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晴と晴

「天鼓君、怖くなかった」

「必ず助けてくれると信じていましたから、余裕でしたよ。この船で神戸港巡りをして帰りましょう、ハックション!」

「だめよ。風邪ひいちゃうよ。早く帰りましょう」


 研究所に戻った晴海たちであった。

「しかし、クルーザーまで用意していたなんてどれだけ作戦考えていたの」

「押収されていない教団所有の船があったものですから万が一と思って買っておいたんです」

「団長さんもよく船を操縦できたわね」

「乗り物なら何でも操縦できるよ。お望みとあればジェット戦闘機だって」

「いいですね。一台買っておきましょうか」

「もう、桁違いなお買いものね。ほどほどにしておいてよ」

「しかしあの二人を確保できなかったのは残念だったわ。貴具!よく考えてよ」

「スパイをあぶりだす作戦だろ。これで十分じゃないか」

「まあこれでこっちの手の内を隠して行動できるから優位に立ったって感じか。それにいいアイテムを手に入ったことだし、晴海様、勘弁してやってください」

「そうよ、空間のゆがみ探知機、天鼓君使えそう」

「動力源が切れているみたいなんだ。動いていないんだ」

「充電切れなのアダプターも一緒に持ってくるべきだったわね」

「あっそうか」

 宝蔵院はそういうと目をつぶって念じるような仕草をした・

 タブレットの画面が輝きだした。

「どうやっての」

「いや、魔力を注入してみたんだ。思った通りだった。これで調べることができるよ」

 分析室へ走って行ってしまった。


「みんなよくやった。宝蔵院君も無事で、しかし毛利署長も驚いていたよ。羽田は長年彼女に仕えてきたそうなんだ」

 舎利弗もやってきた。

「ずっと騙して、教団のために働いていたんですね」

「そうだ忘れるところだった」

 晴海はそういうとホットミルクを作って宝蔵院の所へ向かった。

「天鼓君、これでも飲んで温まってね。まだ時間かかりそう分析」

「いや、動作確認はできたからあとは動かしてみるだけだから」

 機械を触ると

「このあたりに空間のひずみはなさそうだな。軽足さんに頼んでいろんな場所に行ってもらわないと」

「じゃあ、またちょっと宿題見てもらえる」

「お安い御用だよ」

 二人は冬休みの宿題に取り掛かった。


 晴海は三学期の始業式へと学校へ向かって歩いていた。

「おはよう晴海」

「おはよう(しず)ちゃん」

 友達の瀬戸静香が後ろから声をかけてきた。

「冬休みの宿題多かったわね。晴海はできた?私半分残しちゃった」

「私は何とか手伝ってもらって全部できたわ」

「いいな、手伝ってもらえる人がいて」

 宝蔵院のことは内緒にしていた。私も一緒にと言われかねない瀬戸のことだ。

「おはよう。瀬戸さん」

 さらに後ろから八雲晴明が声をかけてきた。

「おはよう八雲君、宿題できた」

「なんとかね」

「やっぱり、また教えてくれない。あとで」

「いいよ。じゃあ先に教室行くから」

 小走りに駆けて行った。

「静ちゃん、八雲君と仲がいいのね」

「小学校の時からずっと同じクラスなのよ。彼、勉強よくできるから昔からよく教えてもらってたの」

「ふーん、じゃあ静香、宝蔵院君て覚えてる」

「覚えてるよ。暗い印象の子でしょ。よく八雲君がいじめられてる彼をかばっていたな。でもどうして」

「いやなんでもないの」

 やっぱり、彼が天鼓君の親友なんだ。と確認する晴海であった。


 通常なら始業式の後は何もないのだが、感染症の影響で授業が少なくなったせいで午後からもしっかりと授業を受けて晴海は帰ろうとしていた。軽足とともにゲート探索に向かう約束をしていた。

「晴海、今日は花壇の当番だよ」

 帰ろうとするところを瀬戸にとめられた。

「ごめん、用事があるから一人でお願い」

「もう、またなんだから少しは手伝ってよ」

「いいじゃない。今度お茶おごるから」

「だめだよ。水無瀬さん、瀬戸さんにばっかり押し付けちゃ。みんなで管理することが大切なんだから」

 その様子を見た晴明が晴海を注意した。

「なによ。あなたに関係ないでしょ」

「いいのよ八雲君」

 瀬戸はあわてて晴明を止めにかかった。

「いいのよじゃないよ。ルールは守らなきゃ」

 面倒くさいやつだなと晴海は思っていた。

「水無瀬さん、僕も手伝うから少しでもやっていきなよ」

 仕方なしに花壇の世話をしだした。

「水無瀬さん、ごめんね偉そうなことを言って、でも瀬戸さんがいつも一人でやっているのを見ていたから一度言っておきたかったんだ」

 事件のことで学校からすぐに帰ることが多くそんな当番のこともすっかり忘れていたのだった。

「静ちゃん、ごめんね。気が付かなかったわ。八雲君もありがとう」

「いいよ僕のことなんて、瀬戸さんと仲良くやっていってね。さあこれで終わり、帰ろうか」

 彼も本当は何か用事があったのかさっさと帰って行ってしまった。

「八雲君ていつもあの調子なの」

「うん、真面目なんだ。困っている人を見ると手を貸さずにいられないみたいなの」

「ふーん、じゃあ急ぐからまた明日ね」

 晴海も走って駅へと向かった。

「ちぇ、八雲君は一本先の電車に乗っちゃったか。ちょっとお話してみたかったな」

 と思っていると瀬戸も追いついてきた。

「結局一緒の電車ね」

「ねぇ、静ちゃんは八雲君のことが好きなの」

「何言っているのよ。ただの幼馴染だよ。晴海の方がお似合いだわ」

「わ、私はまだ何とも思ってないわよ」

()()、ふふっふ、晴と晴でいいお天気じゃない応援するわよ」

「バカ」

 なぜか顔を真っ赤にする晴海であった。

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