ついに元の状態に戻したのであった。

 宝蔵院は疲れ傍のソファーに倒れ込み眠り始めたが、轟音にあわてて目を覚ました。

 壁を突き破りからくりが逃げ出したのであった。

「大変だ!からくりが逃げ出した!」

 騒ぎを聞きつけた軽足とヤーシャもやってきて

「俺たちが後を追いかける」

「これを持って行ってください。停止装置になるはずです」

 宝蔵院から(くさび)を受け取り二人は壊れた壁から飛び出していった。


「これはどうやって使うのかな?ヤーシャ、天ちゃんに聞いてくれ」

「通信装置を持ってきていない」

「あっちゃー当たって砕けろだ」

 草木が踏み荒らされたからくりの後を追う二人

「いたぞ」

 崖っぷちに追い詰めた。

 ヤーシャはからくりの懐に入り込みナイフで攻撃するが全く効果がない。

 軽足はくさびを握り締めどうしたものかと思案していた。

「父さん、背中にそれを差し込めるような孔がある」

「ヤーシャ、わかった任せる」

 楔をヤーシャに投げ渡した。受け取った楔を両手でつかみからくりの背後に回り込んだ。

 突き刺そうとした瞬間からくりは足からジェットを噴射して飛び去っていった。

 その勢いで大きな岩が崖を転がり落ちていった。

「飛べるのかよ。聞いてないぞ」

 崖の下を覗き込んだ。

「大変だ高そうな車が岩で押しつぶされている」

 同じく覗き込んだヤーシャは

「けが人は出てなさそうだ。研究所に戻るか」

 研究所では

「まいったな。まさか再起動するなんて舎利弗さんに連絡しないと」

 計測装置に繋がれた空間のゆがみ調査タブレットが一瞬大きく反応を示していた。

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