表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/61

誘拐

「宝蔵院研究官、やっと私に会いに来てくれたわね」

「毛利署長、すっかり遅くなってすみませんでした。せっかく僕が警察で働けるようにご手配いただいたのにお礼も遅れて」

「いいのよ。まさかの申し出に驚いたのはこっちの方だったので、まさか大統領からの紹介状をむげにできないですもの」

 署長室で二人きりで会談していた。もちろん通話は宝蔵院の回線で全員に筒抜けである。

「ちょっと久太郎聞いた大統領の紹介状よ。天鼓君どれだけすごいコネ持ってるのかしら」

「しかし毛利署長もすごいよ。それで中学生を科捜研に押し込んじゃうんだもん」

「あら、私も毛利署長のおかげで捜査できることになったのかしら」

「そうだよ。前例なんてすっ飛ばして行動できるすごい人だよ。だてに初の女性官房長官候補なんて呼ばれていないよ」

「しー、よく聞いて」

 指を口に置き久遠のおしゃべりを止めた。


「宝蔵院君、折り入ってお話があるんだけどある人に会ってもらえないかしら」

「どんな人でしょう?」

「詳しくは私の秘書に聞いてもらえる。彼女のお願いなの。車を用意しているから今から向かってほしいの時間はある」

「多少でした大丈夫です」

「じゃあ地下の駐車場に向かって彼女の運転で向かってくれる」


「久太郎、私たちも駐車場へ先回りよ」

 走って駐車場へ向かって行った。


「来た天鼓君だ」

「この宝蔵院君特製カーナビに現在地がわかるから離れてつけるよ」

 宝蔵院が乗った車が出るのを見届け久遠は車を走らせた。

 宝蔵院を乗せた車は県内の港へ向かっているようだ。

「久太郎、もう少し近づけない。船にでも乗せられたら大変よ」

「だいじょうぶですよBチームが先回りしています」

 想像通り車は港に向かって進んでいた。

「Bチームどうなっていますか」

 久遠は通信を試みると

「どうする宝蔵院を確保するか」

「御堂さん、しばらく泳がしてください。宝蔵院君からの指令です」

「おーい、宝蔵院君からのメールだ。彼の所有するクルーザーがその港にあるらしい。俺とヤーシャはその船に乗船して待機する」

 Bチームに帯同する軽足がそう言ってきた。

「天鼓君にメールして時間を稼いでもらって私と久遠もクルーザーに乗せて」

「私に任せなさい」

 舎利弗からの通信が入った。パトカーのサイレンが聞こえ始めた。


「そこの黒いセダン、左に寄せなさい」

 パトカーは宝蔵院の乗った車を止めたようだ。


「あっ、これは申し訳ありませんでした。毛利署長の秘書の羽田(はだ)さんでしか、すみません手配中の車と間違えたようです」

「舎利弗本部長、ご苦労様です。別に気にしておりませんよ。ご公務ご苦労様です」

 少しイラっとした表情の羽田

「宝蔵院君じゃないか。羽田さん、彼とどちらへ」

「いえ、ちょっと会合へ向かう途中ですの」

「そうでしたか。お邪魔をいたししました。それでは気を付けて」

 舎利弗は敬礼して車を離れた。

「どうだ、準備はできたか」

「おじさま、ナイスアシスト、天鼓君の船に乗りました。でもすごい船、今度みんなで乗りましょうね」


「宝蔵院教授、着きました。この船に乗っていただけますか。中でお話しすることになっています」

「乗らないとだめですか、その人に下りていただいて近くのホテルじゃだめですか」

 ぐずった芝居をすると羽田は宝蔵院をつかみ上げ船へと乗り込んでしまった。

 二人が乗り込むと同時にその船は港を離れてしまった。


「宝蔵院教授、お久しぶりです」

「きみは百目(どうめ)さん、なぜこんなことを」

「手荒い方法ですみませんでした。ぜひ教授に教えてほしいことがあるんです」

「教団に協力することは僕はしませんよ」

「これをご覧になられても」

 百目は古びたタブレットを宝蔵院の前に置いた。

「これは、空間のひずみを探知する装置じゃないですか」

「やはりご存じでしたね。使用法を教えていただきたいのですよ」

「断ります。そんなことはできません」

「あなたの大切な仲間がどうなるのかお分かりですかね」

「脅迫しても無駄です。僕の仲間たちは君たちなんかに屈するはずがありまん」


「いいこと言うわね。天鼓君、その調子よ」

 宝蔵院のクルーザーのデッキの一番前に立った晴海が叫んだ。


 宝蔵院を連れ去った船に突然、御堂と貴具が現れたのだった。

「お前たちいつの間に」

「姿を消して乗り込んでいたんだよ。宝蔵院はいただくよ」

 御堂は宝蔵院を抱えて船外へと出た。

「まて、きさまら」

 銀のメダルを取り込み百々目鬼(どどめき)へと変化した。

「逃げるところはありませんよ」

 毛利署長の秘書、羽田(はだ)(みやこ)も銀のメダルを取り込み毛羽毛現(けうけげん)へと変化して挟み撃ちにした。


 貴具は拘束の呪符を百々目鬼に投げつけ自由を奪い、毛羽毛現に体当たりをした。押してその勢いのまま海へと飛び込んだ。続いて

「ちょっと冷たいが辛抱しろよ」

 宝蔵院にそう言うと御堂も飛び込んだ。

 毛羽毛現は百々目鬼の拘束を取り去り

「こんな海のど真ん中に飛び込みよって逃げられるわけもないのにな」

 二人が海を見ると一台のクルーザーが近づいて来て三人をピックアップしてしまった。

「やーい!天鼓君は取り戻したからね。おあいにく様」

 晴海が叫んだとたん敵の船が爆発した。ずぶ濡れになった貴具が

「置き土産さ。まあこんなことで死ぬやつらではないだろうが寒中水泳でもしてもらおう」

「びっくりした。貴具、やり過ぎよ。でもこれでスパイの正体がわかったわね」

 バスタオルにくるまれた宝蔵院もデッキに戻り

「これも手に入ったことだし」

 手にはタブレットが握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ