ご神託
「あけましておめでとうございます」
「うむ、おめでとう」
本堂で向かい合い正座して新年のあいさつをする晴山と晴海
「はい」
晴山は手を出す晴海に袖袋からポチ袋を差し出す。
「無駄使いしてはいかんぞ」
「ありがとうおじいちゃん、大晦日はゆっくりできたわね」
「おお、鐘を突かなくてよかったのは大助かりだ。早朝に雑煮も食わずに久遠くんは実家に帰ってしもたがの」
「久太郎も久しぶりに家族に会いたかったんでしょ」
「晴海、今年は久遠くんをあまり振り回しちゃいかんぞ。甘え過ぎじゃぞ」
「久太郎に甘えてなんかいないわよ」
プイと横を向く。
「ここはやはり寒いのう。食堂に戻ってテレビを見るか」
二人は食堂へ向かったが檀家の方が挨拶に来るたびに晴山は本堂へと戻って行っていた。
そうしているうちに晴海は寝てしまった。
「なにこれ、夢でも見てるのかしら」
見知らぬ森に晴海はいた。
「初夢かしら。えーとなんだっけ一富士二鷹、三は・・」
「ようやく逢えたな」
見知らぬ老人が晴海の前に現れた。
「わっ!誰?でも見たことあるわね」
「わしは藤原盛俊、おぬしの遠い祖先じゃ」
「あっ、塗壁くんに収納している仏像の人だ」
「なんともめんこい子じゃのう。おぬしに神託を与えに来た」
「なになに、いいこと」
「おぬしの両親は今異世界におる。これから出会う友と共に会いに行くがよい」
というと消えてしまったと同時に晴海も目を覚ました。
「そんな大事なこと、本当かしらでもどうやって異世界へ行くっていうの」
晴海は悩み込んでしまった。祖父の晴山に聞いても異世界への生き方なんて知らないし
「やっぱり天鼓君に聞くのが一番かな。でもこんな神託なんて信じてくれるかしら」
「おーい晴海、お客さんだぞー」
祖父の呼ぶ声が聞こえる。行ってみると軽足と宝蔵院が来ていた。
「あっ、団長に天鼓君、あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとう。暮れから天ちゃんと二人きりでさみしかったから新年のあいさつに来たんだよ」
「あけましておめでとう、水無瀬さん今年もよろしく」
「こちらこそよろしくね。ちょうどよかった。ご先祖さまから神託があったの聞いてくれる」
「ご信託、興味深いですね。どういったことでしょう」
「なんでもね。私のお父さんとお母さんが異世界にいるということなの」
「ありえない話じゃないですね。異世界へ行くためのゲートを探す機械があるくらいですから」
「それでこれから出会う友と共に行けっていうのよ。どう思うまだ知らない人と行けって」
「何か特殊な能力を持った人物といこですかね」
「これだけじゃわからないわね。もう一回寝たら詳しく聞けるかしら」
「それだけもったいぶった言い方をしてるところを見ると無理じゃないかな。定番では」 軽足もそう言ったがそんな気がしていた。
「こんな時久太郎がいたら、待てば海路の日和ありとかことわざ言いそうね」
「そうですね。静観して待つことにしましょうそれが運命なら」
「せっかくだから御節とお雑煮食べて行ってよ」
「それじゃ遠慮なく、天ちゃん、よばれよう」
「美味しいですねこのお雑煮、白みそ仕立てなんですね」
「なぜだか昔から京風なのよ。このお餅、日輪と月光がついたのよ。そうだ」
晴海は錫杖を取り出し二体を呼び出して、
「新しい仲間を紹介するわ」
晴海は二体に手のひらを向け
「オン ア・ラ・ハ・シャ ノウ!」
パシリと手を閉じた。二体が重なったと思うと一本の角をはやした少年のような鬼が現れた。
「こ、これは」
驚く二人に
「月輪っていうんだ。よろしくね」
「月輪君、お雑煮食べて」
「やったー」
「興味深いですね。研究所で今度解析させてください」
「天鼓君らしいわね」
「おっ、いくらでも調べてくれよ」
にぎやかな新年の始まりだった。




