スパイ疑惑
「去年は教団創設以来の散々な年だったな」
「南風野様、あの警察の舎利弗と水無瀬とかいう小娘のせいです。抹殺のご指令を」
火車の猫田が息巻いて発言した。
「あの娘は使い道がある」
「あまり派手に動き過ぎたな。メダル流通の責任者は根角だろう」
百々目鬼の百目が鉄鼠の根角を見た。
「不可抗力だよ。あの小娘のせいで事が明るみになり過ぎた」
「メダルの生産も一からやり直しだ。舎利弗の作った組織のせいでな」
一つ目入道の崔もうなだれてつぶやいた。
「まあ、お前がいればしばらくは安泰だ」
毛羽毛現が肯いた。
「もうあいつらのせいよ!」
晴海は憤慨しながら机に向かっていた。
「冬休みは宿題がないのが定番なのにリモート授業が多すぎたせいで夏休み並じゃない」
「おーい晴海、舎利弗さんがいらっしゃったぞ」
鉛筆を置き席を立った。
「あけましておめでとうございます。舎利弗のおじさま」
「あけましておめでとう。今年もよろしく頼むよ」
舎利弗はお年玉を渡した。
「いただいていいんですか。ありがとうございます」
「改めてあけましておめでとう」
「久太郎はお年玉くれなくていいのよ」
「そう言わず僕からも受け取ってくれよ」
続けてお年玉を手渡した。
「ありがとう。今年もよろしくね。今日はどうしたの」
「いや新年の挨拶だけだ。署でも新年のあいさつだけが署長からあったのでこちらにもお邪魔しに来たんだ」
「署長さんてちっらと見たことがあるけど女の人よね」
「あゝ、そうだよキャリア組のバリバリの出世コースのエリートだよ。いずれ初の女性官房長官になるかもしれないよ」
「まあ、すごい人、久太郎には雲の上の人ね」
「まさに殿上人だよ。毛利署長は、でも舎利弗本部長のようにたたき上げで上を目指します」
「まあ、初夢みたいなものね。頑張ってね久太郎」
「晴海さん、これから宝蔵院君の研究所で新年会を兼ねた今年最初の会議をするのでご一緒いただきたい」
宿題は山と溜まっているが仕事なので仕方ないが、宝蔵院の助けを借りるチャンスだ。
「ちょっとだけ待ってくださいね。準備してきます」
研究所へ行くとヤーシャが海外公演から戻ってきていた。
「遅くないました」
と言いながら御堂と貴具もやってきた。
「あけましておめでとう。諸君、今年も教団幹部への捜査を継続して不可解事件を解決していこう」
舎利弗の新年のあいさつと共に各員の報告が始まった。貴具も師匠の手前、素直に情報を開示していった。
「やはり、幹部たちの行方はまだわからんか」
すると、宝蔵院が発言した。
「あのう、ちょっと気になるんですけど。内部を疑うことは心苦しいんですがこちらの情報が洩れているということはありませんか」
「僕たちの中にスパイがいるということかい」
久遠が驚いて言った。
「それはないだろう。このチームから漏洩することはないと信じている。疑うべきは警察組織だ」
警察の幹部である舎利弗の口からそんなことが飛び出るとは
「確かに警察内部に教団の信者がいても不思議ないかもしれませんね」
「どうやって調べればいいの天鼓君」
「フェイクの情報を上にあげてみるか」
「舎利弗本部長、そんなことをしていいんですか」
「久太郎も考えなさいよ。内部に潜んでいるネズミを引っ張り出すようなアイデアを」
「うーん」
黙り込む久遠であった。
「僕に考えがあります」
宝蔵院がしゃべりだした。それを聞いた舎利弗は
「面白い。何か根拠があるのか宝蔵院君」
「僕の仮定ですが、当てはめていくとそこに行きつくんですよ。こちらの動きが筒抜けの理由が」
「それが本当なら君も危険なことになるかもしれんぞ」
「だいじょうぶですよみんなが守ってくれるはずですから」
「まかせてね天鼓君、私がついてるわ」
作戦が開始された。




